サスティナブル経営とは

サスティナブル経営とは、「持続可能な企業成長」を目指す経営手法です。もともとサスティナブルという言葉には「持続可能な」の意味があり、将来に渡って経済成長と環境保全を両立させる意味合いで使われてきました。

ビジネスにおけるサスティナブルは「環境・社会・企業統治」の3つの観点に立って提唱されています。自社の成長だけでなく社会全体の理想的な未来を実現するため、企業としてできることを模索する経営手法です。

サスティナブル経営が注目される要因

近年、サスティナブル経営が注目されるようになった背景には、「SDGs」と「CSR」があります。ここでは、それぞれの概要とサスティナブル経営との関係性を解説します。

SDGs

SDGs(=Sustainable Development Goals)は、日本語で「持続可能な開発目標」とも呼びます。2030年までに達成すべき目標として、下記17のゴールを設定する考え方のことです。

1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう

SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されて以降、世界から大きな注目を集めました。達成するには、国や個人だけでなく企業による自発的な取り組みが欠かせません。また、企業活動の持続可能性を高め、長期化させる効果的な施策として、SDGsの観点を取り入れるケースが増えています。

CSR

CSR(=Corporate Social Responsibility)とは、「企業の社会的責任」を意味します。企業が社会・顧客・取引先・金融機関・株主など、さまざまなステークホルダーに対して責任を負っていることを示した言葉です。

自社の成長だけでなく、理想的な社会の実現に向けた「サスティナブル」を体現する言葉といえます。具体的には、下記のような取り組みが挙げられます。

・自然環境に配慮した製品の開発
・コンプライアンスを遵守した経済活動
・地域の商店街と連携した地産地消の促進
・子どもたちが参加する交通安全プロジェクトへの参画
・多様な人材の育成および登用と教育のサポート
・限りある水や資源を後世に引き継ぐための植林活動

CSRは環境保存に関するテーマだけを扱うものではありません。SDGsと同じく、社会基盤の構築や不正・格差・戦争・事故などを防ぐための取り組みでもあります。

CSRの考え方に着目することが、サスティナブル経営に取り組む企業の価値を高めてくれるのです。

サスティナブル経営の実践により期待できる効果

サスティナブル経営は、コストや人手などの初期投資が必要になるケースが多いです。とはいえ、結果的に生産性の向上やコストの削減など、企業の利益につながる経営手法です。

ここでは、サスティナブル経営の実践により期待できる効果を解説します。

人材確保・新たな機会創出につながる

サスティナブル経営を実践することで、優秀な人材を確保しやすくなります。

学校でSDGsを学んできたZ世代は、業績や成長可能性だけでなく、社会に果たす役割も含めて就職先を選ぶようになっています。自社の企業理念や社会貢献活動をPRすることで、「所属する意義のある会社」と興味を持ってもらいやすくなるでしょう。

また、サスティナブル経営は長期的に安定するイメージを与えることができ、自社のロイヤリティ向上にも寄与します。自社のパーパス(存在意義)を発信すれば、新たなビジネスパートナーを獲得する機会にも出会えるかもしれません。

企業価値の向上を見込める

サスティナブル経営に取り組んでいる企業は、社会的な役割や責任を自ら果たそうとしている企業として評価されます。エシカル消費に積極的な消費者や、同じくサスティナブルに興味のある取引先からの評価が上がり、社会全体からの信頼度が高まるでしょう。

結果的に自社収益が向上すれば、金融機関・株主からの評価も上がります。「胸を張って人に紹介できる会社」であることが、今の時代の企業価値向上には欠かせない視点になりつつあるといえるでしょう。

コスト削減・リスク低減を実現できる

サスティナブル経営を実現する策として、自然エネルギー・天然資源・新しいテクノロジーを搭載した機材の活用があります。エネルギー効率の良い資源を安価かつ安定的に入手できれば、製造や運送などをローコストに抑えることができるでしょう。コスト削減およびリスク軽減に役立ちます。

また、業務効率改善に寄与するITテクノロジーを活用すれば、人材活用にも効果が現れ、自社の従業員の教育・育成・採用に更なるコストを投下できるようになるのです。天災・感染症の流行に備えたリスク対策としても効果的です。

サスティナブル経営を実現するための4つの手順

サスティナブル経営を実現するには、下記4つの手順をもとにプロジェクトを進行するのが近道です。

1.企業の現状を把握する

まずは、自社の現状・課題を把握するところから始めます。すべての社会的な課題を一度に解消するのは、容易ではありません。自社と親和性の高い課題や、実現により収益向上が期待できるテーマから着手するのが第一歩です。

サスティナブル経営に乗り出そうと考えた理由を深掘りしていけば、自ずと課題は見えてきます。その後、中長期的な視点でどのような社会を作りたいかまで掘り下げて考え、目的を可視化していきましょう。

2.パーパス・目標を設定する

次に、自社のパーパス(存在意義)を設定して目標を可視化します。パーパス(存在意義)はその名の通り、「自社が何のために存在するか」を表す言葉です。「利益のためではなく、社会のために何をしているか」を言語化します。

サスティナブル経営を進める前にパーパスを設定しておけば、パーパスマネジメント(個人と組織においてパーパスを体現すること)が可能になり、従業員の意識を統一できます。

また、サスティナブル経営が形骸化するのを防ぐ効果もあるので、まずは大きな目標づくりから始めるイメージで着手しましょう。

3.計画を立てて実行する

最終目標を数値として決めて、バックキャスティングで中間目標を設定します。バックキャスティングとは「最終目標から逆算して作成するシナリオ」であり、まずやるべきことを可視化したいときに便利です。

今年中に達成すべきこと、3年後に達成すべきこと、と細分化していくことでPDCAサイクルを回しやすくなり、効果検証と改善を繰り返せることも利点です。計画が決まったら従業員に周知し、実際の行動を進めましょう。

4.行動したことを発信する

行動したことは成否に関わらず広く発信し、サスティナブル経営の視点を広めていくことも重要です。自社HP・オウンドメディア・SNS・プレスリリース・製品発表会・株主総会など、アピールできる場は意外と多くあります。

達成できたことはもちろん、達成できなかったことや結果に至るまでのプロセスとストーリー、また取引先や顧客の関係性に現れた変化もアピールに含めます。幅広く発信していくことで、企業イメージの向上を目指すことができるのです。

また、現場の従業員へのインタビューを社内報に掲載するなど、社内向けの発信も大切です。サスティナブル経営に対するモチベーションを上げていくためには、インナーコミュニケーションにも目を向けましょう。

サスティナブル経営の企業事例

最後に、サスティナブル経営の成功事例を解説します。自社にも役立つ視点がないか参考にしながら、多彩なサスティナブル経営があることを理解していきましょう。

株式会社LIFULL

株式会社LIFULLでは、自社独自のサステイナビリティ課題を定めています。

・あらゆる住み替えの選択の自由と利便性の向上
・住宅弱者の解消
・空き家、遊休不動産などの新たな利活用促進
・関係人口の拡大
・投融資促進のための新たな仕組みの創設
・老後のお金・健康の不安の解消
・老後の介護の不安の解消
・社会課題を解決するリーダーの輩出
・DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の推進
・社員のWell-being

各課題に中期ターゲットを定め、具体的に施策を進めているのが特徴です。

例として、「投融資促進のための新たな仕組みの創設」に関する中期ターゲットでは、新たな不動産金融商品や取引プラットフォームの開発を進めています。投資機会を増やし、利用者の裾野を広げることで投融資総額の拡大ひいては地方創生に貢献する仕組みです。

不動産情報サービス事業や地域情報サービス事業に強いLIFULLならではの課題意識があることが伝わります。

コニカミノルタ株式会社

コニカミノルタ株式会社は、「コニカミノルタグループ行動憲章」を基にサステイナビリティ活動を推進しています。

2020年には、今後想定される社会・環境課題を分析のもと、サスティナブル経営の重要課題として以下の5つを定めました。

・働きがい向上および企業活性化
・健康で高い生活の質の実現
・社会における安全・安心確保
・気候変動への対応
・有限な資源の有効活用

それぞれの重要課題において、2030年時点で目指す姿を定めているのが特徴です。例えば、「社会における安全・安心確保」に関して、顧客や社会の暮らしにおける安全性を高めつつ、自社製品・サービスのリスクを最小化することを目指しています。

ブルーボトルコーヒー

ブルーボトルコーヒーでは「デリシャスネス・ホスピタリティ・サステイナビリティ」を営業の軸にしています。創業以来ミッションとして掲げているのが、「おいしいコーヒーをより多くの人に届ける」です。

コーヒー豆の農園で働く生産者に適正な対価を支払い、安定した品質の素材を良いサイクルで市場に提供する工夫を凝らしました。また、土のなかで分解可能なエコカップを推奨したり、ゴミをなくすゼロウエイト活動を始めたり、環境保存に積極的であることも有名です。

まとめ

SDGsやCSRを背景にサスティナブル経営のニーズが高まっており、今では業種・職種・地域を限定せずさまざまな企業がサスティナブル経営に乗り出すようになりました。

今回紹介したメリットや事例を参考に、自社ならではの課題意識を持つところから始めましょう。