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基礎知識

有給取得率の平均は?自社が低い場合の原因や問題、高める方法を解説

著者:チームスピリット編集部

「自社の有給取得率が、他の企業と比べて高いのか低いのか知りたい」

「自社の有給取得率が平均より低いとして何か問題なのか?」

「問題があれば、高める方法を知りたい」

このような疑問や悩みを抱えていませんか。

有給取得率は、高めれば従業員のモチベーションや定着率の向上が期待できます。その一方で、低いことでモチベーションの低下を引き起こしたり、離職に至ってしまったりするケースがあります。

本記事では、有給取得率の基礎知識や企業の平均取得率を紹介します。その後、有給取得率が低くなる原因や低い場合に高めるべき理由、有給取得率を向上させるポイントも解説するので、ぜひ参考にしてください。

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有給休暇管理のマニュアルとしてご活用ください

  • 残業管理のルールの理解や実務の知識が乏しく、不安がある
  • 勤怠管理を行う上で、有給休暇の基本ルール・仕組みを知っておきたい
  • 有給休暇に関する法令など、適切な勤怠管理における自社の課題を把握しておきたい

本資料では、人事労務担当者なら知っておきたい基礎や複雑な法令の解説などを分かりやすくまとめております。適切な有給休暇管理を運用するために、ぜひ本資料をお役立てください。

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有給取得率とは

有給取得率(年次有給休暇取得率)とは、付与された有給休暇日数のうち、実際に取得した(使った)割合を指します

詳細は後述しますが、有給取得率は「有給休暇の取得日数計÷全従業員の有給休暇付与日数計×100(%)」で算出されます。たとえば、有給休暇の付与日数が48日で、従業員の有給休暇取得日数が31日なら、「31÷48×100=64%」となります。

なお、有給取得率は、個人単位、企業単位の2種類で算出可能です。

  • 個人単位:企業が付与した有給休暇のうち、ある従業員が実際に有給休暇を使った割合
  • 企業単位:企業が全従業員に付与した有給休暇日数のうち、実際に従業員が有給休暇を取った割合

上記の通り2種類あり、報道される調査は企業単位の集計結果であることが多いです。

有給取得率は、企業の健全性を評価する上で役立ち、日本の企業水準よりも低いなど取得状況に問題がある場合には高めていく必要があります。

なお、有給取得率は「有給消化率」と称されることもありますが、同じ意味です。

そもそも有給とは

有給取得率の理解を深めるため、有給休暇(年次有給休暇)の定義や条件を改めて確認しておきましょう。

そもそも有給休暇とは、労働基準法で定められた、給与の発生する休日を指します。労働基準法では、以下の条件を満たす場合には、有給休暇を従業員に付与する必要があると定められています。

  • 労働者が6カ月間継続勤務している
  • その6カ月間の全労働日の8割以上出勤している

有給休暇の最低付与日数は通常の従業員の場合、10労働日分、つまり1年間で10日間の有給休日を付与しなくてはなりません。有給休暇は、継続勤続年数に応じて増えていき最大で20日です。

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※引用(PDF)年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省 労働基準関係リーフレット

有給休暇は、従業員に心身の疲労を回復してもらい、ゆとりある生活を送ってもらったり、業務のパフォーマンスを高めてもらったりするために設けられた制度です。そのため、従業員に有給取得をさせられていない場合には、取得向上に向けて取り組むことが企業には求められます。

有給休暇に関しては、以下もご覧ください。

有給休暇とは?付与日数やタイミングを労働基準法をもとに解説 | 基礎知識

有給取得率の平均

厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査の概況」によると、2022年(2024年2月現在最新)における企業全体の有給取得率は62.1%でした。

同調査では企業規模別や業種別に有給取得状況が調査されており、その詳細は以下の通りです。

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企業規模別に見ると、企業規模が30~99人は平均取得率は57.1%、そこから在籍人数が増えるごとに数値が上がっていき、1,000人以上は65.6%となっていました。中小零細企業は有給取得率が低く、大企業ほど有給取得率が高い状況が窺えます。

業種別に見ると、最も平均取得率が高いのは複合サービス事業74.8%で、最低値は宿泊業,飲食サービス業49.1%でした。業種によっても有給の取得のしやすさが大きく異なることがわかります。

また、以下は日本の有給取得率の年次推移となっており、近年では毎年有給取得率が上昇していっている状況です。

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このように、企業規模や業種別に有給取得状況にばらつきはあるものの、企業全体の有給取得率は年々向上しています。その背景としては国を挙げてワークライフバランスの推進に取り組んでおり「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられたことや、従業員の有給休暇取得状況を管理できるツール(勤怠管理システム)が普及していることなどが考えられるでしょう。

参考(PDF):令和5年就労条件総合調査の概況|厚生労働省

参考(PDF):年5日の年次有給休暇の確実な取得|厚生労働省

有給取得率の計算方法

有給取得率は個人と企業に分けて考えられます。ここではそれぞれの計算式を解説します。

個人の有給取得率

個人の有給取得率は、以下で計算可能です。

「個人の有給取得率=算定期間中の有給休暇の取得日数計÷算定期間中の有給休暇の付与日数計×100(%)」

たとえば、ある従業員の有給休暇が年16日、実際に取得したのが10日だったとします。その場合の計算式および有給取得率は、「10÷16×100=62.5(%)」です。

個人単位の有給所得率を計算することで、部署や役職、年齢による取得率のギャップを把握できるようになります。取得率に差がある場合、なぜ差が発生しているか原因を考えましょう。その原因に対して適切な対策を講じていくことで、個人間の有給取得率の偏りを解消でき、企業全体の有給取得率の向上につなげられます。

企業の有給取得率

企業の有給取得率を算出したい場合の計算式は以下です。

「企業の有給取得率=全従業員の有給休暇の取得日数計÷全従業員の有給休暇付与日数計×100(%)」

たとえば、企業が以下のような様態で従業員に計48日の有給休暇を付与したとします。

付与日数

取得日数

従業員A

20

12

従業員B

18

14

従業員C

10

5

48

31

この場合の有給取得率は、「31÷48×100=64(%)」です。

有給取得率を高めるべき理由

有給取得率を高めることが必要な理由としては、以下の3つが挙げられます。

  • 従業員のエンゲージメントが高まるから
  • 採用活動が有利になるから
  • 離職者数を減らせるから

それぞれの理由を詳しく解説します。有給取得率が低いことの問題についても触れるので、あわせて参考にしてください。

従業員のエンゲージメントが高まるから

有給取得率を向上させれば、従業員が企業への愛着や帰属意識を抱くようになり、エンゲージメントの向上が期待できます。

有給取得率が低く、休みが十分に取れない状態で働くことは、肉体的に疲弊しやすいです。また、自身を大切にしてくれない会社への不満や、しっかりとリフレッシュができないことへのストレスから、精神的にも負担がかかるでしょう。

しかし、有給取得率を改善して休日の日数が増えれば、しっかりと休めるようになり、心身の疲れを回復させられます。労働環境の改善に向けて取り組んでいる会社への印象も良くなり、「従業員のことを思ってくれている」といった気持ちから、会社への帰属意識や評価も高まりやすいです。そうした気持ちが、エンゲージメントの向上につながるのです。

エンゲージメントが上がれば、業務に対するモチベーションが高まったり、それをきっかけに生産性が向上したりします。

採用活動が有利になるから

有給取得率が高い場合、採用活動を有利に進められるようにもなるでしょう。昨今では、ワークライフバランスへの関心が高まっていることから、有給取得率の高低は求職者から見て志望先の企業を検討する重要な要素となります。

自社の有給取得率が高ければ、仕事と生活にしっかりとメリハリを付けられるイメージや、労働環境がホワイトな印象を抱いてもらいやすく、入社を検討する動機になりやすいです。

反対に、自社の水準が他社と比べて低い場合は、志望候補から外されてしまうリスクがあるでしょう。

有給取得率が高ければ採用活動が有利になり、低ければ不利になるため、取得率を高めていくことが大切です。

離職者数を減らせるから

有給取得率の改善は、離職者数を減らす上でも役立ちます。既に在籍している従業員にとって、十分に休みが取れない状態、法定水準に達していない状態は、転職を志望する一つの動機になりえます。そのため、これまで自社を退職した従業員の中には、自社の有給取得率が低いことが原因で、離職に至った従業員もいるかもしれません。

しかし有給取得率を高めて従業員をしっかりと休めるようにすれば、休みが少ないことへの不満は減り、それを原因とした離職も減らせます。従業員の離職率低下、定着率向上を果たす一つの手段として、有給取得率の向上に向けて積極的に取り組んでいくことが重要です。

有給取得率が低くなる原因

企業の有給取得率が低くなる代表的な理由は、従業員が取得することに対して「ためらい」を感じることにあるでしょう。

厚生労働省の「年次有給休暇取得促進特設サイト」に掲載された令和4年度の調査結果によると、労働者が有給休暇を取得しない理由は以下の通りでした。

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※引用:事業主の方へ年次有給休暇取得促進特設サイト|厚生労働省

「ためらいを感じる(12.7%)」「ややためらいを感じる(28.7%)」と、ためらいを理由として有給休暇取得に前向きでない労働者が4割を超えています。

有給休暇にためらいを感じる理由としては、「みんなに迷惑がかかる」「職場の雰囲気で取得しづらい」「上司がいい顔をしない」が挙がっており、周囲の社員との関係性を考えて取得しない人が多いようです。

こうした気持ちが生まれる背景には、仕事が属人化していて自身が抜けることで業務が回らなくなることが挙げられます。また、「周囲が有給を取れていない状況で自分だけ取るのは気が引ける」といった気持ちもあるでしょう。

有給取得率を高めるには、企業が率先して全従業員に対して有給休暇の取得を推奨し、有給を取ることが当たり前の環境を形作っていくことが大切です。

また、「後で多忙になるから」といった理由も回答の36.0%を占めるなど、業務の多忙さも有給所得を妨げる要因です。そのため、業務を効率化するなどして業務の負担を減らすことも、有給取得率を高める上で重要な要素となるでしょう。

有給取得率を向上させる5つの取り組み

有給取得率を高めるために企業にできることとしては、以下の5つが挙げられます。

  • 有給休暇を取得しやすい環境を作る
  • 計画的付与制度を活用して有給休暇の取得日を割り振る
  • 半日単位・時間単位での有給休暇付与制度を取り入れる
  • 時季指定権と時季変更権による付与をする
  • 「年次有給休暇管理簿」の作成と管理・運用をする

それぞれ、どのように取り組んでいけばよいかを解説します。

有給休暇を取得しやすい環境を作る

有給休暇を取得しやすい環境とは、周囲の目を気にすることなく有給取得ができたり、業務に支障をきたすことなく取得できたりする環境です。

そうした環境を構築するには、有給休暇の種類を増やすことや組織体系を改変させることが有効です。

たとえば、詳細は後述しますが「計画的付与制度」や「半日単位・時間単位での有給休暇付与制度」「時季指定権と時季変更権」を活用することで、従業員が有給休暇を取得しやすくなります。

また、従業員一人ひとりの業務量や繁忙期を把握して、有給取得をしやすいように担当業務の内容を見直すことも有効です。普段時間がかかっている業務をツールの導入によって時短化するなど、組織全体で業務効率化を図れば業務量を減らせるでしょう。そうして業務量を減らすことによっても、有給休暇が取得しやすくなるはずです。

計画的付与制度を活用して有給休暇の取得日を割り振る

「計画的付与制度」とは、有給休暇の取得日を定めた労使協定を締結することで、計画的かつ確実に従業員に有給休暇を取得させられる制度です。

通常、有給休暇は従業員の希望日程に基づき付与することになっていますが、計画的付与制度では会社が休みを取る日(有給休暇)を指定できます。それによって、従業員の意志にかかわらず、有給休暇を取得してもらえるようになります。

ただし、従業員が自ら希望できる取得日数を少なくとも5日残さなければいけません。たとえば、有給休暇が20日付与される従業員については、最大で15日分を計画年休として付与することができますが、残りの5日は従業員自身に希望日を選択してもらう必要があります。

※参考:労働基準法 第39条第6項| e-Gov法令検索

半日単位・時間単位での有給休暇付与制度を取り入れる

有給休暇は1日単位での取得が原則ですが、従業員が半日単位の取得を希望し企業側が同意した場合には、半日単位の有給休暇を取得することができます。半日単位の有給取得は、労使協定が締結されていない場合でも可能です。半日単位の取得は、年5日の取得義務日数の計算に0. 5日分として含めることができます。

※参考:労働基準法 第39条第4項| e-Gov法令検索

また、時間単位での有給付与も、有給取得率を高める上で効果的です。労使協定を締結することにより、従業員が時間単位の取得を希望した場合には、年5日分を限度として時間単位で有給休暇を付与することもできます。たとえば、所定労働時間が8時間で有給休暇が20日付与された従業員の場合は、労使協定が締結されていれば有給休暇5日分にあたる40時間を、時間単位の有給休暇として取得することができます。

ただし、時間単位の取得は年5日の取得義務日数の計算に含めることはできません。また、半日単位と異なり、労使協定の締結が必要になる点には注意しましょう。

半日単位・時間単位の有給休暇を取り入れれば、最低限やらなければいけない業務を支障なくこなせるようになるため、「周囲に迷惑がかかるから」「後で多忙になるから」「有給は取らない」といった問題を解決できるようになります。

半日・時間単位での有給休暇を、紙やエクセルで管理する場合は大変ですが、勤怠管理システムを用いれば以下のように従業員一人ひとりの取得状況を手軽に把握可能です。従業員の有給取得状況をツールが自動で集計し、現在の残日数・時間を一覧にできます。(※細かい性能はツールによって異なります)

▼勤怠管理システムの有給休暇付与状況レポートの画面

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時季指定権と時季変更権による付与をする

「時季指定権」と「時季変更権」を用いることによっても、有給休暇の付与日数を高められます。

従業員が希望した日を有給休暇と指定することを「時季指定」といい、企業が取得日を変更することを「時季変更」といいます。時季指定権と時季変更権は、従業員が希望した日に有給休暇を取得させると事業の正常な運営を妨げる場合に、企業が取得日を変更できる制度です。

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どちらのパターンで有給休暇を取得しても、年5日の取得義務日数の計算に含めることができます。時季指定権、時季変更権を用いれば、有給取得日数を高められます。また、従業員が休んでも業務に支障のないタイミングで有給を取ってもらえるようになるため、有給を推進する会社の負担を減らせるのも利点です。

年次有給休暇管理簿の作成と管理・運用をする

有給取得率を高めるには、従業員の有給取得状況をしっかりと把握・管理していくことが重要です。これを実現するために、「年次有給休暇管理簿」を作成しましょう。この管理簿は、有給休暇の管理・運用に役立つツールです。年次有給休暇管理簿を作成し、従業員と共有することで以下のメリットが得られます。

  • 【企業側】取得状況を一覧でき、年5日の取得義務違反のリスクを抑えられる
  • 【従業員側】自身の取得状況と残日数を確認でき、有給休暇取得の計画を立てやすくなる

手書き、エクセル(Excel)などで年次有給休暇管理簿を作成する方法もありますが、おすすめなのは勤怠管理システムで管理することです。

多くの勤怠管理システムには以下の機能が備わっており、従業員の有給取得状況を適切に把握・管理することが可能です。

  • 有給休暇の残日数や基準日、付与日数、取得率の計算をリアルタイムで行える機能
  • ボタン一つで年次有給休暇管理簿の作成や有給休暇の付与ができる機能
  • 有給休暇の取得日数が足りていない従業員がいるとアラートで通知する機能

特に「クラウド(SaaS)」型の勤怠管理システムを使用すれば、データはサービス提供会社がクラウド上に保管されるため、紙の管理簿の保管場所に悩むことはありません。法改正に対応して自動でアップデートが行われる製品も多く、効率的に従業員の有給休暇を管理できるようになります。

以下は勤怠管理システムの機能一例です。画像1枚目のレポート画面では個人の取得状況が把握でき、画像2枚目のレポート画面では全体の取得状況や取得義務未達成者の一覧などが確認できます。

▼勤怠管理システムの機能一例(年次有給休暇管理レポート画面1)

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また、時間単位の有給休暇を設定できるシステムもあります。

▼勤怠管理システムの機能一例(時間単位有給の申請画面)

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勤怠管理システムを活用すると、従業員が自身の有給休暇の残日数をすぐに確認できるようになるため、有給休暇取得の促進にもつながります。企業側にとっても、計算ミスや法律違反を防ぐ効果が期待できるのが大きな利点です。

まとめ|有給取得率を高めるには、勤怠管理システムを活用しよう

有給休暇の取得率が低い場合、「従業員のエンゲージメントや業務へのモチベーション低下」「離職率の向上」「求職者の減少」など、さまざまな問題が生じます。そのため有給休暇の取得率を高めることが重要です。従業員に今よりも多く有給休暇を取得してもらうには、企業主導で取り組んでいく必要があります。

ただし、各種施策を講じていく上で、企業側に多くのリソースがかかることが難点です。日々の業務で忙しい中でも効率的に有給休暇の取得を推進していくには、有給休暇の取得状況を管理できる勤怠管理システムの利用が有効です。勤怠管理システムを活用して、有給取得率を高めていきましょう。

勤怠管理システムの選び方については、以下の記事を参考にしてください。

勤怠管理システムの選び方と比較表|種類や機能も徹底解説

【社労士監修】

有給休暇管理のマニュアルとしてご活用ください

  • 残業管理のルールの理解や実務の知識が乏しく、不安がある
  • 勤怠管理を行う上で、有給休暇の基本ルール・仕組みを知っておきたい
  • 有給休暇に関する法令など、適切な勤怠管理における自社の課題を把握しておきたい

本資料では、人事労務担当者なら知っておきたい基礎や複雑な法令の解説などを分かりやすくまとめております。適切な有給休暇管理を運用するために、ぜひ本資料をお役立てください。

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