健康経営とは
健康経営とは、社員が心身ともに健康的に働くことで企業全体の生産性を高めていく経営手法です。「健康な従業員こそが収益性の高い会社を作る」という考え方は、アメリカの経営心理学者ロバート・ローゼン氏が提唱しました。
不健康経営といえる状態では、生産性が低下し、離職率は増加します。結果的に企業収益性が低下してしまうのです。
日本における健康経営は、経済産業省が推進しています。社員の健康保持に注力することで、組織を活性化し、業績の向上や組織としての価値向上が期待できるでしょう。健康経営は、NPO法人健康経営研究会が商標登録をしており、啓発活動も行っています。
国が取り組む健康経営制度
ここでは、国が取り組む健康経営制度について解説します。
健康経営銘柄
健康経営銘柄とは、経済産業省によって設けられた、健康経営に優れた企業を選定する制度です。上場会社から、原則1業種1社が選ばれています。
健康経営銘柄の選定は、以下の5つの観点から評価が行われます。
1.健康経営が経営理念・方針に組み込まれているか。
2.健康経営のための組織体制が整えられているか。
3.健康経営のための制度があり、施策が実行されているか。
4.健康経営の取り組みの評価、改善がされているか。
5.法令を遵守・リスクマネジメントがなされているか。
企業は毎年8月~10月ごろに実施される健康経営度調査に回答してはじめて、評価対象に含まれます。選定された企業は、魅力ある企業として紹介され、業績や株価の向上が期待できます。
健康経営優良企業認定制度
健康経営優良法人認定制度は、経済産業省のもと、優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度です。
健康経営優良法人に認定された企業は、社会的にも評価され、ロゴマークが使用可能になります。
健康経営優良法人ホワイト500
健康経営優良法人ホワイト500(以下ホワイト500)は、健康経営優良法人のうち、大きい規模の企業や医療法人のみが対象となる認定制度です。評価結果の上位500法人をホワイトと認定しています。
健康経営優良法人ブライト500
健康経営優良法人ブライト500(以下ブライト500)は、健康経営優良法人のうち、中小規模法人の優良な上位500法人に付与されます。先述したホワイト500は、健康経営優良法人認定制度と同時に開始されましたが、ブライト500は2021年から始まりました。
ブライト500制度の開始により、上場していない中小企業も注目されるようになりました。ただし企業数の多いブライト500は、認定されるハードルが高くなっています。
健康経営のメリット
健康経営の導入は、企業にとって多くのメリットをもたらします。ここでは健康経営の、社内的なメリットについて解説します。
生産性向上
健康経営を実践することで、生産性の向上を期待できます。社員が良好な健康状態であれば、仕事に集中でき、パフォーマンスの質向上につながります。
心身ともに不調を抱えていれば、パフォーマンスの質が低下しかねません。健康経営のもと、身体面・精神面の健康をサポートすることで、病気やストレスによる欠勤・休職・退職率が減り、生産性を向上させます。
リスクマネジメント
リスクマネジメントが可能になることも、健康経営を実施するメリットのひとつです。心身に問題がある状態では、事故や不祥事が起こるおそれがあります。社員の急な入院や死亡は、代わりの人材を確保する必要があり、採用コストがかかります。
社員の健康を保持することで、企業全体のリスクを管理でき、損失を軽減させることが可能です。
企業価値の向上
健康経営の取り組みについて発信することで、他社との差別化を図ることができます。企業のブランドイメージの向上につながるでしょう。
健康経営優良法人に認定されれば、健康経営を行う優良な企業とみなされます。対外的なアピールにもなるため、求職者や投資家からの評価も期待できます。
健康経営を実践する際の4つの手順
ここでは、健康経営を実現する流れを4つの手順に分けて紹介します。
組織の体制を整える
健康経営は、組織の体制を整えることから始めましょう。健康経営の計画を実施するためには、社員だけでなく産業医や健康保険組合など、あらゆるステークホルダーの存在が必要です。自社の方針に応じて、専門部署やプロジェクトチームを作ることも考慮しましょう。
また、外部研修や成功事例などの資料を集めて知識を深めることも有効です。
課題や改善点をまとめる
自社の課題や改善点を把握しましょう。問題点を明らかにするためには、健康診断やストレスチェックの受診率、その結果の確認が欠かせません。
続いて、有給休暇の消化率や残業時間の累計・月平均・週平均をデータ化し、結果をもとに自社の課題を分析します。必要な課題は、部署によって異なることを考慮して、問題点をまとめましょう。
ただし、勤怠管理や工数管理を別々のツールで行っている場合は、データ化に時間がかかるかもしれません。「TeamSpirit」は、社員が日常的に扱う機能をひとつにまとめた一元管理ツールです。登録されたデータの集計、管理が自動で完了します。また、レポート機能が充実しているため、自社の課題や改善点のヒントを得ることができるでしょう。
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健康経営宣言を実施する
社内外に、健康経営を実施することを宣言しましょう。社内広報などで社員に周知し、社外にはプレスリリースなどで告知します。経営層が「社員の心身の健康」の重要さを理解したうえで、経営理念の中に言語化し、社員や投資家に向けて宣言する方法がおすすめです。
言語化する際には、具体的な施策も示す必要があります。
計画を作成して実行する
先述した課題や、改善点をもとに計画を作成して実行しましょう。計画作成時には、スケジュールを明確にすることが重要です。
取り組みの例を簡単に紹介します。課題は一つひとつ洗い出し、それぞれに対応する解決策を模索することが成功のコツです。
課題の例 | 残業が多い |
取り組み例 | ノー残業デーを作る |
自社の課題と改善するための方法、達成目標に沿った計画を社内に告知します。計画の実行後は結果を検証し、新しい施策を練っていきましょう。
健康経営を実施するときのポイント
最後に、健康経営を実施するポイントを3つ解説します。
健康経営の重要性を周知する
健康経営は予算や人員が必要なプロジェクトで、企業全体としての取り組みが求められます。影響力の強い経営層が重要性を理解していない場合は、担当者に十分な権限が与えられなかったり、社員からの協力が得られなかったりして失敗するケースも多いです。
体制づくりの段階で、事業成長における健康経営の重要性を伝えていく必要があります。
助成金を活用する
新しい施策を実行するとコストがかかりますが、健康経営に関する助成金はありません。ただし、働き方改革の一部助成金が健康経営を実施するうえで活用できます。
以下は助成金の例です。
・ストレスチェック助成金
・心の健康づくり計画助成金
・治療と仕事の両立支援助成金
・働き方改革推進支援助成金、業務改善助成金
・職場定着支援助成金
・職場環境改善支援助成金
・受動喫煙防止対策助成金
活用できる助成金がないか確認してみましょう。
社員の負担が増加しないよう配慮する
社員が取り組む課題が増えると、負担になる可能性があります。社員にストレスを与えてしまっては本末転倒です。各取り組みを行うときは、社員に負荷がかからないように配慮することがポイントです。
健康経営のメリットを浸透させるとともに、簡単で楽しく取り組めるような体制を整えましょう。あわせて、インセンティブ制度や表彰システムを設けるなどの社内制度を整えることをおすすめします。
まとめ
健康経営は、企業の生産性の向上やリスクマネジメントにとどまらず、企業価値の向上にも欠かせない経営方法です。政府の後押しもある今、社員の健康を良好に保つための環境づくりが企業の重要課題といえます。