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年次有給休暇の年5日取得義務とは?罰則や取得させるための方法も解説

著者:チームスピリット編集部

年次有給休暇を10日以上付与された従業員は、付与された日から1年以内に5日間の有給休暇を確実に取得しなければなりません。有給休暇の取得が義務化されたことは知っているけれど、以下のような点がよく分からず不安に感じているという方も多いのではないでしょうか。

  • 誰が年5日取得義務の対象者か
  • いつまでに5日取得しないといけないのか

本記事では、年5日の有給休暇取得義務について、担当者が知っておくべきルールや必要な対応などを網羅的に解説していきます。

従業員に年5日の有給休暇を取得させるための方法も提案しているので、年5日の有給休暇の取得義務化に不安を感じている方はぜひご覧ください。

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  • 残業管理のルールの理解や実務の知識が乏しく、不安がある
  • 勤怠管理を行う上で、有給休暇の基本ルール・仕組みを知っておきたい
  • 有給休暇に関する法令など、適切な勤怠管理における自社の課題を把握しておきたい

本資料では、人事労務担当者なら知っておきたい基礎や複雑な法令の解説などを分かりやすくまとめております。適切な有給休暇管理を運用するために、ぜひ本資料をお役立てください。

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年次有給休暇の年5日取得義務とは?

年次有給休暇を10日以上付与された従業員については、付与された日から1年以内に有給休暇を5日以上取得させなければいけません。これは労働基準法第39条第7項により企業の義務とされています。

この義務のことを「年5日の取得義務」もしくは「年休5日取得義務」と呼びます。

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。

※引用:労働基準法 第39条第7項 | e-Gov法令検索

有給休暇は、付与条件を満たした従業員に対して1年間で最大20日付与される、疲労回復を目的とした休暇です。その名のとおり休暇中でも賃金が支払われます。

年5日取得義務をスムーズに理解するために、まずは有給休暇の付与条件や付与日数についておさらいしましょう。

有給休暇は次の2つの条件に該当している従業員全員に対して付与します。

  • 雇入れの日から6カ月継続して雇われている
  • 出勤率が8割以上ある(全労働日の8割以上出勤している)

有給休暇の付与日数は以下の表のとおりです。

▼通常の労働者に対する付与日数

継続勤務日数

6カ月

1年6カ月

2年6カ月

3年6カ月

4年6カ月

5年6カ月

6年6カ月以上

付与日数

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

有給休暇の付与条件や付与日数などの詳細については、以下の記事をご覧ください。

有給休暇とは?付与日数やタイミングを労働基準法をもとに解説

年5日取得させる必要がある従業員の範囲

有給休暇の年5日取得義務は「年10日以上の年次有給休暇を付与された従業員」が対象です。対象者にはパート・アルバイトや管理監督者、有期契約社員も含まれます。

以下の図の赤枠内に該当する従業員には、付与した日から1年以内に少なくとも5日の有給休暇を取得させなければなりません。

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※参考:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省リーフレットシリーズ労基法第39条

年5日の取得義務がある従業員をまとめると次のとおりです。

  • 雇入れ(入社)の日から6カ月経過した正社員
  • 雇入れ(入社)の日から3年6カ月経過した時点で週4日労働しているパート・アルバイト
  • 雇入れ(入社)の日から5年6カ月経過した時点で週3日労働しているパート・アルバイト

パート・アルバイトは、雇用しているうちに週の所定労働日数が変更となるケースもあります。その場合は有給休暇を付与する日(基準日)の週所定労働日数で判断します。

例えば「週所定労働日数が3日だった従業員が、雇入れの日から3年6カ月経過した日に週所定労働日数4日で働いている」というケースでは、有給休暇が10日付与され、年5日取得義務の対象者となります。

有給休暇を5日取らないといけない期間

年5日の有給休暇は、付与された日から1年以内に取得する必要があります。有給休暇を付与した日を基準日といいます(一部例外のケースもあります)。

例えば、2023年4月1日に入社した場合は以下のような基準日のサイクルとなり、2029年10月1日以降は付与日数が20日となります。

有給休暇を5日取らないといけない期間 01.jpg

有給休暇を前倒しで付与したケース

有給休暇を法定の基準日より前倒しで付与した場合には、付与した日から1年以内に有給休暇を5日取得させる必要があります。また、この場合には初回の基準日から1年後が2回目の基準日となります。

有給休暇を5日取らないといけない期間 02.jpg

この場合は、2029年4月1日以降に付与日数が20日となります。

有給休暇の一部を前倒しで付与したケース

「雇入れ(入社)時に有給休暇を5日付与」「6カ月経過した日に5日付与」というように、有給休暇の一部を法定基準日より前倒しで付与するケースもあります。

この場合は初回付与した日が基準日となりますが、5日取得の義務は付与日数の合計が10日になった日に発生します

例えば、有給休暇を2023年4月1日の入社と同時に5日、2023年10月1日にさらに5日付与された場合の基準日のサイクルは次のとおりです。

有給休暇を5日取らないといけない期間 03.jpg

なお、付与日数の合計が10日になる日以前に取得された有給休暇については、取得した日数分を義務である5日から控除します。

例えば、上記の例のように一部前倒しで付与された従業員が、2023年4月1日から2023年9月30日の間に有給休暇を3日取得した場合を考えてみましょう。この場合、基準日のサイクルは以下のようになります。

有給休暇を5日取らないといけない期間 04.jpg

基準日が2つあり、期間が重複しているケース

例えば「2023年4月1日に入社し、2023年10月1日に法定どおり10日を付与したが、その後は毎年4月1日を基準日に統一している」というケースです。この場合は、2024年4月1日に2度目の付与(11日分)が発生します。

このような場合における基準日のサイクルは、以下の2パターンが認められています。

1.原則(原則どおりそれぞれの基準日から1年以内に5日取得させる)

有給休暇を5日取らないといけない期間 05.jpg

2.期間に応じて日数を按分する方法

有給休暇を5日取らないといけない期間 06.jpg

※取得義務である5日を12カ月で割り、2023年10月1日から2025年4月1日までの期間18カ月を乗算する(5日÷12カ月×18カ月=7.5日)

2の按分する方法では取得義務日数の計算が必要ですが、基準日管理の手間は原則より少なくて済みます。年度や月の途中での入社が多い企業だと、従業員ごとに基準日を管理するのに大変な負担がかかります。そのような場合は、入社2年目からは基準日を統一するなどして按分する方法を選択すると、年5日取得義務の管理負担が少なくなるでしょう。

有給休暇を抜けもれなく年5日取得させるためのポイント

業務や従業員の状況などにより、有給休暇を年5日取得させることに苦労している方も多いかもしれません。本章では、有給休暇を年5日取得させるための方法を4つ紹介します。

  1. 計画年休(計画的付与)の活用
  2. 基準日から一定期間経った時点での時季指定権行使
  3. 半日単位の取得
  4. 勤怠管理システムの利用

ポイント1.計画年休(計画的付与)の活用

計画年休は、労働組合または労働者の過半数代表者と労使協定を締結し、前もって有給休暇取得日を割り振る方法です。計画年休では、付与日数から5日を除いた残りの日数を計画的付与の対象にできます。

例えば、有給休暇を20日付与された従業員については、最大15日分の取得日を企業側が割り振ることができます。夏季や年末年始に計画年休を割り振ることによって長期の連休にすることも可能です。

ほかにも、計画年休の効果的な使い方として以下のような方法があります。

  • ブリッジホリデー:暦の関係で飛石連休となっている場合に、休日の橋渡しとして計画年休を設定する
  • アニバーサリー休暇制度:あらかじめ日にちが確定している誕生日や記念日に計画年休を設定する

労使協定の締結手続きが必要ですが、計画年休で取得した有給休暇は取得義務の5日に含められるので、年5日の確実な取得に貢献します。

ポイント2.基準日から一定期間経った時点での時季指定権行使

時季指定権とは、従業員の希望を聞いたうえで企業側が有給休暇の取得日を指定できる権利のことです。基準日から一定期間が経過しても有給休暇の取得日数が5日未満の従業員に対しては、この権利を行使できます。

過去の実績を見て取得日数が著しく少ない従業員への対応として活用するとよいでしょう。

ポイント3.半日単位の取得

有給休暇は1日単位での取得が原則ですが、従業員が半日単位での取得を希望し企業側が同意した場合には、半日単位の有給休暇を取得することができます。

半日単位の取得でも、0.5日分として年5日の取得義務日数に含めることができます。

ポイント4.勤怠管理システムの利用

勤怠管理システムでは、有給休暇の残日数や基準日をリアルタイムで計算し、確認することができます。従業員も自分の有給休暇残日数を担当部署などに尋ねる手間無く確認できるため、有給休暇の取得促進にも繋がるでしょう。

企業や担当者にとっても、従業員の取得状況が一覧できるため、年5日取得義務の達成状況を簡単に把握できます。

▼勤怠管理システムの年次有給休暇管理レポート画面

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また、有給休暇の取得状況についてアラート通知を出せるシステムを選択すれば、より取得義務違反のリスクを減らすことができます。

有給休暇を5日取れなかった場合の罰則

有給休暇の取得義務を守れなかった場合は、労働基準法第39条第7項違反として1人あたり30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。

例えば、取得義務の対象となる従業員のうち10人が5日以上の有給休暇を取得できなかった場合は300万円の罰金が科される可能性があります。

書類送検された例

労働基準法違反が発覚し、行政の指導を受けても改善しなかったり悪質であったりする場合には、書類送検され、取り調べ等を受けたうえで罰則が科されることがあります。年5日の有給休暇を取得させておらず、実際に書類送検された例を2つ挙げます。

▼有給休暇を年5日取得させなかったケース

内容:取得義務のある従業員全員に対して取得させていなかった

罰則状況:労働基準法第39条違反で書類送検

※参考:年休の時季指定怠り送検 労働者全員が未取得 龍ヶ崎労基署|労働新聞社

▼年5日取得義務を果たしていなかったにもかかわらず虚偽陳述したケース

内容:年5日の有給休暇を取得させていない従業員がいるにもかかわらず、虚偽の内容を記載した年次有給休暇管理簿を提出し、虚偽の陳述をした

罰則状況:労働基準法第101条(報告等)違反で書類送検

※参考:年休5日の義務果たさず 虚偽陳述で会社送検 久留米労基署|労働新聞社

取得義務の対象者が5日取得できなかった場合でも、ただちに罰金が科されるわけではなく、まず労働基準監督署の指導が入ります。もし是正するよう指導を受けた場合には、この段階で必ず改善しましょう。

まとめ|年5日取得義務を正しく理解して取得させるための工夫をしてみよう

有給休暇を年に10日以上付与される従業員については、年に5日を確実に取得させることが義務化されました。年5日取得できなかった場合には1人あたり30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。

具体的には以下の方が年5日取得義務の対象者に該当します。

  • 雇入れ(入社)の日から6カ月経過した正社員
  • 雇入れ(入社)の日から3年6カ月経過した時点で週4日労働しているパート・アルバイト
  • 雇入れ(入社)の日から5年6カ月経過した時点で週3日労働しているパート・アルバイト

これらの方は、有給休暇が付与された日(基準日)から1年以内に5日取得しなければなりません。有給休暇の全部や一部を法定の基準日より前倒しで付与した場合には、付与日数の合計が10日以上になった日から1年以内に5日取得する必要があります。

従業員に年5日取得させることが困難な場合には、以下のような方法も検討してみてください。

  • 計画年休(計画的付与)の活用
  • 基準日から一定期間経った時点での時季指定権行使
  • 半日単位の取得
  • 勤怠管理システムの利用

まずは対象者を把握し、上記のような方法によって有給休暇の取得を推進して、年5日取得義務を果たしましょう。

【社労士監修】

有給休暇管理のマニュアルとしてご活用ください

  • 残業管理のルールの理解や実務の知識が乏しく、不安がある
  • 勤怠管理を行う上で、有給休暇の基本ルール・仕組みを知っておきたい
  • 有給休暇に関する法令など、適切な勤怠管理における自社の課題を把握しておきたい

本資料では、人事労務担当者なら知っておきたい基礎や複雑な法令の解説などを分かりやすくまとめております。適切な有給休暇管理を運用するために、ぜひ本資料をお役立てください。

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