テレワーク導入にかかる費用

テレワークの導入には、従業員がテレワークで働く環境を整えるための初期費用や毎月のランニングコストとして、下記のような費用がかかります。

費用感会社の企業規模、業種、職種によって異なりますが、まずは試算するところからはじめましょう。

項目 従業員一人当たりの費用目安
通信費 3,000円~8,000円
水道光熱費、消耗品費 3,000円~20,000円
PCなど周辺機器費 数万円~数十万円
SaaSやクラウドなどツール費 初期費用:10万円~30万円
月額費用:5万円~10万円

さらに細かく計算したいときは、下記4項目に細分化しながら見込みコストを試算します。

1.場所の確保にかかる費用(カフェ、サテライトオフィスの利用料など)
2.水道光熱費・通信費・住宅手当(業務に使用した分のみ)
3.業務遂行に必要となるPC・スマートフォン・プリンターなどの備品にかかる費用
4.業務遂行を円滑にするSaaSやクラウドなどのツール代

サテライトオフィスを購入または賃貸している場合は家賃を、インターネット回線のあるカフェなどを利用する場合は飲食代や利用料を計上します。カフェの席を確保するために必要な料金(コーヒー代など)のみを計上し、昼食代など業務内容とは無関係な飲食代は経費の対象から外しましょう。

水道光熱費・通信費・住宅手当などは、家族や本人が日常生活の中で使用した分(私的利用部分)と分けて計算する必要があります。

とはいえ、実際の使用量に応じて1円単位で正確な金額を割り出すことは、容易ではありません。国税庁から私的利用部分の計算方法がアナウンスされているので、参考にしてみてください。

在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)

支給方法によっては課税対象となる場合がある

テレワーク導入にかかる費用は、支給方法によって課税対象となるので注意しましょう。原則、あらかじめ諸手当の一部として毎月固定金額を支給する場合は課税対象となります。

例えば、住宅手当や在宅勤務手当、通信手当などを支給する場合は源泉徴収の対象となり、手取り額が減る点に配慮することが必要です。従業員が立て替えた金額を後日申請し、会社が清算する形で支給する場合は非課税となります。

立替精算の手間が生じるものの、従業員の手取り額を減らすことなく支給できるのがメリットです。

コスト削減に役立つ助成金制

ここからは、テレワーク導入コストの削減に役立つ助成金制度を紹介します。複数の制度を比較検討したうえで、自社が利用できそうな制度を選定することがポイントです。

人材確保等支援助成金(テレワークコース)

人材確保等支援助成金(テレワークコース)は、良質なテレワークを制度として導入、実施した中小企業事業主が対象の制度です。

経費として認められる範囲や受給できる助成金の割合は、下記のとおりです。

助成金名 人材確保等支援助成金(テレワークコース)
主体となる団体名 厚生労働省
支給対象となる経費の範囲 ・労働協約、就業規則、労使協定の作成、変更
・外部の専門家によるコンサルティング
・テレワーク用の通信機器の導入と運用
・労働者に向けた研修
・労務管理担当者に向けた研修

 など

受給額 【機器等導入助成】支給対象となる経費の30%
【目標達成助成】支給対象となる経費の20%

社内研修やコンサルティングにかかる費用も該当するので、幅広いコストを削減できます。

助成金の資格を得るにはテレワークを導入するだけではなく、労働者の人材確保や雇用管理改善などの観点から、相応の成果を上げていることが求められます。

雇用調整助成金

人事評価制度が変わることを従業員に周知して運用し始めます。運用時は、ルールや評価基準ばかりを周知しないよう注意が必要です。改定の目的や課題意識など根本の部分に共感を得られるよう工夫しましょう。

文書による通達だけでなく、部署ごとの定例会議や朝礼の場でも説明し、意義のある施策だと実感してもらうことが重要です。結果だけを伝えてしまうと人事部と現場との間で温度差が生じてしまい、「よくわからない施策が始まった」と不信感を与えかねないので要注意です。

雇用調整助成金とは、新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の縮小を余儀なくされた企業を支援するための制度です。

助成金名 雇用調整助成金
主体となる団体名 厚生労働省
支給対象となる経費の範囲 雇用保険被保険者に対する休業手当、在宅勤務手当
受給額 (平均賃金額×休業手当等の支払率)×助成率

オフィス縮小にともなうテレワークの開始や、やむを得ずオフィスを閉鎖してテレワークに移管するときに助成金を手当として従業員に支払うことが可能です。

業務改善助成金(特例コース)

業務改善助成金(特例コース)は、業務改善計画により生産性向上が認められる場合、設備投資にかかったコストの一部を助成する制度です。

助成金名 業務改善助成金(特例コース)
主体となる団体名 厚生労働省
支給対象となる経費の範囲 ・機械設備費用
・コンサルティング導入費用
・人材育成や教育訓練にかかった費用
・PCなどデバイスの新規購入費用
・在宅勤務用の什器購入費用 など
受給額 設備投資にかかった費用のうち4分の3

なお、業務改善計画実施後には賃金の下限を設けることが条件となります。受給資格を得るためには、あらかじめ給与規定などの見直しが必要です。

各自治体が用意する助成金

厚生労働省など国による助成金制度だけでなく、各自治体独自の取り組みも行われています。本社所在地の情報をチェックし、該当する制度があるか確認してみましょう。

下記で一例として、北海道の自治体による助成金を紹介します。

助成金名 中小企業競争力強化促進事業(テレワーク導入支援事業)
主体となる団体名 北海道経済部産業振興局産業振興課
支給対象となる経費の範囲 ・マーケティング費用
・コンサルティング利用費用
・産業人材育成及び確保費用
・市場対応型製品開発費用 など
受給額 60万円

この制度の対応幅は広く、新たな事業分野への進出、市場の開拓を前提とした取り組みも対象になります。「テレワーク導入支援事業」では、情報通信技術を活用した場所や時間にとらわれない働き方(テレワーク)導入にかかる経費を補助してくれます。

北海道では、テレワーク導入以外にもオンライン事業の推進やコンサルタントの招へいなど、さまざまな取り組みに対応した助成金が用意されているのも魅力です

間接的にテレワーク導入につながる取り組みが含まれる場合もあるので、自社が属する地域の自治体公式ホームページなどを確認してみてください。

各団体が用意する助成金

自治体ではなく地域特化型の公益財団法人が手掛ける助成金制度もあります。ここではテレワーク促進助成金を一例として紹介します。

助成金名 テレワーク促進助成金
主体となる団体名 公益財団法人東京しごと財団
支給対象となる経費の範囲 テレワーク機器、ソフトウェアなどテレワーク環境整備に必要な経費の助成
受給額 ・30人以上999人以下の企業:上限250万円
・2人以上30人未満の企業:上限150万円

テレワーク促進助成金は、テレワーク導入にかかったコストの大半が支給対象になるのが特徴です。

なお、新規人材の獲得のためにテレワークを導入する場合でも申請できます。

テレワーク導入にも活用可能な補助金

助成金制度とあわせて、テレワーク導入時に活用できる補助金制度についても紹介します。助成金と異なり事前に予算が定められており、予算の上限に達した場合は申請期間内でも受付が終了される点に注意が必要です。申請を決めたら早めに手続きすることをおすすめします。

ここでは以下の3つの補助金制度について紹介します。

・IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)
・小規模事業者持続化補助金(低感染リスク型ビジネス枠)
・多様な働き方推進事業費補助金(テレワークコース)

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する際にかかる費用の一部を補助する制度です。

下記のとおり、導入内容に応じた複数の枠が設けられています。

助成金名 IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)
主体となる団体名 経済産業省
支給対象となる経費の範囲 ・ソフトウェア費
・クラウド利用料(1年分)
・導入関連費
受給額 【A類型】30万円~150万円未満
【B類型】150万円~450万円未満
【セキュリティ対策推進枠】5万円~100万円
【デジタル化基盤導入類型】5万円~350万年

サービス等生産性向上IT導入支援事業においては、テレワーク導入費用なども助成対象となるのでチェックしてみましょう。

また、導入したツールによって受給額が大きく変動するのが特徴です。例えば、A類型とB類型の違いは導入するツール数と補助金の金額です。A類型は指定範囲から最低1種類以上、B型は最低4種類以上のツールの導入が条件とされています。

需給決定後は、定められた期間内に事業実施効果報告を必ず行うことが必要です。

小規模事業者持続化補助金(低感染リスク型ビジネス枠)

中小企業庁が実施する小規模事業者持続化補助金(低感染リスク型ビジネス枠)の支給対象は、新型コロナウイルス感染症感染防止と事業継続を両立させるための対人接触機会の減少に資する、ポストコロナを踏まえた新たなビジネスやサービス、生産プロセスの導入にかかる費用です。およそ2か月単位で通年にわたって実施されており、2021年度・2022年度ともに年間6回の募集が行われています。

該当する経費の範囲や受給額は、下記のとおりです。

助成金名 小規模事業者持続化補助金(低感染リスク型ビジネス枠)
主体となる団体名 全国商工会連合会
支給対象となる経費の範囲 ・機械装置等費
・広報費
・展示会等出展費
・開発費
・資料購入費
・雑役務費
・借料
・専門家謝礼
・設備処分費
・委託費及び外注費
・感染防止対策費 など
受給額 経費の4分の3(上限100万円)

テレワーク導入による新型コロナウイルス感染症感染リスク低減も対象となるので、チェックしてみましょう。

上記のように複数の項目が用意されていますが、ほとんどの企業が「感染防止対策費」として申請することになります。

各自治体のテレワーク導入に関する補助金

多様な働き方推進事業費補助金(テレワークコース)は、京都府が独自に設けている補助金制度です。

事業者の規模ごとに受給額が異なりますが、下記のとおり最大50万円まで補助金を受け取れます。

助成金名 多様な働き方推進事業費補助金(テレワークコース)
主体となる団体名 京都府商工労働観光部労働政策課
支給対象となる経費の範囲 ・テレワークの導入のために行う社内規程(就業規則など)の整備費
・テレワークの導入のための情報通信機器及びソフトの導入
・テレワークの導入及び利用促進のためのサテライトオフィスの設置
・テレワークの導入及び利用促進のための社内研修の実施、セミナーへの参加費
受給額 中小企業者の場合:補助対象経費の2分の1以内、上限50万円
規模企業者の場合:補助対象経費の3分の2以内、上限50万円

補助金を受ける前提として育て環境に向けた職場づくり動宣言」を掲げることが要件になっています。

まとめ

助成金・補助金制度を効果的に活用すれば、テレワーク導入にかかるコストを最小化できます。まずは自社が利用できそうな制度がないかチェックしてみましょう。

国や地方自治体が行っている制度のほか、テレワークと関連性の高い団体が独自に行う助成金も調べることがコスト削減のコツです。