
株式会社オーテック
残業の兆しをとらえ離職率9.2%から5%に、続けたくなる職場づくりの裏側!

事例ポイント
課題
- 勤怠申請の不備が多く、7営業日かけて何重もの確認・修正作業が発生していた
- 月中の勤怠情報を可視化できず、長時間労働への対応が後手に回っていた
- 年次有給休暇の取得状況が把握できず、期限間近に取得漏れが分かるというケースが多発していた
- 長時間労働を早期に把握できず、離職リスクが高まる社員のケアができていなかった
決め手
- 勤怠申請時に、入力不備を自動で検知してくれるエラーチェック機能
- 残業超過の兆しが見られる本人と上司に残業抑制の通知が送られるアラートメール
- 年次有給休暇取得の状況をリアルタイムに可視化できる有給休暇ダッシュボード
- 離職リスクのある長時間労働者をタイムリーに抽出できるレポート機能
効果
- 勤怠の締め作業にかかる日数が最大7営業日から1~2営業日に短縮
- 平均残業時間が30時間から25時間に減少
- 有休取得率が50%台から70%超へと向上
- 過重労働を抑制しメンタル不調による休職者減少、離職率も9.2%から5%に減少
- 「健康経営優良法人」認定を獲得
事例概要
機能 | 勤怠管理 |
---|---|
業種 | 建設・不動産・インフラ |
従業員数 | 100~499人 |
「信頼」「進取」「創意」のもと、個人の成長を社の発展へとつなげている株式会社オーテック。2024年と2025年には2年連続で「健康経営優良法人」の認定も受けており、従業員の健康増進や「いきいきと働ける職場環境の実現」にも積極的に取り組んでいる。このような取り組みを支える重要な基盤となっているのがTeamSpiritだ。以前は紙で勤怠管理を行っていたが、2019年4月にTeamSpiritへと移行。勤怠情報をリアルタイム可視化することで、現場従業員は「働き方へのリテラシー」が向上し、残業時間削減や年次有給休暇取得率向上、離職率低下につながっている。また以前は各拠点で3営業日、本社でも最大4営業日と計7営業日かかっていた勤怠の締め作業も、1~2営業日にまで短縮。今後はTeamSpiritをさらに活用し、働き方の多様化を進めていくことが検討されている。
人材育成に注力し「健康経営優良法人」の認定も取得
1934年に管工機材の専門商社として創業し、1960年には空調制御機器の取り扱いを開始し、現在では「管工機材事業」と「環境システム事業」の2本柱でビジネス展開をしている同社。創業から一貫して社会に不可欠な建物環境の支援に尽力しており、国家資格・公的資格を有する技術者も数多く在籍、さらなる技術力向上を目指したメーカー研修や階層別の研修も積極的に実施している。このような高い技術力を活かし、常に時代の変化や社会のニーズに対応しながら、建物環境の課題解決に貢献。工場から病院、ショッピングモールに至るまで、分野を問わず幅広い実績を積み重ねている。
全国に10支店・15営業所の拠点を展開し、従業員数は連結で518名。これに対して主要技術資格取得数は721資格に上っており、この数字からも従業員の技術力の高さがうかがえる。2024年5月には創業90周年を迎え、創業100周年に向けて「建物を快適に、未来をサステナブルに。」というミッションステートメントを発表。より快適な空間創りに挑戦するため、さらなる技術力や提案力向上を目指した社員教育や資格取得に注力している。
その一方で2024年4月には、日本健康会議が定める評価基準にもとづいて経済産業省が認定する「健康経営優良法人」の認定も受けている。これは「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」の中でも、特に優良な健康経営を実践している法人を顕彰する制度。2025年にも認定を受けており、2年連続での認定取得となった。
このように従業員の技術力や提案力を競争優位性につなげ、その育成にも積極的に取り組むと共に、従業員の健康増進や「いきいきと働ける職場環境の実現」にも邁進している。その屋台骨を支える重要な柱の1つになっているのが、2019年4月から運用が開始されたTeamSpiritなのである。
以前は紙運用だったため勤怠状況のタイムリーな把握が困難
TeamSpirit導入以前は労働時間の管理がきちんと行えていなかったと管理本部総務統括部 人事課で課長を務める天池 元基 氏は当時の状況を次のように振り返る。
管理本部総務統括部 人事課 課長 天池氏
「2017年には働き方改革の取り組みがスタートしましたが、当時は紙で勤怠管理を行っていました。打刻もタイムカードで行われ、残業申請などは複写式の申請書を利用していました。これらは翌月月初に各拠点でExcelを使って集計が行われ、プリントアウトして回覧し、タイムカードや申請書と突き合わせた一次チェックを行った上で、本社に集められていました。
本社ではさらに、集計内容の不整合や社内ルールに合致していない部分をチェックした上で、給与担当者がデータをExcelに再入力し、給与計算システムに反映していました。そのため、勤怠を締めた後でないと当月の勤怠情報が把握できず、適切な労働時間管理をリアルタイムに行うことができませんでした」と天池氏。もちろん、紙の申請書を集めて集計を行えば、各拠点におけるその時点での勤怠状況を把握することは可能だが、そのためには膨大な作業時間がかかり、現実的とはいえなかったという。
また、残業をする場合は事前に紙で申請するルールがあったものの、現場や客先で作業する従業員が多く、会社に戻る頻度が少ないことから、事後申請が多発し「なかには、月末になって上長の手元に20枚もの残業申請がまとめて届くケースもありました。」と天池氏は振り返る。
これに加えて「締め業務にも相当な時間がかかっていました」と語るのは、管理本部総務統括部 人事課で主任を務める小林 未波 氏。
管理本部総務統括部 人事課 主任 小林氏
まず、各拠点では集計と一次チェックを行った上で、本社にデータを郵送する必要があり、この工程に最大3営業日を要していた。さらに本社でも、全従業員分のデータチェックに最大2営業日、続く給与担当者の処理にも最大2営業日を要しており、勤怠の締め作業全体で最大7営業日を費やしていたという。
勤怠情報を直感的に把握できるダッシュボードを高く評価
この問題を解決するため、2018年にシステム化の検討をスタート。その背景としては、社内で働き方改革に関する取り組みが始まったことに加えて、時間外労働の上限が罰則付きで法律に規定され、2019年4月から適用されることになったことも、大きなきっかけになったと天池氏はいう。
「当社の事業は環境システム事業と管工機材事業で構成されていますが、前者は建設業に分類されるため時間外労働上限規制の猶予対象となっていました。しかし後者は卸売業であるため、2019年4月から適用対象となりました。そのためこれに向けて、システム化を済ませておく必要があると考えました。」
TeamSpiritを含む複数のシステムベンダーから提案を受け、2018年秋にTeamSpiritの採用が決定。採用の決め手を天池氏は次のように語る。
「いくつかのシステムを比較した中で、TeamSpiritは画面のレイアウトがシンプルで、勤怠の打刻や申請、工数の入力といった操作がスムーズに完結でき、 ITリテラシーが高くない従業員でも迷わず使えると感じました。さらに評価したのが、勤怠データをさまざまな切り口で自在に抽出・集計できるレポート機能です。部署別や個人別に労働時間や休暇取得を可視化し、問題の兆しをいち早く察知することが可能になると感じました。以前は各拠点から提出された勤怠情報を手作業で集計していたため、情報の精度にも限界がありましたが、TeamSpiritでは集めたデータをリアルタイムに可視化でき、現場の状況を把握しながら適切なタイミングで働き方の見直しを図れると感じました。」
これに加えて「当社には独自のルールがいくつか存在するのですが、ルールに合わせて集計項目をカスタマイズできる柔軟性の高さも魅力的でした」と小林氏。
その一つが「普通残業時間」と呼ばれる同社独自のルールだ。
これは同社の所定労働時間(9時から17時半)を超えた時間を"法定外の残業時間"とは別に「普通残業」として算定・管理している。これは従業員の働き方や就業バランスをより細かく把握・運用するために設けたものであり、同社にとっては重要な勤怠ルールの一つだ。しかし、こうした独自の時間区分は、一般的な勤怠管理システムでは「法定内」「法定外」といった区分しか用意されておらず、対応が難しいことが多く、そのため手作業での補完や、管理側での再集計が必要になってしまい、実務上の負担や制度形骸化のリスクをはらんでいた。
「汎用的なシステムでは『制度にシステムを合わせる』ことが難しく、結果的に人手で調整せざるを得ない場面が増えてしまいますが、TeamSpiritであれば標準機能で"普通残業時間"のような特殊なルールにも対応できました。運用面での無理が生じないため、制度そのものを適切に維持・活用できる点にも大きな価値を感じました」と小林氏。
紙運用されていた独自ルールもシステム化、アラート機能も積極活用
運用開始に向けた導入準備もスムーズに進んだと小林氏は述べている。
TeamSpiritのサポートチームから送付された質問シートに沿って回答していくだけで、導入に向けたやるべきことが網羅的に明確化されたという。これに従い、当社独自のルールを反映したレポートやダッシュボード(各個人や部署、組織全体など様々な粒度で勤怠情報を直感的に可視化できる機能)の作成に着手。「途中でわからないことが出てきても、すぐにサポートチームに相談できたので、不安を感じることなく進められました。正直、何度電話したか分からないくらい細かい質問もさせていただきましたが、その都度丁寧に対応してくださり、"一緒につくっていく"という安心感がありました」と小林氏。
これらの作り込みを行った上で、2019年3月には全国の支店や営業所に出向いて、TeamSpiritの使い方をレクチャー。同年4月に運用をスタート。
「TeamSpiritの導入に対しては、『紙の管理は時代遅れ』『システム化を歓迎する』というムードがあり、移行は円滑に進みました。打刻を毎日行う必要になることには若干の抵抗はありましたが、PC、スマートフォン、タブレットと従業員の働き方に応じた打刻ができるようにし、現場側の負担を軽減しています。また打刻を行わずに4営業日経過すると、自分では入力できなくなり、支店長が代理で入力するというルールも実装し、打刻漏れに対する心理的なハードルが高くなり、打刻漏れはほぼ無くなりました。」と天池氏。
また、長時間労働者への対応として、残業の抑制を促すアラートメールの機能も積極的に活用。残業時間が一定の水準に近づいた際には、本人と上司に自動でメールが送信されるよう設定しており、その閾値は3段階に分けて設けられている。
・第1は、法定外残業時間が30時間を超えた時
・第2は、36協定の特別条項の設定時間の15時間前
・第3は、36協定の年間残業時間上限の15時間前だ
36協定の特別条項は、繁忙期などの臨時的な事情がある場合に認められる労使協定の条項だが、その設定内容は拠点、職種毎に異なっているという。
この機能の活用背景には、「気づいた時には上限を超えていた」といった事後対応になってしまう従来の課題があったという。特に、拠点、職種毎に36協定の特別条項の設定内容が異なる中で、全社的に統一的かつタイムリーなケアを実施するには、システムによる自動アラートが不可欠だった。「紙やExcelで管理していた頃は、長時間労働の傾向を把握するのも遅れがちで、対処も後手に回っていました。TeamSpiritのアラート機能は、事前に"兆し"を捉える仕組みとして非常に有効でした。現場に過剰なプレッシャーをかけずに注意喚起ができるので、抑止力としても機能していると感じます」と天池氏は語る。
さらに、年次有給休暇の取得状況についても、 TeamSpiritを活用してきめ細かく管理している。まず各自の取得状況をダッシュボードに常時表示しており、従業員自身が「自分はどのくらい有休を消化できているのか」を日々意識できるようになっている。取得できていない従業員に対しては、本人と上司、取締役宛にメッセージを配信している。このような通知も、TeamSpiritの標準機能で簡単に設定・運用できるという。
これまでは、年次有給休暇の取得漏れに気づいた時にはすでに取得期日が近づいており、慌てて消化させるようなケースがあったが、今は早い段階で"このままでは取得義務を満たせない従業員"が把握でき、計画的な取得を促すことができている。本人だけでなく、管理職や役員にも共有されることで、組織全体に対する意識づけにもつながっているという。
離職率はほぼ半減、メンタル理由での休職減少に
TeamSpiritの導入によって、どのような成果が得られたのか天池氏は次のように語る。
「TeamSpiritのダッシュボードにより、残業時間や年次有給休暇取得状況などが常に可視化されるようになったことで、従業員一人ひとりが自らの働き方を意識し、勤務時間の管理に対する関心が高まりました。」
こうした変化は、単なる行動の変化にとどまらず、労働時間に関する法律やルールに対する理解の深化にもつながっているという。
「たとえば残業に関するルールには、36協定にもとづく上限だけでなく、労働安全衛生法にもとづく配慮義務もあります。これら双方のルールを遵守する必要があることを、TeamSpiritの導入を通じて従業員自身が正しく理解するようになりました」と天池氏は語る。
その結果、月平均30時間を超えていた残業時間が、25時間にまで減少。年次有給休暇取得率も、以前は50%の前半だったが、今では70%を超えているという。
自己管理用の勤怠管理ダッシュボード
労務管理者用の勤怠管理ダッシュボード
さらに、特筆すべき成果として、離職率の大幅な低下が挙げられる。2018年の離職率は9.2%と、建設業平均の9.3%や国内産業全体の12.9%を下回っていたが、現在では5%にまで減少しているという。
若手社員の離職理由として最も多いとされる"過重労働"が、 TeamSpiritの導入による勤怠の可視化と適切なケアによって、着実に解消されつつあることがこの数字に表れている。
実際、環境システム事業部では、残業時間が多い若手社員をピックアップして、メンタルヘルスのヒアリングを実施。これによって心身の不調を早期に把握し、欠勤・休職・離職といった事態につながる前に対処している。「こうした対応は、TeamSpiritで労働時間の実態が見える化されていなければ実現できませんでした。今では、メンタル不調による休職者確実に減少しています」と小林氏は語る。
このように、勤怠データの可視化を通じて、従業員や管理職の意識が大きく変化したことが最大の効果だといえる。
さらに、業務面での効率化も大きな成果のひとつだ。
これまで、支店や営業所で行っていた集計や一次チェックが不要となり、本社側も勤怠データを精査する必要がなくなった。これは、 入力内容に不備がある場合、該当箇所をエラーとして検出されるためだ。これにより、申請者は修正が完了しない限り申請ができず、管理者のもとには不備のない正確なデータが届くようになり、確認・修正作業にかかっていた工数は大幅に削減された。
TeamSpiritで集計されたデータは、ほぼそのまま給与計算システムに連携される。TeamSpiritから出力された勤怠データについては、現在も最終確認を行っているものの本社の締め業務はわずか6時間しかかからず、1営業日以内で処理が完了するという。以前は各拠点で3営業日、本社での精査にさらに最大4営業日を要していたことを考えていると、処理時間は劇的に短縮されている。
今後は働き方の多様化でもTeamSpiritを積極的に活用
前述のように同社は2年連続で「健康経営優良法人」の認定を受けているが、ここでもTeamSpiritが役立てられている。
「健康経営優良法人の調査票には約80の調査項目があり、その内容は毎年ほとんど変わりません。そのうち、勤怠に関する項目ももちろんあるのですが、これらはTeamSpiritのレポート機能を利用することで、必要な数値が瞬時に抽出されるため、一瞬で入力作業が完了します」と小林氏は語る。
仮にこれらのデータを紙の勤怠表やExcelで管理していた場合、各拠点からデータを収集し、正確な数値に整えるまでに多くの手間と時間がかかっていたはずだ。従業員の労働時間や年次有給休暇取得状況など、複数月・複数指標にまたがる情報を人手で集計するとなれば、入力ミスや確認作業も発生しやすく、調査票の提出期限に間に合わせるだけでも一苦労だっただろう。TeamSpiritを活用すれば、レポートに必要な条件を一度設定しておくだけで、次年度以降も同様の情報をすぐに出力できる。「健康経営」への取り組みを無理なく継続できる仕組みとして、大きな支えになっているという。
また、同社では労働安全衛生法において一定の基準に該当する事業場での設置が義務付けられている「安全衛生委員会」も設置している。ここで各拠点の安全衛生担当が、36協定と労働安全衛生法のそれぞれにもとづく残業時間の集計を報告しているが、これらもTeamSpiritのレポートが活用されているという。
「今後はタレントマネジメントも導入し、従業員の生産性を可視化するとともに、離職の原因をより深く分析していきたい」と小林氏。また天池氏も「エンゲージメントの向上や、採用時に求める人材像の明確化といった取り組みも、今後強化していきたい」と展望を語る。
さらに、働き方の多様化に向けた検討も進められている。
「現在は9時~17時半の固定時間勤務ですが、今後はフレックスタイム制の導入や、これまで育児や介護などの条件が必要だった時短勤務を、誰でも柔軟に利用できる制度に見直すことも検討しています。TeamSpiritがあればこのような柔軟な働き方も、容易に実現できるはずだと考えています」と天池氏は語る。
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株式会社オーテック
- 設立
- 1934年5月
- 事業内容
- 自動制御システムの設計・施工・メンテナンス(保守)並びに管工機材及び環境関連機器の販売。
- URL
- https://www.o-tec.co.jp/
- 取材年月
- 2025年3月