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勤怠計算を正確に行うには?勤務時間や残業時間の集計方法も解説

著者:チームスピリット編集部

勤怠計算は、従業員の給与を正しく算出するうえで欠かせないものです。労働時間を正確に計算できないと、労働関連の法律に違反してしまう可能性もあります。勤怠計算を行ううえで、以下のような疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。

  • 端数をどのように処理すればよいのか
  • 残業時間や深夜労働時間についてはどのように考えればよいのか
  • 法令を遵守しつつ、簡単に勤怠計算を行う方法はないか

本記事では、勤怠計算の基本的な方法から変形労働時間制などの複雑な計算方法まで、具体例を用いながら解説します。

後半では、法令を遵守しつつ効率的に勤怠計算をする方法なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。

勤怠計算や勤怠管理のキホンを正確に理解できていますか?

  • 勤怠管理の基本的なルールの理解や実務の知識が乏しく、不安がある
  • 勤怠管理の目的など基本的なことを知りたい
  • 勤怠管理を適切に実行する上で、自社の課題も把握しておきたい

このような人事労務担当者に向けて、「ゼロから始める勤怠管理」の資料を無料で配布しています。

人事労務担当者なら知っておきたい、適切な勤怠管理の必要性や労働時間の基本ルールについて解説していますので、これから適切な勤怠管理を導入・運用しようと考えている方は、ぜひ本資料をお役立てください。

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勤怠(勤務時間)の基本的な計算方法

従業員の給与計算を正確に行うためには、労働時間を正しく算出することが必要です。労働時間を求める計算式は、以下の通りです。

「労働時間」=「終業時刻」-「始業時刻」-「休憩時間」

例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。

  • 始業時刻が8:00
  • 終業時刻が17:00
  • 休憩時間が1時間
  • 時給が1,000円

この場合の労働時間は8時間で、発生する賃金は1,000円×8時間=8,000円です。

※勤怠に関する計算を行う際は、「勤務時間」と「労働時間」が異なる点に注意しましょう。勤務時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間のことです。労働時間とは、勤務時間から休憩時間を差し引いた時間のことを指します。従業員の給与計算を行う際は、後者の「労働時間」を用いるため、休憩時間を引いた数値を算出する必要があります。

例えば、9時から18時まで勤務し、休憩時間が1時間だった場合、勤務時間は9時間、労働時間は8時間となります。

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休憩時間は労働時間に応じて設けることが、労働基準法34条にて定められています。労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩時間が必要です。

労働時間

休憩時間

6時間以内

不要

6時間〜8時間まで

45分

8時間以上

1時間

まずは上記の基本的なルールを押さえ、正確に勤怠計算ができるようにしておきましょう。

タイムカードで管理する場合の計算方法

タイムカードを使って労働時間を算出する際は、印字された出退勤時刻をもとに、電卓を使って計算する方法が一般的です。

例えば、出勤時刻が9時30分で退勤時刻が14時20分の場合は下記のように計算します。

1420(退勤時刻)-930(出勤時刻)=490

導き出された数字は上1桁または2桁が「時間(h)」を表しており、下2桁が「分(m)」を表しています。もし下2桁が60を超える場合は、その数字から40を引いた数字が「分」となります。

つまり今回の例では、労働時間は490=4時間50分となります。この方法を使えば、手作業でも比較的簡単に計算できるでしょう。

休憩時間が発生する場合は、退勤時刻から出勤時刻を引いて算出した時間から休憩時間を引くことで、労働時間を計算できます。例えば、出勤時刻が10時30分で退勤時刻が17時15分、休憩時間が45分の場合は下記のように計算します。

  • 1715(退勤時刻)-1030(出勤時刻)=685
  • 685-40=645(6時間45分)
  • 645-45(休憩時間)=600(6時間)

※タイムレコーダーによっては打刻時間の端数を切り捨てる機能が搭載されていることもありますが、労働時間の切り捨ては労働基準法に違反する可能性があるため注意しましょう。

ただし、このように手作業で計算する場合、ヒューマンエラーが増えてしまうことが懸念されます。また、管理者の不在時などに不正打刻が発生する可能性がある点や、設置場所と用紙の保管場所が必要な点もデメリットとして挙げられます。

エクセルで管理する場合の計算方法

エクセルで管理する場合は、労働時間や休憩時間、深夜労働時間などを算出する関数式を使うことで、電卓よりさらに効率よく計算を行えるでしょう。

例えば以下の勤怠管理表では、C~F列に時刻を入力するだけで、G列~K列の数値が自動で算出されるようになっています。

具体的な関数式などはこちらの記事で詳しく紹介しているので、ぜひあわせてご覧ください。

勤怠管理をエクセルで行う方法|自動計算できるテンプレートも紹介

エクセルでの管理は、導入の手間やコストがかからない点が大きな魅力です。インターネット上に無料のテンプレートが多数用意されており、自分たちでカスタマイズすることも可能です。

ただしエクセルでの管理の場合、入力のし忘れやデータ消失などのリスクがある点や、変形労働時間制などの多様な働き方には対応しきれない点には注意する必要があります。また、法改正があった場合はその都度手作業で修正する手間が生じることも覚えておきましょう。

勤怠管理システムやアプリで管理する場合の計算方法

勤怠管理システムやアプリを導入して勤怠計算を行う場合には、システムやアプリが自動的に労働時間を集計してくれるため、自分で計算する必要はありません。

残業時間を含む労働時間の計算を効率化したい場合には、勤怠管理システムやアプリの導入を検討するのがおすすめです。

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勤怠管理システムとは?メリットや解決できる課題・必要性を解説

分を小数点に変換する計算方法(例:7時間45分→7.75)

勤怠の計算でつまずきがちな「分を時間に変換する」計算方法についても解説しておきましょう

分は60進法、時間は10進法であるため、給与計算をする際に、分を時間に変換して単位を揃える必要がある点に注意しましょう。

例えば、労働時間が7時間45分、時給が1,000円の場合の給与計算をする場合に、給与は7,450円とはなりません。7時間45分を10進法に変換した7.75を用いて、給与は7,750円となります。分を10進法の時間に変換する場合には、「〇分」を60で割って計算します。

例えば、労働時間が7時間45分の場合、45分を60で割ると0.75なので、「7.75」となります。勤怠の合計を出す場合や給与計算を行う場合には、この小数点を用いて計算をします。

時給が1,000円で労働時間7時間45分の場合、給与は1,000円×7.75=7,750円となります。

以下に、60進法から10進法へ変換した値の表をまとめたので、参考にしてください。

60進法(分)

10進法(小数点)に変換した値

10分

0.167

15分

0.25

20分

0.333

30分

0.5

40分

0.667

45分

0.75

50分

0.833

60分

1

15分単位で勤怠管理を行うことは違法なため、必ず1分単位で算出する

労働時間を計算する際は、労働基準法第24条にて1分単位で算出することが義務付けられています。そのため、15分単位や10分単位などで勤怠管理を行うことは違法です。

例えば、6時間15分働いた従業員の労働時間を6時間として計算することはできません。必ず「6時間15分」を労働時間とする必要があります。

違反した場合は30万円以下の罰金に処されたり、労働基準監督署から是正指導や勧告を受けたりすることがあります。

たとえ記録が面倒であっても、従業員の勤怠管理は必ず分単位で行うようにしましょう。

1分単位でおこなわず端数処理した場合には、思わぬトラブルが起こる可能性もあります。詳しくは「給与計算は1分単位で行わなければ違法か?計算方法や罰則を解説」で解説していますのでぜひご覧ください。

ただし残業時間を月単位で計算する際は、端数を丸めて計算できる

上記の通り、原則的には勤怠管理では端数処理は認められていませんが、例外として1カ月分の合計時間を計算する場合には端数処理が可能です。、1カ月における時間外労働・休日労働・深夜労働のそれぞれの合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満は切り捨て、30分以上は切り上げて処理できます。

例えば、1カ月の残業時間が20時間25分の従業員の場合は、30分未満の端数を切り捨てて20時間として処理することが可能です。一方、残業時間が20時間45分の従業員の場合は、端数が30分以上であるため、切り上げて21時間として処理できます。

なお、端数処理を行う場合は就業規則に記載しておくなど、全従業員に周知することを心がけましょう。

勤怠計算をする際は「残業」「深夜労働」の時間に注意が必要

ベースとなる勤怠計算の方法は前述した通りですが、状況によってはただ労働時間を算出するだけでは、給与計算に支障が出てしまうことがあります。例えば残業や深夜労働を行った場合などは、基本の計算方法だけでは正しく給与計算を行えません。

このような場合は、以下の点に注意しましょう。

勤怠計算をする際の注意点

  • 残業時間を明確にしておく
  • 深夜労働をした時間を明確にしておく

残業時間を明確にしておく(通常の労働時間とは分けて考える)

勤怠管理を正確に行うには、残業時間を通常の労働時間とは分けて考える必要があります。場合によっては、給与計算の際に用いる計算式(賃金の割増率)が変わる可能性があるからです。

まず、残業時間には「法定内残業時間」と「法定外残業時間」があり、どちらに当たるのかによって計算方法が異なります。

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法定内残業時間とは、所定の労働時間を超えるものの、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)は超えていない残業時間のことです。賃金の支払いは必要ですが、割増はありません。

一方、法定外残業時間は法定労働時間を超えて労働した時間のことで、支払い時に25%の割増賃金が適用されます。

それぞれの残業時間に対して発生する賃金の計算式は、以下の通りです。

  • 法定内残業に対して発生する賃金=法定内残業時間×1時間当たり賃金×1.00
  • 法定外残業に対して発生する賃金=法定外残業時間×1時間当たり賃金×1.25

※法定外残業時間が60時間を超える場合は「×1.5」になります。

例えば、1週間の所定労働時間が30時間でその週に4時間残業をした場合、法定内残業と見なされるため4時間分の残業代は×1.00で計算されます。

しかし、1週間の所定労働時間が40時間で同じく4時間の残業をした場合は、法定労働時間である1週40時間を超えた形となるため、×1.25で算出されます。

残業時間が発生している場合は、法定内残業時間と法定外残業時間のどちらに当たるのかを適切に判断しなければ、給与計算を正しく行えません。

法律に即した残業管理については、「残業管理とは?|残業時間を適切に把握し記録する方法・ルール作りのコツ」の記事もご参照ください。

深夜労働をした時間を明確にしておく(通常の労働時間とは分けて考える)

残業時間とあわせて、深夜労働が発生した時間も通常の労働時間とは区別しておく必要があります。

22時〜5時の間の労働は深夜労働と見なされ、企業は25%の割増賃金を支払うことが義務付けられているからです。

例えば、時給1,200円の従業員が19時〜0時まで勤務した場合、発生する賃金は下記のようになります。

①...1,200円×3時間(22時まで)×1.00=3,600円
②...1,200円×2時間(22時以降)×1.25=3,000円
①+②=6,600円の賃金

さらに、この時間帯に法定外残業が発生した場合は、法定外残業の割増賃金である25%も追加される形となる点に注意が必要です。例えば、所定労働時間が10時〜19時(うち休憩1時間)、時給1,000円の従業員が10時〜0時(休憩15時~16時)まで勤務した場合、発生する賃金は以下のようになります。

①...1,000円×8時間(19時まで)×1.00=8,000円
②...1,000円×3時間(19時〜22時まで)×1.25(法定外残業分)=3,750円
③...1,000円×2時間(22時〜0時まで)×1.5(法定外残業分+深夜労働分)=3,000円
①+②+③=14,750円の賃金

このように、深夜労働の割増率25%に時間外労働の割増率25%が加わり、50%の割増率で計算しなくてはならないことを覚えておきましょう。

深夜残業の計算については「深夜残業の割増率とは?計算方法・手当の発生条件をわかりやすく」の記事も参考にしてください。

勤怠(労働時間)を計算する流れ5ステップ

勤怠の基本的な計算方法が分かったところで、1カ月の勤怠(労働時間)を計算する場合の全体の流れも簡単に解説します。

ステップ1.労働時間を計算する

まずは労働時間(実労働時間)を計算します。

基本的な計算方法のところでも解説した通り、労働時間は以下のとおり計算します。

労働時間(実労働時間)=終業時刻-始業時刻-休憩時間

▼例

出勤時刻が9時28分で退勤時刻が18時16分、休憩時間が1時間の場合

1816(退勤時刻)-0928(出勤時刻)=888

下2桁が60を超える場合は、その数字から40を引いた数字が「分」となるので

拘束時間(勤務時間)=888-40=828(8時間48分)

休憩時間が1時間なので、労働時間は7時間48分

ステップ2.法定外残業時間を計算する

次に、法定外残業時間(1日8時間・1週40時間を超えた分)を計算します。

法定外残業時間を計算する理由は、給与計算の時に、法定労働時間を超過した残業に対しては「割増賃金」を支払う必要があるからです。

通常の労働時間と別で管理しておかないと、月締め作業が大変になってしまいます。

法定外残業時間は1日単位、1週単位で計算します。

  • 1日単位の法定外残業時間=労働時間-8時間
  • 1週単位の法定外残業時間=1週間の労働時間-40時間-既に1日単位の法定外残業時間として計算された時間

▼1日単位の法定外残業時間の計算例

労働時間が8時間48分の場合、48分が法定外残業時間となる

▼1週単位の法定外残業時間の計算例

次のように1週間働いたとします。

休み

実労働8時間

実労働8時間

実労働10時間

実労働8時間

実労働8時間

実労働3時間

この場合、下記のように計算され、水曜日に2時間、土曜日に3時間の法定外残業時間を行ったこととなります。

  • 水曜日は労働時間が10時間なので、2時間が法定外残業時間となる(1日単位で計算)
  • 週の合計労働時間が45時間なので、45時間-40時間-2時間(水曜日の法定外残業時間)=3時間が法定外残業時間となる

ステップ3.深夜労働時間を計算する

次に、深夜労働時間を計算します。

深夜労働時間も、法定外残業時間と同様に割増賃金を支払う必要があるため、通常の労働時間と別で管理しておく必要があります。

深夜労働時間は、出勤時刻や退勤時刻を見て、22時〜5時の間の労働が含まれていれば、その時間の労働を全て深夜労働時間とカウントします。

▼例

出勤時刻が17時28分で退勤時刻が23時16分、休憩なしの場合

22時から23時16分の労働(1時間16分)が、深夜労働時間となる

ステップ4.休日労働時間を計算する

休日労働時間も、法定外残業時間や深夜労働時間と同様、割増賃金の計算のために別で管理する必要があります。

休日労働時間とは、法定休日とされる「少なくとも週1回、4週間を通じて4日以上与えられる休日」に出勤して業務をすることをいいます。会社が定めた「所定休日」に労働しても、休日労働には該当しない(割増賃金の対象とならない)点に注意しましょう。

法定休日に労働させた日の勤務は全て休日労働時間とカウントします。

▼例1.シンプルな休日労働時間

法定休日が日曜日の場合で、日曜日に出勤時刻9時28分・退勤時刻が18時16分・休憩時間が1時間で労働した場合

労働時間を計算すると7時間48分なので、7時間48分が休日労働時間となる

▼例2.深夜にわたる長時間の休日労働時間

法定休日が日曜日の場合で、日曜日に出勤時刻9時28分・退勤時刻が23時16分・休憩時間が14時~15時の1時間で労働した場合

  • 労働時間を計算すると12時間48分なので、12時間48分が休日労働時間となる
  • 22時から23時16分の労働(1時間16分)が、休日深夜労働時間となる

仮に時給が1,200円であるとすると、賃金は次のように計算します。

①...1,200円×11時間32分(22時まで)×1.35(休日労働分)=18,684円

②...1,200円×1時間16分(22時〜23時16分まで)×1.50(休日労働分+深夜労働分)=2,280円

①+②=20,964円の賃金

※なお、休日労働には、深夜労働はあっても法定外残業という概念はありません。

法定休日には法定労働時間というものが存在しませんので、休日労働をさせた場合は時間外労働に対する割増賃金は発生しません。よって、休日労働に対する割増賃金と時間外労働に対する割増賃金は重複しません。

ステップ5.ひと月の時間を集計する(月締め作業)

最後に、ここまで1日あたりで計算した労働時間・法定外残業時間・深夜労働時間・休日労働時間の1カ月分の合計を集計します。

合計を出す時には、60進法で計算するのか10進法で計算するのかをあらかじめ決めて、混在しないように気を付けましょう。

なお、集計作業を電卓で行うのは難しいため、エクセルなどの表計算ソフトに関数を入れて合計を出すのがおすすめです。

当サイトで無料配布しているエクセルテンプレートもぜひご活用ください。

excel3.png

ダウンロードはこちら(xlsxファイル)

※本ファイルの内容についての保証、利用に関して弊社は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

使い方は「勤怠管理をエクセルで行う方法|自動計算できるテンプレートも紹介」で解説しています。

複雑な労働時間制度を導入している場合の勤怠計算方法

現代では働き方の多様化により、「変形労働時間制」や「フレックスタイム制」など、さまざまな労働時間制度を導入している企業が増えています。

これらを導入している場合も勤怠計算のやり方自体は同じですが、労働時間や残業時間の算出方法が異なります。

本章では、下記の労働時間制度ごとの労働時間や残業時間の計算方法について、例も交えながら解説していきます。

制度ごとの労働時間・残業時間の計算方法

  • 変形労働時間制
  • 事業場外みなし労働時間制
  • フレックスタイム制

「変形労働時間制」の労働時間・残業時間

変形労働時間制は、業務の繁閑に応じて法定労働時間の枠内で、労働時間を配分できる制度のことです。

変形労働時間制は、「1年単位」「1カ月単位」「1週単位」の3種類に分けられ、特定の日・週ごとに所定労働時間を定められます。本記事では、採用されるケースが多い「1カ月単位」の変形労働時間制における労働時間と残業時間の算出方法を紹介します。

1カ月単位の変形労働時間制の場合、まずは月ごとの法定労働時間を確認しましょう。月の末日が何日かによって判断します。

月の末日

月の法定労働時間

28日

160.0時間

29日

165.7時間

30日

171.4時間

31日

177.1時間

例えば4月の末日は30日なので、4月の法定労働時間は171.4時間となります。

次に、上記の月ごとの法定労働時間以内におさまる範囲で、週ごとの所定労働時間を定めます。

▼例

4月

所定労働時間

実労働時間

1週目

30時間

33時間

2週目

30時間

35時間

3週目

50時間

47時間

4週目

50時間

55時間

合計

160時間

170時間

※所定労働時間とは、就業規則等で定められた「始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を差し引いた労働時間」のことです。

そして1カ月単位の変形労働時間制の場合は、下記に該当する時間が時間外労働(残業)となります。

  1. 1日8時間を超え、かつ1日の所定労働時間を超えて労働した時間
  2. 1日の所定労働時間が8時間以内で、1日8時間を超えて労働した時間
  3. 1週40時間を超え、かつ1週の所定労働時間を超えて労働した時間
  4. 1週の所定労働時間が40時間以内で、1週40時間を超えて労働した時間
  5. 月の法定労働時間を超えて労働した時間(1~4に該当する時間を除く)

上記の例の場合、残業時間と見なされ割増賃金が発生するのは、3に該当する4週目の5時間のみとなります。

「事業場外みなし労働時間制」の労働時間・残業時間

事業場外みなし労働時間制は、事務所以外の場所で勤務し労働時間の算定が難しい場合に、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた所定労働時間分働いたとみなして給与計算する制度です。

みなし労働時間(所定労働時間)が6時間の場合、実労働時間が5時間であっても7時間であっても、6時間働いたものと見なされます。また、7時間働いた日であっても残業代が支払われることはありません。

例えば、

  • みなし労働時間(所定労働時間)が8時間
  • 9:00~19:00まで勤務
  • 休憩1時間

という場合は、実際には9時間働いていますが、8時間働いたものと見なされます。

ただし、みなし労働時間(所定労働時間)が法定労働時間(1日8時間)を超過していたり、深夜労働や休日労働が発生したりした場合は割増賃金が発生します。

  • みなし労働時間(所定労働時間)が8時間
  • 10:00~24:00まで勤務
  • 休憩1時間

この場合は、実際の勤務時間にかかわらず8時間働いたものと見なされますが、22時〜24時の労働時間に対しては25%の割増賃金が適用されます。

「フレックスタイム制」の労働時間・残業時間

フレックスタイム制とは、「清算期間」と呼ばれる一定の期間の中で、従業員が自分で始業時刻と終業時刻を決められる制度のことを指します。

例えば「1カ月間の総労働時間を150時間とする」「その中で7:00〜10:00の間であればいつ出勤してもよく、15:00〜19:00の間であればいつ退勤してもよいとする」というような形で労働を行います。

※必ず勤務しなければいけない時間帯である「コアタイム」が設定されるケースもあります。

フレックスタイム制には、労働すべき時間数を定めた3カ月以内の「清算期間」があり、清算期間に応じて法定労働時間を別途算出する必要があります。

フレックスタイム制における法定労働時間の計算方法は、下記の通りです。

法定労働時間=「40時間(1週間の法定労働時間)」×「清算期間の暦数」÷「7日」

そして、下記に該当する時間が残業となります。

  1. 法定労働時間を超えて労働した時間
  2. (清算期間が1カ月を超える場合)清算期間の全体で週平均40時間を超えて労働した時間
  3. (清算期間が1カ月を超える場合)1カ月ごとで週平均50時間を超えて労働した時間

例えば以下のケースについて考えてみましょう。

  • 清算期間が1カ月(31日)
  • 総労働時間150時間
  • 実労働時間180時間

この場合は「40時間×31日÷7日」で、177.1時間が法定労働時間になります。実労働時間が180時間なので、1.に該当する超過分の2.9時間は残業時間となり、割増賃金が発生します。

勤怠計算(労働時間計算)に関するよくある質問

ここからは、勤怠(労働時間)を計算する上で、多くの方が疑問に思うポイントや間違えやすいポイントについて、Q&A形式でまとめて回答します。

事前に目を通しておき、正しい勤怠計算ができるように心がけましょう

質問:エクセルで15分単位で勤怠計算する方法を教えてください

【答え】エクセルの関数を用いれば、15分単位や5分単位などで労働時間を切り捨てる処理が可能ですが、違法なのでやめましょう。

給与は、正確な労働時間の記録に基づいて支払われるべきなので、労働時間を15分単位で切り捨てや切り上げを行う「丸め処理」は違法です。必ず1分単位で正しく勤怠計算を行いましょう。

2024年1月には、大手回転ずしチェーンが「5分未満の端数を切り捨てて労働時間を計算していた」として労働基準監督署から是正勧告を受けたニュースが話題になりました。

社会的信用を失くす行為なので行わないように気を付けてください。

質問:勤怠計算と労働時間計算は同じ意味ですか?

【答え】言葉のニュアンスは少し異なりますが、指し示している内容としては同じものです。

「勤怠」とは一般的に、従業員の出退勤などの勤務状況を意味します。会社が従業員の勤務状況を把握したり管理したりするシーンで使われる言葉です。

一方で「労働時間」とは、勤務時間(拘束時間)から休憩時間を差し引いた時間のことです。

「勤怠計算」も「労働時間計算」も、給与計算の対象となる時間を計算することであり、指し示している内容は同じとなります。

質問:無料で勤怠計算をしたい場合の良い方法はありますか?

【答え】無料で勤怠計算(労働時間計算)を行いたい場合には、①エクセルを使って計算するか、②無料の勤怠管理アプリを使う方法が考えられます。

しかしながら、無料ならではの制約やデメリットがある点に注意しましょう。

エクセルを使って勤怠計算をする場合、打刻はできないため、勤務開始時間や勤務終了時間を手入力したり転記したりする手間がかかります。また、法改正への対応が困難だったり、ヒューマンエラーが起こりやすいデメリットもあります。

無料の勤怠管理アプリは、アプリで打刻もできますが、リアルタイムで全社員の労働時間を把握したり、有給休暇取得状況を確認したりする機能までは無いことがほとんどです。

正確かつ効率的に勤怠管理から給与計算までを行うには、やはり、しっかりとした勤怠管理システムがおすすめです。

正確かつ効率的に勤怠計算をするには勤怠管理システムがおすすめ

ここまでの内容を読み、「残業時間を正確に計算したり、従業員の労働時間制度ごとに労働時間を正しく算出したりするのは難しい」と感じた方も多いのではないでしょうか。

そのような場合には、勤怠管理システムを導入し、システムによって自動で勤怠計算できるようにするのがおすすめです。

勤怠管理システムとは、ここまで説明してきたような労働時間の計算や残業時間の集計、働き方ごとの細かい計算などを自動で行えるツールです。

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従業員に打刻さえしてもらえれば、自動で労働時間が入力・集計されます。集計はリアルタイムで行われるため、手作業で集計する必要はありません。従業員の入力ミスなどのエラーもシステムが検知するので、管理者が差し戻しなどをする手間も減るでしょう。

製品によっては、フレックスタイム制や変形労働時間制などのさまざまな働き方にあわせて柔軟に対応することも可能です。また、法改正があった場合はその都度アップデートされるものが多いため、知らない間に法律違反をしてしまう危険性も減るでしょう。

タイムカードやエクセルでの管理には「導入コストがかからない」「運用方法がシンプル」などのメリットがありますが、正確かつ効率的に勤怠計算をするにはシステムの利用がおすすめです。

作業の手間が大幅に減り、入力ミスなどの人的エラーも防げるため、労働時間の集計や管理を行う担当者の負担が軽減されます。

利用料金や導入費用がかかるといったデメリットはありますが、業務効率化を目指す場合はぜひ導入を検討してください。

勤怠管理システムの利用が適しているケース

勤怠管理システムの利用が適しているケースとそうでないケースをまとめました。

勤怠管理システムの利用がおすすめ

その他の方法がおすすめ

  • 夜勤がある(出勤時刻が22時以降)
  • 1日7時間労働、週6日勤務などの働き方をしている
  • 変形労働時間制を採用している
  • 休憩が複数回ある
  • リモートワーク(テレワーク)や外回り営業の従業員が多い
  • 日勤のみ(夜勤がない)
  • 1日8時間労働、週5日勤務の働き方をしている
  • 法定休日が日曜日、もしくは休日労働が発生しない

特に、変形労働時間制を採用しており勤務ルールが複雑な場合などは、早めに勤怠管理システムの導入を検討するのがおすすめです。

また、現時点では問題が発生していなくとも、今後企業の規模が大きくなる可能性がある場合なども、あらかじめシステムを利用しておくと安心でしょう。

勤怠管理システムについてさらに詳しく確認したい方は、以下の記事をご覧ください。

勤怠管理システムとは?メリットや解決できる課題・必要性を解説

まとめ|正確かつ効率的に勤怠計算を行う方法を理解しておこう

従業員の給与計算をするうえで欠かせない勤怠計算ですが、その計算方法は状況によって非常に複雑になります。労働時間を正確に計算するには、残業時間の種類や深夜労働の割増ルールなどを理解しておく必要があるでしょう。

特に事業場外みなし労働時間制などの多様な働き方を採用している場合は、労働時間の管理や集計の方法が複雑化するため注意が必要です。

企業の規模や状況に応じて勤怠管理システムを導入することなども検討しながら、正確かつ効率的に勤怠管理を行えるようにしましょう。

勤怠管理の基本を改めてチェックしてみませんか?

  • 勤怠管理の基本的なルールの理解や実務の知識が乏しく、不安がある
  • 勤怠管理の目的など基本的なことを知りたい
  • 勤怠管理を適切に実行する上で、自社の課題も把握しておきたい

このような人事労務担当者に向けて、「ゼロから始める勤怠管理」の資料を無料で配布しています。

人事労務担当者なら知っておきたい、適切な勤怠管理の必要性や労働時間の基本ルールについて解説していますので、これから適切な勤怠管理を導入・運用しようと考えている方は、ぜひ本資料をお役立てください。

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