【社労士監修】テレワーク導入時に注意したい労働基準関係法令の適用と留意点

【社労士監修】テレワーク導入時に注意したい労働基準関係法令の適用と留意点

テレワークは元々、政府が推進する働き方改革における「柔軟な働き方がしやすい環境整備」を実現するための手段の1つという位置づけでした。しかし、新型コロナ感染症の影響もあり、民間企業へのテレワーク導入がここ2年で急速に進みました。既にテレワークを導入した、もしくは導入を検討している会社も多いのではないでしょうか。

テレワークの導入は労働者と会社の双方にさまざまなメリットがある一方で、オフィス勤務と比べて労働者の労働時間管理や健康管理が複雑になるという側面もあります。そのため、無事にテレワークを導入したものの、必要な手続きを漏らしていたり、意図せず法令に違反する状態になってしまうことが起きてもおかしくありません。

このような問題を防ぎ、テレワークを適切に運用するためには、労働基準関係法令の適用のされ方を正しく理解するとともに、テレワークで起こりやすい問題と対応策を事前に把握しておくことが大切です。

この記事では、テレワークをこれから導入する会社や既に導入済みの会社がテレワークを適切に運用できるようにするために、労働基準関係法令の適用のされ方や留意点について社会保険労務士の立場から解説していきたいと思います。

●目次

1.テレワークとは

 (1) テレワークの形態

 (2)テレワーク導入による効果

2.労働基準関係法令の適用と留意点

 (1) 労働条件の明示について

 (2) 労働時間の把握について

 (3) 労働時間制度の適用について

 (4) 中抜けについて

 (5)休憩時間について

 (6)時間外・休日労働の労働時間管理について

3. 労働安全衛生法の適用と留意点

 (1) 長時間労働対策について

 (2) メンタルヘルス対策について

4. おわりに

5. テレワーク導入時の労務管理を効率的に行うには

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1.テレワークとは


まず、テレワークとはどのような働き方を指すのか、その効果は何なのかについて、おさらいしておきましょう。

(1) テレワークの形態

テレワークは、働く場所の違いによって、「①在宅勤務」、「②サテライトオフィス勤務」、「③モバイル勤務」の3つの形態に分類することができます。

①在宅勤務
自宅を就業場所とする働き方です。自宅からPCや携帯電話などを使用して、上司や同僚とコミュニケーションを取ります。通勤に要する時間を有効に活用できるとともに、育児や介護といった家庭生活との両立を図りやすくなります。

②サテライトオフィス勤務
本社など本来の勤務先ではなく、自宅近くや通勤途中に設けられたサテライトオフィスを就業場所とする働き方です。会社が自社専用のオフィススペースを設ける「専用型」と、異なる複数の会社が1つのシェアオフィスやコワーキングスペースなどを共有する「共用型」の2つの種類があります。

③モバイル勤務
移動中の交通機関の車内や出張先のホテル、喫茶店など、状況に応じて臨機応変に就業場所を選択する働き方です。外出・出張時の時間をうまく活用することによって、業務効率の向上を図ることができます。外出・出張の多い営業職の方などに適した働き方だと言えます。

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(2)テレワーク導入による効果

テレワーク導入による効果は、働き方の変革による生産性向上やワークライフバランス向上だけではありません。
例えば、「ペーパーレス化やオフィス縮小によるコスト削減」、「新型ウイルスの流行や地震、台風等の災害時における事業継続性の確保」、「さまざまなライフイベントに遭遇する従業員の就業継続や自律性向上による人材確保・育成」といった多方面への効果が考えられます。労働者だけでなく、会社にも多くのメリットがあることを認識しておきましょう。

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2.労働基準関係法令の適用と留意点

働く場所が会社のオフィス以外だからといって、労働基準法や労働安全衛生法などの労働基準関係法令の適用から外れることありません。ここでは、テレワークに対する法令の適用のされ方や留意点について見ていきましょう。

(1) 労働条件の明示について

労働契約を締結する際、会社は労働者に対して賃金や労働時間といった労働条件の明示義務があることはご存じだと思います。明示すべき労働条件の中に就業の場所も含まれており、雇入れ直後に労働者がテレワークを行う場合には、就業の場所として「テレワークを行う場所」を明示する必要があります。
具体的には、労働条件通知書における就業の場所として、労働者の自宅やサテライトオフィスなどテレワークを認める場所を記載して明示します。モバイル勤務の場合には、会社が許可基準を示したうえで「使用者が許可する場所」とすることも可能です。

(2) 労働時間の把握について

会社は原則として労働者の労働時間の把握する義務があり、テレワークを行う労働者についても例外ではありません。労働時間の把握の方法については、厚生労働省から「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(以下「適正把握ガイドライン」という)が示されており、テレワークの労働時間も適正把握ガイドラインに従うことになります。

適正把握ガイドラインを踏まえたテレワークの労働時間の把握の方法として、厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(以下「テレワークガイドライン」という)では次の2つが示されており、基本的にはいずれかの方法を用いることになります。

①PCの使用時間やサテライトオフィスへの入退館時刻等の客観的な記録による把握
②自己申告制による把握

テレワークの労働時間を自己申告制で把握する方法としては、例えば「始業や終業、休憩の開始や終了の都度、労働者がメールやチャット等で上司に報告する」、「勤怠管理ソフトに労働者が始業時刻、終業時刻、休憩時間を入力する」といった方法が考えられるでしょう。

自己申告制を採用する場合、労働者が正しく申告することが前提となることから、運用上特に注意が必要です。例えば「労働者から申告された就業時間以外の時間帯にメールが送信されている」、「仕事を終えた後の時間帯で長時間PCを使用した記録がある」、「仕事の生産性を良く見せるために労働者が労働時間を過少に申告する」、「36協定における残業時間の上限を守るために一定以上の労働時間の申告を上司が禁止する」といった問題が起こり得ます。
このような問題を防止するために、テレワークガイドラインでは次のような措置が会社に求められています。

①労働者に対して労働時間の実態を記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うことや、実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用等について十分な説明を行うこと。

②労働者からの自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、パソコンの使用状況など客観的な事実と、自己申告された始業・終業時刻との間に著しい乖離があることを把握した場合には、所要の労働時間の補正をすること。

③自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設けるなど、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと

【「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」より抜粋】

上記以外にも例えば、「正しい申告を行わなかったことがあるか、正しい申告を上司から拒まれたことがあるか」といったヒアリングを人事から労働者に対して定期的に行うことも考えられ、実際に行っている会社も存在します。皆さんの会社に合ったやり方を考えてみてください。

(3) 労働時間制度の適用について

テレワークを導入するからといって、必ずしも労働時間制度を変更する必要は無く、基本的には従来と同じ労働時間制度のままテレワークを行うことが可能です。ここでは、テレワークにおける代表的な労働時間制度について、その適用と留意点を見ていきましょう。

① 通常の労働時間制または変形労働時間
通常の労働時間制または変形労働時間制の場合、あらかじめ定めた始業及び終業時刻に従って、会社のオフィス以外の場所でテレワークを行います。なお、テレワークを行う労働者が一律に同じ時間帯で労働する必要が無ければ、所定労働時間はそのままとしつつ、テレワークを行う労働者ごとに始業及び終業の時刻を変更できるようにすることも可能です。その場合、労働時間制を変更する必要はありませんが、テレワークを行う際に労働者が始業及び終業時刻を変更することができる旨を就業規則に定める必要があります。

② フレックスタイム制
その日の始業及び終業時刻、所定労働時間を労働者が自由に決定できる制度で、テレワークと最も相性の良い労働時間制だと言えます。例えば「オフィスに出勤する日は労働時間を長くし、テレワークを行う日は労働時間を短くする」、「テレワークを行う日はコアタイムを設けず、オフィスに出勤する日のみコアタイムを設ける」といった運用も可能で、会社の実情に合わせた柔軟な取り扱いがしやすいのが特徴です。

③事業場外みなし労働時間制
テレワークを行う場合、一定条件を満たせば事業場外みなし労働時間制の適用が可能です。しかし、この一定条件は極めて限定されており、上司の目が届かないというだけで適用できるわけではありません。テレワークで事業場外みなし労働時間制を適用する場合の一定条件とは、テレワークガイドラインで以下のように示されています。

(1)通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと

この解釈については、以下の場合については、いずれも①を満たすと認められ、情報通信機器を労働者が所持していることのみをもって、制度が適用されないことはない。

 ・勤務時間中に、労働者が自分の意思で通信回線自体を切断することができる場合

 ・勤務時間中は通信回線自体の切断はできず、使用者の指示は情報通信機器を用いて行われるが、労働者が情報通信機器から自分の意思で離れることができ、応答のタイミングを労働者が判断することができる場合

 ・会社支給の携帯電話等を所持していても、その応答を行うか否か、又は折り返しのタイミングについて労働者において判断できる場合

(2)使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

 以下の場合については(2)を満たすと認められる。

 ・使用者の指示が、業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、一日のスケジュール(作業内容とそれを行う時間等)をあらかじめ決めるなど作業量や作業の時期、方法等を具体的に特定するものではない場合

【「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」より抜粋】

つまり、テレワーク中に労働者が自由に通信機器から離れたり通信を切断したりすることが許されない場合や、上司や同僚からの連絡にタイムリーにリアクションする必要がある場合には、事業場外みなし労働時間制を適用することは認められないことに注意しましょう。

(4) 中抜けについて

テレワークで発生しやすい特有の事象として、中抜けがあります。中抜けとは、就業時間の途中で労働者が一定程度業務から離れることです。例えば、子供の送り迎えや、役所での用事などがイメージしやすいでしょう。
中抜けの取扱いについて法令上の定めはありませんが、あらかじめ就業規則に定めておくことが望ましいでしょう。中抜けの取扱いとしては以下の3つが考えられます。

①休憩時間として取り扱う
中抜けの時間を休憩時間として取り扱う方法です。この場合、終業時刻を繰り下げることも、繰り下げないことも可能です。終業時刻を繰り下げる場合は、始業時刻及び終業時刻を変更することができる旨を就業規則に定めておく必要があります。

②時間単位の年次有給休暇として取り扱う
中抜けの時間を休憩時間ではなく時間単位の年次有給休暇として取り扱うことも可能です。この場合、年次有給休暇を時間単位で付与できる旨の労使協定を締結しておく必要があります。

③労働時間として取り扱う
中抜けの時間を労働時間として取り扱うことも可能です。この場合、中抜けした時間についても賃金を支払う必要があります。一見すると不思議な取り扱いですが、中抜けの時間を把握する手間を省けるというメリットがあります。

(5) 休憩時間について

休憩時間は労働者に一斉に付与することが原則で、テレワークを行う労働者の休憩時間帯は、オフィス勤務の労働者の休憩時間帯と合わせる必要があります。ただし、労使協定を締結することによって、テレワークを行う労働者の休憩時間帯を任意に設定することが可能となります。

(6) 時間外・休日労働の労働時間管理について

オフィス勤務と同様に、テレワークの場合も時間外労働・休日労働をさせる場合には、36協定の締結・届出及び割増賃金の支払いが必要です。

また、深夜に労働させる場合には、深夜割増賃金の支払いが必要となります。テレワークの時間帯をある程度労働者の裁量に任せる場合、家庭の用事を終えた深夜に仕事を再開することが多くなったために深夜割増賃金が発生するといった問題も考えられますので、注意が必要です。

3. 労働安全衛生法の適用と留意点

オフィス勤務と同様に、テレワークを行う労働者に対しても労働安全衛生法は適用され、労働者の安全と健康を確保するための措置を講じる必要があります。ここでは、テレワークで特に注意が必要な長時間労働、メンタルヘルスの対策について見ていきましょう。

(1) 長時間労働対策について

テレワークは業務効率化の効果があるため、長時間労働のリスクは低減するように思えますが、決してそうとは限りません。会社の管理が行き届かなくなり、仕事と生活との境界が曖昧になった結果、長時間労働が生じる可能性が高くなってしまう恐れがあることに留意する必要があります。

テレワークガイドラインで示されている長時間労働対策を4つご紹介します。

①時間外のメール送付の抑制
時間外のメールや電話等での指示や報告を自宅で受けとった場合、その日のうちに処理するために仕事を再開してしまうことが、長時間労働が生じる1つの原因として考えられます。これを防ぐために、テレワークを行う労働者に対する時間外のメールや電話等での連絡について、会社が自粛を命ずるという方法が有効だと考えられます。

②システムへのアクセス制限
会社のオフィス以外からの社内システムへのアクセスについて、一定の時間帯以外や休日にアクセスできないように、システム制御を行う方法です。一律にアクセス不可にするほか、時間外のアクセスを事前許可制にすることも考えられます。

③テレワークの場合の時間外労働・休日労働・深夜労働について制限を設ける
テレワークを行う労働者が時間外労働・休日労働・深夜労働を行う場合、上司による事前の許可制にする、もしくは原則禁止にするという方法です。この場合、就業規則にその旨を記載しておく必要があります。

④長時間労働を行う労働者への注意喚起
テレワークにより長時間労働が生じる恐れのある労働者や、時間外労働・休日労働・深夜労働が発生した労働者に対して、会社が注意喚起を行う方法です。勤怠管理ソフトから自動で警告表示やメール送信する方法もありますが、人が介在する方が効果的なため、人事や上司から直接本人に注意喚起する方法が有効だと考えられます。

(2) メンタルヘルス対策について

新型コロナ感染症の影響でテレワークが長期化した結果、メンタル不調を訴える労働者が増えています。テレワークでは、労働者が上司や同僚とのコミュニケーションを取りにくく、また労働者の心身の不調に上司や同僚が気づきにくい状況になりやすいため、メンタルヘルス対策において特に注意する必要があります。

この問題について即効性の高い対策があるわけではありませんが、厚生労働省のテレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト【下図】を用いて、自社のテレワーク環境の現状を把握して改善するとともに、メンタルヘルスに関する相談体制の整備や、コミュニケーションの活性化のための措置を行うことが有効だと言えます。

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具体的には例えば、定期的なオンライン面談によって労働者の心身の状態を確認する機会を設けたり、定期的にオフィスに出社して対面で話す機会を設けたりといった方法が考えられます。労働者や会社の状況を踏まえて、自社に合ったやり方を柔軟に検討することが大切だと言えるでしょう。

4. おわりに

テレワークを導入・運用するにあたっての、労働基準関係法令の適用や留意点について解説させていただきました。テレワークは、適切に運用できれば会社と労働者の双方に大きなメリットをもたらす働き方であることは間違いありません。最初から万全の仕組みを作って会社全体に導入する必要はなく、特定の部署や特定の業務担当者からトライアルで導入し、試行運用する中で徐々に改善を重ねていくことも有効です。自社に合ったテレワークの仕組みづくりに是非取り組んでみてください。【解説おわり】

◆プロフィール

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解説:菊川洋平

社会保険労務・IT/DXコンサルタント・システムエンジニア、社会保険労務士事務所リズム代表。東京都社会保険労務士会 先進人事経営検討会議 副責任者。大手SIerで国内有数の大型プロジェクトのシステム開発・マネジメントを歴任。前職のリクルートテクノロジーズでは、グループ全体の人事給与パッケージソフトウェアの設計・導入に関与。人事制度構築・事業開発支援・IT/DX導入支援などを専門とする。公益団体理事のほか、複数の組織の社外役員を兼務)

5.テレワーク導入時の労務管理を効率的に行うには

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また、「中抜け」にも対応し、打刻の回数に応じて自動的に出勤・休憩・退勤を判別するため、効率的な労働時間管理にも役立ちます。
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執筆:バックオフィスナビ編集部・@人事共同執筆

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