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基礎知識

残業時間とは|労働基準法による定義や直近の改正ルールも解説

著者:チームスピリット編集部

労働基準法では「残業」について、どのような法律が定められ、企業は何を守らなければ行けないのでしょうか。

本記事では労働基準法における残業の考え方や定義を解説したうえで、企業担当者が知っておくべきことや、対応しなければいけないことを説明していきます。

労働基準法は2019年と2023年に改正が行われているので、それらの内容を踏まえ、大きく分けて以下の3つについて詳しく解説していきます。

①残業(時間外労働)の上限時間

1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えて労働する時間について、上限時間が罰則付きで定められた

②月60時間を超える残業の割増賃金率引き上げ(中小企業は2023年4月から)

月60時間を超える残業に対しての割増賃金率が、25%から50%へと引き上げられた

③残業代などの賃金請求権の時効延長

残業代などの賃金請求権の消滅時効が、2年から3年に延長された

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労働基準法上の「残業」とは

まずは、法律上の「残業」について説明します。残業とは、労働基準法で定められた1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えて行われた労働のことを指します。法定時間を超えた労働として「時間外労働」とも呼ばれます。

通常、法定労働時間を超えて労働させることはできませんが、労働基準法第36条に基づく労使協定(通称:36(サブロク)協定)を締結・提出することによって残業が可能となります。

法定労働時間を超えた時間が残業となるので、例えば1日の労働時間が7時間と会社で定められている従業員であれば、仮に8時間労働を行ったとしても、法律上は残業には該当しません。

1日9時間の労働を行った場合

残業1時間

所定労働時間が7時間の従業員が、9時間の労働を行った場合

残業1時間

所定労働時間が7時間の従業員が、8時間の労働を行った場合

残業なし

※所定労働時間とは、各企業が就業規則で定めた労働時間のことです。

詳しくは後述しますが、残業(時間外労働)には最低でも25%割増した賃金を通常の賃金に加え、支払う必要があります。

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▼時給1,200円の従業員が1日10時間働いた(2時間残業した)場合の計算例

1,200円×2時間×1.25=3,000

10時間働くと、法定労働時間である8時間を超えた残業時間は2時間になります。この2時間に対して通常の賃金より25%割増した賃金を残業手当として支払います。

「法定内残業」「法定外残業」とは

残業ルールの理解を深めるために、似た用語について整理をしておきましょう。残業は法定労働時間を超えた労働として「時間外労働」とも呼ばれるといいましたが、ほかにも「法定外残業」と呼ばれることもあります。

法定外残業の対になる言葉に「法定内残業」もあります。それぞれの意味についてまとめました。

用語

意味

割増賃金の支払い

時間外労働

法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて労働した時間

必要

法定外残業

所定労働時間と法定労働時間を超えて労働した時間

必要

法定内残業

所定労働時間を超えて法定労働時間内で労働した時間

必要なし

たとえば、所定労働時間が9:00から17:15(うち休憩1時間)の企業で19:00まで働いた場合、それぞれどれに当てはまるか見てみましょう。

9:00~17:15

~18:00

~19:00

所定労働

法定内残業

法定外残業

(時間外労働)

この場合、所定労働時間を超えて1:45働いていますが、45分は法定内残業であるためこの時間分は割増賃金の必要はなく、通常の賃金を45分間分支払えば問題ありません。18:00から19:00の1時間については法定外残業であるため25%割増した賃金の支払いが必要となります。

ここからは、より詳しく労働基準法における残業に関して、企業が守らなければいけないことや、法改正が行われた内容を中心に解説していきます。

残業に関する労働基準法改正の内容まとめ

2019年4月から厚生労働省が「働き方改革」と称して労働基準法を中心に多くの法改正が行われました。

▼残業に関する労働基準法関連の改正内容

①残業(時間外労働)の上限時間

1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えて労働する時間について、上限時間が罰則付きで定められた

②月60時間を超える残業の割増賃金率引き上げ(中小企業は2023年4月から)

月60時間を超える残業に対しての割増賃金率が25%から50%へと引き上げられた

③残業代などの賃金請求権の時効延長

残業代などの賃金請求権の消滅時効が2年から3年に延長された

▼それ以外の労働基準法に関する改正内容

④年次有給休暇の5日取得義務化

1年に10日以上の年次有給休暇が付与された労働者については、少なくとも5日取得させることとされた

⑤高度プロフェッショナル制度創設

一定の要件を満たす人材について、本人の同意を前提として柔軟に働けるよう高度プロフェッショナル制度が創設された

⑥フレックスタイム制の清算期間延長

フレックスタイム制の清算期間が1カ月から最長3カ月まで設定可能になった

⑦勤務間インターバル制度

1日の勤務終了後から翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けることが企業の努力義務となった

⑧産業医の機能強化、長時間労働者に対する面接指導強化

産業医への知識向上の努力義務や、面接指導が必要な従業員の要件などが定められた

⑨賃金(給与)のデジタル払い

労働者の同意を得た場合には企業が賃金を〇〇Payなどのデジタルマネーで支払うことが法的に解禁された

※2024年1月11日時点で資金移動業者が未定のため実際に賃金のデジタル払いはできない

上記の改正内容をふまえて、残業時間のルールを説明していきます。

①残業の上限時間は「月45時間・年360時間まで」

2019年の法改正前にも、残業(時間外労働)の上限について「月45時間・年360時間」と大臣告示がされており行政の指導対象ではあったものの、罰則はありませんでした。

しかし法改正が行われ、残業時間の上限が原則「月45時間・年360時間」と労働基準法第36条第4項にて定められました。この残業時間の上限規制は、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から適用されているため、現在では全ての企業が守るよう求められます

また、残業(時間外労働)を行うには36(サブロク)協定を締結していなければなりません。

36協定とは、正式名称を「時間外労働・休日労働に関する協定届」といい、労働者と使用者(経営者や会社代表)間で交わす労使協定の1つです。36協定には一般条項と特別条項があり、それぞれで設定できる上限時間が異なります。

▼36協定の締結状況による残業時間の考え方

36協定の締結状況

労働時間の上限

未締結の場合

・1日8時間、週40時間の法定労働時間を超える残業は不可能

一般条項を締結している場合

・月45時間、年間360時間を上限として残業が可能(法定休日労働を含まない)

特別条項を締結している場合

・年6回まで、月45時間を超える残業が可能(法定休日労働を含まない)
・月100時間(法定休日労働を含む)、年間720時間(法定休日労働を含まない)を超える残業は不可能
・2~6か月の平均が80時間を超える残業は不可能(法定休日労働を含む)

※特別条項に関しては後述します。

上限時間に違反した場合の罰則が定められた

残業時間の上限規制に違反して労働させた場合、罰則として6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科されるおそれがあります。

違反となる働き方の例

  • 1日平均3時間の残業を20日間おこなった
  • 月35時間の残業を12カ月おこなった
  • 36協定を締結せずに3時間の残業をおこなった
  • 36協定で月の残業上限時間を30時間としたにも関わらず40時間の残業をおこなった

2019年の改正労働基準法施行前は、特別条項付きの36協定さえ結んでいれば、設定できる労働時間に上限はなく、また罰則もありませんでした。しかし、法改正により罰則が明記されたことで、企業は残業の抑制と積極的な残業削減の取り組みが求められるようになりました。

ただし、特別条項を結ぶことで月45時間、年間360時間の上限を超えられる

臨時的かつ特別な事情があり、かつ36協定の「特別条項」というものを締結することで、月45時間・年360時間を超えて労働させることができます。

ただし、特別条項付き36協定を締結した場合でも、以下の点を守らなければ法律違反となります。

  1. 残業時間は年間720時間以内に収める
  2. 残業時間と休⽇労働の合計を⽉100時間未満に収める
  3. 残業時間と休⽇労働の合計を、「2~6カ月平均」が全て1⽉当たり80時間以内に収める
  4. 残業時間が⽉45時間を超えることができるのは、最大でも年6カ⽉

※参考:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説|厚生労働省

上記の通り、特別条項では「休日労働」の考え方が重要となるので、ここで改めて確認しておきましょう。法律上の休日は「毎週少なくとも1回の休日、あるいは4週間を通じて4日以上の休日」とされ、「法定休日」と呼ばれます。

▼土日祝が休日の企業で休日労働となる例

出勤

出勤

出勤

出勤

出勤

出勤

出勤

上記の場合、土曜日の出勤が1時間であっても、週に1回の休日が確保できていないため、土曜日の労働について休日労働となり、休日労働の割増賃金として35%割増した賃金の支払いが必要となります。

▼土日祝が休日の企業で休日労働とならない例

休み

出勤

出勤

出勤

出勤

出勤

出勤

上記の場合、日曜日で休日が確保できているため、土曜日の出勤は休日出勤しているものの休日労働に該当せず、休日労働の割増賃金の支払いは必要ありません。

法定休日以外の休日を「所定休日」または「法定外休日」といいます。所定休日に労働させたとしても休日労働の割増賃金は必要ありませんが、週40時間を超えた場合には時間外労働の割増賃金の支払いが必要です。

次の記事では休日労働と休日出勤の違いや休日労働の割増賃金が発生するケースについて解説しています。

休日出勤とは?割増賃金の有無や計算方法6パターンを網羅的に解説

36協定の特別条項では休日労働の知識が重要なので、これらの点を押さえておくようにしましょう。

残業時間の上限について、企業が取るべき対応

労働基準法改正による残業の上限規制に対して、企業が取るべき対応は次の2つが挙げられます。

  • 自社にあった36協定を締結・届出を行う
  • 残業時間や法定休日労働時間を正確に把握し上限に達しないよう管理する

まずは36協定で定めている内容が自社にとって適切であるか、残業の上限規制に対応できているか、次のチャートで自社の36協定対応と守るべき上限ルールをおさらいしましょう。

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36協定への対応

守るべき残業時間の上限ルール

必須ではないが機会損失を防ぐためにも事前の36協定の締結を推奨

・締結していない場合:残業・休日労働させない

・締結した場合:残業が月45時間・年360時間以内

36協定の締結が必要

・残業が月45時間・年360時間以内

・残業+休日労働が100時間未満

・残業+休日労働が2~6カ月の月平均80時間以内

特別条項付きの36協定の締結が必要

・残業が年720時間以内

・残業が月45時間を超えるのが年6回以内

・残業+休日労働が100時間未満

・残業+休日労働が2~6カ月の月平均80時間以内

そのうえで、より一層正確で厳密な労働時間の管理が必要です。特に、残業時間と休日労働時間をあわせた上限時間のルールは忘れがちなので、休日労働についても正しく把握しましょう。

上限時間を超えると罰則が科されるおそれがあるので、「働き方が複雑で労働時間を正しく管理しきれない」という企業は、勤怠管理システムの導入などを検討することがおすすめです。

36協定についてより詳しく知りたい方、どのように締結するのかを確認したい方は、以下の記事をご覧ください。

36協定とは?残業の上限規制や企業の義務をわかりやすく解説

②月60時間超えの残業に対する割増賃金率は50%

中小企業に対しては月60時間超の残業(時間外労働)に対する割増賃金率を50%以上とする法律の適用が猶予されてきました。しかし2023年4月1日からは、以下のとおり中小企業も月60時間を超える残業の割増賃金率が引き上げられています。

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※引用(PDF):月60時間を超える時間外労働の 割増賃金率が引き上げられます|厚生労働省

例えば、月に70時間残業した場合の計算方法を確認してみましょう。割増賃金率が50%になるのは60時間を超えた部分だけなので次のように計算します。

(時給換算単価×60時間×1.25)+(時給換算単価×10時間×1.50)=残業手当

なお、割増賃金率50%の適用を回避する目的で、休日振替を行い、休日労働の割増賃金率35%以上を適用する対応は、厚生労働省としても「労働基準法の趣旨に照らして望ましくない」と明言しています。この見解にも十分留意して対応を進めましょう。

また、月60時間超えの残業に対する割増賃金への対応について、以下2つのケースでは違法となります。

  • 正しい金額で残業代を支払っていない(割増率が25%未満で計算しているなど)
  • 特別条項付きの36協定を結んでいない(一般条項しか結んでいない)

月45時間を超える残業は、そもそも36協定の特別条項を結んでいないと行えません。

これらのケースでは、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が罰則として科せられるおそれがあります。

割増賃金率について、企業が取るべき対応

割増賃金率の引き上げに関して企業は次の対応をとる必要があります。

  • 就業規則または賃金規定の該当部分の見直し
  • 給与計算システムの計算部分の確認
  • 特別条項付きの36協定の締結・届出

通常、就業規則または賃金規定には「割増賃金の計算方法」が記載されています。この部分の記載について、「60時間を超える残業(時間外労働)については割増率を50%とする」旨の記載があるか確認しましょう。

給与計算システムについても、60時間以内の残業と60時間を超える残業とで、割増率の異なる計算式が設定されているかどうかも確認しておくと安心です。

残業代の計算方法について、さらに詳細を確認したい場合は、こちらの記事もご覧ください。

【2023年からの変更点も解説】残業代計算の基本ルールから具体的な計算方法まで

③残業代などの賃金請求権の時効が2年から3年に延長

労働者がこれまで未払い分の残業代を請求できる権利の時効は、請求できる状態になってから2年間でした(労働基準法第115条)。

労働基準法改正により2020年4月1日以降、残業代などの未払賃金請求権の時効期間は2年から「3年」へと変更されました。これにより、労働者側は2020年4月1日以降に発生する未払い残業代に関しては、3年前まで遡って請求することが可能になりました。

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※引用(PDF):未払賃金が請求できる期間などが延長されています|厚生労働省

時効期間が2年から3年に延長されたことにより、2020年4月1日に発生した未払い残業代の請求権は2023年3月末まで有効になります。企業の側で残業代未払いがあった場合には従来と比べ1年分多く残業代を支払わなければならず、精算のための事務作業が増える、などの影響があります。

2023年4月以降に未払い残業代の請求があった場合には、3年分の残業の記録に基づき適切な対応を検討しましょう。

賃金請求権の延長について、企業が取るべき対応

賃金請求権の時効延長への対応は、まず未払い賃金を発生させないことが重要です。

  • 未払い賃金が発生しないよう割増賃金を正しく計算し支払う
  • 従業員から請求があった場合には、時効が消滅していない賃金について再計算を行い支払う

割増賃金の対象となる残業時間・深夜労働時間・休日労働時間は、1カ月間の各々の時間数に1時間未満の端数がある場合は30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることができます。

未払い賃金が発生しないよう、割増賃金の対象となる残業時間・深夜労働時間・休日労働時間について正確に把握し、それぞれ正しい割増賃金率で計算することを心がけましょう。

また、もしも従業員や退職者から請求があった場合には、時効前の期間について再計算を行い、すぐに支払うようにしましょう。

残業時間のルール対応手順

残業のルールに自社が対応しているかどうか不安な方は、次の手順で確認してみましょう。

  1. 就業規則に残業が発生する旨の記載があるかを確認する
  2. 36協定は締結しているかを確認する
  3. 適切に残業時間を把握できているかを確認する

各ステップで確認する事項について解説します。

1.就業規則に残業が発生する旨の記載があるかを確認する

残業が発生する場合は、就業規則もしくは労働条件通知書に記載が必要です。業務時間・時間外労働の部分に「業務上の都合により、所定労働時間を超えて労働を命じることがある」などの記載があるかを確認し、もし記載がない場合は追記・改正することを検討しましょう。

2.36協定は締結しているかを確認する

そもそも残業をおこなう場合には、事前に36(サブロク)協定を締結し労働基準監督署に提出していることが必要です。以下のチャートをみて、自社に必要な36協定をきちんと締結しておきましょう。

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36協定への対応

守るべき残業時間の上限ルール

必須ではないが機会損失を防ぐためにも事前の36協定の締結を推奨

・締結していない場合:残業・休日労働させない

・締結した場合:残業が月45時間・年360時間以内

36協定の締結が必要

・残業が月45時間・年360時間以内

・残業+休日労働が100時間未満

・残業+休日労働が2~6カ月の月平均80時間以内

特別条項付きの36協定の締結が必要

・残業が年720時間以内

・残業が月45時間を超えるのが年6回以内

・残業+休日労働が100時間未満

・残業+休日労働が2~6カ月の月平均80時間以内

3.適切に残業時間を把握できているかを確認する

残業時間は、残業の種類によって割増率が異なるため、次の区分ごとに集計する必要があります。

  • 法定内残業:割増率は0%
  • 法定外残業(時間外労働):割増率は25%以上
  • 深夜労働:割増率は25%以上
  • 深夜残業:割増率は50%以上
  • 休日出勤:割増率は35%以上
  • 月60時間超の時間外労働:割増率は50%以上

勤怠管理システムを利用している場合は、事前に設定を行うことで自動で区分ごとに集計されることが一般的です。

▼区分ごとに残業時間が集計されるイメージ

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深夜残業とは、22:00から5:00までの時間帯に残業することを言います。深夜労働と残業が組み合わさった概念です。深夜残業の場合は少なくとも50%を割増した賃金の支払いが必要となります。

次の記事では、深夜残業の計算方法について詳しく解説しています。深夜残業の集計や計算方法を確認したい方はぜひご覧ください。

深夜残業の割増率とは?計算方法・手当の発生条件をわかりやすく

2024年に施行される残業に関する法改正

2024年4月1日より、猶予期間が与えられていた、医師・建設業・運送業に対しても、残業(時間外労働)の上限規制が導入されます。

医師の残業時間の上限ルール:医療機関の水準により異なる

医師の働き方改革とは、主に医師の労働時間に関する是正を行うことで、医師の働き方の適正化に向けた取り組みを指します。ポイントは、罰則付きの残業(時間外労働)の上限規制が医師にも適用される点です。

このほかにも、連続勤務時間制限28時間や9時間以上の勤務間インターバルの確保、代償休息(未取得の休息を別に付与すること)も義務となります。残業時間の上限規制については、医療機関によって以下のA~Cの水準に合わせて導入されます。

▼医療機関の水準による残業時間の上限

A水準

すべての勤務医

年960時間以下

月100時間未満(例外あり)

B水準

2次救急病院や3次救急病院など

地域医療に欠かすことのできない医療機関

年1,860時間以下

月100時間未満(例外あり)

C水準

集中して多くの症例を経験する必要がある医師

(研修等を行う機関)

※参考:医師の働き方改革について|厚生労働省

建設業の残業時間の上限ルール:一部例外があるが原則通り

建設業では働き方改革の一環として、2024年4月1日より、原則である月45時間・年360時間の残業(時間外労働)時間の上限規制が導入されます。

特別条項付き36協定を締結した場合でも、以下の点を守らなければ法違反となります。

  1. 残業時間は年間720時間以内に収める
  2. 残業時間と休⽇労働の合計を⽉100時間未満に収める
  3. 残業時間と休⽇労働の合計を、「2~6カ月平均」が全て1⽉当たり80時間以内に収める
  4. 残業時間が⽉45時間を超えることができるのは、最大でも年6カ⽉

参考:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説|厚生労働省

ただし、災害の復旧や復興の事業に関しては、2と3の項目は適用の範囲外となります。

運送業界の残業時間の上限ルール:職種により異なる

運送業界も働き方改革の一環として、医師や建設業と同様に残業時間の上限規制が導入されます。運送業界は職種によって適用される上限時間が異なります

▼職種による残業時間の上限

職種

原則

特別条項付きの36協定を締結した場合

ドライバー職

月45時間・年360時間

・年960時間

運行管理者、整備職、事務職など

・年720時間以内

・月100時間未満(休日労働時間含む)

・2~6カ月平均が月80時間以内(休日労働時間含む)

・月45時間超えるのが年に6回以内

※参考:運送事業者の皆様へ - 準備は進んでいますか?|厚生労働省

まとめ|残業と上限時間を理解して労働基準法改正に対応しよう

残業とは、1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えて行われた労働のことを指し、時間外労働とも呼ばれます。

働き方改革に伴う労働基準法改正により、残業時間の上限規制に関するルール変更が行われました。具体的には、臨時的な特別の事情がある場合でも月100時間未満・年720時間以内が上限時間に定められ、違反をした場合には罰則が科されるようになりました。

ほかにも、残業に関する変更として、残業代請求権の時効延長や月60時間超の残業に対する割増賃金率の引き上げ、給与の支払方法にデジタルマネー払いが追加されるなど、労働基準法を中心に法改正が行われています。

こうした法改正によるルール変更により、企業には上限規制に対応した残業時間の集計や適用される割増賃金率に対応したシステムの更新・準備など、残業時間に関わるさまざまな対応が求められます。法改正に対応した正確かつ効率的な仕組み作りをしていきましょう。

勤怠管理の基本を改めてチェックしてみませんか?

  • 勤怠管理の基本的なルールの理解や実務の知識が乏しく、不安がある
  • 勤怠管理の目的など基本的なことを知りたい
  • 勤怠管理を適切に実行する上で、自社の課題も把握しておきたい

このような人事労務担当者に向けて、「ゼロから始める勤怠管理」の資料を無料で配布しています。

人事労務担当者なら知っておきたい、適切な勤怠管理の必要性や労働時間の基本ルールについて解説していますので、これから適切な勤怠管理を導入・運用しようと考えている方は、ぜひ本資料をお役立てください。

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