コスト管理とは?手法や管理すべきコストの種類などを解説
著者:チームスピリット編集部
コスト管理は、プロジェクト型ビジネス(システム開発業や広告業など)の成否を決める非常に重要な工程です。
プロジェクトの赤字を防ぐだけでなく、利益を出すために大変重要な意味を持ちます。
特に重要なのが、以下の2つの点です。
- プロジェクトの開始前に適切なコスト管理をすること
- プロジェクト進行中にリアルタイムでコストを管理すること
さらに、現在進行中のプロジェクトのコストを蓄積すると、次のプロジェクトのコスト管理にも活かすことができ、コスト管理の精度が上がっていくメリットもあります。
本記事では、コスト管理の流れや手法などを詳しく解説します。
「これからコスト管理を始めたい」「既に行っているものの、うまくいっていない」という方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
コスト管理とは
プロジェクト型ビジネス(ITソフト製造業や広告業など)における「コスト管理」とは、「プロジェクトに必要なコスト(費用)を管理すること」を指します。
具体的には、プロジェクトの計画段階のコストの見積から、プロジェクト進行中のリアルタイムなコスト確認・調整、そしてプロジェクト終了後にコストを分析するところまでの一連の流れを「コスト管理」といいます。
コスト管理で管理すべきコストとは
まずは、「コスト管理で管理するコストとは具体的に何を指すのだろうか?」について考えます。
コスト管理で管理すべき「コスト(費用)」は、業種によってかなり異なります。
例えば、本記事で対象としているプロジェクト型ビジネス(システム業や広告業、コンサルティング業など)の場合、管理すべきコストは、労務費(人件費)、外注費、その他経費となります。
プロジェクト型ビジネスで管理するコストの例
- 労務費(人件費):メンバーの給与や成果報酬
- 外注費:外部に発注する場合の費用
- その他経費:打ち合わせ費用や交通費など
ただし、業種が変わる場合には、コスト管理で管理すべき費用の内容が大幅に変わることがあるため注意しましょう。
業種ごとに管理すべき費用は何かを把握するには、中小企業庁のホームページにある、業種ごとの固定費・変動費の一覧が参考になります。
固定費 |
変動費 |
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---|---|---|---|---|
製造業 |
労務費 |
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外注費 |
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経費 |
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経費 |
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卸・小売業 |
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建設業 |
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適切にコスト管理するためには、自社の業種では「どのコストを管理すべきか」を正確に把握しておくことが大切です。
コスト管理の進め方(3つのフロー)
ここからは、コスト管理をどのようにして行うのかを3つのフローに分けて解説していきます。
コスト管理の進め方(3フロー)
- プロジェクト開始前:コストの計画・見積もりを立てる
- プロジェクト進行中:リアルタイムでコストを監視・調整する
- プロジェクト終了後:コストを分析する
各フローで具体的に何を行うのか、詳しく見ていきましょう。
①プロジェクト開始前:コストの計画・見積もりを立てる
プロジェクトの開始前に、プロジェクトの計画を立て、どのフェーズにどのくらいのコストがかかるのか見積もりを立てていきます。
プロジェクト型ビジネスでは、必要な費用の大部分が労務費(人件費)となります。
プロジェクトの計画をタスクごとに分け、さらにタスクを細分化して、コストを正確に算出していくことが大切です。以下のイメージ図のように、抜け漏れが無いように工数を見積もっていきましょう。
必要な工数を決める際は、過去のプロジェクトのデータが参考になります。近い規模のプロジェクトを参考に、工程ごとに何人で何時間、もしくは何日かかるかを計画しましょう。
また、具体的な労務費を見積もる際は、プロジェクトの計画で洗い出した必要な工数に、アサイン予定メンバーの標準賃率をかけて労務費を算出します。
コストを洗い出す際は、バッファを見ることも大切です。コストはできるだけ抑えた方が利益が上がります。しかし、予算として必要最低限のコストだけを見積もると、機能の追加依頼やプロジェクトメンバーの病気や怪我などの理由で工数が増えた場合に、赤字プロジェクトとなってしまいます。
さらに、人員や工数だけでなく、プロジェクト進行中に購入するツールなどの費用も固定費として見積もっておきましょう。例えば、本プロジェクト用に30万円のアプリケーションを購入する場合、アプリケーション代の30万円もコスト管理に含めることで、正確なコスト管理が可能となります。
②プロジェクト進行中:リアルタイムでコストを監視・調整する
プロジェクトが開始したら、進捗やコストの発生状況が計画どおりか常に確認しましょう。
コストの発生状況はリアルタイムでの監視がおすすめです。リアルタイムで監視することで、工数や費用が増えた場合に、都度対応ができるからです。
プロジェクト進行中のコスト確認が遅れてしまうと、工程で赤字が発生していた場合にすぐに気づくことができません。小さな赤字でも、複数積み重なると金額が大きくなります。大きくなった赤字は、プロジェクト終了時には回復不能な状態になりかねません。
コストの発生状況をリアルタイムで確認できていれば、赤字プロジェクトになることを回避し、最終的に予算内に収まるよう適宜調整できるでしょう。
リアルタイムでコストを監視・調整するためには、ツールの活用が便利です。ツールについては、「コスト管理に活用できるツール」の項で解説します。
③プロジェクト終了後:コストを分析する
プロジェクト終了後は、発生したコストの分析を行います。計画よりコストが増えていた場合は、原因と対策を考えましょう。次回以降のプロジェクトで、コスト管理の精度を向上させられる可能性があります。
コストの分析は以下のような観点で行います。
- どこでどれだけコストがかかったか
- 工数やコストの発生は計画通りだったか
- コストが増減したのはどの工程か
- なぜコストが増減したのか
例えば、システムのテストに予定していた工数が30時間だったのに対して実際は35時間かかり、5時間分のコストが増えたとしましょう。ここでは、以下のような原因と対策が考えられます。
原因 |
対策 |
---|---|
計画段階で問題があった |
|
制作の段階でミスがあった |
|
テスト方法が間違っていた |
|
テスト担当者のスキルが 不足していた |
|
コストが増えた理由を分析し、改善策を立てるまでがコスト管理です。コストが増えたことを悲観せず、原因と対策を考えるところまで行いましょう。
コスト管理が重要な理由
コスト管理は、赤字を回避し利益を上げることを目的として行います。
プロジェクトでは、イレギュラーの発生や見積もりと実際の工数の相違により、赤字が発生することがあります。
例えば、業務のやり直しが発生する、追加要件が発生し工数が増えるなどが考えられます。
稼働単価の異なるメンバーが複数人いるようなプロジェクトがいくつもある状態の場合、適切なコスト管理なしに利益を確保することは困難でしょう。
そのためここまで説明してきたように、リアルタイムで収支状況を確認し「このまま進めて大丈夫だろうか」「あとどの程度予算を使えるのだろうか」を把握する必要があるのです。
コスト管理を上手に行うポイント
既にコスト管理を実施しているものの「正確なコストを算出できない」「リアルタイムで分析ができていない」という方も多いのではないでしょうか。
ここでは、コスト管理を行う際に押さえておきたいポイントを解説します。
ポイント①|プロジェクトごとの進捗やかかったコストを可視化する
コスト管理を行う際は、プロジェクトごとの進捗やコストの割合を把握することが大切です。同時に、プロジェクト全体の流れを把握し、この先どれだけ費用が必要になるかも確認しておくと良いでしょう。
進捗やコストは、ツールを使って可視化すると把握しやすくなります。弊社ツール「チムスピ工数」を例にすると、工数と労務費の予実を一覧にし、予定に対してどれくらい進んでいるか、労務費がかかっているかが一目でわかるようになっています。
このように、プロジェクトごとに現在・将来の費用や進捗状況を知ることで、先々のコスト調整が可能となります。イレギュラーが起こった際も、焦らず対処することができるでしょう。
ポイント②|コストを分類する
コストを細分化して管理することも大切です。
例えば、経費を管理する場合、大まかに「経費」とひとまとめにしてはいけません。通信費、消耗品費、水道光熱費のように細分化することで、どこにどれだけ費用がかかったかが、より正確にわかるようになります。
また固定費と変動費の分類も必要です。プロジェクト型ビジネスにおいては、労務費と経費は固定費、外注費や一部の直接経費は変動費となります。
ポイント③|ツールを活用する
ここまでお伝えしてきたコスト管理のポイントである「リアルタイムでの可視化」や「細分化し、何にいくらかかっているのかの把握」のためには、コスト管理ツールの導入がおすすめです。
多くの企業では、エクセル(Excel)やGoogleスプレッドシート・自社独自の管理ツールを使っているかもしれません。
しかしこれらのツールには、以下のようなデメリットがあります。
- 労務費の算出に必要な工数管理が正確に行えない
- 入力した情報をグラフなどでわかりやすく可視化できない
- 自社の事業内容に合わせてカスタマイズしにくい
- メンバーの人数やプロジェクト数が多い場合に、管理が非常に煩雑になる
特に現在、コスト管理を行っているにもかかわらず適切にできていない場合は、ツールの導入を検討してみることをおすすめします。
コスト管理に活用できるツール
ここからは、コスト管理に活用できる代表的なツールを紹介します。
それぞれ管理できる内容に違いがあるので、次の中から各社の課題や目的に応じて、適切なものを選んでみてください。
- 工数管理ツール
- 原価管理ツール
- 見積もり管理ツール
- 受発注管理ツール
※複数の機能を持つツールもあります。
①工数管理ツール
工数管理ツールは、従業員に各プロジェクト、各業務に使った時間(工数)を入力してもらうことにより、誰がどのプロジェクトにどれくらいの時間(工数)をかけているのかを可視化できるツールです。
※引用:チームスピリット公式サイト
例えば弊社の「チムスピ工数」は、スライダー機能や外部カレンダーとの連携により、簡単に工数入力を行えます。姉妹システムである「チムスピ勤怠」と連動することで、勤務時間と工数時間を完全に一致させることも可能です。
なお、工数管理はプロジェクト型ビジネスにおいて、原価管理や収支管理を行うための大前提となるものです。そのため工数管理ツールには、次に紹介する原価管理ツールの機能を備えたものも多いです。
チムスピ工数でも、アドオン機能を利用することで以下のような予実管理が可能です。
②原価管理ツール(収支管理ツール)
原価管理ツール(収支管理ツール)は、リアルタイムで予算と実績を分析できるツールです。
例えば、株式会社オロが出している「クラウドERP ZAC」などが該当します。
※引用:クラウドERP ZAC公式サイト
「クラウドERP ZAC」では、プロジェクトごとに工数や経費データを集約してコストを管理し、プロジェクト収支を確認できます。現在の状況をリアルタイムで分析できるため、赤字プロジェクトの削減や利益率の改善を行えます。
またプロジェクトや部門にまたがる間接費の配分も自動的に実施でき、精度の高い収支管理が可能です。
③見積もり管理ツール
見積もり管理ツールは、見積書を発行するために使用されるツールです。
見積もり管理ツールでは、原価の見積もりや予算の登録を行います。代表的なツールとして、株式会社ラクスがリリースしている「楽楽販売」が挙げられます。
※引用:楽楽販売公式サイト
楽楽販売では、ボタン1つで見積書を発行し、さらに過去の見積もり情報や顧客情報を自動転記できます。これまでエクセルで行っていた業務をシステム化できるので、ミスの削減や工数削減に繋がるでしょう。
また楽楽販売は、次に紹介する受発注管理の機能も兼ね備えています。案件別の売り上げ見込みの計画や現時点で予測される粗利益を出すことが可能です。過去のデータも、名前や企業名・日付を使って簡単に検索できるため、見積もりを立て予算を決めるときに便利なツールです。
④受発注管理ツール
受発注管理ツールは、案件の受発注に関するさまざまな業務を効率化できるツールです。「受注した案件に対して外部への委託契約の発注を紐づけ、外部メンバーがどのプロジェクトで稼働しているのか可視化する」といったことが行えるものもあります。
※引用:アラジンオフィス公式サイト
例えば、株式会社アイルが提供している「アラジンオフィス」では、プロジェクト型ビジネスにおける受注案件ごとの利益や発注手配状況の管理が行えます。会計システムなどの外部ツールと連携させることも可能です。
まとめ|プロジェクト型ビジネスのコスト管理を正しく行うにはツールの導入がおすすめ
プロジェクト型ビジネスで利益を上げるためには、プロジェクトのコストを事前に正しく見積もり、プロジェクト進行中も計画通りに進んでいるかを把握する必要があります。
プロジェクト型ビジネスでは、コストの大部分が人件費(労務費)となります。従って、正確にコストを管理するには、正確な工数をリアルタイムで把握することが必要不可欠です。
しかし、「メンバーが正しく工数を入力してくれない」「工数と勤怠の整合性が取れない」など、正確な工数の把握が難しいケースも多く存在します。
正確に工数を把握するには、工数管理ツールを使ったコスト管理がおすすめです。弊社の「チムスピ工数」は、スライダー機能を使って簡単に工数入力ができます。勤怠と工数に相違があった場合はアラートが出るため、勤怠と工数の相違も可視化できる仕組みとなっています。
このようなツールを使うことで、労務費をはじめとするコスト管理が格段に楽になるでしょう。
【他社はどうしてる?】
100社に聞いた工数管理の実態調査と改善事例を無料配布!
- 工数管理が従業員の負荷を高めている
- 工数の一括登録が常態化し精緻な原価管理ができていない
- リアルタイムにプロジェクトの予実管理ができていない
工数管理に課題を抱える企業様は多いものの、既存の方法を脱せず応急措置的な業務改善を繰り返しているケースが見受けられます。
ぜひ同様の課題を抱えていた他社事例を参考に、自社の抜本的な業務改善や正確な工数管理の実現の一助としてお役立てください。
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