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株式会社ハイフライヤーズ

Salesforceの連携と労務データを活用し、ユニークな制度や施策を次々に打ち立てる国内屈指の先進保育園。

事例ポイント

課題

  • 勤怠・シフトを別々のツールで管理しており、整合性確認に大きな業務負荷を抱えていた
  • 育児中の職員も増加し、パパ・ママ職員にも働きやすい様々な勤務形態を推進したかった
  • 保護者から常勤ではない職員へ感謝を伝えられた際、該当職員を特定できなかった

決め手

  • 勤怠・シフトの管理を同じインターフェイスで行えるため、整合性確認の業務負荷を軽減できる
  • 管理負荷なく、多様な勤務形態にも円滑に対応することができる
  • 勤務状況を正確に把握でき、保護者からの感謝を該当職員に伝達できる

効果

  • 申請不備の件数が減り、整合性確認の作業工数が削減された
  • 7種類もの出勤パターンを制定し、ライフステージに応じた多様な勤務形態を実現
  • 職員のモチベーションも高まり、離職率が3分の1まで低下

事例概要

機能 勤怠管理, 経費精算,シフト管理
業種 医療・福祉
従業員数 100~499人

フィンランド語で「ありがとう」を意味する認可保育園「キートス」を、千葉県内に11園運営する株式会社ハイフライヤーズ。同社では「紙での管理」から脱却するため、2017年からSaaSを積極的に活用したデジタル化が進められている。元々勤怠とシフト管理を別々のツールで行なっていたが2021年にはこれらをチームスピリットへ一元化。勤怠・シフト管理の統合も実現した。これによってシフトと勤務実態の整合性が取れるようになり、突合作業の工数を大幅に削減。時短勤務にも柔軟に対応しやすくなった。またチームスピリットで管理しているシフト・勤怠データを活用することで、保護者から職員に「ありがとう」を伝える新制度も実現。2024年には経費精算機能の利用も追加コストなく開始している。多様な機能と高いカスタマイズ性で、同社のDXに貢献。職員のモチベーション向上にも大きく寄与しているという。

「ありがとう」を意味する認可保育園を千葉県内で展開

2010年10月に設立され、千葉県内で認可保育園「キートス」を11園運営している株式会社ハイフライヤーズ。「キートス」とはフィンランド語で「ありがとう」を意味しており、日々の感謝を大切にしながら、職員の働きやすさや利用者へのサービス向上に取り組んでいる。

「私たちが目指しているのは、キートスに通う子どもたちはもちろんのこと、保護者の方や地域の方、従業員も含めたすべての方々が『人とのつながり』を大切にし、みんなが『また明日も来たい』と思える保育園にすることです」と説明するのは、事業企画本部で本部長を務める吉田 りえ氏。保護者の方が仕事だから仕方なく子どもを預けるのではなく、「この保育園が楽しいから行きたい」と思えるようにしたいのだという。

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事業企画本部 本部長 吉田氏

そのための取り組みの1つが、2022年1月から実施している「荷物のいらない保育園」だ。一般的な認可保育園では、布団やおむつ、歯ブラシ、食事用エプロンなど、様々な荷物を保護者が持ち込まなければならない。同社では、通園準備の時間を子どもと向きあう時間に充ててほしい、希望する方みなさんに利用してほしいという願いのもと、保護者の金銭負担0円で手ぶらで通える保育体制を構築。

その一方で、デジタル技術の活用も積極的に推進している。2024年3月には「JAPAN HR DX AWARDS FINAL」において、「エンゲージメント部門」の最優秀賞と「採用部門」の優秀賞を受賞。ここに至る取り組みの起点になったのは「2017年にキートスが4園になったこと」だと吉田氏は振り返る。

「それ以前は自治体への提出書類はもちろんのこと、全ての業務が紙で行われていました。シフト表も紙に手書きで記入していたのです。2園まではそれでも対応できたのですが、2017年4月に美郷台と新千葉にキートスを開園し、一気に4園に増えたことで、紙での運用では回らなくなってしまいました」と吉田氏は語る。その理由の1つは、単に園が増えただけではなく、それぞれの園の状況に応じて複数の園を移動しながら業務を行う職員がでてきたことだ。常勤先ではない園での仕事が入った場合は、都度シフト表の修正が必要になり、勤怠状況の管理も複雑になっていったのだ。

4年間で一気に進んだペーパーレス化への取り組み

この問題を解決するため、当初はスプレッドシートによる管理が試行された。しかしシフト作成後の修正が頻繁に発生し、大きな負担が生じる結果となり問題の解決にはならなかったという。そこで同社では、SaaSを活用したデジタル化に着手。まず2017年7月にクラウド型の某勤怠管理システムの導入を決め、バックオフィス業務のデジタル化をスタートする。さらに、2020年5月にはシフト作成のデジタル化も推進。
これと並行する形で、2019年6月にはSalesforceも導入。その目的は、園児の情報管理をデジタル化することだと吉田氏は次のように説明する。

「キートスは認可保育園なので、入園する園児の情報は自治体から紙の状態で送られてきます(現在はPDF)。これを紙のままで保管すると、確認のたびに取り出す必要があり、万一紛失すれば情報漏洩につながる恐れがあります。まずはこの問題を解決したいと考え、入園する園児の情報をSalesforceで管理することにしたのです」。

Salesforce導入後は、保護者自身が子どもに関する必要な情報を入力できる仕組みを構築。紙の管理が不要になり、紙文化が残っていた同社にとってペーパーレス化への大きな一歩となった。さらにこの仕組みは、もう1つのメリットをもたらすことになる。

「入園した園児の情報が、入園後に変わることは少なくありません。例えば入園時にあったアレルギーが途中でなくなったり、逆に入園後に症状が発症するといったことがあります。保護者自身で最新の情報に更新することが可能なため、私たちも常に正しい情報にもとづいて保育を行えるのです」。

この他にも、職員同士で感謝を伝え合ったり、業務上の情報共有を行うためのコミュニケーションツールなども導入している。また2021年にはSalesforceをベースにした、キートス独自のおたより帳「きーとすのーと」もリリースされている。2017年からのわずか4年間で、デジタルツールの活用が一気に進んだのだ。その背景にあるのは、経営陣の意思決定の迅速さだと言えるだろう。

「当社では対面での経営会議を毎週行っており、デジタルツールの採用もその場で決定しています。その基本的なスタンスは、使えそうなものならすぐに使ってみよう、もしだめなら他のものに変えればいい、というものです。その結果、今では使いやすいものだけが残っています」と吉田氏は語る。

勤務/シフト管理を統合するためチームスピリットへと移行

しかし2021年には新たな課題が顕在化していく。それは、勤怠管理とシフト管理を個別ツールで行っていたため、シフト表と勤務実態を突き合わせた確認が煩雑だということだ。

「この頃にはキートスが10園を超え、職員も 160名に増えていました」と語るのは、事業企画本部 総務部の小笹山 優子 氏。「当時は、給与計算を行う前にシフト表と勤務履歴のチェックを行なっていました。しかし別々のツールで管理していた為、シフト通り勤務したかどうかといった整合性が取れているのかがわかりにくく160名分の「目視確認」が大きな負担になっていました。」と小笹山氏は語る。

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事業企画本部 総務部 小笹山氏

ここでも「もしだめなら他のものに変えればいい」という方針に習って統合型のツールへ移行することを決定した。その結果選ばれたのがチームスピリットである。その理由について小笹山氏は、次のように説明する。

「当社には社内システム開発担当のスタッフがいるのですが、『勤怠とシフト管理を統合でき、Salesforceとの連携も容易』ということで、チームスピリットを提案してくれました。実際に試してみると、使い慣れたSalesforceの一部のように違和感なく使うことができ、シフトと勤務実態の整合性も簡単に取れるようになりました」。

提案を受けてすぐにチームスピリットへの移行を決断。2021年3月には導入を実施。

締め日の確認負担が大幅に軽減、時短勤務にも柔軟に対応

また、出退勤の打刻に関しても次の課題を抱えていたと小笹山氏は語る。「従来の勤怠システムは、PC・スマートフォンからの打刻が可能だったことが、かえって『いつでも打刻ができる』という状況を作り『今やらなくてもいいや』と後回しにする職員も多く、その結果打刻を忘れてしまい日次登録の徹底がしにくいという問題がありました。そのため、職員が計算した残業時間と申請されたデータのズレが生じることがあり、その場合には電話をかけて確認するといった業務負荷もありました」。

この課題に対して、 ワンタッチで出退勤の打刻が行えるICカード打刻を採用。園に居る時でしか打刻ができない仕様に変えたことで、『忘れずに今やらなければいけない』という状況を作り、日次登録が徹底されているという。日次登録が撤退されるようになったことで、自身の勤怠データに誤りがないか職員本人に確認してもらった上で承認申請を行う流れを構築することができ、「申告漏れで残業代が支払われないといったことがなくなりました」と小笹山氏。

また、締め作業に費やす時間も大幅に削減されたと小笹山氏は次のように語る。
「以前は3〜4名の職員がまる2日かけて対応していましたが、締め作業に費やす工数が大幅に減少し、今では2名の職員で1日もかかることなく終えることができるようになりました」。

導入して1年後の2022年春には、短時間勤務に対する管理機能の利用もスタート。ちょうどこの頃から、出産・育児休暇から復帰する時短勤務職員が増え始めていたが、これにも円滑に対応できたという。同社では現在13名の職員が時短勤務を行っており、その出勤パターンは7種類も存在する。15分単位で勤務時間が異なる職員もいるが、多種多様な勤務形態に対応するチームスピリットなら簡単にこれらの設定を行うことができ、勤務時間も自動計算されるという。

「認可保育園は担任制で時短勤務は行いにくいというのが一般的な認識だと思います」と吉田氏。しかしキートスでは複数担任制を採用することで、時短勤務職員にも対応できるようにしていると説明する。「この制度はチームスピリットへの移行前から導入していましたが、以前は時短勤務職員が1名だったため、手作業で管理していました。2022年から時短勤務職員が増えたのは偶然でしたが、前年にチームスピリットを導入していたおかげで、管理負担を増やすことなく対応できました」。

時短勤務職員にきめ細かく対応できることは、職員のモチベーション向上にもつながっている。転職した人の中には、他の保育園での経験と比較し「これだけ細かく対応できるのか」と驚く人も多いという。

「時短勤務に関する管理負担が小さいことは、職員と管理側の双方での心理的負担軽減につながっています。チームスピリットを採用してよかったと、改めて感じています」と小笹山氏は語る。

チームスピリットは、職員のモチベーション向上にも貢献

このように大きな効果を挙げているチームスピリット活用だが、メリットはこれだけにとどまらない。実はチームスピリットで管理している勤怠データを活用することで、前述の「きーとすのーと」の新機能も開発されているのだ。それは、保護者から職員に対して「ありがとう」を伝える機能「"ありがとう"を先生に」。2023年3月にリリースされている。

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「きーとすのーとのトップ画面にハートマークがあるのですが、これをタップすると直近5日間に出勤していた職員が、写真付きで表示されます」と吉田氏。この中から感謝を伝えたい職員を選択し、感謝のメッセージを入力できるようになっているのだと説明する。

「先ほど申し上げたように、キートスには園を移動した勤務や時短勤務もあるため、園児が通う園に常に同じ職員がいるとは限りません。そのため直近5日間の勤務状況をチームスピリットのデータでチェックし、その間に出勤していた職員だけを表示するようにしています。入園間もない保護者の中には職員の顔はわかっても名前はわからない、という方もいるため、対象者を限定して顔写真を掲載することで、感謝の相手が誰なのかわかりやすくしているのです。もし該当職員の登録を手作業で行う仕組みにしていたら、かなりの作業負担が生じていたはずです。チームスピリットで勤怠とシフトの情報を管理しているからこそ、このような仕組みも簡単に実現できたのです」と吉田氏は語る。

この機能も職員のモチベーション向上に大きな貢献を果たしている。すでに職員同士で感謝を伝え合うシステムは導入されていたが、これによって保護者からの感謝も職員に伝わるようになったからだ。これまでに保護者から受け取った「ありがとう」の数は、累計で約1,800件。そのなかには、勤務を始めて約半年の新人がもらったケースもあるという。

ここまでの一連の取り組みによって、職員の離職率は3分の1以下に低下。また求職者に対してTikTokライブを行い、園の雰囲気や経営状況、職員の生の声を届けることで、面接への応募数も増えている。もちろんライブでは、時短勤務制度やシフト管理・勤怠管理の仕組み、その他の福利厚生制度なども説明。2023年は24名の採用枠に対して、約100名が面接に応募した。すでに園の状況をよく知った上で入社するため、入社後のミスマッチもほとんどない。これらの結果を得られたのは、管理負荷なく職員のライフステージに応じた様々な勤務形態に対応することができるチームスピリットがあったからこそだという。

経費精算の利用も開始し、業務効率化にさらなる拍車をかける

2024年6月には、チームスピリットの経費精算機能の利用も開始。これも非常にメリットが大きいと小笹山氏は次のように語る。
「通常とは異なる園での勤務などで通勤定期区間外の交通費が発生した場合、これまでは職員自身が移動区間と交通費を申請してしました。そのため、その内容が正しいかどうかを管理側がいちいちチェックする必要があり、この作業に1名の担当者が4~5時間かけていました。現在では、職員がチームスピリットに移動区間を入力すると経路の候補が表示され、その中から実際の経路を選ぶだけで定期範囲外の交通費が自動計算されるようになっています。その結果、チェックに必要な時間は2時間未満になりました」。

最後に「DXの本質は、自分たちの行動を変えることなく、デジタルの力で生活がより良い方向に変化することだと考えています」と吉田氏。これまでのデジタルツールの活用でも、スマートフォンで利用できるのか、職員や保護者に負担をかけることなく浸透させることができるのか、といったことにこだわったという。「チームスピリットは私たちのこの思いに応えてくれました。まだ活用できていない機能があれば、これからもぜひ教えていただきたいと思います」とさらなる業務効率化を目指し、歩みを進める。

株式会社ハイフライヤーズ

設立
2010年10月
事業内容
認可保育園の設置・運営
URL
https://www.highflyers.co.jp/
取材年月
2024年8月