自社が抱える従業員管理上の課題や従業員のエンゲージメントやモチベーションを可視化するには、パルスサーベイの実施がおすすめです。
実施することで普段表面化しない業務上の問題に気づけたり、個人の悩みや不安に早く気づけたりするかもしれません。
今回は客観性のある従業員管理に役立つパルスサーベイについて、メリットや導入の手順を解説します。
パルスサーベイとは
パルスサーベイは組織と個人との信頼性や関係性を可視化する調査です。従業員満足度調査として実施されることが多く、従業員のエンゲージメントやモチベーションを数値で表します。
特に離職につながりやすい『業務内容』『人間関係』『健康問題』の3つの項目に加え、『パフォーマンス』『幸福度』『フリーコメント』などで構成されることが一般的です。
パルスサーベイは週次もしくは月次など高頻度に実施するため、モチベーションの上下や前年同月との対比がわかりやすく、分析にも役立ちます。
実施頻度の高さから回答が従業員の負担にならないよう、5〜10問程度の簡単な選択式で行われることが多いです。
センサスとの違い
パルスサーベイに似ている従業員満足度調査としてセンサスが挙げられます。
センサスは心理的安全性や体調不良の状態に加え、法律で義務づけられているストレスチェックまで完結できる大規模な調査であることが特徴的です。
パルスサーベイと比べて設問数も多いため、従業員の状態を詳しく調査したいときに向いています。年に1度まとめて実施することが多く、高頻度な手間はかかりませんが集計に時間がかかりやすい方法でもあります。
パルスサーベイを導入するメリット
パルスサーベイは前述のように、センサスとは調査規模や内容が大きく異なります。パルスサーベイを選ぶ理由には、センサスにはないメリットが期待できるためです。
センサスと比較したときのポイントにも触れつつ、どのようなメリットがあるのか解説します。
従業員の状況をタイムリーに把握できる
パルスサーベイは高頻度に実施する調査なので、週ごともしくは月ごとに従業員のコンディションを可視化できます。早めに従業員の変化に気づいてフォローアップしたり、原因を分析したりしやすくなります。
タイムリーに状況を把握したいときや、早急な対策を実施したいときにはパルスサーベイがおすすめです。
エンゲージメント向上につながる
定期的かつ高頻度にパルスサーベイを実施することで、従業員の不調を上司が察して声をかけられるようになったり、働き方や業務内容について配慮しやすくなったりします。
従業員が気持ち良く働ける環境づくりができれば、心理的安全性の高い状態を維持しやすく、結果的にエンゲージメント向上につながります。
低コストで導入できる
パルスサーベイは、センサスのような大規模な従業員満足度調査より安価に導入できるのが利点です。毎月同じ設問項目で、分析と可視化を自動化できるため、集計に手間取ることもありません。
社内の工数はもちろん、外部に委託したときのコストも抑えられるので長期的な施策にしやすい方法といえます。
従業員の意識改革につながる
頻繁に調査することで従業員が自分と向き合う時間を作れるようになれば、意識改革につながります。
自発的な気づきを喚起できたり、自らの状態に気づいて適切に周りへ助けを求められるようになったりすることもあります。
一方的に調査するだけの施策で終えたくないときには、センサスよりパルスサーベイの実施がおすすめです。
パルスサーベイの導入方法
パルスサーベイの効果を最大限に活用するためには、調査方法にも配慮することが大切です。調査方法が適切でないと、パルスサーベイを導入するメリットを享受できません。
何から着手すべきかわからないときや、効果的な運用方法にしたいときの参考になるよう、パルスサーベイを導入するときの方法・手順を解説します。
調査票の作成
まずは、調査票の作成から着手しましょう。どのような内容を調査したいのか可視化し、具体的な答えが得られる項目を作成しましょう。
回答や集計の手間を省くため、10点満点評価形式や「はい」「いいえ」で選択できる形式がおすすめです。
・仕事へのやりがいについて
・経営理念やビジョンの理解度について
・業務内容への満足度について
・上司や同僚との人間関係について
・プライベートにおける悩みの有無について
・直近の体調やメンタルヘルスについて
なお、センサスは高頻度かつ定期的に実施する従業員満足度調査であるため、回答に時間がかからないよう配慮することが大切です。
設問や自由回答欄が多すぎると、従業員がセンサスに協力すること自体が煩わしく感じられてしまうので注意しましょう。回答に迷ってしまう複雑な問いは避けたり、設問数を抑えたりする工夫も必要です。
ボリュームは5〜10問程度に抑えることがポイントです。設問に該当しない悩みや不調のヘルプサインを出せるように、フリーコメント欄は最低ひとつ設けておきましょう。
調査の実施
調査票の作成が完了したら調査を実施します。紙を配布して回収する方法もありますが、PC・スマートフォン・タブレットなどから手軽に回答できるシステムを構築するのもおすすめです。
業務時間内であればいつでもどこからでも回答できるクラウド型のツールを使えば、リモートワーカーなども対象にできます。なかにはパルスサーベイ専用のツールなどもあり、分析や部署ごとのリサーチまで自動化してくれるものもあります。
調査結果を集計・分析する
調査結果は、早めに集計・分析しておきましょう。パルスサーベイにおける最大の特徴は高頻度で実施する点にあり、あまり時間が空いてしまうとリアルタイムな状況把握ができません。
また、集計中に次のパルスサーベイが実施されてしまうなど、事務周りが遅延する要因がないかも調査しておきます。
課題の洗い出しと解決策の検討
パルスサーベイの結果、課題が見つかった場合は解消のためどのような施策が有効か話し合いましょう。
パルスサーベイをきっかけに自社の課題に気づければ、健康経営施策や業務効率改善施策が打てます。課題の洗い出しが終わったら、次につながる解決策を考案していくことが大切です。
パルスサーベイをスムーズに行うポイント
パルスサーベイをスムーズに導入するポイントとして、下記を押さえておきましょう。
・パルスサーベイ実施前に、実施の目的や意義を従業員に周知しておく
・パルスサーベイの受け忘れがないようアラートを出す
・パルスサーベイの閲覧範囲を共有する
調査の実施に協力してもらうには、そもそもなぜパルスサーベイが必要なのか広く周知し、従業員から実施する目的や意義に対する理解を得ることが大切です。
また、公休や有給が続いても受けられるよう対象期間を広く設けたり、受け忘れをアラートしたりすることも効果的です。
従業員の中には「回答内容が評価に響くかもしれない」と不安を抱く人もいるかもしれません。率直な内容を回答してもらうためには、「個人が特定されないこと」や「実施結果の閲覧範囲」について事前に共有しておきましょう。
思わぬところから調査結果が流出したり、ハラスメントの被害相談などプライバシーに関わる部分が大々的に知られたりすると、会社への信頼を失ってしまいます。情報漏洩への対策は万全に行いましょう。
まとめ
パルスサーベイは従業員満足度調査のひとつであり、少ない設問数を高頻度で回答することで従業員の変化やモチベーションを可視化する方法です。パルスサーベイ用のツールを導入すれば、実施・分析・改善に役立ちます。
パルスサーベイを効果的に実施するには、実施する目的・意図や結果についても従業員に広く共有し、繰り返しながら自社の文化として浸透させることが大切です。