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基礎知識

休日出勤とは?割増賃金の有無や計算方法6パターンを網羅的に解説

著者:チームスピリット編集部

休日出勤とは「企業が休日と定めた日(労働義務を負わない日)」に出勤することをいいます。

  • 休日には、法定休日と法定外休日がある
  • 法定休日に労働させた場合には「休日労働の割増賃金(割増率35%以上)」を支払う
  • 法定外休日の場合には、休日労働の割増賃金は支払わなくてよいが、週40時間を超えることが多く、超えた場合には「時間外労働の割増賃金(割増率25%以上)」を支払う

休日出勤に関する用語や考え方は理解が難しく、順を追って正しく整理していかないと、混乱してしまいがちです。

労務担当者は、労働時間の集計および給与計算をする上で、休日出勤の割増賃金に関する正しい理解が必要不可欠です。

「法定休日と法定外休日の違いがよく分からない」「割増賃金が発生するケースとしないケースが理解しにくい」など、休日出勤の労働時間や給与計算を正しく行うための知識を知りたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

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  • 残業管理のルールの理解や実務の知識が乏しく、不安がある
  • 時間外・休日・深夜労働における割増賃金の計算方法がわからない
  • 残業に関する法令など、適切な残業管理における自社の課題を把握しておきたい

時間外労働などの基礎や複雑な法令の解説など人事労務担当者なら知っておきたいキホンを分かりやすくまとめております。適切な残業管理を運用するために、ぜひ本資料をお役立てください。

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休日出勤とは

休日出勤とは、「企業が休日と定めた日(労働義務を負わない日)」に出勤して業務を行うことを指します。

例えば完全週休二日制の会社で、土・日・祝日が休日とされている場合、土・日・祝日に労働したケースが「休日出勤」に該当します。

しかしながら、同じように見える休日でも、「割増賃金が発生する休日」と「割増賃金が発生しない休日」の両方がある、という点に注意が必要です。

割増賃金が発生する休日は「法定休日」のみ

例えば、上記の例で法定休日が日曜日の場合、休日労働の割増賃金が発生するのは日曜日だけです。

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あまり意識したことがないかもしれませんが、実は、休日には「法定休日」と「法定外休日(所定休日)」の2種類があります。休日労働としての割増賃金が発生するのは「法定休日」に働かせた場合のみとなります。

「休日出勤」と「休日労働」の言葉の違いに注意しよう

休日出勤

企業が休日と定めた日に労働させること(①②両方を含む)

①法定休日の労働(35%以上の割増賃金)

②法定外休日の労働(休日労働の割増賃金はなし)

休日労働

法定休日(法で休日と定められた日)に労働させること

「休日出勤」という言葉は、従業員からすると「通常なら休みの日に出勤すること」という広い意味で使われます。その文脈では法定休日(例えば日曜日)も、法定外休日(例えば土曜日や祝日)も両方とも「休日出勤」に該当してしまうため、理解が難しくなります。

労働者からすれば、土曜も日曜も祝日も、休みであることに違いがないからです。

一方、「休日労働」というのは、労働基準法において、法定休日に労働させることをいいます。

この記事では、「休日労働=法定休日に勤務を命じられて働くこと=35%以上の割増賃金が発生する労働のこと」として、理解しやすいよう説明していきます。

休日の種類と割増賃金

休日の5つの種類と、それぞれの「休日労働の割増賃金」との関係を表わしたのが以下の表です。

休日の種類

概要

休日労働の割増賃金

法定休日

法律で定められた最低限与えられるべき休日のこと

法定休日に労働をさせた場合、割増賃金の支払いの対象(割増賃金率35%以上)となる

法定外休日

(所定休日)

法定休日以外に企業側が定めた休日(週休完全2日制なら、1日は法定休日、もう1日が法定外休日)

法定外休日に労働をさせても、休日労働としての割増賃金は発生しない※

振替休日

従業員があらかじめ定められた休日に出勤する代わりに、前もって別の労働日を休日に振り替えること

休日と労働日を振り替えているだけなので、法定休日に働いたとしても休日労働としての割増賃金は発生しない※

代休

休日出勤が行われたあとに、代わりに別の労働日を休日とすること

休日出勤した日が法定休日であれば、休日労働と同じように割増賃金の支払いの対象(割増賃金率35%以上)となる

祝日

国民の祝日法により定められた日

祝日が法定休日ならば、割増賃金の支払いの対象(割増賃金率35%以上)となる/法定休日でなければ、休日労働としての割増賃金は発生しない(※)

(※)1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えた部分については、時間外割増賃金(割増賃金率25%以上)の支払いが必要

以下ではもう少し詳しくそれぞれ解説していきます。

法定休日

労働基準法では、1週間に少なくとも1回(例外として4週間を通じて4日以上)の休日を付与しなければならないと定められています。この休日を「法定休日」といいます。

法定休日に労働をさせると、労働基準法上の「(法定)休日労働」に該当するため、休日労働に対する割増賃金の支払いの対象となります。休日労働の割増賃金率は35%以上に設定されています。

法定外休日(所定休日)

法定外休日(所定休日)とは、法定休日以外の企業側が定めた休日です。例えば、週休完全2日制の会社であれば、1日は法定休日、もう1日は法定外休日になります。この法定外休日に労働をさせても休日労働としての割増賃金は発生しません。

ただし、時間外労働をさせた場合には割増賃金率25%以上の割増賃金の支払いが適用されます。

振替休日

振替休日とは、従業員があらかじめ定められた休日に出勤する代わりに、前もって別の労働日を休日に振り替えることです。例えば土日休みの企業で、従業員が土曜日に出勤する代わりにその前の金曜日を休日とすることを振替休日といいます。

振替休日を取得すれば他の労働日が休日となるため、もともと法定休日であった日に出勤した場合も休日出勤には該当せず、休日労働の割増賃金も発生しません。

ただし、時間外労働をさせた場合には割増賃金率25%以上の割増賃金の支払いが適用されます。

▼振替休日で時間外割増賃金が発生しないケース

曜日

種類

休日

出勤

出勤

出勤

出勤

振替休日

出勤

労働時間

0

8

8

8

8

0

8

土曜日の出勤を前もって振替休日にしており、かつ週の労働時間が40時間を超えていないため割増賃金が発生しない。

▼振替休日で時間外割増賃金が発生するケース

曜日

種類

休日

出勤

出勤

出勤

出勤

振替休日

出勤

労働時間

0

8

8

8

8

0

10

土曜日の出勤を前もって振替休日にしているため休日労働の割増賃金は発生しないが、1日の労働時間が8時間を超えているため2時間分の時間外労働の割増賃金の支払いが発生する。

なお、振替休日は代休と異なり、「休日出勤をする日より前」に、振り替える休日を決定します。

代休

代休とは休日出勤が行われたあとに、代わりに別の労働日を休日とすることを指します。振替休日と異なり、休日出勤をする前に休日を振り替えることはありません。

そのため、休日出勤した日は休日のままであり、したがって休日労働と同じく1時間あたり割増賃金率35%以上の割増賃金を支払う必要があります。

祝日

祝日とは国民の祝日法(正式名称:国民の祝日に関する法律)により定められた、「国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日」です。

「祝日は休日」というイメージがあるかもしれませんが、企業が祝日を休日と定めない場合には、祝日は休日に該当しません。したがって、祝日に業務が発生したとしても時間外労働が発生しない限り、企業は割増賃金を支払わなくてもよいとされています。

休日労働に該当するケース・しないケース(割増賃金の有無)

「この休日出勤は割増賃金の対象になるの?」という部分について分かりやすく解説していきます。

「休日労働」に該当すれば休日労働の割増賃金を支払う必要があり、該当しなければ支払わなくてよいというシンプルな構造となっています。

①休日労働に該当(割増賃金対象)

法定休日に出勤した場合

②休日労働に該当しない(割増なし)

法定外休日(所定休日)に出勤した場合

振替休日を決めていた場合

管理監督者が休日出勤した場合

①休日労働に該当するケース(割増賃金対象)

休日労働に該当するケースは、法定休日に出勤し、法律上の「休日労働」に該当するケースです。

例えば完全週休二日制の会社で、土・日・祝日が休日とされている場合、土・日・祝日に労働したケースが「休日出勤」に該当します。

しかしながら、法定休日を日曜日と定めている場合には、法定休日は日曜日のみなので、割増賃金の対象となるのは日曜日のみです。

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②休日労働に該当しないケース

休日出勤をしたとしても割増賃金が発生しない3つのケースについて解説します。

法定外休日出勤の場合

企業側が定めた休日である法定外休日(所定休日)での出勤は、休日労働の割増賃金の適用は受けません。

ただし、1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えた労働時間分は、時間外労働としての割増賃金率25%以上が適用されます。

<月曜日~金曜日が労働日、土曜日が法定外休日の場合>

月曜日~土曜日までの労働時間の合計が40時間以下
→割増賃金は発生しない

月曜日~土曜日までの労働時間の合計が40時間超
→40時間を超えた労働時間は、時間外労働として割増賃金率25%以上の適用

振替休日を決めていた場合

振替休日を決め、法定休日と定められていた日に出勤したとしても、休日労働の割増賃金の適用は受けません。これは、たとえ通常は法定休日だったとしても、振替により法定休日に定められていた日(出勤した日)は通常の労働日となり、休日労働ではなくなるというルールがあるためです。

ただし、1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えた部分については、時間外労働としての割増賃金(割増賃金率25%以上)を支払う必要があります。

管理監督者が休日出勤した場合

労働基準法で定められた労働時間や休日の規定が適用されない管理監督者が休日出勤しても、休日労働の割増賃金は発生しません。ただし、管理監督者であっても深夜労働の割増賃金(割増賃金率25%以上)は適用の範囲内です。

ただし、管理監督者に当てはまるかどうかは以下の4つの条件を満たしているかどうかで判断されます。以下の労働基準法上の管理監督者に当てはまらない単なる管理職の場合、一般の従業員と同じルールで割増賃金が支払われます。

  • 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること
  • 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること
  • 現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること
  • 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること

引用:労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために労働基準法|厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署

休日労働がある場合に会社がとるべき対応は3つ

休日労働がある場合(法定休日に出勤させる場合)に会社がとるべき対応は以下のいずれかです。

  • 対応1:休日労働として割増賃金(休日手当)を支払う
  • 対応2:事前に振替休日を取らせる
  • 対応3:代休を付与する

対応1:休日労働の割増賃金を支払う

1つ目の対応は、休日労働の割増賃金(休日出勤手当)を支払うというものです。

休日労働をさせた場合、通常の賃金に35%以上の割増賃金を上乗せして賃金を支払います。

詳しい計算方法については、後述の「休日出勤をした場合の割増賃金の計算方法」をぜひ参考にしてください。

対応2:事前に振替休日を取らせる

振替休日とは、あらかじめ休日と定められていた日を「労働日」にして、その代わりに他の労働日を休日とすることをいいます。

例えば、法定休日である日曜日を「労働日」にして、その代わりに通常は労働日としている水曜日に休みをとってもらいます。

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この場合、事前に「労働日」と「休日」を交換するため、日曜日が休日労働にならず、割増賃金は発生しません。

対応3:代休を付与する

代休とは、休日労働させた代わりに、労働日の1日を休日にすることをいいます。振替休日とは異なり、休日労働させた「あと」に、休日を付与するイメージです。

daikyuu.png

この場合、既に法定休日に働かせている(=休日労働させている)ため、日曜日に働いた分にはやはり35%以上の割増賃金が必要となります。

休日出勤をした場合の割増賃金の計算方法

ここからは、休日出勤した場合の割増賃金や賃金計算方法について、ケース別に分かりやすく解説していきます。

基本となる計算式は【1時間あたりの賃金×割増賃金率×労働時間】で、割増賃金率をまとめたものが以下の表となります。

パターン

割増賃金率(※)

①法定休日に出勤した場合

35%以上

②法定休日に出勤+時間外労働した場合

35%以上

③法定休日に出勤+深夜労働した場合

60%以上(35%+25%)

④法定外休日(所定休日)に出勤した場合

割増なし

ただし1日8時間・週40時間超の労働がある場合は、時間外労働の割増賃金(割増賃金率25%以上)

⑤祝日に出勤した場合

祝日が法定休日なら35%以上

法定休日でなく、1日8時間・週40時間超の労働がある場合は、時間外労働の割増賃金(割増賃金率25%以上)

⑥代休をとった場合

35%以上

※法律では最低限度の割増率が、上記の通り定められています。実際にはこれ以上の割増率を設定することも可能です。

①法定休日に出勤した場合

労働基準法において原則週に1日は必ず付与しなければならない法定休日の割増賃金率は35%以上です。

そのため、法定休日における割増賃金は【1時間あたりの賃金×1.35以上×労働時間】で算出します。

さらに法定休日に深夜労働(割増賃金率25%以上)が発生した場合は、割増賃金率は60%以上(休日労働の割増賃金率35%以上+休日労働の割増賃金率25%以上)になります。

労働した時間帯と時間数

割増賃金の計算式

9時~22時(12時間)

1時間あたりの賃金×1.35以上×12時間

22時~23時(1時間)

1時間あたりの賃金×1.60以上×1時間

②法定休日に出勤+時間外労働した場合

法定休日に時間外労働をした場合の割増賃金率は35%以上です。

労働基準法においては、法定休日に時間外労働をしても、時間外労働の割増賃金率25%以上は考慮しないと定められています。つまり、法定休日に時間外労働をしても、していなくても、深夜労働をしない限り割増賃金率35%のままということです。

<法定休日に時間外労働をした場合>

  • 割増賃金率:1週40時間の法定労働時間を超えた労働時間分は、時間外労働として35%以上
  • 計算式:1時間あたりの賃金×1.35以上×労働時間

例えば、法定休日に3時間の時間外労働をした場合の、時間外労働分の割増賃金は、「1時間あたりの賃金×1.35以上×3時間」で求めることができます。

③法定休日に出勤+深夜労働した場合

法定休日に深夜労働をした場合の割増賃金率は60%以上です。この割増賃金率60%は休日労働の割増率35%以上に、深夜労働の割増賃金率25%以上を加えた数字です。休日労働をした日は、通常の勤務日のように時間外労働の割増賃金は考慮しないが、深夜労働分の割増賃金はプラスして支払う必要がある、と覚えておきましょう。

<法定休日に深夜労働をした場合>

  • 割増賃金率:60%以上
  • 計算式:1時間あたりの賃金×1.60以上×労働時間

④法定外休日(所定休日)に出勤した場合

法定休日以外の休日である法定外休日(所定休日)に出勤させたとしても、休日労働の割増賃金は発生しません。通常の労働日と同様に、1日8時間を超えた分については割増賃金率25%以上の割増賃金を支払います。

また、週40時間超の労働をしている場合は、例え1日の労働時間が8時間以内であっても、時間外労働として割増賃金率25%以上の割増賃金を支払う必要があります。

例えば、月曜日~金曜日まで合計で40時間勤務を行い、土曜日に5時間働いた場合、5時間分が時間外労働としての割増賃金の支払い対象になります。この場合、企業は「1時間あたりの賃金×1.25以上×5時間」の割増賃金を支払わなければなりません。

⑤祝日に出勤した場合

就業規則等で祝日を法定休日と定めている場合に限って、企業は割増賃金率35%以上の割増賃金を支払う必要があります。

計算式は「1時間あたりの賃金×1.35以上×労働時間」です。

また、祝日が法定休日と定められていない場合は、月給の中に祝日の勤務分の賃金が含まれています。そのため、祝日に従業員が働いたとしても割増賃金は発生しません。しかし、祝日に働いたことにより、労働時間が1日8時間・週40時間を超えた場合には、超えた労働時間分を時間外労働として、1時間あたりの割増賃金率が25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。

⑥代休をとった場合

休日出勤をしたあとで別の労働日を休日とする代休は、法定休日における勤務であれば休日労働に対する割増賃金率35%以上が適用されます。法定外休日における勤務の代休であれ労働時間が1日8時間以上、週40時間以上の場合、割増賃金率は25%以上となります。

<法定休日の場合>

  • 割増賃金率:35%以上
  • 計算式:1時間あたりの賃金×1.35以上×労働時間

<休日が法定外休日(所定休日)の場合>

  • 割増賃金率:35%以上
  • 計算式:1時間あたりの賃金×1.35以上×労働時間

なお、企業が代休制度を導入する場合には、就業規則等に休日労働を行わせることがある旨を記載する必要があり、時間外・休日労働に関する協定である36協定を締結しておかなければなりません。

休日出勤は正当な理由がなければ拒否できない

36協定を締結している・就業規則に記載がある・休日出勤の必要性があるなどの条件を満たせば、会社は「適法に」、従業員に休日出勤を命じることができます

正当な理由なく休日出勤を断り続ける従業員がいる場合、懲戒事由に該当して処分を受ける対象になる可能性があります。

ただし適法であったとしても、あまりに休日出勤が多いと、従業員の満足度やエンゲージメント、働くモチベーション、生産性が低下するきっかけになることがあります。

また、転職サイトで「休日出勤が多すぎる」などのクチコミが広がってしまうと、企業の信用や評判が下がるレピュテーションリスクもあるので注意しましょう。

企業が従業員に休日出勤を命じることができる要件

前章で示した通り、一定の条件を満たせば、企業は従業員に休日出勤させることが可能です。

ただしもちろん、条件を満たさずに休日出勤させると違法になるケースも存在します。法律に違反した場合には懲役刑や罰金刑が課されることもあるので注意しましょう。

企業が従業員に休日出勤を命じることができる要件

  • 要件1:36協定を締結して労働基準監督署に届けている
  • 要件2:雇用契約書や就業規則に明記されている
  • 要件3:休日出勤をさせるための「合理的な理由」がある

企業が休日出勤を適法に命じるための要件3つについて解説していくので、しっかり内容を確認し、要件を満たした運用ができているかチェックしてみてください。

要件1:36協定を締結して労働基準監督署に届けている

法律上では「法定休日は休ませなければならない」「休日労働をさせてはいけない」というのが原則です。しかしながら、36協定を締結して労働基準監督署に届け出ることで、36協定の範囲内で、休日労働や時間外労働させることが可能となります。

逆にいえば、36協定が締結されていないのに休日労働や時間外労働をさせることは違法となります。

36協定については「36協定とは?残業に関するルールや法律・企業の義務を簡単に解説」の記事をご覧ください。

要件2:雇用契約書や就業規則に明記されている

休日出勤をさせるためには、雇用契約書や就業規則において、「休日出勤を命じることができる」旨が定められている必要があります。

もしも明記されていない場合には違法な業務命令となるため、従業員が従う義務はありません。

要件3:休日出勤をさせるための「合理的な理由」がある

会社が休日出勤を命じるためには、休日出勤をさせるための合理的な理由が必要です。

なぜならば、法律で「原則として週1日(または4週に4日)は休ませないといけない」と決まっているからです。原則休ませなければならない日に出勤させる訳ですから、「業務上の必要性」が必要になるのです。

◯「合理的な理由」として認められる可能性が高い事例

  • 突然のシステム障害などで緊急対応が必要なため、休日出勤を命じた
  • 休日開催のイベントに出展することになったため、休日出勤を命じた

✕「合理的な理由」と認められにくい事例

  • ノルマを達成していないからという理由で休日出勤を命じる
  • 嫌がらせなどによる休日出勤の命令

合理的な理由がない場合には、従業員は休日出勤を拒否することができます。

なお、企業が命じたのではなく従業員が自己の判断で業務を行った「持ち帰り残業(サービス残業)」は、指揮命令下の労働とは認められません。そのため、従業員が休日に自宅で業務を自発的に行った場合には、休日出勤には該当せず、賃金も支給されません。

ただし、こうした持ち帰り残業を上司などが黙認・許容している場合には、労働時間として認められるケースもあります。

持ち帰り残業やサービス残業ができるだけ発生しないよう、社内ルールを整備したり、PCログの取得で防止したりするなどの対策を考えてみましょう。

要件4:割増賃金や代休などの対価を提供すること

休日出勤をさせるための条件として、休日出勤をさせる代わりの対価(割増賃金や代休など)を提供することが必須となります。

何の対価もなく休日出勤させた場合には、違法となる可能性があるので注意しましょう。

違法となる可能性が高いケース

  • 休日に業務命令で参加させた研修に対して、企業が賃金を支払わない
  • 法定休日に働かせたのに、休日労働の割増賃金(35%以上)を支払わない
  • 休日に自主的に出勤しているのを上司が把握しているのに、「勝手に来ているだけだ」と賃金が支払われていない

休日出勤をさせた場合には、相応の対価を支払うことを忘れないようにしましょう。

休日出勤に関する罰則

休日出勤に関する罰則についてもまとめて解説していきます。

36協定が締結されていないのに休日出勤させた場合の罰則

36協定なしで休日労働を行わせた場合、労働基準法第35条違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となります。

週に1回(または4週に4回)以上の休日を与えなかった場合の罰則

法定休日を与えなかった場合も、労働基準法第35条違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となります。

休日出勤の割増賃金の未払いがあった場合の罰則

休日出勤をさせながら割増賃金を支払わなかった場合、労働基準法第37条違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となります。

就業規則に休日の記載がない場合の罰則

就業規則に休日の項目の記載がない場合、労働基準法第89条違反となり、30万円以下の罰金が科されます。

労働基準法では、就業規則に必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」が決められており、休日はこれに該当します。

パート・年俸制・フレックスタイム制などの休日出勤の取り扱い

最後に、さまざまな働き方ごとに休日出勤の取り扱いがどうなるかを解説していきます。

大前提として、労働基準法はフルタイム勤務社員だけでなく全ての労働者に適用されるものです。そのため、休日出勤をした場合の対価も、フルタイム社員だけではなく、さまざまな働き方の従業員にも支払わなければならないことを覚えておきましょう。

パート・アルバイトの休日出勤の取り扱い

パート・アルバイトなど、正社員よりも短い時間で働く従業員の場合にも、休日出勤の取り扱いは正社員と同じです。

正社員と同様に、1週に1日または4週に4日の「法定休日」を与える必要があり、法定休日に働かせた場合には35%以上の割増賃金を支払う必要があります。

また、1日8時間・週40時間を超える労働をさせた場合には時間外労働の割増賃金(25%以上)を支給します。

派遣社員の休日出勤の取り扱い

派遣社員の場合も、休日出勤の取り扱いは同様です。法定休日に働かせた場合には休日労働の割増賃金を、1日8時間・週40時間を超える労働時間には時間外労働の割増賃金を派遣元が支払う必要があります。

なお、派遣社員に休日出勤や法定時間外労働を命じる場合には、派遣元の36協定の範囲内で行う必要があります。派遣元の36協定の内容もしっかり把握しておきましょう。

年俸制の休日出勤の取り扱い

年俸制の場合も、月給制の社員と同じように労働基準法が適用され、必要な割増賃金を支払うのが原則となります。

年俸には、休日出勤に対する割増賃金(休日手当)は含まれません。休日出勤が合った場合には、別途、その対価となる割増賃金を支払わなければなりません。

裁量労働制の休日出勤の取り扱い

裁量労働制(みなし労働制)とは、実働時間が長くても短くても一定時間働いたとして計算される働き方のことをいいます。

裁量労働制なら「休日手当や残業手当は関係ない」と思われがちですが、それは間違いです。

月給制などと同様に、法定休日に働かせた場合には休日労働の割増賃金を支払う必要があります。

フレックスタイム制の休日出勤の取り扱い

フレックスタイム制とは、あらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、始業時間や就業時間などを労働者が自主的に決めて働くことができる制度のことです。

フレックスタイム制の場合も、法定休日に働かせた場合には休日労働の割増賃金を、1日8時間・週40時間を超える労働時間には時間外労働の割増賃金を支払う必要があります。

まとめ|間違いやすい休日出勤の計算はシステム化がおすすめ

休日出勤があった場合に、割増賃金の対象になるのか、法定労働時間を超えているかなどを、ひとつずつ手作業で管理するのは骨の折れる作業となります。

勤務開始・終了時間だけ入力すれば自動で割増率を判定してくれるようなシステムを使うことで、ミスや間違いを少なくすることができるでしょう。

また、社員が自らの意思で休日出勤を行ったり自宅でPC作業を行ったりするケースなどを厳格に管理したいのであれば、入退館管理やPCログ管理の導入なども検討が必要となります。

休日出勤を正しく管理していくためにも、ミスや間違いが起きにくいツールやシステムの活用をおすすめします。

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