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基礎知識

【育児・介護休業法改正】2022年10月から「産後パパ育休(男性版産休)」制度が開始

著者:チームスピリット編集部

2021年6月の法改正により、2022年4月から改正育児介護休業法が段階的に施行されました。その中でも、2022年10月から開始する産後パパ育休は、通称「男性版産休」とも言われている新制度です。男性の育児参加を促進することにより、男女のワークライフバランスの向上、雇用格差の改善が期待される産後パパ育休は、従業員だけでなく企業にとってもさまざまなメリットがあります。この記事では、雇用主が理解すべき産後パパ育休のポイントと分割取得、給付金などについて解説しています。

●目次

1.2022年10月から産後パパ育休(男性版産休)の制度がスタート

 ・産後パパ育休とは?これまでの制度からの変更点

 ・産休と育休との違い

2.2022年以降の 育児・介護休業法改正のポイント

 ①「産後パパ育休」が2022年10月施行

 ②雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置が事業主の義務に:2022年4月施行

 ③育児休業を分割して取得

 ④有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が緩和:2022年4月施行

 ⑤育児休業取得状況の公表が義務

3. 産後パパ育休(男性版産休)メリット・デメリット

 ・企業側のメリット・デメリット

 ・従業員側のメリット・デメリット

4.「社会保険料の免除の要件」の変更

5.男性の育児休業給付金

6.まとめ

7.仕事と育児の両立支援を行うなら

1.2022年10月から産後パパ育休(男性版産休)制度がスタート

2022年4月から段階的に施行中の「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)」において、産後パパ育休(通称「男性版産休」)が新設されました。「産後パパ育休」は出生時育児休業という名称でも呼ばれます。ここでは2022年10月1日から開始する「産後パパ育休」について解説します。

産後パパ育休(男性版産休)とは?これまでの制度からの変更点

産後パパ育休は、男性の育児休業取得の促進を目的とした、子どもの生後8週間以内に最大4週間まで父親が育児休暇を取得できる仕組みです。この産後パパ育休および女性の産休は、取得希望の従業員があらかじめ企業に申し出ておけば、分割して2回の取得が可能です。

産後パパ育休(男性版産休)とは?これまでの制度からの変更点

参照(PDF資料):厚生労働省|育児・介護休業法改正ポイントのご案内

※1 職場環境の整備などについては、今回の改正で義務付けられるな内容を上回る取り組みの実施を廊式要諦で定めている場合は、1カ月とすることができます。

※2 具体的な流れは以下①~③のとおりです。
   ①労働者が就業しても良い場合は事業主にその上限を申し出
   ②事業主は、労働者が申し出た場合に事業主にその条件を申出
   ③労働者が同意した範囲で就業

2022年10月1日からスタートする新制度「産後パパ育休」の対象者は既存の育休対象者と同じです。ただし「勤続1年以上の従業員」という要件は条件付きで撤廃されます。会社への申請期限は原則として休業の2週間前までで、現行の休業1カ月前までに比べて短くなります。また現行制度で育休は分割できませんが、新制度においては既存の育休とは別に、育休を2回に分けて取得が可能です。

従来の育休は、育休取得期間の就業を認めていないことが、取得のハードルになっている部分もありました。新制度では、事前に社内で労使協定を結んだ上で該当従業員が望めば、産後パパ育休を取得中に上限付きで業務を行うことが可能になります。

現行法では育休の特例「パパ休暇」という制度もあります。パパ休暇とは、子どもの誕生後に育休を取得した場合、特別な事情がなくても再度育休を取得できる特例制度です。ただし2022年10月からの新制度開始に伴い、パパ休暇の制度は廃止となります。そのため社内でパパ休暇について規定がある企業は、見直しや削除が必要です。例えば、育児休業の期間について就業規則で規定している場合、出生時育児休業を含む内容に変更する、といった対応が求められます。

産休と育休との違い

ここでは、「産休」と「育休の」制度的違いについて改めて解説します。産休は産前休業および産後休業を指し、女性の出産前の準備や産後の体の回復のための休業期間のことです。労働基準法で定められた休業制度で、会社に申請することで出産する女性すべてに取得の権利があります。産前休業は出産予定日から6週間前から、産後休業は出産翌日から8週間が取得可能期間です。

一方、育休(育児休業制度)は、育児を目的として休業できる制度です。育児介護休業法で定められており、期間は産休終了翌日から、子どもが1歳になる誕生日までの希望期間内です。出産する女性だけでなく父親となる男性も取得可能で、育休取得のためには雇用期間や労働日数などの条件があります。

今回新設された産後パパ育休は通常の育休制度とは異なり、子どもの誕生後に父親である従業員が休業しやすくする環境を整えるための制度です。報道などで産後パパ育休の制度が、「男性版産休」という通称でも呼ばれていたのは、父親に限って通常の育休とは別に取得できる制度として創設されたことに由来しています。

2.2022年以降の 育児・介護休業法改正のポイント

2022年4月から、育児・介護休業法が段階的に施行されています。法改正の5つの柱の概要をまとめると、以下となります。

改正事項 施行時期       具体的な内容
①産後パパ育休の創設 2022年10月1日 既存の育休制度とは別枠で、子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能。現行の「パパ休暇」とは別の新制度
②雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化 2022年4月1日 すべての企業を対象に、従業員が育休を取得しやすい雇用環境の整備および育休制度の周知や取得の意向確認が義務化される
③育児休業の分割取得 2022年10月1日 ①産後パパ育休とは別枠で、分割して2回取得可能
④有期雇用労働者の育休・介護休業取得要件の緩和 2022年4月1日 休業取得時の要件「雇用された期間が1年以上」撤廃される
⑤育児休業取得状況の公表の義務化 2023年4月1日 従業員数1,000人超の企業は、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられる

参照:厚生労働省|育児・介護休業法 改正ポイントのご案内

①産後パパ育休(男性版産休):2022年10月施行

男性従業員が2022年10月以降に新制度の産後パパ育休を取得する場合、具体的には下記の手続きが必要です。

①労働者が就業してもよい場合は、事業主にその条件を申出る
②事業主は、労働者が申し出た条件の範囲内で候補日・時間を提示(候補日等がない場合はその旨)

なお、就業可能日等の上限(休業期間中の労働日・所定労働時間の半分)は、厚生労働省令で定められる予定です。

②雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化:2022年4月施行

雇用主は、以下の措置を講じることが義務付けられます。

・育児休業の申し出や取得を円滑に行うための雇用環境の整備
・妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別周知および取得意向確認の措置

雇用主および従業員が育児休業の認識を正しく持つためには、育児休業に関する研修を行う、相談窓口を設置する、制度周知文書や対応マニュアルを作成する、などの対応を講じる必要があります。

③育児休業の分割取得

今回の法改正により、夫婦ともに分割して2回まで取得可能になります。2回取得する場合、1回目、2回目の取得時にそれぞれ従業員が企業に申し出る必要があります。育児休業の分割取得については、2回取得できる産後パパ育休とは別途取得が可能です。

また1歳以降の育児休業の延長について育休開始日が柔軟化され、保育所に入所できない等の場合、夫婦が育休を途中交代できます。これまで再取得ができなかった1歳以降も、特別な事情がある場合に限り再取得が可能となります。

④有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和:2022年4月施行

改正前は有期雇用労働者の育児・介護休業取得について、以下の2点が要件となっていました

(1)引き続き雇用された期間が1年以上
(2)1歳6カ月までの間に契約が満了することが明らかでない

改正後には(1)の要件が撤廃され、(2)のみとなります。これより無期雇用労働者と同様の取り扱いになりますが、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は労使協定の締結により除外が可能です。

⑤育児休業取得状況の公表の義務化

大企業(従業員数1,000人超)は、育児休業等の取得状況を公表することを義務付けられます。公表はインターネットなど誰でもアクセスできる方法で行う必要があり、公表内容は男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です

3.産後パパ育休(男性版産休)のメリット・デメリット

2022年4月から、育児・介護休業法が段階的に施行されています。法改正の5つの柱の概要をまとめると、以下となります。

企業側のメリット・デメリット

従業員が新制度の産後パパ育休を取得することで、従業員および従業員の家族を大事にする企業として企業イメージを向上させるメリットがあります。またワークライフバランスの実現により、女性だけでなく男性にとっても働きやすい企業としてアピールできるほか、男女の雇用や待遇差の是正をはじめ、多様な人材の雇用にもつながります。

デメリットとして、休業後の復帰の支援や人材確保といった社内体制の整備対応に手間がかかる点が挙げられます。また、男性従業員が育休を取得しやすい雇用環境を整備するためにも相応の時間や対応が必要になります。職場で休業を取得する従業員がいると、それ以外の従業員にその分の業務負担かかかる場合も往々にしてあるため、業務量増加への不満をカバーするための対策を別途講じる必要が出てきます。

従業員側のメリット・デメリット

産後パパ育休を取得する従業員側の第一のメリットは、育児に専念できる点です。休業期間中に夫婦で協力して育児をすることにより、育児の困難さやノウハウなどを共有することができます。産後の女性をサポートして育児に関わることで、産休・育休後にも、育児がスムーズに進められる効果も期待できます。

共働きが一般的となる現代、この新制度を使いやすくすることは、既婚者の従業員が育児とそれに伴う生活を支えることに直結する、と言ってもよいでしょう。

このほかにも、後述する育児休業給付金を得られる点も大きなメリットです

一方でデメリットとしては、休業後に仕事にスムーズに復帰できるか、人事評価が下がらないかといった不安や、産休取得中に収入が減るリスクが生じることが挙げられます。産休取得を理由に会社が解雇や退職強要、不利益な取り扱いなどを行うことは禁止されていますが、評価が下がり昇進が遠のくことへの影響や職場復帰の際のハラスメントに不安を持つ人は多いようです。

4.「社会保険料の免除の要件」の変更

今回の育児・介護休業法の改正では、育休中の保険料免除要件についても見直されました。育休当該月の保険料が免除となる従来の要件は「その月の末日が育休中である場合」でしたが、2022年10月以降は、以下要件が追加されます。

・その月の末日が育休中でなくとも、同一月内に14日以上の育児休業を取得した場合
・ただし、賞与に係る保険料については連続して1カ月を超える育児休業を取得した場合に限る

5. 男性の育児休業給付金

通常の休業時には会社からの給与支給はありませんが、産後パパ育休中および育児休業中は、要件を満たすことで雇用保険の育児休業給付金を受給できます。

・受給資格

1.休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は就業し ている時間数が80時間以上の)完全月が12カ月以上あること。
2.子どもが1歳6カ月になる日までに契約が満了にならない期間雇用者


2022年10月からは育児休業給付金の制度が変更され、育児休業の分割取得に合わせて、1歳未満の子について原則2回の育児休業まで育児休業給付金の受給が可能です。

・支給額
休業開始時賃金日額(原則、育児休業開始前6カ月間の賃金を180で除した額)×支給日数×67%

※支給された日数は、育児休業給付の支給率67%の上限日数である180日に通算される。
※育児休業開始から6カ月経過後は50%

2022年10月からは育児休業給付金の制度が変更され、育児休業の分割取得に合わせて、1歳未満の子について原則2回の育児休業まで育児休業給付金の受給が可能です。

また新設された産後パパ育休に対応する期間に受給する給付金は、名称が「出生時育児休業給付金」となります。

6. まとめ

通称、男性版産休とも言われる「産後パパ育休」は、育児・介護休業法改正に伴い新設された制度です。休業2週間前までに申請することで、子どもの出生後8週間以内に最長4週間休業できます。

現行の育休と異なり、まとめて申し出れば分割して2回取得が可能です。また法改正に伴い、すべての企業に対して雇用環境の整備および育休の個別周知・意向確認の措置が義務化されました。

新制度で休業を取得しやすくなったことにより、今後は育児のため休業取得を希望する男性従業員の増加が予想されます。企業側は制度を正しく理解し、休業を取得しやすい環境と同時に、従業員全体が働きやすい職場環境を整える必要があります。

7.仕事と育児の両立支援を行うなら

育児休業の取得促進や仕事と育児の両立支援には、会社全体として多様な働き方を推進していく必要があります。テレワークや時短勤務、フレックスタイム制などがその例です。さまざまな働き方を導入・運用するにあたっては、現場の実務だけではなく勤怠管理上の問題が浮上する場合もあります。

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