パーパス・ドリブンとは何か
まずは、パーパス・ドリブンの意味と、似た言葉との違いを解説します。
パーパス・ドリブンの意味
パーパス・ドリブン(Purpose Driven)とは、企業がパーパス(Purpose)を明確化した上で、それを経営方針や事業戦略に反映し、実行(Driven)していくことです。パーパスは「企業が何のために存在しているのか?」という存在意義・目的を指します。
近年、パーパスを新たに設ける企業が増えています。また、そうでない企業でも、歴史ある多くの日本企業では「企業理念」が掲げられており、パーパスに近しい内容となっているケースが多くあります。
しかし、いずれにしても実際にパーパスを起点として、戦略立案や意思決定、社内外向けの施策を実行できている企業は、それほど多くないのが現状です。
パーパスを設けるだけでなく、それを達成するために事業を展開していくことが、パーパス・ドリブンの考え方です。掲げたパーパスと日々の活動の一貫性が重要視されます。
パーパス・ドリブンの位置付け
「パーパス・ドリブン」と混同しやすい言葉として、「ビジョン・ドリブン」や「ミッション・ドリブン」があります。パーパス・ドリブンを正確に理解するために、これらの違いを把握しておきましょう。
「パーパス」は、上述のように企業の存在価値や目的のこと。「何のために(Why)?」の問いに答える内容です。
一方「ミッション」は、設定したパーパスを実現するために「何をするのか(What)?」を明確に定めたものです。
そして、「ミッション」に取り組み、ある期間内に達成したい状態を具体的に表したものが「ビジョン」です。「いつ、どのような状態になっているか(When、Where)?」を描き、定めます。
それぞれの言葉に相関がありますが、明確に違いがあります。そして、これらの中でも「パーパス」がすべての起点となっており、企業が進む方向を定めるために、非常に重要な位置付けを担っています。
パーパス・ドリブンが注目される背景と重要性
では、なぜ今パーパス・ドリブンが注目を集めているのでしょうか?その社会的背景や、重要性を説明します。
社会的背景
大きくふたつの要素があります。
まず、現在では企業の従業員も顧客も、2000年以降に成人になった世代、いわゆるミレニアル世代が中心となりつつあります。ミレニアル世代は、企業に対してより社会的な価値を求める傾向があり、社会貢献をすることこそ重要であるという価値観を持っているのです。
ミレニアル世代が就職先を選ぶ際には、その企業や仕事が、社会的に意義のあるものなのかどうかを判断基準にする傾向があります。また、購買活動においては、単に商品・サービスの品質や価格だけを判断基準とはしません。提供する企業のパーパスに自分自身が共感し、魅力を感じているかも考慮します。
2025年にはミレニアル世代の人口が、生産年齢人口の半分を占めるようになると予測されており、この影響はますます強くなっていくでしょう。
また、別の観点では、2016年に世界的な社会課題解決として、SDGs(Sustainable Development Goals=持続的な開発目標)が掲げられました。現在では、SDGsのサステナブルな考え方が企業にも求められるようになっています。企業は、SDGsに対してどのような取り組みを行っているのか、社会に提示することを期待されているのです。
実際に、社会全体で、各企業のSDGsをはじめとする社会課題に対する取り組みに敏感になっています。SNSなどインターネット上では様々な情報が活発に飛び交い、それらに対する反応も大きくなってきている状況です。
重要性
前述のように社会環境が大きく変化していく中で、企業がそれに対応して存続していくために、パーパスをもつことが非常に重要になってきています。
パーパス・ドリブンを実践できれば、企業内で一貫性のある戦略が描かれ、全社的な一体感が生まれるとともに、社会からの支持も得られやすくなるメリットがあります。
パーパスに共感した社員のモチベーションは高まり、パフォーマンスや創造性が発揮されます。さらには、同じパーパスを達成したいと願う優秀な人材が集まりやすくなるでしょう。
また、パーパスから生まれた商品やサービスは顧客の共感や支持を生むことにつながります。その結果、売上が増加し、企業は持続的な経営を実現することが可能です。
支持されるパーパス・ドリブンの4つの共通要素
すでにパーパス・ドリブンを実践し、社会から支持を得ている企業に共通して見られる特徴を、それぞれ解説します。
要素1.社会的な共感が得られている
前提として、社会から強い共感を得られるパーパスを掲げていることが大切です。そのためには、社会の現状を正しく捉え、そのときに求められている価値を考慮する必要があります。
また、定めたパーパスの魅力を社会に伝えていくことも欠かせません。パーパスを設定した動機や、達成に向けてどのように実践しているのかなど、共感を生みやすいストーリー性を持たせることが効果的です。
要素2.自社らしさが出ている
パーパスには、その企業の独自の価値が含まれていることが重要です。一般的な内容でなく、自社ならではの存在意義を見出し、独自のパーパスとして掲げましょう。
その際、自社の商品やサービスの価値が、今後の社会にとってどんな意味を持ち、どのようなインパクトを与えるのか、それらが他社とはどう違うのかもイメージしておくと良いでしょう。
要素3.推進体制が構築されている
たとえ社会貢献を目指すパーパスを掲げたとしても、パーパスが企業内に十分に浸透し、全社員が心から信じて行動できるものでなければ、形骸化してしまいます。
そのような場合は、社内の一体感の形成につながらないだけでなく、社会からの信頼を得ることも難しいでしょう。
企業全体でパーパスの実現に取り組むことは簡単ではありません。そのため、パーパス・ドリブンを推進する体制や仕組みを構築し、日常的に全社員が意識して仕事に取り組めるような工夫を施すことが必要です。
例えば、社内報や社内SNSで発信する方法があります。社内でどの程度社内に浸透しているかを可視化するため、社内調査をするのもひとつの手でしょう。
要素4.収益性との両立を実現している
社会貢献を重要視するパーパス・ドリブンですが、事業の収益確保を無視して良いわけではありません。社会的な意義のある事業でも、収益が無いと企業経営が立ち行かなくなってしまいます。
パーパスに基づいた商品・サービス開発を行いつつ、高い収益を生むビジネスモデルを構築し、持続的に企業活動を推進できる状態をつくっていくことが大切です。
まとめ
自社らしいパーパスを掲げ、全社員で一丸となりそれを追求する「パーパス・ドリブン」を実践することが、企業にとってますます重要になる時代に突入しています。
決して簡単な取り組みではなく、その効果を実感するまでには、多くの期間を要するでしょう。
しかし、「パーパス・ドリブン」を実践できるかが、今後数十年に渡って持続的に繁栄する企業になれるかどうかの分かれ目になります。これから取り組む価値は十分にあるのではないでしょうか。