エンゲージメントサーベイとは

従業員エンゲージメントは、企業と従業員のつながりを指す言葉です。従業員の企業に対する愛着や信頼感、貢献意欲の程度を示します。

ただし、従業員エンゲージメントは定性的な要素のため、把握が難しい特徴があります。そこで役立つのがエンゲージメントサーベイです。従業員の帰属意識を可視化し、組織の状況を把握することができます。

従業員エンゲージメントと従業員満足度の相違点

従業員エンゲージメントと混同されやすいのが、従業員満足度です。

従業員満足度は、給料や福利厚生、オフィス環境など、企業から提供される待遇にどの程度満足しているかを表す指標です。従業員エンゲージメントと同様、従業員満足度を向上させるほど、離職率の低下が見込めます。

ただし、従業員満足度が高い組織でも、企業への愛着や貢献意欲が高いとは限りません。より良い条件の働き口が見つかれば、離職する可能性もあります。

一方、従業員エンゲージメントが高まれば、従業員が組織のビジョンや目標を理解し、共感している状態になります。心理的な結びつきが強くなるため、組織体制や労働環境の変化に関わらずパフォーマンスの向上が見込めます。

従業員満足度については、以下の記事で詳しく解説しています。

従業員幸福度(EH)の重要性とは。向上させるための4つの施策

エンゲージメントサーベイが注目される背景

エンゲージメントサーベイが注目される背景として、働き方の多様化や人材の流動化が挙げられます。

人材不足の解消やコロナ禍での事業継続のため、近年多くの企業がテレワーク(在宅勤務)を導入しました。チャットやWeb会議でのオンラインを介したコミュニケーションが主流となった企業も増えています。

働き方の多様化で幅広い人材を獲得しやすくなった一方、課題となっているのが離職率の増加です。対面でのコミュニケーションが減少したことで、モチベーションが低下した従業員が増えているようです。新入社員や若手社員においても、企業への帰属意識が強まりにくく、早期離職の一因となっています。

早期離職や定着率の悪化は、採用・育成コストの増加につながります。企業にとって人材の流動化をいかに抑えるかが最大の課題となっているのです。

以上の背景から、離職を抑え、長く働いてもらうための重要な指標として、エンゲージメントが注目されるようになりました。

エンゲージメントサーベイの実施目的

エンゲージメントサーベイを実施するには、その効果や目的を理解しておくことが重要です。ここでは、エンゲージメントサーベイの実施目的について解説します。

組織の課題を可視化する

エンゲージメントサーベイを実施すると、従業員の本音を引き出すことができます。特に、通常の面談ではわからない悩みや困りごとを可視化するのに役立ちます。

組織課題を把握するために、従業員と面談を実施するケースは多いでしょう。ただし、従業員が自身の悩みを上手く伝えられるかどうか、本音を言ってくれているかどうかは分かりません。

一方、エンゲージメントサーベイは基本的に回答者が誰かわからない状態で回答を募ります。結果をもとに組織課題を特定できれば、適切なアプローチを考えることができるでしょう。

現場と経営層とのギャップを把握する

エンゲージメントサーベイは、企業が掲げるミッション、ビジョン、バリューがどの程度浸透しているか、上司や同僚との関係は良好かなど、さまざまな視点からエンゲージメントを評価します。そのため、現場と経営層との溝を可視化することも可能です。

また、回答する従業員本人も、自分自身の「理想」と所属組織の「現実」にあるギャップに気づきやすくなります。経営層と現場双方で課題を共有すれば、より実用的な解決策を生み出すことができるでしょう。

人事上の課題を明確にする

エンゲージメントサーベイによって、従業員が抱えている人事上の課題を洗い出すことができます。例えば、上司や同僚とのコミュニケーション不足や、リーダーによるマネジメントの問題です。

課題を数値として把握できれば、着手すべき課題の優先度を判断しやすくなります。課題解決の施策を実行する際の資料としても役立ちます。

チームの課題発見と解決を図る

チームや部門単位での課題発見にもエンゲージメントサーベイが役立ちます。調査結果をチームで共有し、明確化した課題の解決にメンバー全員で取り組むことで、「自分事」として向き合う意識が醸成されます。

チーム単位で動くメリットは、メンバー間のポジティブなコミュニケーションを生み出せることです。結束感が強まり、自社やチームに対するエンゲージメントも高められます。

また、当事者であるメンバーが課題に向き合うことで、隠れていた問題や上層部目線では見つからなかった解決策の発見にもつながります。

エンゲージメントサーベイを実施する際の注意点

エンゲージメントサーベイのメリットを最大化するためには、正しい手法で取り組むことが重要です。調査を実施するときに注意すべき点として、下記の4つがあげられます。

従業員の理解を得た上で行う

エンゲージメントサーベイを実施する際は、目的を共有して従業員の理解を得ましょう。あわせて、従業員にとってのメリットを伝えることで、施策の効果や回答率を高めることができます。

回答は匿名で回収する

エンゲージメントサーベイの回答は匿名で回収し、個人が特定されない範囲で結果を共有しましょう。「上司や経営層に伝えることで状況が悪化したらどうしよう」と不安になると、従業員は素直に回答することを躊躇してしまいます。

無難な回答しか得られなければ、組織課題の特定も難しくなります。従業員へ安心感を提供することが重要です。

従業員の負担にならない仕組みを作る

エンゲージメントサーベイは、複数回にわたって実行する必要があります。推移のチェックや期間ごとの比較を踏まえて、より効果的な施策を考えましょう。

ただし、エンゲージメントサーベイは業務の時間を割いて回答してもらうものです。継続的に実行する場合は、回答する側の従業員や担当者の負担が生じやすくなります。

専用ツールを導入したり外部サービスを活用したりと、従業員の負担を軽減できる仕組み作りが欠かせません。

適切な実施頻度にする

従業員の負担やコストを考えると、実施頻度にも注意する必要があります。エンゲージメントはセンサスとパルスサーベイの2種類に分けられ、それぞれ頻度や目的が異なります。実施目的や予算に応じて、適切なエンゲージメントサーベイを選びましょう。

センサスとパルスサーベイの違いは、下記のとおりです。

センサス パルスサーベイ
実施頻度 年に1~2回程度 毎月1回程度
設問数 50~150問程度 3~10問程度

センサスは頻度が少ない代わりに、1回あたりの設問数が多いのが特徴です。50~70問程度が多く、企業によっては150問程度の設問で実施することもあります。部門や役職など、セグメントごとに調査しやすい一方で、分析やフィードバックに時間を要するため、リアルタイムで状況を把握したい場合には向いていません。

パルスサーベイは、高頻度で行うのが特徴です。毎月1回程度の実施となるため設問数は少なく、気軽に答えられるようになっています。企業と個人の関係性についてリアルタイムで把握したい場合に便利です。

エンゲージメントサーベイを選ぶ際のポイント

エンゲージメントサーベイは自社で実施するほか、外部企業に委託する方法もあります。エンゲージメントサーベイを委託できる企業は多いため、自社と相性の良いサービスを選ぶことが重要です。

外部企業のエンゲージメントサーベイのサービスを利用する場合の選び方について、3つのポイントを紹介します。

質問項目の網羅性が高いか

質問項目の内容は、サービス提供会社によって異なります。項目数が多いからといって、必ずしも求めるような分析データを得られるとは限りません。エンゲージメントサーベイの項目は必ず確認し、自社が知りたい課題を的確に捉えられる内容となっているかを確認しましょう。

調査設計の信頼性・再現性が高いか

調査設計の信頼性や再現性の高さも、重視すべきポイントです。データベースが充実していると、エンゲージメントサーベイの結果に基づいた組織改革に役立ちます。自社の課題に近い改善事例が豊富にあれば、参考にしつつスピーディな課題解決が可能です。

調査実施後のサポートがあるか

エンゲージメントサーベイは、あくまで従業員と自社のエンゲージメントを調査する手法のひとつにすぎません。調査して終わりではなく、浮き彫りとなった課題を解決するための施策を考えることが重要です。

調査実施後の課題解決に関するサポートが充実したサービス提供会社なら、エンゲージメントサーベイに関する施策をすべて委託できます。依頼時は、改善活動までサポートしてくれるか、サービス内容の詳細を必ず確認してください。

まとめ

エンゲージメントサーベイは従業員の帰属意識を確認するだけではありません。日常のコミュニケーションでは見つけられないような、隠れた課題を洗い出せるメリットがあります。

施策を行った後の評価を知るためであれば、従業員満足度の調査も有効です。課題の発見や離職率低減など新たな施策の参考にするなら、エンゲージメントサーベイのほうが活用しやすいといえます。自社の目的や予算、経営戦略に合った調査方法を取り入れましょう。