人事・労務
#労働基準法改正
#勤怠管理
労働基準法「40年ぶりの大改正」とは?
背景・主要論点・企業がいま備えるべきことを解説
執筆
チームスピリット編集部
監修
松井 勇策/社会保険労務士
公開 2026.10.20
更新 2026.10.20
読了目安 約20分

この記事の要点
労働基準法改正は、1987年以来およそ40年ぶりとなる労働時間法制の抜本的な見直しで、現在、国の審議会で議論が進められている
論点は、両方の土台となる「労使コミュニケーション」と、「自由度が上がる改正」「規律が強まる改正」の三つに分けられる
対応の中心は、改正をきっかけに自社の働き方を設計し直すこと。労働基準法改正への準備は法案の確定前にすることが重要
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労働基準法の改正とは、1987年以来、およそ40年ぶりとなる労働時間法制の抜本的な見直しを指します。2026年10月現在も国の審議会で議論が進んでいます。
具体的には連続勤務の上限規制や勤務間インターバル、年次有給休暇の賃金算定、過半数代表者の選び方まで、労働基準法改正による見直しは休日や休息、労使協定の土台に及びます。ほぼすべての企業で、勤怠管理や就業規則の見直しが必要になると見込まれます。
今回の改正の目的は、全員を一律に管理する働き方から、自社に合った多様で自律的な働き方へ切り替えることです。論点を一つずつ追うより、論点を手がかりに自社の働き方を設計し直すことが対応の中心になります。その進め方は、このあと紹介する連載で詳しく扱っています。
また、個々の論点はそれぞれの解説記事で掘り下げています。気になるテーマから読み進めてください。

いつまでに、何から手をつけるかを整理したい方に
労働基準法と雇用関連の法改正
完全戦略ロードマップ
労働基準法を含む雇用関連の法改正を時系列で整理し、施行スケジュールと今すぐ着手すべきアクションをまとめました。記事とあわせて、社内での検討にお役立てください。
01
2027年労働基準法改正の全体像
皆さんもご存じの通り、ここ10年で働き方も大きく変化しました。
そして、それに伴い企業と法律の付き合い方も三つの段階を経ながら変化してきました。
2017年からの働き方改革の時期は、残業時間の上限規制などで長時間労働を正すことが中心で、法律は守るためのものでした。
5年後の2022年からの人的資本経営の時期になると、人材に関する情報を開示する流れが広がり、企業は法律や政策が示す方向を意識しながら人材戦略を考えるようになります。
そして、2027年以降の施行が見込まれる労働基準法の改正では、法律が各社の働き方づくりを後押しする役割を持ちます。今後、企業は法律を活用する段階に入ります。
今回の労働基準法の改正のねらいは、全員を同じルールで管理し、とにかく多くの仕事をこなす働き方から抜け出すことにあります。今後は各社が自社に合った形で、多様で自律的で価値の高い働き方を計画的に組み立てられるようにすることが重要です。
背景には少子高齢化や産業構造の変化、AIとの協働で仕事の中身が変わってきたことがあります。

今回の労働基準法改正の論点は大きく三つに分かれます。
一つ目は、過半数代表制の改善をはじめとする「労使コミュニケーション」です。二つ目と三つ目の改正のどちらでもルールを決める場として欠かせず、両方の土台にあたります。
二つ目は「自由度が上がる改正」です。フレックスタイム制の柔軟化や副業時の割増賃金の通算の見直し、裁量労働制の見直しなどがあり、働いた時間と成果が比例しにくいホワイトカラーの業務に主に関わります。
三つ目は「規律が強まる改正」で、勤務間インターバルや連続勤務の制限、法定休日の特定などが含まれます。影響を受けるのは主に、シフトを組んで調整しながら回す現場の業務です。
検討の経緯を振り返ると、2025年1月、厚生労働省の労働基準関係法制研究会が報告書を公表し[1]、労働政策審議会で法制化の審議が始まりました。
同じ年の12月に通常国会への法案提出が見送られ、その後、裁量労働制の見直しなどへ論点が広がっていきました。
2026年7月には骨太の方針2026と日本成長戦略が示され、連続勤務規制や勤務間インターバル制度の法的な位置づけ、裁量労働制などを、夏以降の労働政策審議会で議論することになりました[2]。
政府全体で大枠を決め、審議会が細部を詰める進め方に変わり、2026年10月時点ではその審議が続いています。
読み解きのポイント
報道や解説では、規制の強化か緩和のどちらかが強調されがちです。ですが、個々の論点がこの全体像のどこにあたるかを確かめながら読むと、理解しやすくなります。
02
労働基準法改正を人材戦略に活かす5つの段階
労働基準法改正への対応は、それ自体が目的ではありません。
目的は自社の働き方を良くすることで、制度はそのための道具です。論点を一つずつ追いかけるより、論点を使って働き方を設計し直すことが対応の中心になります。制度が確定するまで待つ必要もありません。
具体的な進め方は、本サイトの全5回の連載で解説する予定です。

連載は三つの段階で組まれており、最初は改正の方向をつかむ段階、次が自社を見て重点を絞る段階、最後が設計して予算に載せる段階です。各回で考えることと主なテーマは次のとおりです。
段階
改正の方向をつかむ
自社を見て、重点を絞る
設計して、予算に載せる
回
第1回
改正の趣旨をつかむ
第2回
自社の働き方を見る
第3回
重点を絞る
第4回
目指す働き方を言葉にする
第5回
予算に載せる
企業が判断すること
改正を規制の追加として受け止めるか、自社の働き方を設計し直す機会として使うか
どの職場・職種に、どれだけの影響が出るか
何から着手するか(影響の大きさ・対応の難しさ・確定を待たずに始められるか)
自社の働き方の方針を、制度とシステムの要件にどう落とすか
いつ、何に投資するか(施行の1.5〜2年前が予算計画の時期)
主に扱う論点
論点全体の位置づけ(労使コミュニケーション、自由度が上がる改正、規律が強まる改正)
シフトの設計・調整が必要な業務と、時間と成果が比例しにくい業務の棚卸し(労働時間・休日の実態、働き方の多様性、労使協定の結び方、勤怠の管理基盤)
自由度が上がる改正の活用と、規律が強まる改正への対応の切り分け
裁量労働制・フレックスタイム制・勤務間インターバル・過半数代表制の改善
シフト作成と拠点をまたぐ勤怠、工数・作業記録と働き方の質の把握、労務データの一元管理
03
労働基準法改正の主要論点一覧
今回の見直しは三つの論点で構成されています。
冒頭で挙げた労使コミュニケーション、自由度が上がる改正、規律が強まる改正がその三つの論点にあたります。

どれも検討段階で、最終的な中身はこれからの議論で決まります[1][3]。土台の労使コミュニケーションから、分類ごとに影響の大きい順に並べました。研究会報告書の後に論点が広がって加わったものは、その旨を添えています。
論点名をクリックすると、下の詳しい解説に移動します。
論点
労使コミュニケーション
自由度が上がる改正
規律が強まる改正
見直しの方向
選出手続きや不利益取扱いの禁止を、法律に規定する方向。公正な代表として意見を集約する役割の明確化、使用者による情報提供、代表者の活動に必要な時間や場所の確保も検討
事業場単位を原則としつつ、労使の合意で企業単位などの手続きも選べるようにする方向
働きすぎを防ぐ仕組みを前提に、どの業務まで対象にするかを検討(研究会報告書の後、論点の拡大で追加)
労働時間の状況を、働く人本人や社内の会議体などに示す仕組みの在り方を検討
テレワークの日など、一部の日に限ってフレックスタイム制を使えるようにする方向
現場の実態と、働く人の生活時間の予見可能性の両面から検討(研究会報告書の後、論点の拡大で追加)
健康管理の通算は維持しつつ、割増賃金の計算では通算を不要とする方向
年休中の賃金を「通常の賃金」を原則とする方向。付与期間が短い人の時季指定義務の日数、時間単位年休の上限(年5日)も検討
中長期の課題として見直しを検討
義務化も視野に、法規制の強化を検討(11時間を原則とする案)
14日以上の連続勤務を禁止する方向
法定休日をあらかじめ特定することを求める方向
健康確保の観点から措置の在り方を検討。範囲の明確化も論点
ガイドラインで、勤務時間外の連絡ルールづくりを労使に促す方向
廃止に向けて検討
規制を強める方向と柔軟化を進める方向が、一つの改正に同時に入っているわけです。
両方をあわせて一つの体系として見ると、今回の労働基準法改正の全体像がつかみやすくなります。
04
主要論点の詳細解説
ここからは論点を一つずつ見ていきます。どれも検討段階で、制度の中身は今後の議論で変わる可能性があります。
過半数代表制の改善と労使コミュニケーション
研究会報告書の中心にある論点です。
過半数代表者の選出手続きや不利益取扱いの禁止を、法律に定める方向で検討が進んでいます。
36協定をはじめ、変形労働時間制や裁量労働制など、労働時間に関わる制度の多くは、会社と従業員の代表が結ぶ労使協定を前提にしています。労働組合がない職場では、従業員の過半数を代表する過半数代表者が、会社と協定を結びます。
ところが実際には、会社が指名した人がそのまま代表者になっている例もあります。選び方に問題があれば、結んだ協定そのものが無効になるおそれがあります。にもかかわらず、選び方のルールは法律ではなく、省令である労働基準法施行規則に書かれているだけです[4]。
そこで議論されているのが、選出の手続きや、代表者になったことを理由に不利に扱うことの禁止を、法律に格上げすることです。あわせて、代表者が従業員全体の意見をまとめる役割をはっきりさせることや、会社が代表者に必要な情報を伝え、活動の時間や場所を用意することも検討されています。
目立ちにくい論点ですが、影響は幅広く及びます。柔軟な働き方の制度を使う会社ほど、土台となる協定が正しく結ばれていることが大切になります。
関連記事:
過半数代表者の選び方とは?36協定を無効にしないための手続きと法改正の論点
事業の概念
事業の概念については、事業場単位を原則としながら、労使が合意すれば企業単位や複数の事業場をまとめた単位でも手続きができるようにする方向が示されています。36協定や就業規則、過半数代表者を選ぶ単位にも関わる、土台の論点です。
拠点の多い企業やテレワークが広がった企業では、どの単位で協定を結び、誰が代表者になるかという手続きの組み立て自体が変わるかもしれません。
裁量労働制
裁量労働制は、研究会報告書の後に論点が広がって加わったもので、骨太の方針2026でも検討対象に挙がっています。
この制度は、実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ決めた時間働いたものとみなす制度で、専門業務型と企画業務型があります。仕事の進め方が変わるなかで、裁量のある働き方をどの業務まで認め、そのとき健康をどう守るかが問われています。
今は、健康確保や長時間労働の防止、処遇の確保といった濫用防止の措置を前提に、対象の在り方を検討する方向です。
関連記事:
裁量労働制はどう変わる?対象拡大の議論と健康確保措置
労働時間の情報開示
企業には2019年から労働時間を客観的に把握する義務があります[5]。これを土台に、本人への通知や、社内や労使の会議体への開示をどうするかが論点です。
人的資本の情報開示で働き方の指標を示す企業は増えてきました。労働時間のデータを社内でどう共有し、働き方の改善にどう生かすかが焦点です。
テレワークと部分フレックス
テレワークの日など、一部の日だけフレックスタイム制を適用できる部分フレックスの導入が提案されています。
今のフレックスタイム制は、対象期間のすべての労働日に適用するのが前提です。出社とテレワークを組み合わせるハイブリッドワークでも、日によって使い分けることはできません。
部分フレックスが入れば、出社日は9時から18時の通常勤務にして、テレワークの日だけ始業と終業の時刻を本人が決める、といった運用ができるようになる見込みです。
制度は組みやすくなる一方、日によって適用する制度が違うので、勤怠管理は複雑になります。複数の勤務形態が混ざる職場では、現状の勤怠管理システムで正しく集計できるかも確かめておきたいところです。
関連記事:
部分フレックスとは?テレワーク時のフレックスタイム制の見直しを解説
変形労働時間制
変形労働時間制は、繁閑の予測が難しい現場の実態に追いついていないという課題と、働く人が生活の予定を立てやすくするにはどうするかという課題の、両方から検討されています。
見直しの方向次第で、導入を検討できる職種や運用の幅は変わります。どちらに進んでも、健康を守る対策が実際に機能しているかは問われ続けます。
関連記事:
変形労働時間制の見直しとは?現行制度の課題と議論のポイント
副業・兼業における労働時間の通算
副業や兼業をする人の労働時間は、健康管理のための通算は続けたうえで、割増賃金の計算では通算しない方向が示されています。
今の解釈では勤務先が違っても労働時間を通算するため、本業と副業の合計が法定労働時間を超えると、後から契約した企業などに割増賃金を払う義務が生じえます。企業が副業人材の受け入れをためらう理由の一つとも言われていました。
具体例
本業で1日8時間働く人が、夜に別の企業で2時間働くとします。今のルールでは、副業先がその2時間分に割増賃金を払う必要が出てきます。見直しが実現すれば、この負担はなくなります。
受け入れのハードルは下がりますが、健康を守るため、副業先を含めた労働時間の把握と申告のルールは引き続き欠かせません。
関連記事:
副業・兼業の労働時間通算はどう変わる?割増賃金ルールの見直しを解説
年次有給休暇
年次有給休暇では三つの点が見直しの対象です[3]。
一つ目は取得したときの賃金です。今は平均賃金、通常の賃金、健康保険の標準報酬月額の30分の1にあたる額のどれかを選べます。平均賃金で払うと通常の賃金を下回ることがあり、年休を取ると賃金が減るという不合理が起こりえます。そこで通常の賃金を原則にし、ほかの方式は労使協定を結んだ場合に選べるようにする方向で議論されています。
二つ目は年5日の時季指定義務の日数です。育児休業から復帰した人や退職を控えた人など、年休を取れる期間が短い人にも一律に5日を求めている点の扱いが検討されています。
三つ目は時間単位年休の上限です。今は年5日分までですが、通院や育児、介護など細切れの休みに応えられるよう見直すことが論点になっています。
賃金の算定ルールが変われば、給与計算にそのまま響きます。時間単位年休が広がれば、残日数を時間単位で正確に管理する必要があります。
関連記事:
年次有給休暇はどう変わる?賃金算定・時季指定・時間単位年休の見直しを解説
労働者の判断基準
中長期の課題として、プラットフォームワーカーなどを念頭に置いた労働者の判断基準も挙がっています。すぐに結論が出る話ではありませんが、労働基準法がどこまで適用されるかに直結するテーマです。
勤務間インターバル制度
勤務間インターバル制度は、今の努力義務から、義務化も視野に入れて法規制を強める方向で議論されています。
終業から翌日の始業までに一定の休息時間を確保する仕組みで、今は導入するかどうかを企業が決めています。実際に導入している企業はまだ多くありません。休めないまま働き続ける状態を制度で防ぐのが、見直しのねらいです。
研究会報告書は、11時間のインターバルを原則としたうえで、適用を除外する職種や、確保できなかったときの代替措置を労使の合意などで決められるようにする案を示しています[1]。
22時に退勤すれば、翌日の始業は9時以降です。遅番の翌日に早番を入れるようなシフトは、組み直しが必要になるかもしれません。

シフト設計にも残業の運用にも響く論点で、義務化の範囲や適用除外の考え方がこれからの焦点になります。
関連記事:
勤務間インターバル制度とは?義務化の議論と企業の対応
連続勤務の上限規制
連続勤務に上限を設け、14日以上続けて働かせることを禁止する方向で議論されています。法定休日をあらかじめ特定することも論点です。
今の法律では毎週1日の休日が原則ですが、4週間を通じて4日以上の休日を与える変形休日制も認められています。休日を4週間の最初と最後に寄せれば、長い連続勤務が制度上できてしまう。この点が問題視されてきました。精神障害の労災認定基準でも、2週間以上の連続勤務は心理的負荷を判断する材料になっています[6]。
研究会報告書は、変形休日制の単位を4週4休から2週2休に改める考え方とあわせて、次の方向を示しました。
「13日を超える連続勤務をさせてはならない」旨の規定を労働基準法上に設けるべきであると考えられる
厚生労働省「労働基準関係法制研究会 報告書」2025年1月[1]
法定休日の特定
法定休日の特定も、実務への影響が大きい論点です。週休2日制の企業では、どちらの休日が法定休日なのかあいまいなまま運用している例が少なくありません。法定休日に働かせれば35%以上の割増賃金が必要になるため[7]、特定が求められれば、休日労働の割増計算や振替、代休の運用をより厳密にしなければなりません。
シフト制の職場では、勤務計画の組み方そのものが変わる可能性があります。連続勤務の日数や法定休日の取得状況をデータで追える体制が前提になります。
関連記事:
連続勤務規制(14連勤禁止)と法定休日の特定とは?企業への影響と対応
管理監督者
管理監督者は、労働時間、休憩、休日の規定が適用除外になっています。深夜の割増賃金だけは対象です。そのうえで、健康を守るための措置の在り方が検討されており、範囲の明確化もあわせて論点になっています。
関連記事:
管理監督者とは?法改正で議論される健康確保措置のポイント
つながらない権利
勤務時間外の業務連絡について、労使でルールを定めるよう促す方向で検討が進んでいます。
つながらない権利とは、勤務時間外に仕事の連絡への対応を求められない権利です。スマートフォンやチャットツールが広まり、勤務時間の内と外の境目があいまいになったことが背景にあります。
法律で一律に縛るのではなく、まずはガイドラインで職場ごとのルールづくりを後押しする方向です。具体的には夜間や休日の連絡は原則控える、緊急時の連絡手段と対応者を決めておく、といったルールが考えられます。
すぐに罰則付きの規制になる可能性は高くありません。それでも社内ルールを文章にしておけば、健康の確保にもエンゲージメントにも寄与します。
関連記事:
つながらない権利とは?労基法改正との関係と社内ルールの作り方
週44時間の特例措置
週44時間の特例措置は商業や接客娯楽業など一部の業種で、常時10人未満の事業場に認められている例外です。研究会報告書は、この特例の廃止に向けて検討すべきだとしています。
関連記事:
週44時間の特例措置とは?廃止の議論と対象事業場の対応
05
労働基準法改正の施行時期の見通し
法案提出の見送りから骨太の方針2026、日本成長戦略に至る経緯は冒頭で触れました。
労働基準法改正の施行時期はまだ決まっていません。今は審議会で制度の中身を検討している段階で、法案の内容も施行日もこれからの議論で固まっていきます。
労働基準法の改正は通常、有識者の研究会で論点を整理し、公益、労働者、使用者の三者でつくる労働政策審議会で議論したうえで、法案を国会に出します。成立すれば公布され、準備期間を置いて施行されます。今回は2025年に公表された労働基準関係法制研究会の報告書を出発点に、審議会での検討が続いています。

企業実務への影響が大きい改正では、成立から施行まで準備期間が設けられるのが通例です。今回は論点が多いため、すべてが同じ時期に施行されるとも限りません。
とはいえ、施行時期が決まってから動くと準備の時間は限られます。最終的な中身がどうなっても必要になる準備は、このあと紹介するとおり今から始められます。
あわせて読みたい
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雇用に関わる法改正は、労働基準法以外にも数年にわたって続きます。複数の改正を並べて優先順位をつけるなら、完全戦略ロードマップが参考になります。
06
今着手できる準備と点検項目
施行時期や制度の中身が決まる前でも、今から始められる準備はあります。中心は二つで、一つは今の法律や社内の運用に照らして直すべき点を今のうちに直すこと、もう一つは改正の影響を前もって見積もっておくことです。
どの論点でも、対応の前提は実態を正確につかめていることです。連続勤務の上限も勤務間インターバルも、法定休日の特定も時間単位の年休管理も、日々の勤怠データが正確でなければ守れているかどうかさえ判断できません。
部分フレックスのように、勤怠管理を複雑にする見直しも含まれています。具体的には次のような準備が考えられます。
1
労働時間・休日の実態把握
連続勤務日数の最大値や法定休日の取得状況、勤務と勤務の間の休息時間がどれだけ確保されているかを、部署や職種ごとに把握します。規制が入ったときに影響を受ける範囲を前もって見積もれます。
2
法定休日の特定と就業規則の点検
就業規則で定めた法定休日の扱いと実際の運用が合っているかを確かめます。割増賃金の計算や振替、代休の運用も一緒に見直しておくと安心です。
3
過半数代表者の選出手続きの確認
目的を示したうえで投票や挙手など民主的な方法で選び、その経過を記録に残しているかを確かめます。36協定の有効性に直結するので、今の法令のもとでも確認しておきたい項目です。
4
年次有給休暇の管理精度の向上
付与日数、取得日数、残日数を時間単位まで正確に把握できるようにし、自社がどの方式で年休の賃金を算定しているかも確認しておきます。
5
副業・兼業のルール整備
副業や兼業の申告方法と、労働時間の把握方法を明文化します。健康確保のための通算管理は、ルールが変わっても求められる見込みです。
6
勤務時間外の連絡ルールの検討
緊急時の扱いも含めて時間外の連絡ルールを決めておけば、つながらない権利をめぐる議論にも前向きに対応できます。
正確な勤怠データは、法令を守る以外にも役立ちます。部署ごとの負荷の偏りや成果につながっている働き方が見えてくれば、前半で触れた働き方の設計にも生かせます。
今使っている勤怠管理の仕組みが、これからの変化に耐えられるかも見ておきたいところです。複数の勤務形態が混ざっても正しく集計できるか、勤務状況をリアルタイムでつかんで長時間労働などのリスクに早めに気づけるか。こうした点を見直しておけば、制度が固まってから慌てずに済みます。
よくある悩み
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労基法改正に向けた準備チェックリスト
自由度が上がる改正をどう使い、自社の働き方をどう設計するかは、前半で紹介した連載で判断の順序に沿って解説していく予定です。
連載「労基法改正での必須の対応戦略と事例」
第1回 改正の趣旨をつかむ
07
よくある質問
08
労働基準法の改正に向けて、企業が今押さえておきたいこと
約40年ぶりとされる今回の労働基準法の改正は、個別のルールの変更にとどまらず、労働時間法制の考え方そのものを見直すものです。働く人を守る役割に加え、一人ひとりが望む働き方を支える役割を法制度に持たせようとしています[8]。
規制を強める方向と柔軟化を進める方向が同時に含まれ、施行時期や細部はこれから決まります。
企業に求められるのは、断片的な情報に振り回されず、個々の論点を全体像の中で捉えることです。そのうえで、対応そのものを目的にせず、自社の働き方を良くする道具として改正を使っていくことが重要です。
労働時間の実態把握や過半数代表者の適正な選出、勤怠データの精度向上は、改正の行方にかかわらず役に立つため、できるところから、今のうちに進めておきましょう。
まずは自社の現状を確かめる
どこから手をつければよいか迷ったら、連続勤務や休息時間、年休の取得状況など、今の勤怠データで何がつかめていて何がつかめていないのかを確かめるところから始めてみてください。
その次の一歩を考える材料として、資料「労働基準法と雇用関連の法改正 完全戦略ロードマップ」では、各法令の施行スケジュールに沿った対応の進め方に加え、業種別や課題別の対応事例、法改正を企業価値の向上につなげる考え方を紹介しています。ご参考になれば幸いです。
参考文献・出典
1.
厚生労働省「労働基準関係法制研究会の報告書を公表します」2025年1月8日
2.
厚生労働省 第211回労働政策審議会労働条件分科会 資料No.2-1「労働条件分科会における今後の議論の進め方(案)」2026年9月16日、骨太の方針2026と日本成長戦略(2026年7月21日閣議決定)の該当箇所を収録
3.
厚生労働省 第211回労働政策審議会労働条件分科会 資料No.2-2「労働時間法制の具体的課題に関する検討の論点について」2026年9月16日
4.
労働基準法施行規則 第6条の2 過半数代表者
5.
労働安全衛生法 第66条の8の3 労働時間の状況の把握
6.
厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」2023年9月1日
7.
労働基準法 第35条
労働基準法 第37条
8.
厚生労働省「「新しい時代の働き方に関する研究会」の報告書を公表します」2023年10月20日
本記事は、厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会や研究会報告書の公開資料をもとに作成しています。記載の論点は現在検討段階のものであり、最終的な制度内容や施行時期は今後の議論により変更される可能性があります。最新の情報は、厚生労働省の公式発表をご確認ください。
※本記事の一部は、産学連携シンクタンク iU組織研究機構 代表理事・社会保険労務士の松井勇策氏の考え方を参考に構成しています。
労働基準法改正の準備はこちらから
法改正をきっかけに
法改正への対応を、企業価値の向上につなげる
まずは勤怠で法令に沿った労働時間の管理を固め、工数で仕事の中身を見える化し、タレントマネジメントで人材の配置や育成につなげる。法改正への対応を、企業価値の向上につなげていく流れです。
勤怠
労働時間と休息を正確につかむ
+
工数
どの仕事に時間を使ったかを記録する
+
タレントマネジメント
人材の配置や育成に生かす
TeamSpiritなら勤怠と工数がまとめて管理できます
この記事の監修者
松井 勇策
産学連携シンクタンク iU組織研究機構 代表理事・社会保険労務士
時代に応じた先進的な雇用環境整備について、雇用政策や国内法への知見と人的資本経営の推進、AIやIT関係の知見を融合した対応を最も得意とする。情報経営イノベーション専門職大学 客員教授(雇用政策・人的資本)。株式会社リクルート出身、在職時、人事コンサルティングや内部統制監査責任者等を歴任。
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