【2021年4月施行】中途採用比率の公表義務化で企業が対応すべきこととは

【2021年4月施行】中途採用比率の公表義務化で企業が対応すべきこととは

人生100年時代を迎えつつある現代において、新卒入社した企業でキャリアをまっとうする人は減少傾向にあります。キャリアアップを望んで職を変える人も多く、もはや転職は当たり前の時代になったと言えます。総務省統計局が 2020 年に発表した「労働力調査」によれば、2019 年の国内の転職者数は 351 万人で過去最多。コロナ禍の混乱にあった 2020 年ですら 319 万人が、他の企業に職場を求めました。

こうした背景から、労働者の主体的なキャリア形成のためにも、使用者には的確な情報発信が求められるようになりました。それが2021 年 4月より施行されている「中途採用比率の公表義務化」です。企業側の中途採用の実績は、求職者においてもこれまで以上に重要な情報になりつつあります。今回は中途採用比率の公表義務化の概要や対象企業、従わなかった際の罰則などを分かりやすく解説します。

中途採用比率の義務化の概要と目的

働き方改革の浸透が進む現代では、終身雇用に代表される日本型の雇用形態に陰りが見え始めています。特に転職は珍しくなくなっており、雇用する側の企業としても求職者向けの情報を積極的に開示することが求められるようになりました。そこで重視され始めているのが、「中途採用比率」です。

中途採用比率とは、正規雇用従業員に対して中途採用のメンバーの割合を指します。中途採用比率の公表を義務化することになった背景には、多様で柔軟な働き方を社会全体で促進し、雇用の選択肢を拡大させたいという社会の動きがあります。

日本政府が推進する働き方改革でも、「多様な働き方」は重要なキーワードとなっており、国としても転職をサポートする動きがより一般的になりつつあると言えるでしょう。中途採用比率を開示することで、求職者と企業のよりよいマッチングを促進して中途採用の活性化を図るのが目的です。

公表義務の対象と方法

2021年4月に施行された「中途採用比率の公表義務化」の範囲としては、常時雇用する労働者が 301 人以上の大企業に限定されています。対象企業は、求職者が容易に閲覧できる方法で「直近の3事業年度の各年度について、採用した正規雇用労働者の中途採用比率」を公表しなければなりません。公表は概ね年に1回、公表日を明らかにしたうえでホームページなどを利用して周知するのが一般的です。

雇用する労働者数には、フルタイムの正社員に加えて時短勤務の正社員(期間の定めのない労働契約を締結している労働者であって、1週間の所定労働時間が通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短く、かつ通常の労働者と同等の待遇を受けるもの)も含まれます。

中途採用比率の公表義務化に基づき企業がやるべきこと

中途採用比率の公表義務化に基づき企業がやるべきこと

「中途採用比率の公表義務化」の法令遵守のためにも、企業として行うべきことを整理しておきましょう。入社前、入社後に分けてやるべきことを整理すると対策しやすいはずです。

まず必要なのは『中途採用に関する情報公表』です。概ね1年に1回以上、公表日を明らかにしたうえで、「直近3事業年度」の実績を企業のホームページなど(求職者が情報を容易に閲覧できる方法)で周知しましょう。初回の公表は、法施行(令和3年4月1日)後の最初の事業年度内。2度目以降は、前回の公表から概ね1年以内になります。可能な限り速やかに公表を行いましょう。

入社後については法律で定められていないものの、下記の3つが重要なのでぜひ実施してください。1つ目は『企業のミッションや経営理念の伝達』です。すでに取り組んでいる企業も多いはずですが、研修などで自社のミッションや経営理念を説明する機会を設けます。中途入社の従業員が問題なく社内に溶け込めるかは最初が肝心です。企業の考え方を理解し、共感してもらうレクチャーを心がけましょう。

2つ目は『業務や役割の伝達』です。前職と同じ業界、同じ職種であっても必要なスキルや知識レベルは異なります。会社全体や部署単位で、必要な知識やルールを補う研修を行いましょう。3つ目は『従業員同士の交流』です。中途採用は年齢も違えば、バックグラウンドも1人ひとり異なります。仕事の進め方や価値観に違いがあるのは当然なので、従業員同士での交流を深め、早く企業やメンバーに馴染んでもらいましょう。

このように中途採用でメンバーが入社する際は、その前後で企業としてきちんと迎え入れる体制を整えることが重要です。

中途採用比率の公表方法例

公表義務化が決定したものの、どういうやり方が最適かをまだ把握しきれていない担当者もいるでしょう。公表方法についても具体例に基づいてしっかり把握しましょう。まず「直近3事業年度」については、4月1日から3月31日が事業年度の企業で、2020年度の採用活動を終了し2021年8月に公表する場合、直近3事業年度とは「2018年度・2019年度・2020年度」のことを指します。
中途採用比率については以下の計算方法です。正規雇用労働者の採用実績すべてと中途採用の人数を明確にします。そして、正規雇用労働者の採用数(もとにする数)における中途労働者(比べられる数)の割合を出し、100をかけることでパーセンテージを算出します。

正規雇用労働者の採用数

うち中途採用者数 中途採用比率
2018年度 46人 16人 16÷46×100=35%
2019年度 32人 13人 13÷32×100=41%
2020年度 38人 7人 7÷38×100=18%

上記の例をもとにすると、公表義務のある中途採用比率の数値は以下になります。

2018年度 2019年度 2020年度
中途採用比率 35% 41% 18%

例を見れば分かる通り、普段から採用人数を把握しておけば、計算自体は決して複雑ではありません。これまで採用に関するデータをまとめていなかった企業は、まずデータの整理から始めましょう。そして、年度にまたがって計算する手間のないように、毎年の中途採用比率をきちんと会社のデータとして管理することが大切です。

中途採用比率の公表義務化のメリット・デメリット

企業と求職者のスムーズなマッチングを果たすために導入された中途採用比率の公表義務化ですが、社内データを一般に公開することには当然、リスクもつきものです。まだ対応準備ができていない企業の担当者は、公表することでどんなメリットがあり、反対にデメリットがあるのかをきちんと押さえておきましょう。

【メリット1】多様性をアピールできる

中途採用実績の高さを公表することで、求職者に対して働き方の多様性をアピールしやすくなります。中途採用者が多いということは、それだけ多様なバックグラウンドを持つ人たちが集まっていることの証左にもなります。反対に新卒入社ばかりの会社は独自の文化が強いなど、求職者にとっては不安の種になることもあるでしょう。

積極的に中途採用を行っていることは、中途での採用を望む求職者の安心感につながるはずです。中途採用比率を公表するだけでなく、中途採用への企業としてのスタンスや、入社後のキャリアパスや処遇についても発信することで、より効果的なアピールできるでしょう。

【メリット2】採用のマッチング精度が上がる

中途採用実績を数字とともに中途採用後の働き方や考え方を公開することで、採用におけるマッチングの精度が高まります。そもそもなぜ採用のマッチングのズレが起きるかと言うと、求職者からは企業の内側の様子が見えないからです。求職者が少ない情報だけで会社を選ぶことになるので、入社してからイメージと異なることもあるでしょう。

一方、企業の情報をクリアにすることで、より自社の理念やビジョンに共感してくれる求職者が集まりやすくなります。企業理念に共感してくれる従業員は企業にとってかけがえのない資産です。そうした共感度合いの高い求職者と出会うためにも透明性のある情報を公開しましょう。

【メリット3】採用データが整理される

中途採用比率を公表するためには、当然ながら社内の採用データを整理しなければいけません。社内の実態を改めて振り返る良いきっかけにもなるはずです。また、外部に情報を発信することで、中途採用に対してどんなポリシーを持っているかも明確になるでしょう。結果的に情報発信の質が高くなるため、求職者との認識のズレも起こりにくくなり、企業の採用力も高くなるはずです。

【デメリット1】求職者が中途採用比率を重視するとは限らない

中途採用比率を公開して採用のメリットがあるのは、求職者が企業を選ぶ際に中途採用比率を重視していることが前提になります。しかし、求職者がその点において無頓着であれば、マッチング率が高まるという思惑通りにならないケースも考えられます。

とはいえ、求職者が企業の情報を求めているのは確かです。大事なのは中途採用比率を公表するだけに終始せず、求職者が他にどんな情報を求めているのか考えること。中途採用比率と一緒に求職者が知りたいであろう情報を公開することで、企業への印象が変わるかもしれません。よく「採用はマーケティングと同じ」と言われますが、求職者を顧客だと思ってニーズの高い情報を発信できるように工夫しましょう。

【デメリット2】データの集計に手間やコストがかかる

中途採用比率は直近3事業年度分を公開する必要があります。情報開示をするためには、データ整理や公開作業のための手間やコストをかけなければなりません。普段からデータ整理をしている企業であれば手間もあまり増えませんが、これまでデータ整理をしていない企業にとっては手間やコストがかかるのがデメリットと言えるでしょう。

公表しなかった場合の罰則について

公表しなかった場合の罰則について

中途採用比率の公表の「義務化」なので、もし公表しなかった場合の罰則が気になる担当者も多いでしょう。結論から言えば、公表しなかったとしても、現時点では罰則はありません。

しかし、罰則がないからといって義務を守らなくて良いということではありません。企業として求職者視点での情報発信をすることは、今後の企業活動を左右する取り組みです。少子高齢化によって今後は現在よりさらに良い人材の確保が難しくなっていく中で、中途採用の重要性は年々高まっていきます。そして優秀な人材を確保するうえで重要なのが情報発信になります。

求職者の視点になって考えたときに「情報発信がされていて働き方がイメージできる企業」と「情報がまったくなく、事業内容も働き方もイメージできない会社」では、どちらで働きたいと思うかは一目瞭然でしょう。どんなに素晴らしい取り組みをしていても、それが相手に伝わらなければ意味がありません。これまで採用のための情報発信をしてこなかった企業は、中途採用比率の義務化を機に情報発信を意識的に行うことをおすすめします。

対象となる企業の今後について

今回、中途採用比率が義務化されるのは労働者301人以上の大企業だけです。しかし、今後は中小企業にも義務化の範囲が拡大される可能性は大いにあります。そのため、労働者が300人以下の中小企業であっても今のうちからデータを整理するなど準備し、自主的に中途採用比率を公開するなどの対応をすれば、求職者にとっても親切だと言えるでしょう。

中途採用比率の高い企業であれば、実際の数値を公開することで中途採用を望む求職者にアピールできる点もあります。公的に発信するデータなので、部門間で協力して情報を算出する必要がありますが、一番大事なことは優秀な人材を採用することです。手間を惜しまず、求職者視点での対応を心がけましょう。

企業と求職者のマッチング精度の向上のために

今回義務化の対象となった301人以上の労働者が在籍する企業は、中途採用比率に関して正確な情報を取得して早急に準備を進めることが大切です。現在は罰則がないとされていますが、今後もずっと罰則がないとは限りません。また、今回対象にならなかった企業も他人事とは思わずに、いつか自社も対象になることを想定して準備を進めてください。

公表の義務化の目的が、企業と求職者のマッチング精度を上げるきっかけになる可能性を秘めているだけに、中途採用に関する正確な情報をしっかり公開できるかは企業としての信頼性に大きく関わります。「義務だから取り急ぎ公表しよう」という意識で対応するのではなく、どうしたら求職者に企業としての魅力や働きやすさを伝えられるかを意識しましょう。そのような企業に魅力的な求職者が集まってくるはずです。

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