全体最適とは

全体最適(=Total Optimization)は、組織全体が最適に機能している状態のことを指す言葉です。部署などのチーム編成・使用しているITツール・在籍している従業員のモチベーションやエンゲージメントなどが理想の状態に近いことが求められます。

部分最適と全体最適の違い

全体最適とよく比較されるものとして、「部分最適」が挙げられます。部分最適は、組織の一部もしくは一部の従業員のみにとって最適な状態を優先する考え方です。一部の従業員のみがパフォーマンスを発揮できる状態であり、企業全体としてみると利益につながらない可能性も考えられます。

ただし、部分最適な部署・チーム・システム・個人などをロールモデルとして、全体最適を目指すのが一般的な流れです。よって、部分最適を目指すことから始める企業も多いです。

全体最適と部分最適を使い分けることが重要

組織にとっては、全体最適こそが理想的な姿だと思われがちです。しかし、業務内容やポジション、シーンによって、全体最適と部分最適のどちらが理想かは変わります。例えば、経営層・部署長・マネージャーなど、組織全体を管理する立場にある人は、全体最適を目指して組織運営する必要があります。

一方、個々の部署や現場で働く従業員などは、自分の業務や部署の利益を第一に考えて行動することが大切です。全体最適と比べて小規模で実行できるため、迅速に行動に移せる点が挙げられます。

企業が全体最適の視点を取り入れるメリット

業種や企業規模を問わず、全体最適の考え方が普及している理由は、複数のメリットが期待できるためです。ここでは企業が全体最適の視点を取り入れるメリットを解説します。

個々の役割を明確化できる

全体最適が叶うと、どのチームが何のために機能しているか可視化しやすくなるため、個々の役割が明確になります。利益向上のために何をすれば良いかがはっきりすることで行動しやすくなります。明確な役割があることで、個々が部分最適を達成し全体最適につながっていくようにコントロールも可能です。

自分が会社の中でどんな役割を担っており、自分の成果がどのように会社の利益につながるのかなど、全体の見通しが立ちます。同時に個人のモチベーションが上がる効果も期待できます。

また、チームの意思決定もスピード化しやすく、機会損失を防ぐ効果も見込めます。上司による細かな指示がなくとも動ける、自主性に満ちた従業員を育成したいときこそ全体最適の考え方を導入してみましょう。

生産性の向上が期待できる

やるべきことが可視化されているので、短い時間でも効率良く働けるようになり生産性が上がります。

社内全体を見通せるようになることで、無駄な業務や業務の重複を防いだりできます。業務効率化により、労働時間の減少がもたらされ、従業員へ利益を還元することも可能です。これにより満足度やモチベーションの向上も期待できるのです。従業員やシステムなどの資源を最大限活用することに、全体最適の考えが貢献します。

組織間の連携が高められる

生産性向上によりミスやトラブルが防げるので、従業員一人ひとりが気持ち良く働けるようになり、組織間の連携が高まります。

困っているときに隣の部署を助ける余裕が生まれたり、積極的に情報共有しながらナレッジを蓄積したりすることも可能です。社内コミュニケーションが増えることも多く、風通しの良い組織づくりに貢献する場合もあります。

経営層が情報を有効活用しやすくなる

社内の連携が強まれば、現場からの意見や顧客の声を拾いやすくなります。現場からのさまざまな意見が経営陣の意思決定を支えるのです。経営者視点ではなく顧客や現場視点の正確な情報をもとに戦略を練り、マーケティングに活かすこともできます。

同業他社の情報や業界全体の傾向なども参考にしながら意思決定できれば、さらに収益化を後押しするかもしれません。

全体最適を取り入れるときのポイント

最後に、全体最適の考え方を自社に取り入れるときのポイントを解説します。

全体最適が理想的であるのは明白ですが、経営層など上層部が理想を語るだけでは形骸化しやすく、現場で働く従業員から共感を得られないことも珍しくありません。

具体的な施策や行動を示しながら、全体最適できるよう取り入れる際のポイントを把握しておきましょう。

全従業員へ周知して意識統一をはかる

まずは、全体最適の考え方そのものを知ってもらうところから始めます。上層部やリーダーなど一部のマネジメント層だけでなく、従業員やパート・アルバイトを含めた従業員に考え方を共有します。

全体最適することで得られるメリットを従業員自身が身近に感じられるよう伝え方を工夫することが大切です。会社にとってのメリットだけでなく、従業員自身にとってのメリットも提示すると伝わりやすくなります。なぜ今のタイミングで全体最適を目指すのかなど、根本の課題意識を示す方法もあります。

周知には、社内報・社内SNS・部署別の会議・朝礼などあらゆる場を利用し、定期的に従業員へ訴求することもポイントです。新入社員が入社する度に繰り返し話したり、定期的な研修の場でも話題に出したりしながら、組織風土として定着するまで根気強く伝えることが大切です。

社内コミュニケーションを活性化させる

全体最適に欠かせない要素のひとつとして、社内コミュニケーションが挙げられます。例え、個々の能力が高く、優れたツールやITシステムがあったとしても、社内コミュニケーションが乏しい状態では、思うような効果が発揮されません。

解決策として、チャットやオンラインミーティングなど、いつでもどこでも使えるコミュニケーションツールを導入することが有効です。同時に、対面での何気ない雑談なども重視しながら、社内のコミュニケーション活性化に注力しましょう。

また、部署・役職・年代・職種・性別ごとの相互理解を深め、相手の意見に耳を傾けるスタンスも重視します。営業と生産とで考え方が違い、衝突するようなシーンが多い会社は、特にコミュニケーションに関する課題に焦点を当てることが大切です。

最適なツールの導入

全体最適を後押しするような自社組織に合ったツールを導入するのも効果的です。勤怠管理・工数管理・経費精算など豊富な機能が搭載されているツールであれば、バックオフィス部門の業務効率化に貢献します。

取引先を忙しく飛び回る営業社員でも素早く勤怠を打刻できたり、手間のかかる経費清算申請を自動化できたりすれば、現場にも多くのメリットがもたらされます。バックオフィス部門と現場との橋渡しとなるツールの導入は、全体最適化を叶える一歩になるかもしれません。

まずは自社が抱えている課題を可視化し、解消に役立ちそうなツールを選定することがポイントです。

時間やコストをかけて取り組む

全体最適は一朝一夕に叶うものではなく、ある程度中長期的な施策として取り掛かる必要があります。自社の体制はもちろん、社風やスタンスごと切り替える必要がある場合、さらに時間がかかることを想定して施策を実行することが大切です。

ツールを導入する場合は既存システムからの移行期間やオンボーディング期間を設ける必要があり、別途プロジェクトチームの発足が必要となる場合も多いです。

まずは成功体験を積めるスモールステップな施策を考え、前進している実感を持つのもおすすめです。部分最適から全体最適になるよう徐々に範囲を拡大していけば、成功までの期間も短縮できます。

まとめ

全体最適が叶うと、それぞれが役割を実感しながら効率良く働けたり、情報収集が加速化して経営の意思決定がしやすくなったりと、さまざまなメリットを得られます。

多くのメリットを得るためには全体最適という考え方を従業員に周知し、社内コミュニケーションを活性化させる必要があります。全体最適を推進する際は、チームパフォーマンス向上に寄与するツールの導入もおすすめです。