PCログと実労働時間が乖離する理由|乖離発生時の対処法も解説
著者:チームスピリット編集部
PCログを勤怠管理に活用している場合、実労働時間とPCログに乖離が生じるケースは少なくありません。乖離が発生した場合は「乖離の理由」を確認する必要がありますが、以下の疑問を抱えている企業担当者様も多いのではないでしょうか。
- PCログと勤怠(実労働時間)に乖離が生じた場合、どのように理由を確認すればいいのだろうか?
- PCログと勤怠(実労働時間)に、1分でも乖離が生じたら、全件理由を確認しなくてはいけないのだろうか?
結論から言うと、PCログと勤怠(実労働時間)の間に著しい乖離が生じた場合は本人へのヒアリングを中心とした適切な方法で、乖離理由を把握・管理することが必要になります。
乖離の実態を正確に把握できれば、労働時間の管理も適切に行えるようになり、法令遵守と従業員の健康管理の両立が可能になります。
本記事では、PCログと実労働時間の乖離した場合、どのように理由を確認したらいいかを詳しく解説していきます。さらに記事の後半では、PCログでの勤怠管理を効率化させるための方法についても言及します。乖離の発生や確認の手間を最小限に抑えられる「勤怠管理システム」について紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
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PCログと実労働時間が乖離する理由
まず最初に理解しておかなければいけないのが、「PCログと勤怠には多少の乖離が起こり得る」という点です。その上で、乖離が起こるのには次のような理由が挙げられます。
【PCログと実労働時間が乖離する主な理由】
- パソコンの起動前やシャットダウン後に業務を行なっている
- 業務時間外にパソコンを私的な目的で使用している
- パソコン立ち上げ状態で離席している
- PC以外の業務を行なっている
- PCの更新やシャットダウンのエラー、PCのスリープモードなどで予期せぬログが残る
このように、PCログと実労働時間の間に乖離が生じるのは、業務の性質を考えるとむしろ自然なことだと言えます。重要なのは、この乖離の存在を認識し、その程度や頻度を把握することです。そのうえで、著しい乖離が生じた場合に、乖離の理由を適切に把握・管理することが大切なのです。
また、これらの乖離要因を理解することで、より精度の高い労働時間管理が可能になり、従業員の働き方の実態をより正確に把握することができるようになります。
そもそもなぜPCログと勤怠の乖離理由を確認しなければいけないのか
では、そもそもなぜPCログと勤怠(実労働時間)の乖離を確認する必要があるのでしょうか。
法律に抵触する可能性があるから
PCログと勤怠の乖離を適切に管理しないと、労働基準法違反のリスクが生じる可能性があります。具体的なリスクとしては次の通りです。
未払い残業代の発生:PCログが実際の労働時間を上回っている場合、未払いの残業代が発生している可能性がある。
長時間労働の看過:逆に、勤怠記録がPCログを大幅に下回っている場合、実際の長時間労働を見逃している可能性がある。
乖離があるからと言って、直ちに法律違反となる訳ではありません。しかし、乖離が発生し、その結果として上記のような状況になった時、罰則の対象になる可能性があります。
そのため、乖離が発生した場合は、厚生労働省のガイドラインに沿って適切に実態調査を行うことが求められています。実態調査についての具体的な内容は「PCログと勤怠に乖離があった場合の実態調査のやり方」で詳しく解説します。
IPO審査に影響が出るから
IPO(新規株式公開)審査では、企業の内部統制や法令遵守の状況が厳しくチェックされます。そのため、PCログと勤怠に著しい乖離があり、その是正に向けた動きが見られない場合、審査時に問題点の指摘を受け、上場が延期になってしまう可能性が高まります。
特に近年は、コンプライアンスに対する社会的な問題意識の高まりを受け、IPO審査においても労務管理は大きなテーマとなっています。そのため、IPOを目指す企業にとって、PCログと勤怠の乖離理由の把握は避けて通れない取り組みなのです。
PCログと勤怠にはどのくらい乖離があった場合にチェックすべきなのか
PCログと勤怠の間に乖離が生じることは避けられませんが、例えば1分や2分のズレなど、全ての乖離について詳細な調査を行うのは現実的ではありません。そこで、どの程度の乖離があった場合に理由をチェックすべきなのか、その基準が問題になってきます。
厚生労働省のガイドラインによると、「著しい乖離」がある場合に実態調査が必要とされています(参考:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)。しかし、「著しい」の定義は明確には示されていません。
とはいえ、一般的な目安として、労働基準監督署は30分程度の乖離を一つの基準として見ていることが多いようです。ただし、これはあくまで目安であり、絶対的な基準ではありません。
いずれにせよ重要なことは、自社で基準を設定し、その基準を超える乖離が発生した場合は必ず原因を究明することです。そして、その要因解消に向けたアクションを起こしているかどうかという点も大切です。
それでは次の章から、具体的にPCログと勤怠に乖離があった場合の実態調査の手順を解説していきます。
PCログと勤怠に乖離があった場合の実態調査のやり方
PCログと勤怠に基準を超える乖離が見つかった場合、適切な実態調査を行う必要があります。実態調査の結果に基づき、正しい労働時間に補正し、証跡として乖離の理由を残しておきましょう。
実態調査の具体的な手順と注意点について、詳細を説明します。
調査(本人へのヒアリング)を行う
PCログと勤怠の乖離が発見された場合、まず行うべきは本人へのヒアリングです。ヒアリングの主な目的は、乖離の理由を明確にすることです。
例えば、PCログが勤怠記録より長い場合、「PCを起動したまま長時間離席していなかったか」や「業務時間外にPCを私的に使用していなかったか」といった点を本人に直接確認します。逆に、勤怠記録がPCログより長い場合は、「PC起動前や終了後に業務をしていなかったか」「PCを使用しない業務(会議、外出など)はなかったか」などを確認します。
このようなヒアリングを通じて、単にPCログと勤怠の数字を合わせるだけでなく、従業員の働き方や業務の実態を理解することができます。これは、より適切な労務管理や業務改善につながる重要な情報となります。
実態に応じて勤怠を補正・乖離理由を記載し、賃金を再計算する
本人へのヒアリングを経て実態が判明したら、それに基づいて勤怠記録を適切に補正します。
勤怠の補正では、ヒアリングで得た情報を基に、PCを使用しない会議や外出の時間、PC起動前後の業務時間などを適切に反映させます。補正を行った場合は、乖離の理由を勤怠記録の備考欄などに明確に記載しましょう。
例えば、PCのシャットダウン後に電話応対を行っていたために乖離が生じている場合は、以下のような書き方で乖離理由を記載してもらいましょう。
例文)パソコンのシャットダウン後に電話応対を行ったため、ログと打刻時間の乖離が発生しました。
この他、従業員がPCの電源を切り忘れた場合や、私的なネットサーフィンなどによって乖離が発生しているケースもあります。こういった場合でも、その実態を把握して理由を記載し実労働時間を正しく管理できていれば、原則として問題になることはありません。
重要なのはあくまでも「ただしく乖離の理由を報告してもらい、その理由を記載しておくこと」そして「正しい労働時間に補正し賃金を計算すること」なのです。
そして補正の結果、労働時間が増加する場合は、必要に応じて賃金の再計算を行いましょう。
実態調査を行う際の注意点
実態調査を行う際は、あらかじめ、PCログに関する以下のような特性を理解しておくことも大切です。
【実態調査を行う際に留意しておくべきPCの特性】
- PCログは日付をまたぐと翌日扱いになる
- PCの自動更新やシャットダウンエラーが発生する場合がある
- PCログの保存期間には限りがある
まず、PCログでは、深夜12時(午前0時)を境に日付が変わります。例えば、ある従業員が23時30分から翌日の1時30分まで働いた場合、PCログ上では以下のように記録されることがあります。
- 1日目:23時30分~23時59分(29分間)
- 2日目:0時00分~1時30分(1時間30分)
つまり、1回の連続した勤務であっても、PCログ上では2日間に分かれて記録されてしまうのです。一方、労働基準法では、この勤務は1日の連続した勤務(3時間)として扱われます。
また、PCの自動更新やシャットダウン時のエラーによって、実際の使用時間とログが一致しない場合があることを念頭に置く必要があります。
そして、PCログの保存期間には限りがあることも認識しておきましょう。多くの場合、一定期間が経過すると古いログは上書きされるため、乖離を発見したらできるだけ速やかに調査を行うことが求められます。時間が経過すると、正確な実態把握が困難になります。
この点について、効果的な対策としては勤怠管理システムの導入が挙げられます。PCログと連携可能な勤怠管理システムを使うと、基本的にはシステムを利用している期間はログデータが保管されるケースが多いです。
ただし製品によりデータの保管期間やサポート内容は異なるため、システム導入を検討する際には注意が必要です。
PCログと勤怠に乖離が生じる場合の対策
PCログと勤怠の乖離を完全になくすことは難しいですが、その発生を最小限に抑え、適切に管理するための対策は重要です。特に普段から著しい乖離が頻発している場合は、乖離理由をヒアリングする手間が発生し、大きな業務負荷がかかります。
ここでは、PCログと勤怠の乖離を最小限に抑えるための二つの重要な対策について説明します。
業務開始・終了の定義を明確にする
まず、業務開始と終了の定義を明確にすることが重要です。これにより、PCのログオン・ログオフ前後の業務をあらかじめ労働時間として適切に含めることができます。例えば、朝のミーティングや終業時の後片付けなど、PCを使用しない業務時間も労働時間に含まれることを明確にします。
定義を社内規定やガイドラインとして明文化したら、全従業員に周知するようにしましょう。定義が明確になれば、「この作業は業務時間として記録して良いのか」といった曖昧さがなくなり、従業員も適切に勤怠を記録できるようになります。その結果、原因不明な乖離も減少するでしょう。
PCログと連携できる勤怠管理システムを導入する
IPOを目指す企業や、PCログと勤怠の突き合わせに業務負荷がかかっている企業にとって特におすすめなのが、勤怠管理システムです。
勤怠管理システムとは、打刻情報をもとに従業員の勤務状況を記録し、勤怠情報を自動で集計・出力するシステムです。PCログで勤怠管理を行なっている企業は、PCログと連携できる機能を持った勤怠管理システムを活用することで、コンプライアンスの強化、乖離実態調査の効率化が期待できます。
PCログと連携できる機能を持った勤怠管理システムでは、主に以下のことが行えます。
- 収集したPCログの情報を勤怠情報に自動連携する
- 打刻情報とPCログの情報に乖離があった場合、アラートで通知する
- 打刻情報とPCログの情報に乖離があった場合、乖離理由の申請や承認が行える
▼ログとの乖離があった場合に通知する機能
勤怠管理システムにはPCログとの連携機能以外にも、適正な勤怠管理を行うための様々な機能が充実しています。製品によっては、細かくアラートの設定ができたり、システムで自動的に入力内容のチェックを行えたりと、労務担当者の負荷を減らすための工夫がこらされているものもあります。
▼打刻漏れを知らせるアラートの例
PCログと勤怠管理システムの連携について、具体的な方法やおすすめの製品について詳細を確認したい場合は、以下の記事もあわせてご確認ください。
まとめ|乖離が見つかったら適切に乖離理由の実態調査を行おう
PCログと実労働時間の乖離はある程度避けられませんが、乖離そのものが直ちに問題となるわけではありません。重要なのは、著しい乖離が見つかった場合、厚生労働省が示したガイドラインに従って実態調査を行い、是正に向けてアクションを起こすことです。
もし、労働時間との乖離や、その補正に多くの時間が割かれてしまっている企業は、勤怠管理システムの導入も検討してみてはいかがでしょうか。PCログと連携できる勤怠管理システムを導入することで、乖離の早期発見〜勤怠の補正をシームレスに行えるようになり、労務管理業務の効率化が期待できます。
自社に最適な勤怠管理システムをお探しの方へ
- 既存システムでは機能や柔軟性が不足しており、その課題を解決したい
- 就業規則の変更や法改正に都度対応できるシステムを利用したい
- 自社に合わせたシステム運用を提案・サポートしてもらいたい
このような企業には、100以上の勤務パターンへの対応実績があり、会社独自の細かいルールや法改正にも柔軟に対応できる勤怠管理システム「チムスピ勤怠」が最適かもしれません。
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