勤怠管理システムとは勤怠管理システムとは、出勤・退勤の時刻記録や時間外労働(残業)の集計など労働者の勤怠状況を正しく把握できるシステムです。労働者の勤怠状況を把握するのは事業主の義務ですが、勤怠管理システムを導入することで煩雑な勤怠状況の把握と管理の手間を削減し業務効率化することができます。勤怠管理システムには大きく分けてクラウド(Saas)型とオンプレミス型の2つがあります。クラウド(SaaS)型とは、システム提供会社が用意するネットワークと既存のサービスを利用する形態で比較的安価かつスピーディに利用開始できるため勤怠管理システムの主流となっています。一方、オンプレミス型とは自社にシステムを1から構築し自社サーバーで運用する形態です。自社に合った柔軟なシステムを構築できますが、開発するのにかなりの費用がかかるデメリットがあります。初めて勤怠管理システムを導入する中小企業などは、スピーディーかつコストを抑えて導入できる「クラウド型の勤怠管理システム」の方が要望にフィットする可能性が高いでしょう。勤怠管理システムの機能と解決できる課題勤怠管理システムの標準的な機能一覧出退勤時刻・休憩時間の打刻と記録労働時間(残業時間・休日労働時間・深夜労働時間)の集計給与計算に必要な勤怠情報の出力出勤簿の出力勤怠管理システムには上記のほか、残業や休暇の申請、年次有給休暇の付与、給与計算との連携など、勤怠管理業務をサポートする機能が搭載されているものも多くあります。▼勤怠管理システムの勤務表イメージ紙やエクセル(Excel)ではなく、ネットワーク上で出退勤を記録するため、従業員の勤怠状況をリアルタイムで確認できるようになります。▼勤怠管理に必要な各種情報が「見える化」される勤怠管理システムを用いた打刻方法はさまざまで、ブラウザやアプリ、生体認証を用いて手軽に打刻が可能です。▼打刻のイメージ(13秒~43秒)%3Ciframe%20width%3D%22560%22%20height%3D%22315%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2Fc5m3NQE3UGs%3Fsi%3D7QOEHaq7agDn8_Su%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%3B%20web-share%22%20referrerpolicy%3D%22strict-origin-when-cross-origin%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3Eこれらの機能を使うことで、集計にかかっていた時間の大幅な削減や、残業時間の上限規制や有給休暇取得義務といった法律遵守に繋がります。その他、勤怠管理システムを導入することで解決できる課題には以下の例があります。こうしたメリットがあるため、昨今では勤怠管理システム(勤怠管理ツールや自社システム)を導入する企業が増えてきており、株式会社モニタスの調査では、使用している企業の割合は62.4%にのぼることが分かっています。引用:株式会社モニタス|「人事・労務担当者に聞いた、勤怠管理6割がデジタル化」勤怠管理システムを導入する目的勤怠管理システムを導入する最も大きな目的は、労働法に対応した勤怠管理を効率的かつ正確に行うためです。勤怠管理には、労働基準法や育児・介護休業法など様々な労働法が関わってくる上、これらの法律は毎年のように改正があります。完璧に法改正の対応をするにはかなりの人的コストがかかりますが、勤怠管理システムを使えば勤怠管理に係る各法律についてシステムをアップデートすることで対応できます。また2025年には法改正により、子を養育する従業員について残業免除申請の対象拡大や、始業終業時刻の変更措置等を事業主が講ずることが求められます。働き方のパターンが多様化する一方で、その勤怠管理はますます煩雑になってきます。勤怠管理システムを導入するメリットは今後さらに大きくなってくるでしょう。勤怠管理システムを導入するメリットここからは、勤怠管理システムを導入することでどのようなメリットがあるかを具体的に解説していきます。勤怠管理システムを導入するメリット従業員の労働時間を正確に把握できるリアルタイムで把握できるため法律を遵守できる集計や管理にかかっていたコストを大幅に削減できる給与計算や申請など他の業務も効率化できる不正打刻・隠れ残業・打刻ミスを防止できるリモートワークなどの働き方に対応できる自社で導入した場合の効果をイメージしながら読み進めてください。1.従業員の労働時間を正確に把握できる勤務時間を自己申告するなどの従来型の勤怠管理では、従業員の記憶違いや不正報告により、正確な記録ができない可能性があります。しかし勤怠管理システムでは、パソコンのログオン・オフで自動的に出退勤時間を記録したり、出張先でもスマホから記録したりできるため、より正確な労働時間を記録できます。2.リアルタイムで勤務状況を把握できるため法律を遵守できる勤怠管理システムを使うとリアルタイムに従業員の労働時間や休暇取得状況を確認できるため、法律を遵守できるメリットもあります。特に、把握しづらい残業時間の上限規制や年次有給休暇の取得義務に違反しにくくなります。アラート機能がある勤怠管理システムなら上限が近づいた段階で警告を出すことも可能なので、より法律遵守がしやすくなります。また、法改正に対応しているシステムであれば、バージョンを更新するだけで新しい法令に対応可能です。なお残業時間の上限規制や年次有給休暇の正しいルールについて改めて確認したい場合は、以下記事もあわせてご確認ください。「残業時間の上限規制とは?守るべき法律や超えた時の罰則 | 基礎知識」「有給休暇の法律と罰則とは?違反しないための対策も解説 | 基礎知識」3.集計や管理にかかっていたコストを大幅に削減できる従来のタイムレコーダーを使って紙のタイムカードで打刻するケースと比較してみましょう。このやり方だと、月末に全員分のタイムカードを回収して打刻情報を目視で確認し、エクセルなどに転記し集計する必要があります。しかし、勤怠管理システムなら、毎日従業員本人が記録した勤務時間がリアルタイムで蓄積されていくため、集計作業は一切必要ありません。転記ミスも発生せず、正確な勤務時間を把握できます。製品によっては、グラフなどに勤務情報をまとめることができる「ダッシュボード機能」などもあります。4.給与計算や各種申請・工数管理など他の業務も効率化できる勤怠管理システムには、給与計算ソフトなどへの連携機能や残業・有休申請機能もあるため、他の業務も効率化できるメリットがあります。勤怠管理システムで自動集計された勤務時間情報は、CSVデータとして出力することが可能です。そのデータを給与計算ソフトに読み込ませれば、ソフトに情報を転記する手間を削減できます。またシステムの連携機能によっては、ボタン1つで集計された勤怠情報が給与計算システムに取り込まれるものもあります。その他、人事労務システムや人事評価システムと連携して従業員情報を共有し雇用保険や社会保険の電子申請手続きができたり、労働保険料の年度更新ができたりするシステムもあります。IT業や広告業、開発業といった「プロジェクト型ビジネス」を営む企業であれば、勤怠と工数を一元管理できるシステムを使うことで、締めに行う突合作業を大幅に効率化できるでしょう。給与計算と連携できる勤怠管理システムや、工数管理と紐づけできる勤怠管理システムについての詳細を知りたい場合は、以下の記事もあわせてご確認ください。給与計算と連携できる勤怠管理システム9選|おすすめ比較表つきで紹介工数管理と紐づけできる勤怠管理システム5選【種類別に比較】5.不正打刻・隠れ残業・打刻ミスを防止できる不正打刻を防止するような仕組みがあるシステムを使えば、不正打刻はもちろん、打刻ミスや打刻漏れも防止できます。具体的には、GPSや個人のICカードを利用した打刻、パソコンのログオンログオフ時間を利用する仕組みが不正打刻防止に役立ちます。また、社員の入退館時刻と勤怠時刻の乖離を判定して、隠れ残業をしていないかチェックできる機能もあります。製品によって打刻方法は異なるため自社が利用したいと検討している方法を勤怠管理システムが備えているかという点は必ず確認しておきましょう。6.リモートワーク(テレワーク)などの働き方に対応できる「リモートワーク時の社員の勤怠を管理しづらい」という点がネックとなり、リモートワークを推進できなかった企業も多いでしょう。従来の紙のタイムカードなどでは、オフィスに出社していない社員の勤務時間を正確に把握することは困難です。勤怠管理システムを使えば、リモートワーク中の勤怠状況と操作ログを連携させたり、パソコンのログオン・ログオフ時間を勤務時間として記録したりできます。システムによっては、「リモートワーク中の中抜けを細かく記録する」「勤怠関係の申請・承認をクラウドで行う」といったことができるため、リモートワークをより推進することができます。勤怠管理システムを導入するデメリット続いては、勤怠管理システムを導入するデメリットについても見ていきましょう。勤怠管理システムを導入するデメリット導入コストがかかるシステムを浸透させるまでが大変システム選びを間違えると逆に効率が下がる1.導入コストがかかる勤怠管理システムを導入するにはコストがかかります。クラウド(SaaS)型の場合はシステム使用料として月額料金を払うのが一般的で、導入時に初期費用がかかるものもあります。1人あたり月額数百円から導入できるシンプルなシステムもあれば、機能が充実していて高額なシステムもあります。導入コストはシステムによってまちまちなので、コストに見合った効果を得られるかをしっかり判断しましょう。より詳しくは以下の記事をご覧ください。勤怠管理システムの費用・料金体系|コストだけで選ぶのはNG2.システムを浸透させるまでが大変勤怠管理システムは、新しいシステムに、自社独自の業務フローを設定したり、社内のユーザーに浸透させるまでが大変という課題があります。従業員が新しいシステムを使いこなすために、マニュアルを用意したり説明会を開催したり個別に疑問点に回答したり、という対応も必要となることがあります。システムが問題なく社内に浸透するまでには一定の時間と工数がかかることを念頭に置いておきましょう。本稼働までの作業負担を軽減させたい場合には、各種設定作業のサポートや業務規定・法律改訂のサポート、その他運用上の課題解決サポートなどが手厚い勤怠管理システムを選ぶのがおすすめです。3.システム選びを間違えると逆に効率が下がる勤怠管理システム選びを間違えると、逆に効率が下がる可能性があるため注意しましょう。例えば変形労働時間制やヘルプ勤務などの働き方を導入している企業が、こうした勤務形態に対応していない勤怠管理システムを選んでしまうと、手作業での修正などが必要となります。結果的に担当者の工数が増え、業務効率を下げることになりかねません。また、純粋に勤怠管理だけしたいのか、工数管理や経費精算などバックオフィス業務を一元化して効率化を図りたいのかによっても、選ぶべきシステムは異なります。自社で解決したい課題をしっかり整理した上で、悩みを解消するために最適なシステムを選定できるかどうかが重要となります。自社に合った勤怠管理システムの選び方勤怠管理システムを選ぶ際は、まず今まで使用していたシステムやエクセルを使う上で大変だったこと、時間がかかっていたことをできる限り細かく洗い出していきましょう。洗い出した課題を踏まえて、勤怠管理システムに求める機能を挙げていきます。それぞれに優先順位も付けていきましょう。システムを比較検討する際は、主に次の5つのポイントをチェックすることで自社に合ったものが選べます。選び方のポイントチェックする内容自社に合った打刻方法が用意されているかリモートワークが多い企業なら「ログオンログオフ打刻」、直行直帰が多い企業なら「GPS打刻」など、社員の働き方に合った打刻方法が用意されているかどこまでの機能を求めるかシンプルな勤怠打刻と集計・出力機能のものがよいか、休暇管理・シフト管理・人事管理・工数管理など様々な機能を備えたシステムがよいか既存システムと連携できるか使用している給与計算ソフトと連携できるか。また、既に導入しているシステムと連携できるかどうか導入サポートが充実しているか勤怠管理システムは導入してからの設定に苦労することが多いため、担当者がしっかりと導入支援を行ってくれるかどうか本当に現在の課題を解決できるか洗い出した課題を解決できる機能があるか、自社独自の自社独自のルールや働き方に合った設定ができるか勤怠管理システムの選び方をより詳しく解説した記事もあります。よくある失敗例や、細かな機能の違いについて知りたい場合は、こちらの記事をご覧ください。勤怠管理システムの選び方|種類や機能も徹底解説また以下の記事ではおすすめの勤怠管理システムをタイプ別に比較して紹介しています。最新のおすすめ製品を比較したい場合は、こちらもあわせてご確認ください。【2025年】勤怠管理システム比較15選|料金や機能で選べる比較表つき勤怠管理システムの導入手順勤怠管理システムの導入は、以下の手順で行います。手順想定される期間1自社の抱える勤怠管理業務の課題を洗い出す2週間~2「自社に合った勤怠管理システムの選び方」を参考に、勤怠管理システムを複数ピックアップする1週間~3各製品のベンダーに「自社の課題を解決できるか」を相談し、費用を確認する2週間~4製品デモなどでシステムの実際の使用感を確認し、自社に合った調整をする1カ月~5自社にシステムを導入する1週間~6従業員に周知し、システム操作やルールの研修を行う1週間~7勤怠管理システムを本稼働し、勤怠管理を始める-導入後もルールを適宜見直したり従業員の使用状況を確認するなど、PDCAを回しながら効率の良い勤怠管理を目指すことが大切です。結局、勤怠管理システムは導入するべきなのか?課題をチェックして判断しよう勤怠管理システム導入のメリット・デメリットや導入手順を見ても迷われている方へ、勤怠管理を行ううえでよくある課題を下記に挙げました。こんな課題はありませんか?タイムカードや出勤簿の修正が毎月複数発生している勤怠管理や集計のために残業が発生している勤怠管理業務が属人化している有給取得率や残業時間に偏りがある法改正に対応できているか不安がある複数該当する場合は、導入のメリットがデメリットを上回る可能性が高くなります。ぜひ勤怠管理システムの導入を前向きに検討してみてください。勤怠管理システムを導入し、課題を解決した企業の事例勤怠管理システムを導入したことで、抱えていた課題の解決に至った事例を2つ紹介します。事例1:締め作業を大幅に短縮し、働き方の「見える化」も実現|株式会社ジェイエスピー業種IT・システム開発業システム導入前の課題・エクセルで勤怠管理をしていたため、従業員の勤怠をリアルタイムで把握できていなかった・入力ミスや集計の難しさによって、勤怠管理の締め作業に非常に時間がかかっていたシステム導入後の成果・勤怠入力と集計業務が自動化したことで大幅な業務効率化となり、7営業日かかっていた締め作業が3営業日で完了するようになった・時間単位休、特別休暇、リモートワーク等を積極的に推進できるようになったソフトウェア開発を手掛ける株式会社ジェイエスピーでは、多様な働き方の推進や健康経営を掲げ、エクセルの勤務表で出退勤の時間や工数、有給休暇等の情報を管理していました。しかしエクセルでの勤怠管理では「労働時間をリアルタイムで把握できない」「締め作業に7日ほどかかる」「入力ミスが多い」といった課題があり、思ったように健康経営を推進できていない現状がありました。働き方関連法への対応が必要となったことをきっかけとして、同社は勤怠管理にシステムの導入を検討。勤怠と工数を同時に記録できることや、多数の勤務体系を管理できることを条件に製品を選びました。システムの導入後は、集計作業が自動化されたことで業務効率化が進み、7日かかっていた勤怠の締め作業が、全データのチェックや交通費精算も含めて3営業日以内に完了させられるようになりました。その他、レポート機能やダッシュボード機能を活用することで社員の働き方を可視化できるようになり、健康経営のための新たな取り組みに着手できるようになったといいます。「健康経営」を掲げ、勤怠管理業務の効率化と働き方の「見える化」を実現。時間単位の年次有給休暇や新たな特別休暇などの新制度も無理なく導入。事例2:集計作業が自動化されたことで、勤怠の月締め作業が大幅に効率化|日鉄ソリューションズビズテック株式会社業種IT・インターネット、システム開発業システム導入前の課題・勤怠管理のほとんどが手作業で、時間と手間がかかっていた・自社開発の勤怠管理システムを使っており、法改正があるたびに対応に悩んでいた・在宅勤務中でも申請書類に印鑑を押すために出社するなど、非効率な作業が残っていたシステム導入後の成果・集計作業が自動化したことで、勤怠の月締め作業が大幅に効率化された・残業時間の見込みが自動計算され、先手の労務管理ができるようになった・ペーパーレスで承認や申請ができるようになったことで、在宅勤務への移行がスムーズに進んだ日鉄ソリューションズビズテック株式会社(旧:テックスエンジソリューションズ株式会社)は、日本製鉄グループ内のSI企業として、幅広い業界のシステム開発を手がける企業です。同社は元々、自社で構築したオンプレミスシステムで経費や勤怠を管理していました。しかし外部端末からアクセスできない点や、多くの手作業が残っている点が大きな課題でした。特に大変だったのは、長時間労働対策のために行っていた「残業見込み時間のレポート作成」です。集計や計算が手作業だったうえ、勤務状況をリアルタイムで周知することができておらず、手間に見合った効果を発揮できていませんでした。その後法改正によって「時間外労働時間の上限規制」等の労務管理が求められるようになり、同社は「法改正に対応したクラウド型勤怠管理システム」の導入を決定します。勤怠管理システムによって、時間外労働の上限規制を超える前にアラートが通知させられるようになり、労働時間に関する社員の意識が大きく変わりました。また課題だった「残業見込み時間のレポート作成」も自動計算されるようになり、これまで月次で出していたレポートが週次で出せるようになり、先手の労務管理ができるようになりました。最新の法令・制度に対応できることが導入の決め手。「労働時間管理」を超え、働き方を「セルフマネジメント」できる環境へ。まとめ|自社に合った勤怠管理システムを導入しよう勤怠管理システムとは、出退勤時に打刻することで労働者の勤務状況を記録し、集計・出力できるシステムをいいます。自社に合った勤怠管理システムを導入することで、正しい勤怠管理を行えるだけでなく、コスト削減や法律遵守、業務効率化などさまざまな効果を期待できます。費用対効果の高いものなので、ぜひ導入を前向きに検討してみることをおすすめします。勤怠管理システムの選び方や機能、導入事例などを詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。