組織のパフォーマンスを高める手法として近年注目されているのが、タレントマネジメントです。タレントマネジメントを行うことで、適切な人材育成や配置、社員のエンゲージメント向上が図れます。

この記事では、人材活用の課題解決に有効な、タレントマネジメントの目的や効果、実施手順を紹介します。

タレントマネジメントを行う必要性とは

タレントマネジメントは、社員の能力(タレント)やスキルを経営資源として管理するマネジメント手法です。採用・人材育成・人材配置などに活用し、社員と組織全体のパフォーマンスを最大化させることを目的としています。

タレントマネジメントの考え方は、アメリカの大手コンサル会社「マッキンゼー&カンパニー」が発信したキーワード「War for talent(人材育成競争)」から広まりました。 当初は優秀な人材の定着を目指す手法として活用されてきましたが、現在は現場のニーズに合った人材を確保するために取り組む企業が増えています。

タレントマネジメントが注目される背景

タレントマネジメントが注目されるようになったのは、人材の獲得が難化しているためです。

現在、日本では少子高齢化にともなう生産年齢人口(15~64歳)の減少が深刻化しており、慢性的な人材不足が続く見込みです。多くの企業で人材獲得は大きな課題と捉えられ、多様な人材を活用して成果を出す考えにシフトしています。

さらに、働き方改革により仕事に対する価値観の多様化が進んだことも大きく影響しています。社員のワークライフバランスの実現のため、従来よりも高い生産性を確保する必要性に迫られるようになりました。

キャリア実現のための転職が一般化したことも、人材獲得の難易度を高めている一因といえます。

また、競争力の強化という面でも、タレントマネジメントは注目されています。IT化やDX化による技術革新やグローバル化が加速する中、企業競争に勝ち抜くためには高い競争力が必要です。タレントマネジメントにより限られた人材で最大のパフォーマンスを目指すことは、企業の売り上げ・利益、事業拡大につながるでしょう。

なお、技術革新は人事分野におけるHRテクノロジーの発達をもたらしました。システムにより人事業務の一元化やデータの可視化が可能となったことは、タレントマネジメントの普及を後押しする要因になっています。

タレントマネジメントにより期待できる効果

タレントマネジメントのメリットや、実施により期待できる効果について解説します。

適材適所な人材配置

タレントマネジメントにより社員の能力を管理することで、適正な人材配置が可能になります。個々が能力を発揮しやすいポジションに配置することで、個人のパフォーマンスを最大化でき、組織全体の生産性向上につながります。

また、従来では難しかった人事施策の決定も、データをもとに実施しやすくなるでしょう。

社員の潜在的な能力は、数字や業績に現れにくい要素です。タレントマネジメントは、社内人材の発掘にも役立ちます。

エンゲージメント向上

本来の能力を発揮しやすいポジションに従事することで、社員個人も自身の成長や企業への貢献を実感しやすくなります。

エンゲージメントやモチベーションの向上がもたらされ、さらなる活躍や定着率の向上が期待できるでしょう。また、社員のエンゲージメントの高さは、組織力の強化や業績向上にもつながります。

中長期的な人材育成

社員の強みと弱みを適切にマネジメントすることは、中長期的な人材育成にも高い成果を期待できます。社員個人が抱える課題を可視化し適切なアプローチができる上、個人のキャリアビジョンに応じた育成施策も可能です。

また、蓄積したデータを活用すれば、目標設定や管理の見直しもできるため、育成計画の精度も向上します。

タレントマネジメントにまつわる失敗例を知る

タレントマネジメントは、社員や組織のパフォーマンスを最大化するマネジメント手法です。ただし、導入しても必ず成果が得られるわけではありません。

タレントマネジメントの手法について、運用者や社員の理解が不足していたり、導入目的があいまいであったりすると、施策の失敗や形骸化につながります。

特に、起こりやすい失敗例は以下のとおりです。

・社員の理解が得られず、タレント情報を収集できない
・人事評価制度と連携しておらず、活用されていない
・集めたデータの活用目的が明確でなく、利用が進まない
・社員のデータが最新のものに更新されておらず、有効活用できない

タレントマネジメントの導入にあたっては、経営陣と人事、現場の協力体制を整えなくてはなりません。人事制度との整合性を持たせる必要もあります。

また、タレントマネジメントシステムの導入や運用にはコストがかかる点にも注意が必要です。

タレントマネジメントの導入手順

タレントマネジメントの導入手順を紹介します。タレントマネジメントを成功させるには、目標設定に沿って計画・実行・評価・改善のPDCAサイクルを回していくことが必要です。

1.目的と目標を設定する

まず、タレントマネジメントを実施する目的を明確にします。経営戦略と人事戦略にもとづいて自社の課題を洗い出し、目標とゴールを設定しましょう。

具体的には、今後5~10年における経営戦略をもとに必要な人材やポジションを明確にして、育成や採用などの人事施策を決定します。

2.人材情報を可視化して現状を把握する

社員の人数や基礎情報、スキル、目標、評価などのデータを収集し、可視化します。規模の大きな企業では、タレントごとにグループ分け(タレントプール)をしておくと効率的に運用できます。

また、タレントマネジメントシステムの分析機能を活用すると、自社の特性や必要な育成分野が判断可能です。

社員の働き方や組織の成果を定量的に可視化するツールなら、TeamSpiritをご活用ください。個人単位で働き方と成果を比較分析できるため、成長課題に沿ったアプローチが実行できるようになります。あらゆるワークスタイルに対応しているため、多様な働き方を実践している企業も有効な人材活用の施策に活かすことができるでしょう。

3.採用・育成計画を立てる

タレント情報をもとに、社員やグループごとの育成計画を立てます。

現状分析の結果、必要な人員が不足しそうな場合や外部からタレント人材を迎え入れる場合には、採用の計画を立てることも必要です。

4.人事の採用・配置を行う

育成計画をもとに、必要なタレント人材を抽出し、採用や配置を行います。特定の部署にタレントの偏りがある場合には、配置を見直す必要もあるでしょう。

社員個人の特性や希望のキャリアプランを踏まえた上で、会社として中長期的な視点を持って育成や配置に取り組むことが重要です。

5.人事評価・異動・育成を実施する

タレント情報にもとづく採用や配置を行ったあとの成果評価を行います。

企業の業績だけでなく、個々の貢献度を評価することも大切です。社員個人のスキルに不十分なところがあれば、育成による能力アップを目指します。異動によりモチベーションアップを図ることも有効でしょう。

タレントマネジメントの成果が十分に得られていない場合には、課題の洗い出しや目標の修正を行い、精度を上げていきます。PDCAサイクルを繰り返すことで、より精度の高いタレントマネジメントを目指すことが可能です。

なお、タレント情報は常に最新でなければマネジメントの精度が落ちてしまいます。施策の実施後は社員の価値観やキャリア志向について定期的に確認しましょう。適宜、現場での面談や1on1評価なども取り入れて情報収集に努め、システムに反映させることが重要です。

まとめ

社員の能力やスキルなど把握し人事施策に活用するタレントマネジメントは、社員や組織のパフォーマンス最大化を図れるマネジメント手法です。

タレントマネジメントは導入すれば即成果が得られるのではなく、経営戦略に応じた目標・ゴールを設定し、情報を適切に活用していく必要があります。

人事情報以外にもパーソナリティに関する情報も収集するため、社員に導入の理解を得た上で目的に応じたデータを活用していくことが導入成功のポイントです。