経営的な視点で従業員の健康管理を考え、戦略として実行していくことを健康経営といいます。健康経営に関連して活用できる助成金もあるので、コスト面で導入を躊躇しているなら活用することを検討してみてはいかがでしょうか。今回は、健康経営の実践で役立つ11の助成金を紹介します。

健康経営の推進には助成金の活用がおすすめ

健康経営は企業の戦略として従業員の健康管理を行うことで、仕事のパフォーマンスが向上するメリットがあります。しかし、本格的に取り組もうとするとそれなりのコストが発生するものです。

健康経営に関して直接的に取り組みをサポートする助成金はありませんが、目的に応じて活用できる助成金はあります。まずは活用できる助成金の種類や要件を把握しておきましょう。

健康経営に活用できる助成金11選

ここでは健康経営にどのような助成金の活用が見込まれるかを紹介します。

業務改善助成金

事業場内の最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内の中小企業者が、賃金引き上げとともに生産性向上を図ることを目的とした助成金です。

賃金引き上げ計画を策定して実際に引き上げること、生産性向上になる設備の導入や人材育成で業務改善を行うことが要件になります。

機器や設備導入による業務改善は健康経営にも役立つので、健康経営を導入したい場合にも活用できるでしょう。助成対象は生産性向上のために導入した設備費用で、もともとの事業場内の最低賃金や引き上げ額によって助成率や上限が異なります。

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

健康経営に関連する年次有給休暇の取得促進、労働時間の短縮に取り組む企業を支援する助成金です。

助成金の支給対象となる取り組みを1つ以上実施して、制度に定める1~3の成果目標を設定することで、実施期間終了後に成果目標の達成具合に応じて助成金が支給されます。

助成金の支給対象になるのは、就業規則や労使協定などの作成・変更、人材確保に関する取り組み、労務管理ソフトウェアの導入・更新、デジタコやPOSシステムなどの導入・更新などです。

働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)と同じように、支給対象になる取り組みを実施した場合、成果目標の達成具合に応じて支給される助成金です。

労働時間短縮・年休促進支援コースと異なり、達成目標が労務管理書類の一定期間の保存や勤怠管理と賃金計算をリンクさせたシステムの採用など、労務管理により特化したものとなっています。労務管理の見直しにより健康経営を促進していきたい場合に活用できるでしょう。

働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)

勤務間インターバル導入コースも支給対象になる取り組みを実施した場合に、成果目標の達成度合いに応じて助成が受けられる制度です。

退社から翌日の出社までに9時間以上11時間未満、あるいは11時間以上の休息時間を設ける企業を支援します。健康経営の導入によって、従業員の休息時間の見直しを図りたい企業で活用できます。

人材確保等支援助成金 テレワークコース

人材不足解消のための取り組みを行う事業者のうち、良質なテレワーク導入や実施を行う事業者を支援する助成金になります。

主な受給要件は以下のとおりです。

・機器等導入助成
テレワーク実行計画の作成と認定、テレワークに関する制度における社内規定の整備、取り組みの実施、評価期間の基準の充足、テレワークのための職場風土づくりの実施

・目標達成助成
離職率にかかわる目標達成、評価期間中のテレワーク実施労働者数の達成

テレワーク用通信機器の導入や運用のための費用、労務管理担当者や労働者への研修費用などが助成の対象となります。

職場環境改善計画助成金

労働安全衛生法で義務付けられているストレスチェックと面接実施などの結果を踏まえ、職場環境の改善を行おうとする事業者を支援する助成金です。

事業場コースと建設現場コースがあり、いずれも改善実施のために負担した指導費用が助成の対象となります。職場環境改善による健康経営促進に活用できる制度です。

受動喫煙防止対策助成金

受動喫煙防止のための設備を整備しようとする、中小企業者を支援する助成金制度です。一定の要件を満たした、専用の喫煙室や指定たばこ専用喫煙室の設置にかかった費用の一部が助成されます。

健康経営において、非喫煙者が健康を維持できるように設備の設置を考えている企業で活用できるでしょう。

心の健康づくり計画助成金

企業における労働者のメンタルヘルス対策を促進するための助成金です。メンタルヘルス対策促進員の助言をもとに計画書を作成し、対策を実施した場合に助成の対象となります。健康経営において、メンタルヘルスに力を入れたい企業に役立つでしょう。

キャリアアップ助成金

非正規雇用の労働者がキャリアアップを図れるように設けられている助成金です。コースは以下の3つです。

・非正規から直接雇用する場合の「正社員化コース」
・有期雇用労働者の賃金を上げた場合の「賃金規定等改定コース」
・有期雇用労働者の所定労働時間を3時間以上延長して、社会保険を適用した場合の「短時間労働者労働時間延長コース」

コースによって一定の額が助成される仕組みです。非正規雇用の社員の待遇を上げる場合や非正規社員を正社員に転換したい場合などに活用できます。

中小企業子ども・子育て支援環境整備事業費補助金

子育て支援に積極的な中小企業を支援する助成金制度です。くるみん認定(トライくるみん認定は対象外)を受けた中小企業が、労働者が家庭生活と両立できるよう必要な雇用環境整備を行った場合に助成金が支給されます。

雇用環境整備の実施内容は、育児休業の取得の促進(代替労働者の確保や育児休業などの制度の周知)や子育て支援の取り組み(所定外労働の制限やフレックスタイムの導入や子育てサービス費用の支援)などです。対象になる事業にかかった費用が助成されます。

ストレスチェック助成金

従業員のストレスチェックを実施する中小企業を支援する助成金です。派遣労働者を含めた50人未満の事業所が実施した場合に適用されます。助成の対象経費は、ストレスチェックや面接指導にかかった費用です。

健康経営のために、ストレスチェックや医師による面接指導により従業員のメンタルヘルスを改善したいときに活用できます。

【健康経営】助成金を活用する際の注意点

健康経営促進のために活用できる助成金はいくつかあります。助成金を活用することで健康経営促進にかかるコストを抑えつつ、より良い労働環境を構築できるでしょう。

ここでは助成金を活用するときに確認しておきたい注意点を紹介します。

助成金の要件をしっかり確認する

助成金の種類によって対象となる事業者や経費、助成金を受けられる要件、申請方法などが異なります。助成金を利用したい場合は、条件や対象者など細かな部分まで確認してから利用しましょう。

期日に間に合うよう余裕を持って申請する

助成金には申請期日があるほか、制度内容が変更されることがあります。期日までに申請できるよう、日ごろから助成金に関わる情報をこまめにチェックしておきましょう。ゆとりをもって手続きを進めることが大切です。

まとめ

健康経営を促進していくことは、従業員の健康やメンタルヘルスを考えるうえでも重要です。働きやすい環境が構築できれば、従業員のパフォーマンスの向上につながります。

しかし、実施する内容や環境の整備によってはコスト負担も増大しがちです。今回紹介した健康経営に活用できる助成金を使いつつ、健康経営を進めていくと良いでしょう。

TemSpirit」を取り入れれば、労務管理や工数管理ができるようになり、業務効率の改善や働き方の可視化につながります。健康経営に資する「TemSpirit」の活用をご検討ください。