HRテックとは
HRテックとは、「Human Resource(人事)」と「テクノロジー」とを掛け合わせて生まれた言葉です。ビックデータやクラウド、loTやAIといったテクノロジーを活用して、人事を最適化するツールであり、業種・職種を問わず導入できます。
代表的なHRテックとして挙げられるのが、勤怠管理システム・人材情報管理システム・採用管理システムです。
近年は、情報管理に留まらないHRテックも多数リリースされています。ワークログ・従業員のバイタルサイン測定・福利厚生システムなども、HRテックに含まれるとする見方もあります。
【領域別】HRテックに期待できるメリット
HRテックの導入により、メリットが発揮される分野は下記の7項目です。
・事務業務
・採用活動
・社員のマネジメント
・社員のエンゲージメント
・勤怠管理
・給与計算
・社員の健康管理
ここからは項目ごとに具体的なメリットをご紹介します。
事務業務
事務業務面でHRテックを用いれば、従業員番号や氏名で情報検索できるため、倉庫で重いファイルを捲りながら情報を探す手間を削減できます。
また、従業員に関する情報をHRテック上で一括管理しておけば、入社の経緯から過去の異動歴・給与歴・役職歴・実績や評価までを一目で把握可能です。各部署に点在する情報を一元管理したいときにこそ、HRテックが役立ちます。
採用活動
HRテックを用いて、在籍する人材をタイプごとに細分化できれば、採用活動に役立てることもできます。例えば、特定の資格を保有する従業員が社内にいない(もしくは不足している)ことがHRテック上で把握できれば、採用活動計画も早期に始められます。
従業員の得意分野が特定範囲に固まっているなら、多様性を持たせるためにさまざまなタイプの人材を採用することも可能です。
社員のマネジメント
勢いがあり近年特に高い評価を得ている従業員をピックアップし、ロールモデルとするなど従業員のマネジメントにHRテックが役立つことも多いです。
反対に、伸び悩んでいる従業員をピックアップして研修を開催したり、次回研修に参加資格がある従業員のリストを作成したりすることもできます。
従業員ごとに残業時間を算出し、過労リスクのある人に声をかけるなど、マネジメントリスクの予防に使うのもおすすめです。
社員のエンゲージメント
従業員サーベイツールなどのHRテックを活用すれば、従業員のモチベーションやエンゲージメントを可視化できます。エンゲージメントが高い従業員は自社の何に魅力を感じているのか調査して、採用・育成に役立てることも可能です。
エンゲージメントが下がりやすいタイミングを可視化してテコ入れするなど、多彩な使い方が考えられます。
勤怠管理
クラウド型HRテック上で勤怠の打刻ができれば、リモートワークやモバイルワークをしている従業員にメリットがあります。コワーキングスペースやサテライトオフィスで勤務している従業員も遠隔で正確な勤怠実績を登録できるようになるのです。
時間有給・早朝(深夜)勤務・休日出勤・交代制・中抜け・フレックスタイムなど、フレキシブルな働き方を認めている企業にこそおすすめです。
給与計算
HRテックを使って正確な勤怠管理ができるようになると、給与計算も効率化します。1分単位での残業代支払い、有給消化日数の把握、年齢に応じた介護保険料の控除を自動化でき、計算ミスの原因を解消できます。
支払った給与の情報はHRテック上に蓄積されるので、別途手作業で賃金台帳を作成する煩わしさからも解放されます。
社員の健康管理
健康診断やストレスチェックの結果をHRテック上に登録し、従業員の健康管理に役立てる方法もあります。自社で開催している健康セミナーへの参加歴を確認することもできます。
ただし、既往歴や治療中の病気など個人情報に関する内容が多いため、厳重な管理体制が欠かせません。HRテックを触る担当者のなかでも業務範囲に応じた権限をつけるなどの対策が求められます。
HRテック導入の手順
ここでは、HRテックを導入する際の手順について解説します。前準備から導入まで細分化すると、下記の4ステップです。
1.業務棚卸で目的を設定する
まずは、業務を棚卸ししながらHRテック導入の目的を整理します。現状の人材管理のうち、問題点や課題点を可視化するところから始めます。次項のHRテック選定をスムーズに進めるためには、目的意識を明確にしておくことが重要です。
2.目的に応じたソリューションを選定する
前項で設定した課題・目的の解決に役立つHRテックを選定します。具体的には、目的達成に役立ちそうな機能を搭載しているかを第一に考えるのがおすすめです。
そのほか、コストパフォーマンスや導入完了までのスケジュール、ユーザーインターフェースの良さなどを重視することも大切です。
3.導入プロジェクトの立ち上げ
HRテック導入に伴走する担当者を選定し、プロジェクトチームを立ち上げます。特に、勤怠管理システムや人材評価システムなど、現場で働く従業員の業務フローが変わるHRテックを導入する際は慎重な判断が必要です。
丁寧なオンボーディングをするため、手厚いプロジェクトにするよう工夫していきます。人事部員のみならず、社内のIT担当者やベンダーに協力してもらうことも大切です。
場合によっては、オールインワン型のHRテックを選定して導入の工数を下げることもできます。
4.導入と効果検証
導入が完了してからも、定期的にPDCAサイクルを回すために効果検証を行います。当初に掲げた課題を解消できているか、目的を達成できているかなどを振り返り、新たな課題がないかチェックしていきます。
HRテックに使いにくい部分があればカスタマイズしたり、他社製品に乗り換えたりすることも有効です。
HRテックを導入するときの注意点
優れたツールであっても、運用方法次第では思わぬデメリットに悩まされることがあります。デメリットやリスクに絡めて、HRテックを導入するときの注意点を解説します。
個人情報の取り扱いを慎重に行う
HRテック上で管理するのは従業員に関する個人情報であるため、特に厳重な管理が必要です。学歴・職歴・住所などの基本情報はもちろん、過去の実績・給与・賞罰歴など、流出により大きく信頼が失墜してしまう項目もあります。
特定の項目は一定以上の役職者しか閲覧できないようにするなど、システムや業務フローに合ったセキュリティ対策も必要です。
目的を明確にしたうえで活用する
HRテックの導入は中長期的な施策のひとつであり、頻繁にツールを変更すると却って支障が出やすくなります。事前にHRテックを使う目的を明確にしたうえで、運用体制を整えることが、課題解決や業務効率化につながります。
最終判断は人間が行う意識をもつ
HRテックはあくまでもツールであり、HRテックだけに頼った人事戦略を策定するのは危険です。会社ごとに理想の人材育成法や管理法は異なるので、まずは自社がどのような組織になりたいかイメージを作っていきましょう。
そのうえでHRテックを使うと効率化できるポイントがどこか探り、補助するような形で役立てます。最終判断は人が行う意識を持ちながら活用していくことがポイントです。
まとめ
HRテックは人事や労務の効率化を助けてくれるツールであり、自由にカスタマイズできるHRテックやオールインワン型のHRテックも増えています。
自社の目的に合ったツールの選定からはじめ、導入までのスケジュールを明確にしながらHRテックの導入を進めてみてはいかがでしょうか。