自社が持つ人材を最大限活用するにはナレッジマネジメントの考え方が欠かせません。属人化を解消して従業員のレベルを底上げしたいときや、新入社員などへの教育コストを削減したいときには、特に最適とされています。

今回はナレッジマネジメントの考え方について解説します。ナレッジマネジメントにおける4つの考え方や導入時のメリットも紹介するので、ぜひご参考ください。

ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメントとは、自社の従業員が持つ経験・知識・ノウハウなどのナレッジ(=知見)を組織全体で一元管理しながら共有する方法です。

組織内に「知識の書庫」を置くようなイメージに近く、幅広い内容を蓄積できます。蓄積する内容は、ITツールの使い方などマニュアルのような側面が強い内容から、個人の能力によって左右されるプレゼンテーションやコンサルティングのコツまで広範囲です。

「形式知」と呼ばれる可視化しやすい知識から「暗黙知」と呼ばれる個人の知識やセンス、勘に基づくものまで、幅広く集約することを目的としています。

ナレッジマネジメントを取り入れるメリット

ここではナレッジマネジメントを取り入れることで企業が得られるメリットを解説します。

上司による一方的な指導ではなく、なぜあえてナレッジを共有する必要があるのか、根本的な理由を探っていきましょう。

業務効率化や生産性向上が期待できる

ナレッジマネジメントに成功すると、業務効率化や生産性の向上が見込めます。例えば、誰でもノウハウを投稿できる社内wikiや社内FAQを設置した場合、「わからないことがあったらまず検索してみよう」と考えやすくなります。

自分で情報を探し出す力が身につくため、業務上のミスやクレームを防ぐことにもつながるのです。その分時間を有効活用できるようになり組織としての生産性が上がります。

情報共有がスムーズになる

従業員単位ではなく部署単位での情報共有がしやすくなるのもナレッジマネジメントのメリットです。顧客から吸い上げたリアルな声を経営層やマーケティング部門に共有すれば、ソリューションを見直すきっかけにもなります。

例えば、営業部門から得た顧客データを広告戦略に活かせば、利益の最大化が期待できます。また、社内相談窓口に寄せられている悩みを人事戦略に反映することで、社員にとって働きやすい環境を整備することが可能です。

企業の組織力を高められる

ナレッジをスムーズに共有することで、組織力も高まります。業務ノウハウを適切に共有できていれば、「あの人がいないと仕事が回らない」という属人化から脱却できます。

「社長がいないと誰も会社を舵取りできない」など、次世代リーダーの育成における悩みも解消されるかもしれません。

また、部署異動に伴う担当者の変更が必要なときでも、ナレッジが共有できていれば引き継ぎもスムーズに行われ、即座に業務へ取りかかれるのもメリットのひとつです。

人材育成に役立つ

ナレッジマネジメントを根付かせることで、人材育成にかかる時間やコストを最小限に抑えられます。

仕事の手順や業務で使用するツールをあらかじめ社内で共有することにより、新しく入社した人でもすぐに仕事を覚えることができ、効率良く育成することが可能です。

また、個人の経験や勘に基づく「暗黙知」も、わかりやすく言語化しておくことで、どのような人でも再現しやすくなり、スキルアップにもつながります。

4種類のナレッジマネジメント

ナレッジマネジメントは、さらに4種類に細分化できます。自社の規模や情報共有の目的に応じて、適切な方法でナレッジマネジメントを実施することが成功のコツです。

ここでは4種類のナレッジマネジメントの特徴について解説します。

ベストプラクティス共有型

ベストプラクティス共有型とは、優秀な従業員がやっている仕事の進め方や過去の成功事例などをマニュアル形式で共有する方法です。

個人のナレッジを集約するのが目的であり、優秀な成績を収めている従業員などが共有源となります。

ただし、業績に応じた個人へのインセンティブが大きい企業では、「あえてノウハウを他人に知らせたくない」という心理が働くケースも多いです。ノウハウを共有すること自体にインセンティブをもたせるなど、メリットを作って運用することが大切です。

専門知ネット型

専門知ネット型は、社内の専門的な知識をデータベース化し、幅広く閲覧できるようにする方法です。部署単位で使うことが多く、それぞれの職種ならではの専門的な内容を共有したいときに役立ちます。

知的資本型

知識資本型は、自社内に蓄積された膨大なデータを経営の意思決定に役立てる方法です。データマイニングやデータウェアハウスなどの専用ツールを用いることもあれば、市場の動向を膨大に集めてビッグデータ分析することもあります。

顧客知共有型

顧客知共有型は、顧客や取引先からの問い合わせ内容をデータベース化して共有する方法です。顧客アンケートの回答やクレームの内容、過去の応対履歴、店舗で直接いただいた声などを集約し、マーケティングや営業活動に活用します。

すべての従業員が閲覧できるため、普段顧客とやり取りする機会がなく、自社への帰属意識が薄い従業員のエンゲージメント向上にもおすすめです。

ナレッジマネジメントの導入方法

ナレッジマネジメントを導入するときは、下記のステップで進めましょう。

1.ナレッジマネジメントを行う目的を設定する
2.可視化・共有したい情報を選定する
3.業務フローへ情報共有の仕組みを追加する
4.結果の分析と修正をする(PDCAを回す)

1.ナレッジマネジメントをする目的を設定する

ナレッジマネジメントでどのような課題を解決していくべきか、目的意識を明確にすることが大切です。目的を明確に設定していないと従業員にその重要性が伝わらず、運用が形骸化してしまうおそれがあります。

ナレッジマネジメントの導入によって、「ある課題に対し、どんな効果が得られるのか」を具体的に言語化することで、従業員も納得しやすくなり協力体制を構築することができます。

2.可視化・共有したい情報を選定する

目的が決まったら可視化・共有したい情報をあらかじめ選定します。現場でどのような情報が必要とされているのか、従業員の意見を集めます

また、共有したい情報をどのような形で可視化するかも検討しておくことも大切です。

3.業務フローへ情報共有の仕組みを追加する

共有したい情報が整理できれば、実際の業務フローに対して情報共有の仕組みを導入します。各部署でスムーズに情報が閲覧できるよう、社員にとって使いやすいシステムを取り入れるようにしましょう。

4.結果の分析と修正(PDCAを回す)

ナレッジマネジメントを実行した後は、PDCAサイクルを回すことが大事です。情報が活用されていない場合は、システムの利便性に問題はないか、情報が見づらくないか原因を見極めたうえで改善策を見出していきます。

ある程度効果が発揮されていれば、収集する情報の幅を広げるなど拡大し、全社的な取り組みに切り替えていきましょう。

まとめ

ナレッジマネジメントは、業務効率化・生産性向上・属人化からの脱却・従業員個人のスキルアップなどさまざまなメリットがある手法です。組織全体の底力が高くなりやすく、時には経営の意思決定を後押しするナレッジを蓄積することもできます。

自社にどのようなナレッジが足りていないかを検証しながら範囲を絞りましょう。効果が出たらほかの範囲にも拡大し、集合知としていくのがおすすめです。