様々な企業の働き方改革の裏側に迫る本企画。今回ご紹介するのは、長崎空港ターミナルビルの運営などを手掛ける長崎空港ビルディング株式会社です。コロナ禍で厳しい経営状況に陥り、企業の存続をかけて抜本的な経営改革に挑戦されてきました。

現在は様々な業務をクラウド化させ、データドリブンな経営に取り組む同社ですが、コロナ禍以前までは手帳によるスケジュール管理などアナログな働き方が多く存在する古い企業体質であったとのことです。

そんな同社がどのようにしてデジタルイノベーションに取り組み、働きやすい会社へと生まれ変わったのでしょうか。

長崎空港ビルディング 企画部IT推進グループ 田中さま、企画部経営戦略グループ 町田さま、古賀さま(導入時:総務部人事グループ)、総務部総務グループ 田中(章)さま、企画部IT推進グループ 武藤さま、貞包さま、経理部経理グループ 瀨﨑さまにお話を伺い、同社働き方改革の裏側に迫ります。

長崎空港ビルディング株式会社とは

長崎空港ビルディング株式会社では、長崎空港旅客ターミナルビルの施設運営や案内サービス、また空港内の売店やレストランの運営、そして航空会社の地上支援業務や旅行業など、空港に関する多角的な事業を展開されています。
 
URL:https://nagasaki-airport.jp/nabic/

コロナ禍で旅客数が大幅に減少し、厳しい経営状況に。変化に対応できる会社へと生まれ変わる必要があった

経営改革に取り組むに至った背景として、もともとどういった課題感があったのかを教えて下さい。

町田

当社は空港ターミナルビルという公共性の高い施設の運営を担う会社として、もともと一人ひとりが勤勉で丁寧に働くといったカルチャーがあったのですが、一方で、社会や時代の変化に対応できていない部分が多くありました
アナログな仕事のやり方がずっと続いており、紙の回覧やハンコ文化が根強く、稟議や回覧に時間がかかるのは当たり前でした。また、Google Apps(現:Google Workspace)を導入していたものの、スケジュール管理は各個人の手帳に委ねられているなど、デジタルを活用しきれていませんでした。
さらに組織間での縦割り意識など、古い企業文化が多く残っていました。
しかし2020年、新型コロナウイルス感染症拡大によって、外出自粛要請や渡航制限などの行動制限が求められたことで、国内・国際航空旅客数が大幅に減少しました。これにより、当社も厳しい経営状況へと追い込まれてしまいました。
加えて非接触や密回避など、お客様が求めるサービスのあり方や価値観が大きく変化したため、「WITHコロナ、AFTERコロナを見据え、いかに古い企業体質から脱却し、変化に対応できる会社へと生まれ変わるか」が大きな課題でした。

<左:企画部経営戦略グループ 町田様、右:企画部経営戦略グループ(導入時:総務部人事グループ)古賀様>

そうした課題感に対して、御社ではどのように経営改革を進めていったのでしょうか?

町田

まず、外部のパートナーと共に経営計画の見直しを進めていきました。そして「いかにサービス品質を高め、収益力を磨くか」「いかに省力化を進め、収益構造を強固にするか」という視点で、新たに中期経営計画を策定し、企業価値の向上に向けた業務改革、社風改革に取り組んでいきました。

田中

業務改革においては、いままでの当たり前だと思っていた仕事のやり方を、そのままデジタル移行するのではなく、まずはゼロベースで見直すことから始めました。業務の棚卸しから着手し、業務の中でどういった無駄があるのか、どういった要望があるのかを各部門にヒアリングしていきました。

町田

また、中期経営計画の経営基盤の中に、新たに「社員満足」を追加しました。その理由は、「社員満足度を上げ、社員一人ひとりがイキイキと働ける会社になることが、強い会社をつくる上で必要不可欠」であると考えたからです。
そして新たな経営計画では、営業利益などの目標に加えて、労働生産性や社員満足度を数値化して目標設定し、社風改革に取り組んでいきました。

<長崎空港ビルディング提供>

抜本的な働き方改革に着手。業務効率化から様々な制度改定、また社内コミュニケーション活性化に取り組んだ

業務改革においては、具体的にどのようなことに取り組んでいったのでしょうか?

田中

まずは、アナログなやり方から脱却し、デジタルイノベーションを推進していくべく、中期IT戦略を策定しました。具体的な取り組みとしては、災害発生時の意思決定の迅速化や復旧スピード向上を目指した災害ネットの運用と、「TeamSpirit」を導入し、稟議や勤怠管理、経費精算等の社内ルーティン業務の一括クラウド化を進めていきました。
今回一括クラウド化を進めた背景として、一般的に広く使われているシステムに自分たちの働き方を合わせたかったことがあります。というのも、これまでは自分たちの仕事のやり方にシステムを合わせてきたため、旧態依然とした運用が根強く残っていたのですが、省力化を進めていくためにも、従来とは逆に自分たちの仕事を、すでに業務効率化のために合理化されたシステムに合わせていこうと考えました。

古賀

実際に勤怠管理においても、従来の自社サーバー型の勤怠管理システムでは社内PCでしか操作できず、さらに出退勤時間の登録は打刻機で行い、有給申請は紙による押印形式での申請・承認。また、毎月の出退勤の情報は紙で印刷して押印後、人事部門に提出する業務フローとなっていました。
しかし現在は、個人のスマホ端末から出退勤時間の登録や残業などの諸申請が可能となり、また有給申請等もシステム上で完結できるようになったため、社員および人事部門の業務負荷が大幅に低減されています。
社員の勤怠関連の締め作業がだいたい10日程度かかっていたところから5日まで短縮できましたし、ペーパーレス化も実現できて業務効率化に繋がっています。
また業務効率化だけでなく、労務管理の観点で重要な残業時間等の把握においても、システムから簡単にレポートが作成でき、適切なモニタリングおよび有給休暇取得の促進といった働きかけが可能になりました

→「TeamSpirit」の具体的な活用例はこちら

<企画部IT推進グループ 田中様>

社風改革のために、様々なコミュニケーション活性化施策も行われているそうですが、具体的にどのようなことに取り組まれてきたのでしょうか?

田中(章)

当時はコロナ禍であったため、同じ会社にいながらも、横の繋がりを感じられる機会が少なくなっていました。そこでまず行ったのが、ウォーキングアプリによる社員間の交流促進です。部門対抗戦や役員対抗戦などのイベントを企画し、部門間で競い合ったりすることでコミュニケーションの活性化を図っていきました。
またイベントだけでなく、定常的に社内交流が生まれるよう、社内SNSの運用を開始しました。旅行などのプライベートの話題を含めて発信していいというルールでスタートしました。
加えて、各部門のフロアが別々で、物理的な距離があったことも課題でした。そこで、業務スペースをワンフロアに集約するといったことにも取り組みました。

コミュニケーション活性化の施策に対して、社員の皆様に参加してもらうために意識したことなどはありましたか?

田中(章)

ウォーキングアプリに関しては、1人でも多くの社員に参加してもらうことを意識しました。定期的に行うウォーキングイベントに対して、開催の案内や途中経過、結果の発表等を社内SNSを通じて積極的に発信することで、社員間の話題となり、コミュニケーションに繋がったと感じています。ワンフロアには将来的にフリーアドレスに対応できるようなデスクを設置し、部門を越えたミーティングが気軽にできるスペースを整備しました。

町田

社内SNSに関して現在ではサークル活動的なグループ等、社員が自発的に利用されているように感じています。従来まではコミュニケーションは上から下という流れが中心でしたが、現在は上下双方向だけでなく、横のコミュニケーションも増加したように思います。

<長崎空港ビルディング提供>

その他、働き方改革として取り組まれたことは何かありますか?

古賀

当社は女性社員が多く、育児をしながら働く方もいらっしゃいます。そこで育児短時間勤務の対象となる子の年齢を、3歳から小学校3年生を終了するまでに引き上げました。また半日単位での休暇制度の導入や、年間公休日数を92日から103日へと変更するなど、制度改革に取り組んできました。その結果、2022年5月には「子育てサポート企業」として「くるみん認定」を取得しています。
また、女性社員だけでなく、男性社員の育児休業取得の促進も行ってきました。これまでは男性社員が育児休業を取得する雰囲気が社内にはありませんでした。
そこで、社内ポータルサイト内に「子育て支援への取り組み」に関するページを新設し、お子さんが生まれる予定の社員に対して、給付金や社会保険料免除などの育児休業制度に関する個別説明や育児休業を取得するかどうかの意向確認も人事部門から行うなど、取得促進を進めていきました。
その結果、現在は男性社員の取得率50%以上、また社内の雰囲気としても「男性でも育児休業を取得していいんだ」といった雰囲気が醸成されています。

<総務部総務グループ 田中(章)様>

デジタル化が急速に進み、困惑する社員も。変化を促進するために、一人ひとりの意識変革に寄り添うことが重要

そうした抜本的な経営改革を推し進めることは非常に難しかったと思われますが、実際に苦労したことは何かありましたか?

町田

社員満足向上を進めるにあたり、「ダイレクトトーク」という全社員が直接、社長と対話する取り組みを行いました。対話の中で「給与を高くしてほしい」などの率直な意見や要望が600件近く集まりました。そうした声を、どう会社に取り入れていくかは非常に難しかった点でした。

田中

また、デジタル化を急速に進めたため、ついていけない社員や困惑する社員が出てきました。特に新たなツール導入によって、いままでの社内システムが使えなくなることへの不安や不満もあり、そうした社員のサポートも苦労した点です。

そうした社員のサポートにおいて、具体的にどういったことを行われたのでしょうか?

田中

個別にサポートすることはもちろん、社内ポータルサイトにITリテラシー向上学習サイトをつくり、入門編や基礎編、Q&Aといった項目を設け、Googleの基礎的な使い方から「TeamSpirit」の使い方など、様々なITリテラシーに関わる情報をまとめました

<長崎空港ビルディング提供>

アナログな働き方から、デジタルを活用した働き方への変革が成功した要因として、どのようなことがあるとお考えですか?

町田

要因として大きいのは、社長自らの発信だったと感じています。仕事のやり方1つにしても、無駄かもしれないと感じていながらも本当に変えてしまっていいのかという不安がありましたが、社長から「一回やめてみればいい。やめて問題が出てきたら、また始めればいいのだから」という声掛けがあったことが、とても大きな転換点になりました。
さらに、いままでは目の前の仕事に一生懸命取り組むことが価値であったのに対して、「やり方を変えていくこと自体が新たな価値に繋がっていく」ということを社員一人ひとりが感じられたことも変革を加速させる要因になったと感じています。

稟議の決裁に係る平均所要時間は6日から1.6日へと大幅短縮。デジタル化とコミュニケーションの活性化で働き方が進化

そうした働き方改革によって、どういった成果が生まれていますか?

田中

1つの例ですが、稟議書を紙からクラウドシステムに切り替えたことで稟議にかかる日数が6日から1.6日までへと大幅に短縮することができています。権限委譲も同時に進めたことで効果もより高まりました。
さらに、様々な領域でのペーパーレス化を進めていったことで、紙の印刷がA4用紙換算で年間2万枚、コピー代も大幅な削減を実現できました。印刷・コピー業務がなくなったことで業務効率化にも繋がっています。

瀨﨑

経費精算の面でもデジタル化は効果を生んでいます。これまでは、現金の払い出しでの精算が必要だったため、100円ショップで購入した備品などもその都度対応する必要があり、多くの工数がかかっていました。
しかし現在はシステム上で経費申請を行い、給料日に振込というフローへと変更しました。都度対応がなくなり、経理部のタイミングで経費精算の業務が行えるようになった他、申請する社員も出張先から各自の携帯端末で申請できるため、大幅な業務効率化に繋がっています。稟議や経費精算では、「TeamSpirit」が活躍してくれています。

<経理部経理グループ 瀨﨑様>

部門間のコミュニケーションが生まれていると感じるエピソードがあれば、教えて下さい。

町田

以前から「GOOD JOBカード」を使って社員を褒める施策を行っていたのですが、どうしても部内での取り組みに偏りがちでした。現在は社内SNSの浸透もあり、「GOOD JOB」の投稿数や、コメント・いいねの数も増加し、多くの社員を巻き込んだ施策になってきました。
部門横断的なコミュニケーションはもちろん、「全社的なGOOD JOBの見える化」によって褒める文化が浸透してきていると感じています。

貞包

社内コミュニケーションの活性化により、普段接点のない他部門がどういった活動をしているのかが見えるようになり、社内イベントの情報も手軽に知ることができるようになりました。以前であれば、積極的に情報収集しなければ、社内でどんなイベントが開催されているのかわかりませんでしたが、いまではそうしたイベントを当たり前のように知って参加できるため、とても嬉しく感じています。

町田

私は国旗検定1級というマニアックな資格を持っているのですが、社内SNSの自己紹介欄にそのことを記載したんですね。
すると、それを見た他部門の社員から「長崎市でG7保健大臣会合が開催されるから、それにあわせて主要国の国旗や歴史などを紹介したく、話を聞きたい」と連絡をいただいたことがありました(笑)。
従来まではそういった発信の場もありませんでしたから、社内SNSを通じて新たなコミュニケーションが生まれたことは驚きましたし、非常に嬉しかったです。

<左:企画部IT推進グループ 武藤様、右:企画部IT推進グループ 貞包様>

最後に、さらなる経営改革、そしてデジタルイノベーションの推進に向けた今後の展望を教えて下さい。

田中

現在もまだ、エクセルでの管理や紙から転記するアナログ業務も残っているため、これからもさらにデジタルイノベーションを加速させていければと思っています。

武藤

今後、売上システムの刷新も予定しているのですが、システム連携を進めていき、さらなる省力化を図っていきたいと考えています。ダッシュボードなどで売上予測が簡単に見られるようにしていきたいですね。

町田

今後は例えば売上に関わるダッシュボードを見て、それが将来的にどういった影響を及ぼすのかといった、予測する力を身に付けていく必要があると考えています。すでにデータに基づいた販促活動などにも取り組んでいますが、よりデータに基づく事業運営を行うことで、会社の成長促進を進めていければと考えています。

〜長崎空港ビルディングの皆様、お話を聞かせていただきありがとうございました!〜