電子申請の義務化で社会保険・労働保険手続きをワンストップ化

電子申請の義務化で社会保険・労働保険手続きをワンストップ化

2020 年4月から特定の法人について社会保険・労働保険に関する一部の手続きの電子申請が義務化されたことを、多くの方はご存知でしょう。しかし、「うちは対象になっていなから対策しなくても大丈夫」とお考えの労務担当者の方は、考えを改めるべきかもしれません。なぜなら電子申請へのシフトは国が力を入れている取り組みであり、現状は特定法人限定の対象範囲が、今後はすべての企業に拡大されることが想定されるからです。

行政手続きに関して「煩雑で面倒くさい」と感じている方も少なくないようですが、行政側も改善の余地があることを認識しています。そのため、政府全体で⾏政⼿続コスト(⾏政⼿続に要する事業者の作業時間)を削減する動きが強まっています。そして、⾏政⼿続コスト削減のための施策の1つが電子申請なのです。では、企業が行政手続きを電子化することで、実際にどんなメリットがあるのでしょうか。バックオフィスの視点で考えた際に、どんな業務の効率化を果たせるのを解説します。

2020年4月より電子申請の義務化がスタート

2019年3月に策定された厚生労働省の『「行政手続コスト」削減のための基本計画』に基づき、2020年4月より、特定の企業を対象に一部の人事労務手続きに関して電子申請が義務化されました。開始のタイミングで義務化の対象となったのは大企業(資本金又は出資金の額が1億円超の法人など)のみですが、今後は中小企業も義務化の対象となると見込まれています。そのため、現在は対象でない企業も将来的な義務化を意識して準備を進める必要があるでしょう。

57-1.jpg

電子申請義務化の「対象申告書類」となる一部の手続きとは

一部の人事労務手続きに関する電子申請義務化が実施されましたが、では実際にどの手続きが対象に含まれるのでしょうか。電子申請義務化の対象としては、「健康保険」「厚生年金保険」「労働保険」「雇用保険」が挙げられます。ではそれぞれの保険において「対象申告書類」となる項目を整理しましょう。

【健康保険・厚生年金保険】
長時健康保険・厚生年金保険で対象となるのは以下の3つの書類です。

被保険者報酬月額算定基礎届 算定基礎届とは、7月1日現在で使用しているすべての被保険者および70歳以上被用者に4~6月に支払った賃金を届け出るための書類です。健康保険と厚生年金保険の被保険者および70歳以上被用者の実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じないようにすることが目的となります。厚生労働大臣は届け出内容に基づき、毎年1回標準報酬月額を決定する「定時決定」を行います。
被保険者報酬月額変更届 昇給・降給が4月以降に決まる企業の場合、昇給後の給料が保険料に反映されるのは翌年10月からです。そのため、控除される保険料が実際の収入とつりあわないケースが起こり得ます。こうした乖離を防ぎ、従業員の暮らしを守るために、給与が大きく変動した場合は「随時改定」の手続きで標準報酬月額を見直す必要があります。その際に提出しなければならない書類が「被保険者報酬月額変更届」です。
被保険者賞与支払届 賞与を従業員に支給した際に、管轄の年金事務所または事務センターに提出する書類です。対象となる賞与は、年に3回以下の支給であること。年4回以上の支給になると標準報酬月額の対象となるため、賞与ではなくなります。

【労働保険】
継続事業(一括有期事業を含む。)を行う事業主は、以下の申告書を提出する必要があります。

年度更新に関する申告書(概算保険料申告書、確定保険料申告書、一般拠出金申告書) 労働保険の年度更新とは、前年度にすでに支払っている保険料の精算をするための「確定保険料」の申告・納付と、新年度の「概算保険料」を納付するための申告とを同時に行う手続きです。その際には、概算保険料申告書、確定保険料申告書、一般拠出金申告書を提出する必要があります。
増加概算保険料申告書 概算保険料申告書の提出後に、年度中途で事業規模の拡大などにより賃金総額の見込額が当初の申告より2倍以上に増加し、賃金総額によった場合の概算保険料の額が申告済の概算保険料よりも13万円以上増加する場合に提出する書類です。この際に増加額を増加概算保険料として申告・納付しなければなりません。

【雇用保険】
雇用保険は対象申告書類がもっとも多いので、抜け漏れがないよう内容を整理する必要があります。

被保険者資格取得届 被保険者資格取得届は、事業所で新しく従業員を雇用した際に提出する必要のある書類です。書類の提出によって、従業員は「健康保険」「厚生年金保険」に加入できます。対象となるのは、その事業所に「常時使用されている人」となります。
被保険者資格喪失届 資格喪失届とは、従業員が解雇、退職、死亡などの理由により「健康保険」および「厚生年金保険」の資格を喪失する際に、手続きが必要になる書類です。
被保険者転勤届 保険は事業所単位で登録されているため、たとえ同じ会社であっても転勤により事業所が変われば、「雇用保険被保険者転勤届」を提出しなければなりません。ここでの転勤とは、「勤務地が変更となる異動のうち、引っ越しを伴うもの」を指します。引っ越しを伴わない出張や、工事現場などでの期間が限定される作業の場合、転勤とは言えません。ただし、1つの事業が複数に分断されるケースや、事業の譲渡の結果として新しい事業主との雇用契約が結ばれる場合などは転勤に含まれます。
高年齢雇用継続給付支給申請 60歳を過ぎて再雇用や再就職をすると勤務日数や労働時間が変わることで、それまでの給与額から大幅に下がるケースも少なくありません。高年齢の雇用に伴う給与額の減額に対し、国の対策として実施されているのが高年齢雇用継続給付金です。
育児休業給付支給申請 少子化の進行や女性の社会進出の傾向が顕著な現代において育児休業を取得しやすくし、育児する労働者の職業生活の円滑な継続を目的に育児休業給付制度が制定されました。その制度の1つが育児給付金であり、それを受け取るための申請書です。

電子申請できない場合の罰則の有無や相談場所について

電子申請は特定の企業を対象に義務化されますが、仮に電子申請に切り替えられなかったとしても明確な罰則はありません。ただし、電子申請による届け出をする環境が整い次第、速やかに切り替えることをおすすめします。今後、法改正が行われることで罰則の対象となる可能性もあるだけに、企業としてきちんと法令遵守できる体制を構築することが重要です。もし電子申請の利用に関して不明点がある場合は、下記の連絡先に相談しましょう。

  • 健康保険・厚生年金保険に係る手続については
    日本年金機構電子申請・電子媒体申請照会窓口
    TEL:0570-007-123
  • 雇用保険被保険者に係る手続については
    電子申請事務センター又はハローワーク
  • 労働保険の徴収に係る手続については
    各都道府県労働局(労働保険徴収課(室))および労働基準監督署

電子申請窓口「e-Gov」の活用

電子申請を行う際には、政府が運営する行政情報のポータルサイト「e-Gov(イーガブ)」を利用します。e-Govは「電子政府の総合窓口」とも呼ばれており、公的な手続きをする際に、わざわざ役所に出向かなくても、インターネット上で24時間365日行うことができるサービスです。e-Govが開設されたことにより、国税庁の国税電子申告・納税システム(e-tax)や、法務省への登記・供託オンライン申請システムなど各府省の電子申請システムなどを統合することで、ワンストップで行政手続きが行えるようになりました。

電子申請で業務効率化

e-Govにより、行政に関する手続きの効率化を実現できます。これまでは行政の窓口が対応時間内に届け出をしなければならず、手続きが行える時間が限られていました。しかし、e-Govでは24時間いつでも申請できます。また、インターネット環境さえあれば、どこからでも申請が可能なため、わざわざ行政の窓口に足を運ぶ必要もなくなったのです。

複数の手続きをデジタルによって効率的に行えるようになったのもe-Govの功績です。紙の書類の場合、該当の窓口にそれぞれのフォーマットに従って手書きでの記載が必要でした。しかし、e-GovならPCでの入力ができ、複数の手続きを同時に行えることで業務を大きく効率化できます。

また、e-Govでは申請や手続き以外にも、行政の取り組みについて調べられます。e-Gov内の「行政手続き案内検索」を使えば、検索エンジンに「飲食店 営業」などと入力するだけで、該当する行政手続きが表示されます。他にも各府省の予算情報や、公文書の情報、独立行政法人や特殊法人に関する公開情報も閲覧可能です。このように、施設に出向かなくても簡単に情報を仕入れられる点は大きな利点だと言えるでしょう。他にも憲法や法律、政令に勅令、規則など現在日本で実効力を持っている「法令」をオンライン上で簡単に調べられます。

義務化項目以外も電子化対応が可能に

今回、義務化の対象となったのは労務に関する手続きが主ですが、法人税や地方税の支払いに関しても電子申請は可能になります。ただし、地方法人税や事業税、特別徴収の住民税などは、e-Govではなく「eLTAX(エルタックス)」が対応窓口となるので注意しましょう。

eLTAXは地方税ポータルシステムであり、地方公共団体が課する地方税の申告・納付や各種届け出などを広範囲にカバーしています。eLTAXに一括申告すれば自動で該当する地方公共団体に申告データが連携されるほか、共通納税機能によって一括で引落された税金が地方公共団体に振り分けられます。このように多くの手続きが電子申請できる環境が整いつつあるため、義務化された手続きに限らず、積極的に電子申請を取り入れていきましょう。

電子申請をルーチンワークの一環に

e-Govによる電子申請は、今後はすべての企業に義務化の対象が広がるでしょう。しかし、懸念として挙げられるのは、民間企業の労務管理システムなどに比べると使い勝手は決して良くない点です。中には「紙での申請の方がやりやすかった」という声もあります。

57-2.jpg

その場合におすすめなのが、「外部連携API」です。APIとは「Application Programming Interface」の略称で、あるアプリケーションの機能を第三者と共有するための窓口と言えます。たとえば、自社で使っている労務管理ソフトで作成したCSVデータをインポートするだけで、e-Govの申請書を作成できたり、一括申請などで漏れ防止や書き方をナビゲートしてくれるシステムもあります。

つまり、普段使っている労務管理システムで行政手続きをそのまま電子申請することが可能です。電子申請によって申請業務が効率化されても、e-Govの扱いに苦戦しているようではかえって業務の効率を落とすことにつながりかねません。現在使っている労務管理ソフトが電子申請も可能なのか確認し、もしも新しいツールに切り替える場合にはワンストップで電子申請まで行えるツールを選びましょう。

まずは資料請求

製品概要が3分で早わかり
TeamSpiritの機能特徴や選ばれる理由を
ご覧いただけます

担当者に相談する

導入に関するご質問や
実際の画面操作を見ながらの製品デモまで
お客様のご連絡をお待ちしております

無料トライアル

正式版と同一機能・操作が可能な
無料版TeamSpiritを30日間ご提供しています
まずはTeamSpiritを体験してください