企業経営を成功させるには、正しい経営判断が必要とされます。必要なリスクを取らなければ企業の成長が見込めない一方で、不必要なリスクや大きすぎるリスクを取ることは企業の衰退を招きかねません。
本記事では、経営上発生するリスクを詳しく解説します。リスクマネジメントをどのように行ったら健全な企業経営ができるのか、さまざまなリスクマネジメント手法も紹介していますので、経営者の方はぜひ参考にしてください。
リスクマネジメントとは
リスクマネジメントとは、企業経営におけるリスクを組織的に管理して、損失の回避や低減を図るプロセスのことです。
企業経営の存続に影響を及ぼすリスクと、リスクが発生した場合の影響を正確に把握して、事前の対策を講じること、また危機発生時の損失を最小化するための経営管理手法を指します。
リスクマネジメントを行う目的
リスクマネジメントの目的は、損失を回避・低減し、資産・活動・稼働力を保護することです。
企業におけるリスクは、損失を発生させるマイナス面に限りません。例えば、税制改正や消費者動向の変化などは、資本を拡大させる可能性も考えられます。
そのため、ある程度のリスクを許容して、成長に向けた投資を行い、企業が成長・発展につなげることもリスクマネジメントの目的と考えられます。
リスクマネジメントと危機管理との違い
リスクマネジメントと混同されやすい概念に危機管理がありますが、意味は異なります。
リスクマネジメントは、危機が発生する前にそのリスクを管理し、組織に与える影響を最小限に抑える管理方法を指します。一方、危機管理は、危機が発生してしまった後に企業が被る損失を最小化させる施策を指しています。
企業で発生しやすい主な5つのリスク
ここでは、企業で発生しやすい代表的なリスクを5つ解説していきます。
セキュリティ関連リスク
インターネットを利用している限り、第三者からの不正アクセスによるウイルス感染やサイバー攻撃を受けるリスクは警戒しなければなりません。自社のみならず顧客や取引先にも甚大な被害をもたらすおそれがあります。
また、近年はフィッシング詐欺などのインターネットを利用した犯罪が増えているため、セキュリティ対策の重要性はより高まっています。
災害リスク
自然災害の多い日本において、自然災害や事故などの災害によって引き起こされる災害リスクにも警戒が必要です。災害リスクには台風や地震、洪水、暴風、高波などの自然災害だけでなく、感染症の蔓延や労働災害も含まれます。
災害リスクを考えるときには、社員の安全を第一に考えることが求められます。
労務リスク
労務リスクは、労働問題によって発生するリスクのことです。具体的には、セクハラ・パワハラなどのハラスメント、長時間労働やそれに伴う残業代の未払い、労働条件の相違によるトラブルなどが挙げられます。
労務リスクに伴い裁判や損害賠償金の支払いなどが発生すると、企業の信用低下やイメージダウンといった深刻な事態へ発展してしまうおそれがあります。
法務リスク
法務リスクは、法令や契約の違反によって企業が受けるリスクのことです。
自社の商品やサービスを提供するにあたって、企業には知的財産権や景品表示法への配慮が求められます。知的財産権とは、著作権、特許権、商標権などのことを指し、企業や個人が発明・作成したデザインなどを保護する法律です。権利を侵害してしまうと、高額の損害賠償が請求されるリスクがあります。
故意過失によるものでなくとも、権利を侵害してしまった場合、大きな損害を発生させてしまうため、専門の法務スタッフの配置などが必要になります。
財務リスク
財務リスクは、企業の運転資金の調達や投資による損失などで発生するリスクのことです。近年、欧米では最も警戒すべきリスクとして保険への加入などの対策も講じられてきました。
具体的には、業績や資金繰りの悪化、投資の失敗や金利・為替変動による収支悪化、取引先の倒産に伴う貸し倒れなどが挙げられます。
赤字経営が続いて融資を断られるリスクや、運転資金の枯渇、最悪の場合には倒産のリスクもあるため、財務状況を常に把握しておくことが非常に大切です。
企業におけるリスクマネジメントの手順
ここでは、企業におけるリスクマネジメントの手順について解説していきます。
リスクを特定する
まず先に、企業に対して影響を与える可能性のあるリスクについて特定する必要があります。漏れがあった場合、後に予期せぬトラブルへと発展する可能性があるため、全てのリスクを対象として検討することが重要です。
以下のような特定方法を参考に、部門全体で連携して行いましょう。
・リストアップ:チェックリストを作成したり、アンケートを実施したりして特定する
・プロセスチェック:業務のフローチャートを作成して特定する
・詳細調査:現場職員へのインタビューや、リスクに関係する書類をチェックして特定する
リスクを分析する
特定したリスクについて、発生する頻度や表面化した場合の影響度を測定し、それぞれの規模を分析します。この際、リスクマップを作成して図式化することで、それぞれのリスクレベルをひと目で理解することができ、関係者へのスムーズな共有もしやすくなります。
また、リスクに関する意識を社内で共有するために、できるだけ具体的な数値で測定するようにしましょう。
分析にあたって、金銭的リスクは過去事例や他社事例などを参考にすれば、数値化しやすくなります。一方、非金銭的リスクについては数値化が難しいため、社内でリスクごとに協議したり、ほかのリスクと比較したりして、規模やレベルを的確に把握します。
リスクを評価する
分析結果をもとに、どのようなリスクが大きな脅威となるのか、どのような優先順位で対応を進めるべきかを評価していきます。具体的には、リスクを「大」「中」「小」に分類して評価すると、その後の対策がスムーズに進みやすくなります。
ただし、必ずしもリスクの大きいものから順に対応しなければならないわけではありません。同じ程度で評価されたリスクが複数あるような場合は、状況に応じて適切な順番で対応を進めます。
リスクへの対策を講じる
リスクの評価内容をもとに、対応方法を決定します。
主な対応方法は以下のとおりです。
・リスクの低減…業務改善策の実行やポートフォリオ経営の実施など、発生可能性や発生被害を抑制すること
・リスクの移転…業務の外部委託や保険の活用など、リスクを余所へ移転すること
・リスクの回避…事業の売却など、リスク発生の根源を断つこと
・リスクの保有…何も対策を行わずに受け入れること
リスクへの対応は、リスクコントロールとリスクファイナンスに区分し、それらに合わせた取り組みを検討します。
リスクコントロールとは、赤字事業からの撤退やリスク発生頻度を軽減させるためのマニュアル策定、緊急対応時のルール策定などリスクの大きさをコントロールする対応のことです。リスクファイナンスは、損害保険加入や期間損益でのコスト吸収などの経済的損失を補填する対応を指します。
まとめ
企業経営におけるリスクの種類とリスクマネジメントの手順について解説しました。
業種や事業の規模などによって対処するべきリスクの優先度や危険度は異なりますが、企業経営を安心かつ円滑に進めるために本記事を参考にしてください。
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