企業規模問わずSDGsへの取り組みは可能

SDGsへの取り組みは環境に配慮した素材の活用や、発展途上国への支援などがイメージされます。本格的な取り組みには資金力が必要と考える方もいるのではないでしょうか。しかし、企業内のごく限られた範囲に対する取り組みでも、SDGsに貢献することは可能です。

企業規模を問わずに取り組める施策のひとつに「健康経営」が挙げられます。これまでも従業員の健康管理を経営的な視点で考える経営戦略として用いられていたため、資金力に不安のある企業でも取り組みやすい方法といえます。

健康経営と関連深いSDGsの目標

経済産業省は、健康経営を「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」と定義しています。

健康経営とは、社員の健康増進をすすめる施策により、持続可能な企業の成長につながるという考え方です。この健康経営と「持続可能な開発目標」と訳されるSDGsは「持続可能」という共通の目標が存在し、特に下記のSDGsの3つのゴールは、健康経営と深く関わっています。

・目標3:すべての人に健康と福祉を
・目標5:ジェンダー平等を実現しよう
・目標8:働きがいも経済成長も

それぞれの目標の詳細や作られた背景を紹介します。

目標3:すべての人に健康と福祉を

「すべての人に健康と福祉を」とは、すべての人に健康的な生活の確保と、福祉の促進を目指した目標です。

世界では貧困などにより十分な医療を受けられない人々がいます。特に開発途上国では、妊産婦と新生児や5歳未満の死亡率の削減、性と生殖に関する保健サービスの支援の実施が必要不可欠です。

加えて、ワクチンの提供や開発、感染症など病気の他に交通事故や土壌汚染なども含んだ課題の解決もあげられます。また、たばこや薬物乱用、過度のアルコール摂取といった有害物質乱用の防止・治療の強化の対策も規定されています。

SDGsの目標3に関する日本の取り組みのひとつに健康経営の推進が挙げられています。医療格差が起こらない環境を提供することに尽力している企業も少なくありません。代表的な取り組みは以下のとおりです。

・従業員の健康管理
・メンタルヘルス対策
・感染症予防対策 など

目標5:ジェンダー平等を実現しよう

ジェンダーとは、社会的または文化的につくられた性別を意味します。「ジェンダー平等を実現しよう」は、女性と女児に対するあらゆる差別や暴力をなくし、政治、経済、公共など、あらゆる分野での女性の活躍推進を目指した目標です。

世界では女性や女児に対する差別や搾取、有害な慣習が今も存在します。

先進国においては、家事に従事する男性が少なく、女性の無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価するなど、目標が定められています。男性優位な業界における女性の参加を推進するはたらきも、目標のひとつです。

ジェンダー平等と健康経営の取り組みは、関連性を見出すのが難しいかもしれません。しかし、不平等な会社では、ジェンダーの人が安心して働くことは難しいと言えます。

あらゆるジェンダーが受け入れられる組織を作ることが従業員の幸福や働きがいに繋がると考えられています。主な取り組みは以下のとおりです。

・ハラスメント対策
・母子健康管理 など

目標8:働きがいも経済成長も

世界では、経済成長を優先した結果、劣悪な労働環境で働く人々もいます。

そこで「働きがいも経済成長も」では、各国の経済状況に応じて誰もが働きがいを感じられる雇用の創出や労働者の権利保護などの目標が掲げられました。

具体的な取り組みとして、「働きがいのある人間らしい働き方(ディーセントワーク)」を促進することが掲げられます。

労働環境を守り、持続可能な経済成長を進めること、すべての人が働きがいと安定した収入のある仕事に就くことを目指しています。

健康経営において、目標8達成に貢献できる取り組みは以下のとおりです。

・ワークライフバランスの推進
・長時間労働対策
・仕事と家庭の両立支援 など

自社の健康経営を通してSDGsに貢献する方法

健康経営と関係性の高い、SDGsの3つの目標について紹介しました。企業は、健康経営を通してどのようなアプローチをすればSDGsに貢献できるでしょうか。

健康経営をSDGs達成につなげるためのポイントとして、4つの方法を紹介します。

マルチベネフィットの獲得を目指す

企業はSDGs達成につながる健康経営に取り組み、マルチベネフィットの獲得を目指しましょう。マルチベネフィットとは、ひとつの取り組みによって複数の恩恵を得る手法のことです。人材不足に悩む企業を例に説明します。

人材不足という課題解決のために、シングルマザーやシングルファザーを積極的に採用し、環境改善のために社内に保育所を設置するとします。

この取り組みに該当する目標は、「目標1:貧困をなくそう」「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」「目標8:働きがいも経済成長も」です。

さらに、提携企業と合同で関係者向けの保育所を作ると、「目標17:パートナーシップで目標を達成しよう」に貢献したといえます。

このように、ひとつの取り組みで複数のベネフィットを獲得できる施策を検討することが効果的にSDGsを始めるコツです。

社外とも協力し合う

SDGs達成につながる取り組みには、社外との協力も含まれます。社外のサービスを利用するだけではなく、自治体や企業、団体、アカデミア、医療機関などと連携を進めることが該当します。

・ヘルスケアサービスの利用
・健康意識を高めるアプリの導入
・禁煙外来の利用推進や費用補助

上記のように、自社で完結できない部分は他社の協力を得ることで、健康経営を大きく推進できます。また、SDGsの「目標17:パートナーシップで目標を達成しよう」にもつながる取り組みです。

社内外へ取り組み内容を発信する

健康経営は、一部の従業員に向けた施策だけでは成果が得られないため、目的や取り組みを社内全体に通知する必要があります。朝礼や研修、社内報など、全員に情報が行き届くようにしましょう。

また、継続して健康経営に取り組むためには、経営陣や管理職の理解と、率先して取り組む姿勢が重要です。事業にも絡めた取り組みは、社会貢献のPRや、社会貢献に興味のある人材へのアピールにもなります。

経済産業省が創設した「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人認定制度」に認定されると、従業員の健康管理に企業として取り組んでいるとして、社会的な評価も高まります。

健康経営の推進や企業イメージアップにもつながるため、社外へもコーポレートサイトなどで積極的に取り組みを発信しましょう。

施策を定期的に見直し評価する

施策を実践するだけではなく、どのような効果があったか定期的に評価することが重要です。従業員が健康経営への取り組みに参加しているか、定期的に確認しましょう。健康経営は長期での取り組みが求められますが、結果によっては施策そのものの見直しが必要です。

施策内容に困ったときは、他社の成功例を参考にしながら施策を進めましょう。

まとめ

健康経営は、SDGsの目標の達成につながるとして、さまざまな業界が取り組んでいます。特に、SDGsの目標である「貧困をなくそう」「ジェンダー平等を実現しよう」「働きがいも経済成長も」の3つの達成する取り組みのひとつに、健康経営が挙げられます。

健康経営は、持続的な取り組みが必要ですが、将来的な収益性の向上に繋がる投資ともいえ、健康経営を導入するメリットは大きいといえます。