勤怠管理のやり方|始め方や使用ツール・他社はどうしているのか?
著者:チームスピリット編集部
勤怠管理(きんたいかんり)とは、従業員の出退勤時刻を記録して、企業が従業員の勤務状況(勤務時間・休憩時間・残業時間・休日)を管理することを指します。
小規模な企業などでは、他の業務で手一杯で勤怠管理まで手が回っていないケースもあるかもしれません。
しかし、2019年4月施行の法改正により、勤怠管理は法律に則った形で適切に実施することが求められるようになっています。
本記事では、「勤怠管理とは何か」「適切に行うにはどうしたら良いか」を理解するため、以下の流れで解説していきます。
- 勤怠管理とは何か?なぜやらなければならないのか
- 適切な勤怠管理をすることで、どのようなメリットがあるのか
- 勤怠管理をするにはどんな方法があり、その中で最善の方法はどれか
- 勤怠管理を正しく行ううえでの注意点とは
「他の企業はどのように勤怠管理を行っているのか」という観点から、より正確かつ手間をかけずに勤怠管理を行う方法を紹介します。
適切に勤怠管理をしたいと考えている企業担当者は、ぜひ参考にしてください。
勤怠管理の基本を改めてチェックしてみませんか?
- 勤怠管理の基本的なルールの理解や実務の知識が乏しく、不安がある
- 勤怠管理の目的など基本的なことを知りたい
- 勤怠管理を適切に実行する上で、自社の課題も把握しておきたい
このような人事労務担当者に向けて、「ゼロから始める勤怠管理」の資料を無料で配布しています。
人事労務担当者なら知っておきたい、適切な勤怠管理の必要性や労働時間の基本ルールについて解説していますので、これから適切な勤怠管理を導入・運用しようと考えている方は、ぜひ本資料をお役立てください。
「ゼロから始める勤怠管理」を無料ダウンロードする目次
勤怠管理(きんたいかんり)とは
勤怠管理とは、何らかの方法で従業員の出退勤時刻を記録して、企業が従業員の勤怠状況(勤務時間・休憩時間・残業時間・休日)を管理することを指します。
具体的には、以下5つの項目を管理しなければならないことが厚生労働省のガイドライン等によって定められています。
勤怠管理で管理する項目
- 労働日ごとの始業時刻・終業時刻(休憩時間、欠勤、遅刻・早退)
- 労働時間数(※)
- 日別の時間外労働(残業)時間数
- 日別の休日労働時間数
- 日別の深夜労働時間数
- 有給取得の状況
(※)労働時間数は労働基準法第108条に基づく賃金台帳の適正な調製にて記入が求められます
勤怠管理は労務管理の一環という位置づけであり、勤怠情報をもとに残業時間の調整や給料の計算などが行われます。
勤怠管理を行う方法は会社によってさまざまですが、勤怠管理システムを活用する方法が主流です。手書きやタイムレコーダーのほか、エクセルに入力する方法もあります。
▼エクセルでの勤怠管理の例
▼「勤怠管理システム」での勤怠管理の例
なお、勤怠管理システムを利用すれば、以下のようなダッシュボードにて勤怠情報の分析を行うことも可能です。
勤怠管理で記録が必要な各項目の記録方法や考え方については、こちらの記事で詳細を解説しているので、合わせて参考にしてみてください。
勤務管理と労務管理の違い
勤怠管理と労務管理では、管理する業務の範囲が異なります。勤怠管理は、従業員の勤務状況を管理することです。
一方の労務管理は「従業員の勤怠・給与・労働環境・人材配置・入退社などの管理」をまとめて指すことが多い言葉です。
つまり、勤怠管理は「労務管理に含まれる業務の一つ」と考えられます。
勤怠管理の目的と必要性
勤怠管理の主な目的は、「従業員の就業状況を管理し、従業員がどのくらい働いたかを把握するため」です。勤怠管理の必要性は「労働安全衛生法」にも明記されており、2019年4月には勤怠管理が企業の法的義務となりました。
勤怠管理の目的をより具体的に表現すると、以下4つの内容に分けられます。
- 正確な勤怠情報を把握し、正確な賃金を支払うため
- 長時間労働を防止し、従業員の健康管理を行うため
- 有給休暇の付与や取得状況などを管理するため
- コンプライアンスを遵守するため
例えば「正確な賃金を支払うため」という目的のためには、以下の原則に基づいて勤怠管理を行う必要があります。
- 「労働時間」は「終業時刻」-「始業時刻」-「休憩時間」で算出する
- 労働時間は1分単位で記録する
- 残業時間や深夜労働の時間などは、通常の労働時間と分けて考える
上記が守られていないと「正確な賃金を支払う」という勤怠管理の目的が果たせず、従業員とのトラブルや法律違反の危険が生じてしまいます。
そのため日々の労働時間・残業時間・休日労働時間・深夜労働時間を適切に記録することが重要なのです。
上記以外の「勤怠管理の目的やその理由」の詳細については、こちらの記事で詳細を解説しています。
勤怠管理はどんな企業や従業員が対象となるのか
勤怠管理の対象となる企業は、下記事業を除くほぼ全ての事業場です。
労働時間等の規定適用が除外される事業
- 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業、農業
- 動物の飼育、水産動植物の採捕もしくは養殖の事業、その他の畜産、養蚕又は水産の事業
農業・水産業・畜産業は、自然の影響が大きい業種であり規則的な労働が難しいため、労働基準法第41条によって労働時間や休憩・休日の法律について適用を除外することが明記されています。
勤怠管理の対象者となる人とは
上記で説明した「勤怠管理の対象となる企業」に属する従業員は、原則として全員が勤怠管理の対象になります。正社員だけではなく、契約社員やアルバイトも同様に勤怠管理が必要です。
ただし、次の業務に就く人は適用除外とされています。
労働時間等の規定適用が除外される人
- 監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
- 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
なお、ガイドラインでは「みなし労働時間制が適用される労働者」も管理対象から除くとしていますが、労働安全衛生法においては「事業者は労働者の労働状況を把握しなければならない」とし「労働者の健康を保持」することを定めています。
つまり、労働基準法第41条によって労働時間等の規定を適用除外する人であっても、労働状況の把握は義務付けられているということです。
では、労働基準法で対象外とされている人の勤怠管理はどのように行えば良いのか下の表で確認しましょう。
▼例:管理監督者の勤怠管理について
時間外労働(残業)手当の支払 |
不要 |
---|---|
休憩時間の取得 |
不要 |
休日労働手当の支払 |
不要 |
深夜労働手当の支払 |
必要 |
有給休暇の付与・取得 |
必要 |
労働基準法により労働時間等の規定が適用除外とされている従業員についても、正確な賃金支払や有休管理を行い、長時間労働を防止して健康を確保するため、管理監督者を含めたすべての従業員の勤怠管理を行う必要があるといえます。
なお、派遣社員の勤怠管理に関しては、派遣元企業の義務とされています。基本的には派遣先(就業先)の企業が管理し、派遣元企業に報告します。
詳細は以下の記事をご確認ください。
派遣社員の適切な勤怠管理を行うには?派遣先企業の義務や注意点を解説!
勤怠管理では誰が何をすべきか|日々の業務や管理者の仕事内容
勤怠管理業務は、従業員の業務と管理者(マネジメント層)の業務に分かれます。勤怠に関する主な業務の内容を見てみましょう。
▼よくある打刻方法
従業員 |
管理者 |
|
---|---|---|
毎日行うこと |
労働時間の記録(打刻) |
- |
必要に応じて行うこと |
各種申請(残業・有休取得など) |
|
毎月行うこと |
月締めの申請 |
|
※使用する勤怠管理システムや、勤怠管理の方法によって変わる場合があります。
勤怠管理業務の基本業務は、「従業員は出勤のたびに打刻する」「管理者は打刻状況の確認や承認をする」「管理者は月ごとに、勤怠情報を給与計算に反映させる」という流れで行われます。
その他必要に応じて、管理者が勤怠情報を集計・分析し、従業員ごとの勤務状況を確認したり、長時間労働の実態を把握するためなどに役立てます。
適切な勤怠管理を行うために必要な社内体制
前述したような勤怠管理を行うために、社内でも体制を整える必要があります。
一般的には、勤怠管理の管理者側業務は、会社の労務部門(無い場合には人事部門)が統括します。従業員数が少ない組織においては、総務や経理の担当者が兼務することもあるでしょう。
大企業の場合、従業員の打刻状況の管理や承認は各部課長が行い、会社全体のデータ集計を労務部門が行うという流れになることが多いです。
適切な勤怠管理を行うことで得られる3つのメリット
勤怠管理は法令遵守の側面から「必ず行わなければならないこと」です。
しかし、それだけではなく、以下のような副次的な3つのメリットもあるため、適切な勤怠管理を行うことは会社にとっても良いことといえます。
勤怠管理を行う3つのメリット
- 自己申告に頼らずに労働時間を正確に把握できる
- 働き方や就業ルールを見直せる
- 時間外労働や休暇も正確に把握・管理できる
自己申告に頼らずに労働時間を正確に把握できる
従業員の自己申告をもとに勤怠管理をしている場合、従業員の申告が間違っていたり、労働時間をわざと多めに申告していたり、逆にあえて少なく申告していたりする可能性があります。
特にリモートワーク(テレワーク)や出張時など、勤務の様子が見えない状況で働いている場合には、従業員が申告内容通りに勤務していたかの判断が難しくなります。
労働時間を多めに申告されてしまえば給料を多く支払わなければなりませんし、逆に少なめに申告されるとサービス残業を見逃すことにつながります。
適切な勤怠管理方法(例えば勤怠管理システムを利用してPCログと連動した出退勤記録を取るなど)を導入することで、自己申告ベースではない「実際の労働時間」を把握・管理できるというメリットがあります。
働き方や就業ルールを見直せる
自己申告制や月末に勤怠情報をまとめて入力するような勤怠管理方法では、従業員のサービス残業に気付けず問題になることがあります。
例えば9時~17時が定時の会社で、17時以降も働いているのにタイムカード上は9時~17時で働いていることにしているというケースが考えられます。
勤怠管理システムのように客観的な記録による勤怠管理方法を導入すれば、実働時間を正確に把握できるため、働き方や就業ルールを見直すきっかけにもなるでしょう。
時間外労働や休暇も正確に把握・管理できる
適切な勤怠管理を行うことで、時間外労働(残業)や有給休暇などの休日についても正確に把握・管理できるようになります。
例えば次章で紹介する「勤怠管理システム」(出退勤時に打刻すれば自動で労働時間を集計してくれるシステム)を使えば、自動的かつリアルタイムに時間外労働や休暇日数などを集計してくれます。
「このままでは既定の残業時間を超過してしまう」「有給休暇の取得日数が足りなそうだ」といった際にアラートを出せるシステムもあり、その場合は残業超過や有給休暇の取得不足にいち早く気づくことができます。
勤怠管理の方法は主に4種類ある
勤怠管理の方法としては次の4つが代表的です。
- 勤怠管理システム
- 手書き(出勤簿)
- タイムカード
- エクセル入力
いずれの方法であっても、以下の項目を記録・管理していかなければなりませんが、方法によっては法律違反を犯しやすいものもあるため注意が必要です。
▼勤怠管理で管理する項目
- 労働日ごとの始業時刻・終業時刻(休憩時間、欠勤、遅刻・早退)
- 労働時間数
- 日別の時間外労働(残業)時間数
- 日別の休日労働時間数
- 日別の深夜労働時間数
- 有給取得の状況
ここでは、勤怠管理を行う4つの方法について、法律に即した「客観的な記録による勤怠管理」ができるかどうかに着目しながら紹介していきます。
なお、管理部門と士業の専門サイト「Manegy(マネジー)」が2020年9月に実施した調査によると、勤怠管理システムを採用している企業が半数以上という結果となっています。
- 手書き・タイムカード:33.0%
- エクセル:9.5%
- 勤怠管理システム:57.4%
※有効回答数:681人
多くの企業に取り入れられているため、勤怠管理の方法に悩まれている方は、勤怠管理システムの導入を検討してみるとよいでしょう。それではここからは各方法の特徴を解説します。
勤怠管理システムによる勤怠管理
勤怠管理システムとは、従業員の出退勤時刻を記録して自動で集計を行い、リアルタイムで残業時間や休暇取得状況を確認できるシステムのことです。
4つの勤怠管理方法の中で最も「客観的な記録」の要件を満たしやすいのが、この勤怠管理システムです。
打刻のしやすさや、種類の豊富さも勤怠管理システムならではの利点です。製品にもよりますが、勤怠管理システムを使うと以下の打刻方法を使えます。
▼よくある打刻方法
ブラウザ打刻 |
PCのWebブラウザからシステムにログインして、打刻ボタンを押す |
---|---|
アプリ打刻 |
スマートフォンやタブレットなどの端末からアプリを立ち上げ、打刻ボタンを押す |
チャットアプリ打刻 |
SlackやChatwork(チャットワーク)などのビジネスチャットと連携し、特定のメッセージを送信することで打刻する |
QRコード打刻 |
事業所に設置したQRコードをスマートフォンなどで読み取る |
ICカード |
PCに接続したICカード読み取り端末に、ICカードをかざす |
生体認証 |
顔認証や指紋認証、静脈認証に対応した機器を設置し、生体認証を行う |
PCオンオフ連動 |
PCの電源をオンにした時刻を「始業時刻」、オフにした時刻を「終業時刻」として自動的に打刻する |
例えば、外出先でも手軽に打刻できる打刻種類として、スマートフォンから操作できる「アプリ打刻」があります。
▼スマートフォンからのアプリ打刻の操作画面
一度打刻した時刻を修正すると履歴が残るため、改ざんもしにくい仕組みになっています。
勤怠管理システムを利用すると、さまざまな打刻方法で出勤時刻・退勤時刻を入力するだけで、労働時間の集計が自動的に行われます。月末の集計作業が不要になり、月の途中でもリアルタイムに勤怠状況を確認できます。
ダッシュボード機能やレポート機能があるシステムなら「所定の残業時間をオーバーしていないか」「勤怠の締め状況がどうなっているか」などの確認も簡単です。たとえば、「36協定リーチ者リストレポート」のような機能を搭載しているシステムであれば、当月の36協定対象の残業時間が40時間を超えたユーザのみを表示させ、40時間以上45時間未満の場合は黄色に、45時間を超えたら赤色で警告を表示できます。 労働基準法第36条の規定に抵触していないか簡単に確認できます。
また、「勤怠の締め処理状況一覧レポート」機能があれば、月度も勤怠締めの処理(勤怠確定申請)の状況を一覧で確認が可能です。「承認済み」「承認待ち」「申請取消」「却下」「未確定」など、社員別のステータスをすぐに把握できるため、管理作業を効率化できます。
勤怠管理システムで管理・分析できることは多岐にわたります。たとえば「チムスピ勤怠」では、以下のような項目を管理・分析できます。
年次有給休 |
年次有給休暇の付与日数・消化日数・残日数が一覧で参照できる。失効日ごとの残日数も確認できる。 |
---|---|
フレックス時間過不足 |
月末まで残業時間の把握が難しいフレックスタイム制の過不足時間を「月中」で確認でき、長時間労働の防止に役立てられる。 |
出退社情報 |
出退社情報や申請内容など、日々の勤務実績を一覧で確認できる。 |
打刻情報確認 |
各社員の打刻情報を確認できる。日々の出社/退社時刻だけでなく、 打刻忘れの有無や打刻方法 を一覧で把握することもできる。また、位置情報の記録機能を有効にしている場合は、打刻時の位置情報も確認できる。 |
出勤率 |
日次の出勤率と月毎の出勤率を確認できる。 |
各種レポート・ダッシュボード |
勤怠状況や上記の内容について可視化し、リアルタイムで把握・分析できる。 |
上記以外にも、勤怠管理システムだからこそできる機能は数多くあります。より詳細を知りたい場合はこちらの記事もご確認ください。
勤怠管理システムとは?メリットや解決できる課題・必要性を解説
▼勤怠管理システムのメリット・デメリット
メリット |
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---|---|
デメリット |
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手書きの出勤簿による勤怠管理
勤怠管理方法の中で最も昔から利用されている方法が「手書きの出勤簿」に出勤時刻と退勤時刻を記入する方法です。
ただし手書きの出勤簿は、「客観的な記録による勤怠管理」と見なされない可能性があります。
なぜなら、遅刻や早退をごまかして記入したり、残業していないのにしていることにしたり、逆に残業しているのに定時で帰社したことにしたりといった不正が容易にできるからです。
また、別の問題として、月末に全従業員の出退勤時刻を確認し、手作業で集計しなければならないというデメリットもあります。
ミスにもつながりやすいため、あまりおすすめの方法とはいえません。
▼手書き出勤簿のメリット・デメリット
メリット |
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---|---|
デメリット |
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タイムカード(レコーダー打刻)による勤怠管理
タイムカードによる勤怠管理は、打刻機(タイムレコーダー)に専用の用紙を差し込んで、出勤時刻や退勤時刻を管理する方法です。
導入コストが安く、誰でも簡単に使えるため、現在でもよく採用されています。
しかし、タイムカードによる勤怠管理にも課題があります。手書きに比べると改ざんはしにくいものの、「他の社員に代わりに打刻しておいてもらう」など、不正打刻ができてしまうからです。
その他にも、リモートワーク先や外出先から打刻ができないことや、月末の集計作業の負担が大きいことも難点でしょう。
集計・管理する担当者の負担が大きい勤怠管理方法なので、業務効率化を図りたい場合には別の管理方法がおすすめです。
▼タイムカードのメリット・デメリット
メリット |
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デメリット |
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エクセルによる勤怠管理
エクセルやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトで勤怠管理表を作って管理する方法です。
- タイムレコーダーで日々の勤怠を記録し、月末にエクセルを使って集計する
- 従業員がエクセルの出勤簿に直接勤怠を記録し、月末にそれぞれのデータを集計する
有料の勤怠管理システムと比べて「無料で使える」というメリットがあります。また、関数やマクロなどを利用することで、労働時間の計算や集計などを自動で行うことも可能です。
例えば以下の表を使えば、日々の出退勤時間と休憩時刻を入力するだけで自動的に労働時間と休憩時間を集計できるようになっています。
しかし、この方法も法令で示された「客観的な記録」と認められるかどうかは、判断が難しいところでしょう。
なぜなら、エクセルへの入力は自己申告となるため、従業員が実働時間と異なる時間を入力できてしまうからです。また、管理表を誰でも触れる状態になっている場合には、第三者による書き換えも容易にできてしまいます。
さらに、複雑な就業規則がある場合はエクセルで管理しきれないこともあるでしょう。働き方に変化があった場合などには、勤怠管理表をその都度作り直さなければならないというデメリットもあります。
メリット |
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---|---|
デメリット |
|
勤怠管理方法は「勤怠管理システム」がおすすめ
4種類の勤怠管理方法の中で最もおすすめなのは「勤怠管理システム」です。
その理由は、客観的に労働時間を記録・把握できるだけでなく、さまざまな面から業務の効率化を図れるからです。以下の表に、さまざまな側面におけるそれぞれの管理方法の特徴をまとめました。
勤怠管理 |
手書きの |
タイムカード |
エクセル |
|
---|---|---|---|---|
客観的な労働時間の記録 |
〇 |
× |
△ |
△ |
不正打刻の防止 |
〇 位置情報連携 |
× 不正打刻が容易 |
△ 代理で打刻できてしまう |
× 自由に申告できてしまう |
改ざんの防止 |
〇 記録が残る |
× 書き換えが容易 |
△ 集計時に改ざんできてしまう |
△ 保護しなければ書き換え可能 |
打刻漏れの防止 |
〇 アラートで教えてくれる |
× 月末まで気づきにくい |
△ 機能がなければ気づきにくい |
△ 様式による |
残業時間超過の 気づきやすさ |
〇 アラートを出してくれる |
× 月末まで気づきにくい |
△ 超過通知機能がなければ気づきにくい |
△ 入力のタイミングによる |
集計作業の 簡単さ |
〇 自動集計なので集計作業は不要 |
× 月末の集計が大変 |
△ 集計機能がなければ大変 |
〇 自動集計なので集計作業は不要 |
導入コスト |
ある程度必要 |
無料 |
安い |
無料 |
上記の表からもわかるように、正確かつ手間をかけずに勤怠管理を行いたいなら、勤怠管理システムがおすすめです。
しかし当然ながら、勤怠管理システムの利用には初期費用や月額料金がかかります。費用対効果を考えながら導入を検討していくと良いでしょう。
下記にあてはまる場合は、なるべく早いうちから勤怠管理システムを導入することがおすすめです。
- 法令を遵守して適切な勤怠管理を行えるか不安
- 自社の勤務ルールが複雑である(変形労働時間制を採用している、休憩が複数回あるなど)
- 今後、企業規模が大きくなる、もしくは就業規則が変わる見込みがある
- 既に手書きやエクセルでの勤怠管理を行っているが、業務が煩雑で時間がかかってしまっている
なお、勤怠管理システムと一口に言っても、実はシステムによってできることはかなり異なります。勤怠管理システムを導入する時は、自社に合うシステムかどうか事前にしっかり確認することが大切です。
勤怠管理システムは給与計算にも役立つ
勤怠管理システムを導入して給与計算システムと連携すれば、以下のようなメリットを得ることも可能です。
▼メリット
- 勤怠情報の手入力(または転記)が不要になる(※)
- 勤怠情報をそのまま給与計算で用いることができるので、ズレやミスが発生しにくくなる
- 勤怠情報の集計や給与計算にかかる人・時間のコストが削減できる
- タイムカードなどの勤怠書類の現物保管・管理が不要になる(データ化できる)
- 誰でも簡単に操作できるため、属人的な業務でなくなる
- クラウド型のシステムなら法改正にもいち早く対応できる
※ただし、自社の就業規則に合った勤怠管理システムを導入できていない場合は、一部手作業が必要になる可能性があります。
勤怠管理と給与計算を両方ともシステム化し、さらに連携させることにより、アナログ特有の計算ミスや時間がかかる作業を減らせます。
専用のシステムは「誰でも使える操作性の高さ」が重視されているため、属人的な作業を減らすことも可能です。
また、両者を連携することで、転記ミスや転記作業の作業負担を減らすことができます。
これにより、担当者の手間や負担を大幅に減らし、業務効率化を進めることが可能になるでしょう。
勤怠管理システムの選び方
勤怠管理システムにはたくさんの種類があるため、自社に合うシステムを導入することが重要です。
自社が勤怠管理に関して抱える課題を解決できるか、達成したい目標を叶えられるかという視点で、以下のポイントを比較して製品を選んでみましょう。
項目 |
チェックポイント |
選び方の例 |
---|---|---|
1.提供形態 |
クラウド(SaaS)型かオンプレミス型か |
・基本的にはクラウドがおすすめ ・特にセキュリティ要件などが厳しい場合は、オンプレミス型を検討 |
2.打刻方法 |
打刻が習慣化できるか、セキュリティ要件を満たすか |
・不正打刻を防止したいのであれば、「生態認証打刻」がある製品を選ぶ ・テレワークや外回り営業が多いなら、「PCブラウザ打刻」や「スマートフォン打刻」がある製品を選ぶ |
3.カスタマイズ性 |
自社が採用している就業規則について網羅的に正しく管理できるか、将来的な規模拡大などに対応できるか |
テレワーク、フレックスタイム制度など複雑な働き方でも正確な勤怠を取得できる製品を選ぶ |
4.他のシステムとの連携性 |
既に導入しているシステムと連携できるか |
・自社の給与計算システムと連携できる製品を選ぶ ・勤怠管理と工数管理を同一画面上で行える製品を選ぶ |
5.法改正に対応できるか |
法改正に対応し、自動でアップデートされるかどうか |
無料で法改正アップデートが行える製品を選ぶ |
6.サポートの手厚さ |
ベンダーが自社の勤怠管理について深く理解し、アドバイスや提案をしてくれるか |
勤怠管理に関する課題を相談し、運用や改善策の提案をしてくれるベンダーを選ぶ |
7.システム操作のしやすさ |
従業員が日々の打刻をしやすいか、管理者が勤怠データを分析し業務改善に活かせるか |
・デモなどを使い実際に操作して、最も使いやすかったものを選ぶ ・ダッシュボード機能を確認し、分析しやすいシステムを選ぶ |
8.セキュリティ品質 |
セキュリティ要件を満たすかどうか |
どのようなセキュリティ機能があるかを相談し、自社の要件に合う製品を選ぶ |
9.費用 |
自社に必要な機能を満たした上で、許容できるコストになっているか |
・相場「初期費用0円~20万円」「月額費用1名あたり100円~800円」から大きく外れないものを選ぶ ・複数の価格帯から製品を比較する |
目をつけた勤怠管理システムが自社の働き方に合っているかどうか」は、外部から見ただけでは分からないケースも多いです。そのため最初から一つの製品に絞るのではなく、異なる価格帯の製品をいくつかピックアップしたうえで、提供会社に相談してから決めるのがおすすめです。
勤怠管理システムの選び方をさらに詳しく知りたい方は、「勤怠管理システムの選び方|種類や機能の違い・よくある失敗例も解説」の記事もぜひ参考にしてください。
勤怠管理を行う際は、法改正に注意
勤怠管理を実施するうえで注意すべきなのは、最新の法律にあわせて運用しなくてはならないという点です。法改正が行われた場合はその都度、運用方法やルールの変更が必要になるケースもあります。
例えばエクセルなどを用いて勤怠データを集計している場合、手作業で調整を加えなければならないこともあり、非常に効率が悪くなってしまうこともあります。
たとえば2019年4月の法改正では、「客観的な記録による労働時間の把握」が義務化されることになりました。
参考:客観的な記録による労働時間の把握が法的義務になりました|厚生労働省
2019年4月施行の労働安全衛生法および労働安全衛生規則では、以下のように規定されています。
労働安全衛生法
第六十六条の八の三 事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。
労働安全衛生規則
(法第六十六条の八の三の厚生労働省令で定める方法等)
第五十二条の七の三 法第六十六条の八の三の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。
上記の法改正により、働いた時間を従業員自ら(チェックなしで)エクセルなどに入力する「自己申告制」や、月末に定時勤務時間を全従業員に割り振るような勤怠管理方法は、法律違反にあたる可能性があります。
※ただし、やむを得ない理由により、客観的な方法で労働時間を把握しにくい場合には、自己申告制が例外的に認められています。また作成された労働時間の記録は5年間保存することが義務付けられています(現在は経過措置として、保存期間は3年間でよいとされています)。
法令違反のリスクを避けるために、勤怠関連の法改正に対して遅滞なく対応しなくてはなりません。ミスなく簡単に法令対応を行いたい場合は、法改正に対応した勤怠管理システムを導入することを検討しましょう。
多くの勤怠管理システムでは、管理者が手動で調整を加えずとも、最新の法令に合わせてアップデートを受けることも可能です。
まとめ|適切な方法で勤怠管理を行おう
勤怠管理とは、従業員が「どのくらい働いたか」を記録・把握・管理することです。
法改正により「客観的な記録による労働時間の把握」が義務化されたため、自己申告による方法だけで勤怠管理をしている場合には、より客観的な記録が可能な勤怠管理方法を導入する必要があるでしょう。
現在「勤怠管理を適切に行えていない」「やり方が分からない」という企業は、ぜひ勤怠管理システムの導入を検討してみてください。集計業務や法律への対応が容易になり、バックオフィス業務を大幅に効率化できるようになります。
システムを選ぶ際には、自社の課題を解決できるかをベンダーと擦り合わせた上で導入することをおすすめします。
ぜひ本記事をきっかけに、自社の勤怠管理について見直してみてください。
勤怠管理の基本を改めてチェックしてみませんか?
- 勤怠管理の基本的なルールの理解や実務の知識が乏しく、不安がある
- 勤怠管理の目的など基本的なことを知りたい
- 勤怠管理を適切に実行する上で、自社の課題も把握しておきたい
このような人事労務担当者に向けて、「ゼロから始める勤怠管理」の資料を無料で配布しています。
人事労務担当者なら知っておきたい、適切な勤怠管理の必要性や労働時間の基本ルールについて解説していますので、これから適切な勤怠管理を導入・運用しようと考えている方は、ぜひ本資料をお役立てください。
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