従業員幸福度(EH)とは
従業員幸福度(Employee Happiness)とは、従業員の業務に対する幸福度の指標のことです。
従業員幸福度を測ることで、従業員の「幸福度」や「働きがい」、「不満」などを定量的に把握できます。経営陣は幸福度が低い従業員や部署を可視化できるため、改善に向けて適切な施策を打ち出す際にも役立つでしょう。
また、従業員幸福度を高めることは、従業員の生産性の向上や退職率の低下にも役立ちます。そのため、従業員のやりがいや働きやすさを正確に把握できる「従業員幸福度」を活用する企業が増えています。
従業員幸福度(EH)と従業員満足度(ES)の違い
従業員満足度(Employee Satisfaction)は、給与や労働時間、福利厚生などの業務に対する満足度を図る指標です。従業員幸福度との違いは、従業員満足度は給与や労働環境の充実度を評価します。
注意すべきは、従業員満足度が高くても、従業員幸福度も高いとは限らない点です。
たとえば、給与が高く福利厚生が充実していたとしても、人間関係に問題があったり激務だったりする場合、従業員は仕事に働きがいを感じられていないことがあります。
従業員満足度では「従業員がどう感じているか」という点が反映されないため、実態を正確に把握できません。
それに対して、従業員幸福度は従業員の主観を通して評価するため、職場の実態をより正確に知ることができます。
従業員幸福度が重要視される理由
企業と従業員にとって、従業員幸福度の指標を設けることに大きなメリットがあります。まずは、従業員幸福度が重要視される3つの理由を見ていきましょう。
社内の問題点を改善できる
従業員幸福度を評価すると、企業が従業員の実態を把握しやすくなります。従業員のやりがいや不満を把握できれば、自社の強みと弱みを再認識できます。
従業員の不満から社内の問題点を把握し、改善できれば業務効率のアップも期待できるでしょう。
人材が定着しやすくなる
従業員幸福度が高まれば職場の居心地がよくなり、人材の定着につながると言われています。
人材の定着を促すには、労働条件や給与だけでなく、従業員の精神的・身体的な負担が少なくやりがいのある環境を整えることも必要です。やりがいを感じられない環境では、欠勤率や離職率の低下も考えられます。
従業員幸福度を高め、従業員のやりがいやエンゲージメントが高まれば、仕事に対してポジティブに捉えられるようになり、人材の定着率もアップします。
生産性向上につながる
仕事にやりがいを感じる従業員は主体的な行動や発言を積極的にする傾向があります。自ら進んで議論に参加したり、アイデアを形にしようとしたりする従業員も増えるでしょう。
社内の雰囲気が良くなると、新しい意見やアイデアも出しやすくなり、企業全体の活性化につながります。
また、集中して仕事に取り組める環境であれば、一人ひとりの業務効率が上がり、生産性もアップします。従業員幸福度が上がれば、従業員同士で助け合おうという雰囲気にもなりやすく、より一層生産性の向上が期待できます。
従業員幸福度を調査する取り組み
従業員幸福度を調査する3つの方法について解説します。それぞれの調査法のメリットと合わせて参考にしてみてください。
1.アンケートを実施する
アンケート調査は気軽に取り組みやすく、社内の実態を従業員に直接的に聞き取れます。結果を部署・部門ごとに比較できれば、より細かい改善点を見つけやすくなります。
アンケートを実施するときは、従業員のやりがいだけでなく不満を抱いている部分も把握しましょう。
アンケートを作成するときは、「とてもそう思う」「そう思わない」など、複数の回答欄を用意してください。また、「どのような部分に不満があるのか」「なぜそう思うのか」など、記述式の回答欄も用意しておくこともおすすめです。
2.従業員の行動パターンから計測する
デジタル機器を用いて従業員幸福度を計測する方法もあります。たとえば、ウェアラブルセンサーを使用して、従業員の行動パターンや会話中の感情を計測する方法です。
アンケート調査と異なり、本音を聞き出しにくい場合でも、職場の幸福度を客観的な数値で把握できます。AIのアドバイスから、従業員同士のコミュニケーションが増えたり、解決に導いたりできることもあります。
ただし、システムを導入するためのコストがかかる点に注意が必要です。
3.適性検査を行う
適性検査を利用して従業員幸福度を測る方法もあります。
たとえば、ハピネス適性検査では、ポジティブ・サイコロジーという心理学をベースに作られた幸福度の測定に特化した適性検査をもちいて調査できます。
ほかにも、エンゲージメント適性検査やコンピテンシー適性検査など、複数の検査を行えば、従業員の心理面の調査に役立ちます。
多角的な実態把握ができるため、自社で求める人物像を見つけやすくなるのがメリットです。従業員の特性がわかるので、能力に合わせた人員配置に活用できます。
従業員幸福度を向上させるための施策
従業員幸福度を向上させるには、自社に合った適切な施策が必要です。ここからは、具体的な方法を解説します。
社内コミュニケーションを活性化する
社内コミュニケーションが活発な職場は、従業員幸福度が高い傾向にあります。人間関係でトラブルがあると、職場全体の雰囲気も悪くなりがちです。そのため、不安や悩みを気軽に相談できるような人間関係の構築に努めることが大切です。
普段からコミュニケーションが良好であれば、誤解やすれ違いも防げるでしょう。フリースペースを設けて自由に会話できる場を提供したり、人間関係を深めるためのイベントを開催したりするなどの施策は、コミュニケーションの活性化に役立ちます。
従業員同士の接点を作り、積極的に交流できる場所や時間を提供しましょう。
仕事のモチベーションを向上させる
仕事のモチベ―ションを上げるには、従業員に対して企業の目標や方向性を示し、どのようなアクションを明確に共有することも重要です。透明性の高い情報共有を行い、定期的に価値観のすり合わせを行いましょう。
また、インセンティブ制度や資格取得支援など、継続的に成長の機会を与えると仕事へのモチベーションアップにつながります。
積極的に評価して感謝を伝える
日々の業務や活動に対して感謝を伝え合うと、従業員幸福度が高まります。従業員自身が会社にとってかけがえのない存在だと実感できると、自己肯定感も上がりやすくなるでしょう。
とはいえ、話す機会がなければ感謝を伝えられません。気軽に感謝を伝える方法として、サンクスカードの活用をおすすめします。
サンクスカードは、従業員同士がカードを通して感謝の言葉を伝えるためのツールです。直接だと言いにくい感謝の気持ちもカードを使って伝えられるので、従業員同士の心の距離も近づけられます。
また、評価面談の際だけでなく、小さな気づきでも日頃から褒めたりフィードバックしたりすることが大切です。
キャリアパスを考える機会を設ける
キャリアパスに関する研修や、キャリアカウンセリングなどのサポートの提供も従業員幸福度を高めるためには欠かせません。
従業員が定期的にキャリアプランを考える機会を設けて、上司に相談できる体制を整えましょう。上司との連携が円滑に進み、キャリアパス実現に向けてサポートしやすくなります。
会社全体でさまざまなキャリアパスを提示したり、従業員が考える機会を設けたりすることで、モチベーションが向上して従業員幸福度が高まりやすくなります。
まとめ
従業員幸福度が高まれば、従業員が抱える問題の明確化や優秀な人材の確保、生産性向上などが期待できます。従業員幸福度を高めるために、こまめにコミュニケーションを図り、積極的に感謝を伝える機会を作りましょう。キャリアパスに関する研修やサポート体制を整えることも大切です。