「現在タイムカードによる勤怠管理を行っているが、最近よく聞く勤怠管理システムへ移行すべきなのではないかと迷っている」という企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
タイムカードによる打刻は、非常に簡単かつ、打刻機器と用紙があればすぐに開始できることから、今も多くの職場で利用されています。
しかし、働き方改革による時間外労働(残業)の上限規制対策が後手になることや、リモートワーク(テレワーク)等の多様な働き方に対応できないことなど、タイムカード打刻の問題点が注目され始め、勤怠管理システムへ移行する企業も増えてきています。
とはいえ、打刻方法の変更は会社全体を巻き込んだ大がかりな作業になるため、「今すぐ自社でも導入すべきなのか」が分からず、判断に踏み切れない企業も多いでしょう。
そこで本記事では、タイムカードと勤怠管理システムによる打刻を比較し、それぞれのメリット・デメリットを解説していきます。
勤怠管理システムへ移行(電子化)するべき企業・そうでない企業が分かるので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
タイムカード打刻の問題点と、勤怠管理システムで解決できる課題
まずは、タイムカード打刻にはどのような問題があるのかを、改めて確認していきましょう。
- 不正行為を行いやすい
- 打刻漏れが発生しやすい
- 集計に手間がかかる
- 保管に手間がかかる
- 月の途中での労働管理が難しい
-
リモートワーク(テレワーク)等に対応できない
また同時に、勤怠管理システムを利用するとこれらの課題をどのように解決できるのか、といった点も解説していきます。
問題点1.不正行為を行いやすい
タイムカード打刻は、労働者・事業主ともに不正行為への不安がつきものです。紙のタイムカードは修正が容易にできるため、労働者からすると改ざんの不安があります。
また、事業主側から見ても、労働者が他の労働者のタイムカードを代わりに打刻したり、わざと打刻を遅らせたりといった不正行為に対する不安があります。
一方で勤怠管理システムを利用すると、以下のような打刻方法を利用できるため、不正をしづらいというメリットがあります。
- 各社員のICカードやスマートフォンによる打刻(GPSを利用することもある)
- 指紋や静脈を使用した生体認証による打刻
問題点2.打刻漏れが発生しやすい
労働時間の集計を行う際に、よくあるのが打刻漏れです。特に休憩開始や休憩終了時刻が打刻されていない場合が多いです。
打刻漏れがあったとしても、勝手に時刻を推測して修正してはいけないため、本人やその日職場にいた周りの方に聞いて確認しなければいけません。すると担当者や管理者の仕事が増えてしまい、集計に時間がかかってしまいます。
問題点3.集計に手間がかかる
タイムカードに記録されるのは原則、日にち・曜日・始業時刻・終業時刻・休憩開始時刻・休憩終了時刻です。
ただ労働時間を合計するだけでなく、割増賃金の支払いが必要な時間外労働(残業)や深夜労働の時間も把握する必要があるため、間違いのないように集計しなければいけません。前述の打刻漏れへの対応も必要なので、タイムカードでの勤怠管理は、集計に非常に手間がかかります。
しかし勤怠管理システムを利用すると、集計は基本的に1~2クリックで行えるため、業務時間を大幅に削減することができます。
問題点4.保管に手間がかかる
タイムカードは、表面が月の前半、裏面が月の後半用となっており、労働者1名につき1カ月で1枚使用するパターンがほとんどです。労働者が10名いる職場では1年で10名×12枚となり、保存期間である5年間分となると600枚になります(現在の保存期間は経過措置により当分の間3年間とされています)。
厚紙のタイムカード600枚の保管はもちろん場所も取りますし、後から見返す必要があるときに探すのも一苦労でしょう。
勤怠管理システムであれば、情報は全てシステムの中に保管されているので、管理が簡単ですし、後から必要な情報にアクセスしやすいというメリットもあります。
問題点5.月の途中での労働時間管理が難しい
タイムカードの場合、勤怠情報が自動集計されないので、月の残業上限を超えていたと後から気づくことも考えられます。月の途中での労働時間を把握するには集計作業をしなければならず、やはり手間がかかります。
※36協定の締結・届出をしたとしても、月の残業時間の上限は月45時間・年間360時間と定められています。
勤怠管理システムを利用すると、現時点での労働時間の集計結果を見える化し、リアルタイムで分析や管理が行えます。さらに、「残業時間が一定の数値を超えている」という場合にアラートを出し、事前に働き過ぎを察知する、といったことも可能です。
問題点6.リモートワーク(テレワーク)等に対応できない
タイムカードは物理的な打刻となるので、リモートワークや在宅勤務に対応できません。そのため、リモートワーク等の対象者についてはタイムカード以外の方法で勤務状況を把握する必要があります。
メールやチャットツールで出退勤時刻等を報告する会社もありますが、この方法では担当者や管理者がタイムカードと連絡ツールの双方を確認して労働時間の集計を行うことになり、作業工数が増えます。
勤怠管理システムであれば、リモートワークに対応している製品も多く存在します。パソコンやスマートフォンから自分のシステムアカウントにログインし、出勤ボタン/退勤ボタンを押すだけで、打刻できます。SlackやChatwork(チャットワーク)などのチャットツールを利用して打刻できるシステムもあるので、自社の働き方に適したものを選んでみてください。
打刻例 |
詳細 |
---|---|
ICカードによる打刻 |
社員証や交通系ICカードを用いて打刻できる |
Webブラウザからの打刻 |
パソコンやスマートフォンから打刻ができる |
チャットツールとの連携による打刻 |
職場で利用している「Slack」や「LINE」などのチャットツールを使って打刻ができる |
パソコン起動時間の把握による打刻 |
パソコンの起動時間(ログ)を収集して勤怠情報を記録する |
タイムカードから勤怠管理システムに移行するメリット・デメリットまとめ
以上を踏まえて、勤怠管理システムを利用するメリットをまとめました。
メリット
- 労働時間の集計に関わる人的・時間的コストを削減できる
- 保管コストを削減できる
- リモートワークに対応できる
ただし、当然メリットだけではなく、以下のようなデメリットが生じることも理解しておかなくてはいけません。
デメリット
- システム利用に費用が発生する
- 操作や管理方法の変更を周知させる必要がある
- インターネット回線が必要
自社ではメリット・デメリットのどちらが大きいかを考え、本当に勤怠管理システムを導入するべきかどうかを判断する際の参考にしてみてください。
勤怠管理システムには無料の試用期間が設定されているものも多いので、まずは気になるシステムを試してみて、従業員や担当者が使いこなせそうかを確認してみるのもおすすめです。
タイムカードから勤怠管理システムへ移行する費用・手順を確認
タイムカードから勤怠管理システムへ移行するには、導入コストがかかることをお伝えしました。ここでは目安として、どのくらいの費用が発生するのか、どんな手順で移行を行うのかを確認してみましょう。
まず、費用は導入する勤怠管理システムによって異なります。あくまで目安ではありますが、一般的には以下の費用感を想定しておくと良いでしょう。
初期費用 |
0円~15万円程度 |
---|---|
月額費用 |
300円/人程度~ |
主な機能 |
勤怠情報の記録 ※製品によって大きく異なります |
システムの導入や、打刻機器の購入に初期費用がかかる場合が多いです。また、一般的には利用人数によって月額料金が発生します。
当然、機能が豊富であればその分費用は高くなります。初めてシステムを導入する際は、まずはシンプルで料金の安いものから試してみることもおすすめです。
ただし、「今後規模が大きくなる可能性がある」「テレワークなどの多様な働き方を導入する可能性がある」といった場合は、料金よりも機能や拡張性などを重視する方が良いケースもあります。一度導入したシステムをリプレース(変更)する際には大変な手間がかかるため、長期的な目線で製品を選ぶのがおすすめです。価格帯が異なる複数社に話を聞くなどして、慎重に検討しましょう。
なお、勤怠管理システムを導入する際は、次のようなステップを踏みます。
勤怠管理システムを導入するステップ
- 現在の労働時間の把握・集計にかかる作業時間を把握する
- 電子化にかけられる予算を考える
- システムに必要な機能を考え、それをもとに製品を選定する
- (可能であれば)トライアルで使ってみる
- 導入する製品が決定したら、従業員へ周知し使い方の説明などを行う
- 導入を開始する
全ての企業が、タイムカードを勤怠管理システムへ変更しなければいけないとは限らない
ここまで見てきたように、勤怠管理システムへの移行にはメリットだけではなくデメリットも存在します。また、導入に費用や工数がかかるため、「全ての会社が電子化すべき」というわけではありません。
基本的には、「タイムカードで勤怠管理が十分効率的に行えている」という企業は、今すぐ移行を検討しなくても良い場合が多いでしょう。例えば以下のような場合です。
- 従業員の入退社(入れ替わり)が多い
- 残業や深夜労働がほぼ発生しない
- 打刻漏れが少ない
- リモートワークをしていない
- 職場にインターネット回線が用意されていない
従業員数が少なかったり、残業がないアルバイト従業員のみだったりする職場では、勤怠管理システムを導入すると逆に作業が増えてしまう可能性があります。従業員の入退社が多いと、勤怠管理システム上での情報登録作業が負担となることもあります。
タイムカード打刻の強みは、なんといっても「打刻方法が簡単」であることと「インターネット環境不要」という2点です。この強みと労働時間の集計作業の手間を天秤にかけ、電子化を判断すると良いでしょう。
タイムカードを勤怠管理システムへ移行した方が良い企業
以下のような企業であれば、タイムカードを勤怠管理システムへ移行するのがおすすめです。
- 労働時間の集計に関する人的コストや時間的コストが負担になっている
- 労働時間の集計作業が属人化している
タイムカード打刻で一番の課題は、やはり労働時間の集計作業にかかるコストでしょう。また、担当者しか作業工程を知らない状態だと、担当者の退職や異動時に対応できず、給与計算が通常に比べ遅れてしまうリスクもあります。
上記事項について思い当たる会社は、勤怠管理システムへ移行することで、業務効率を大幅に改善できる可能性があります。
なお、自社に最適な勤怠管理システムを選ぶ際は、以下のような点をもとに比較検討するのがおすすめです。
- 管理・効率化したいのは勤怠管理のみなのか、それともバックオフィス業務全般を一元管理したいのか
- 現在の勤怠管理にどのような課題があるのか
- 自社独自の働き方やルールに対応できるシステムか
- 法改正などがあった際に対応できるシステムか
- 今後の企業規模の拡大などを見据えた際に、対応できるシステムか
詳細は、以下の記事をご覧ください。
タイムカードからシステムに移行する際は、ICカード打刻を利用するのがおすすめ
前述の通り、勤怠管理システムにはさまざまな打刻方法があります。「タイムカードから初めて勤怠管理システムへ移行する」という場合は、数ある打刻方法の中でも、まずはICカード打刻を利用するのがおすすめです。
ICカード打刻とは、例えば自社の社員証や交通系ICカードを、専用の機器にかざすだけで打刻ができるシステムです。ICカード内の従業員情報を読み込み、勤怠情報を記録することができます。
「タイムカードを差し込む」という方法から「カードをかざす」という方法に変わるだけなので、従業員の抵抗は少なく、またシステムに詳しくない方でも簡単に利用できます。
そのため、初めて勤怠管理システムを利用する企業におすすめの打刻方法です。
項目 |
ICカード |
タイムカード |
---|---|---|
打刻方法 |
ICカードを専用機器やICカード読み取り機にかざす |
タイムカードを打刻機器に差し込む |
使える種類 |
交通系ICカード、社員証、おサイフケータイ、ICカード型電子マネーなど |
専用のタイムカード |
労働時間の集計 |
自動集計される |
別途エクセルなどでの集計作業が必要 |
リモートワーク対応 |
ICカード読み取り機を個人に貸与するなどで可能 |
不可 |
ランニングコスト |
不要なものもある |
タイムカード代 |
ICカード打刻に対応しているシステム・していないシステムがあるので、導入する際は打刻方法を確認してみてください。
ICカード打刻を導入する際は、システム選定に注意が必要
ICカード打刻を導入する際は、ICカードの規格や種類によって、選ぶべきシステムが異なる場合があるので注意が必要です。
次の順序で自社に必要なシステムの要件を考えてみましょう。
- 社員の保有率が高いICカードを調査する
- 打刻に使うICカードを決定する
- そのICカードに対応した打刻専用機器(もしくはソフトウェア)を購入する
まずICカードの規格は「FeliCa(フェリカ)」と「Mifare(マイフェア)」の2つに分けられるので、社員の保有率が高いのはどちらかを調査しましょう。
規格 |
例 |
---|---|
FeliCa |
|
Mifare |
|
その後、保有率が高いICカードに対応した機器・ソフトウェアを選んでいきます。
なお、使用するICカードは必ずしも1種類に限定する必要はありません。FeliCa対応であれば交通系ICカードやおサイフケータイなど複数の種類を利用できるため、どちらの規格を採用するかを中心に考えていくと良いでしょう。
ICカード打刻に個人の所有物(交通系ICカードやタスポなど)を利用する際は、セキュリティ面を重視し、個人情報が流出しないように運用する必要があります。
まとめ|タイムカード打刻のメリット・デメリットを正しく理解して、電子化を検討しよう
タイムカード打刻には、以下のようなデメリットがあります。
- 不正行為を行いやすい
- 打刻漏れが発生しやすい
- 集計に手間がかかる
- 保管に手間がかかる
- 月の途中での労働時間管理が難しい
- リモートワーク等に対応できない
もし現在、これらの課題が原因で、勤怠管理がうまくいっていない(あるいは今後対応できなくなることが予想される)場合は、勤怠管理システムへの移行を考えてみてください。
初めてタイムカードからシステムに移行する際は、ICカード打刻を利用するのがおすすめです。
よくある質問とその回答
よくあるご質問
Q1.タイムカードの電子化にはどんな方法がありますか?
タイムカード打刻を電子化するには、勤怠管理システムを導入する必要があります。システムの利用により、以下のような打刻が行えるようになります。
- 社員証や交通系ICカードなどをかざして行う、ICカード打刻
- パソコンやスマートフォンを使った、ウェブブラウザからの打刻
- 職場で使っているSlackやLINEなどのチャットツールを利用した打刻
- パソコン起動時間の把握による打刻
詳しくは「タイムカード打刻の問題点と、勤怠管理システムで解決できる課題」をご覧ください。
Q2.タイムカードは勤怠管理システムに移行させるべきですか?
必ずしも、勤怠管理システムを利用しなければいけないわけではありません。
確かに勤怠管理システムを利用すると、業務の手間を大幅に削減できる可能性があります。
しかしタイムカード打刻にも、「打刻方法が簡単」「インターネット環境不要」といった強みがあります。さらに、勤怠管理システムを利用するには費用がかかるので、これらの点を天秤にかけ、電子化すべきかどうかを判断すると良いでしょう。
詳細は「全ての企業が、タイムカードを勤怠管理システムへ変更しなければいけないとは限らない」をご覧ください。