働き方改革や新型コロナウイルス感染症の予防対策として、テレワークを導入する企業が増えています。高いスキルをもっていながら、居住地や育児・介護などを理由に通勤が難しい人材を登用しやすくなり、多様性を助ける要因にもなりました。
今や誰もがテレワークのメリットを感じる時代になりつつありますが、実は導入が難しく、デメリットも多くあります。
今回は、テレワーク導入について企業側が抱える課題、スムーズに導入するための解決法について解説します。
テレワーク導入の需要は高い
(引用:総務省「コロナ下でのテレワークの課題とは」)
上記の資料では、年々テレワークを導入する企業が増えていることや、新型コロナウイルスが猛威を奮い始めた2020年4月以降は爆発的な伸びを見せていることがわかります。
また、テレワークを導入した人のなかでも「自宅での勤務で効率が上がった」「自宅での勤務に満足している」「コロナ収束後もテレワークをしたい」と感じる人の割合が伸びていることもわかりました。
社会情勢に関係なくテレワークのニーズが高まっており、今後は対面での業務が必須の職種以外はテレワークが望まれる可能性があります。一時的な導入ではなく、働き方のひとつとして根付かせることにより、さらに社会のニーズに答えられるといえます。
テレワーク導入で企業が抱える課題
テレワークのニーズが高くメリットがあるとわかっていても、テレワーク導入を前向きに考えられない企業が多いことも事実です。
テレワーク導入の過程では、思わぬ壁が立ちはだかることがあります。まずは企業が抱えることの多い課題をチェックしてみましょう。
テレワーク化が難しい業務がある
テレワーク化が難しい業務がある場合、物理的なハードルが生じます。
一例として、対面でのやり取りが欠かせない医療・福祉・介護業界や、テレワークだけでは限界のある教育・接客・販売業界などが挙げられます。また、機材や車を使う必要がある製造・運送・建設業界や公務員なども含まれます。
将来的に少しずつ遠隔で働けるようになる可能性はありますが、今すぐのテレワーク導入は難しい状況です。上記のほかにも業種としてはテレワークが可能でも、業務内容的に一部の部門・部署のみ出社を余儀なくされるケースもあります。
セキュリティの問題がある
個人情報や機密情報を扱うことの多い企業では、セキュリティ対策が欠かせません。テレワークの場合、PC・スマートフォン・タブレットなどの機材を持ち出したり、必要に応じて書類を持ち帰ったりする必要があります。
意図的でなくても情報を流出させてしまったり、人の目に触れたりするようなことがあれば、企業としての信頼を失います。十分なセキュリティが構築できない場合は、無理にテレワークを導入すべきではありません。
テレワーク導入にコストがかかる
テレワークの導入には、さまざまなコストがかかります。主な導入費用は以下のとおりです。
・従業員に貸与するPCなどの端末代
・Wi-Fiや回線などの通信環境を整える費用
・セキュリティ構築費用
・オンラインミーティングツールなどの利用料
・クラウドツールなどの利用料
テレワークにする分通勤費の支給が減りますが、それでもカバーしきれないコストが生じることも少なくありません。
業務効率の低下が懸念される
テレワークにすることで情報共有が行き届かなくなってミスをするなど、業務効率の低下も懸念されています。
また、自宅の環境は人により異なるため、自宅周辺の工事音が電話に入ってしまったり、作業に最適なスペースやデスクを確保できなかったりすることもあります。大小さまざまなストレスが業務効率につながった場合、生産性も下がりかねません。
しかし、テレワークで働く人のなかには「業務効率が上がった」と感じている人がいることも事実です。2021年時点の調査で業務効率が上がったと答えた人は、「やや上がった」「効率が上がった」で合計59.1%でした。
(参考:総務省「コロナ下でのテレワークの課題とは」)
運用方法やコミュニケーション次第では、快適な働き方になる可能性があることも知っておきましょう。
労働や勤務の管理が難しい
テレワーク時は、誰がどの程度働いたのか、今どんな仕事をしているかが見えづらくなり、マネジメント面に支障が出る可能性があります。勤怠管理も難しく、正確な勤怠実績や残業代の計算が難しいかもしれません。
また、実績は目に見えても熱意やモチベーションなど情意評価に関わる部分が可視化されず、人事評価の際に困ることも多くあります。
従業員同士のコミュニケーション低下
従業員同士でコミュニケーションをとる機会が減少し、やりづらさを感じることもあります。
気兼ねない雑談がなくなったことにより孤独感を覚えたり、小さな質問をしづらくなってスキルアップできなくなったりすることも想定されます。
積み重なると大きなミスやトラブルの原因になるため、社内コミュニケーション活性化施策は特に重要です。
テレワークの課題を解決する方法
最後に、テレワーク導入の課題を解決する方法を紹介します。
これまでテレワークは難しいと考えていた会社でも、運用方法次第ではテレワークできるかもしれないので、チェックしてみましょう。
ITツールの導入
自社の業務形態に合ったITツールを導入し、時間・場所が違ってもスムーズに働ける環境を構築する方法があります。
例えばクラウドサービスを使って情報をオンライン上でやり取りすることにより、オフィスワーカーもテレワーカーも同じ情報を目にできるようになります。書類を持ち帰ったり交代で出勤したりする必要もなくなり、平等なテレワークになるのもメリットです。
全従業員にセキュリティ対策を徹底する
テレワーク導入前に全従業員へセキュリティ教育を施し、高いITリテラシーを身につけさせることも欠かせません。「知らなかったから」が原因で発生する情報漏洩や、ヒューマンエラーによるデータ消去などをなくすためにも、事前に準備しておきましょう。
また、最新のセキュリティツールを導入したり、USBメモリなどの取り扱い方を細かく規定することも重要です。
人事制度や業務フローを見直す
テレワークすることを前提に社内規則・人事評価制度・業務フローなどすべてを見直し、齟齬が出そうなポイントがないか探りましょう。そのうえで、課題となる項目があれば改定するなど、環境を先に整えるのもおすすめです。
導入後に人事評価や給与支払いにおけるトラブルが生じると、従業員も「テレワークしないほうがよかった」と感じてしまいがちです。従業員満足度を高め、正しい制度として運用していくために特に留意しておきましょう。
コミュニケーションを取りやすい環境を作る
チャットツール、オンラインミーティングツール、バーチャルオフィスなどを導入し、従業員同士がコミュニケーションしやすい環境を作ることもポイントです。
オフィスで働いているときと同じような感覚で声を掛け合えれば、細かな質問でも気兼ねなく相談できたり、部下の業務進捗を可視化したりしやすくなります。高頻度でコミュニケーションすること自体がテレワークのストレス解消になることもあるので、導入を検討してみましょう。
なお、下記ではテレワークに必要なマネジメントの役割やコミュニケーションツールの使い方について解説しています。今後テレワークの導入を検討しているときはもちろん、すでにテレワークを導入済みで課題があり困っているときにもお役立てください。
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まとめ
テレワークは、効果的な運用制度を構築できれば業務効率向上・多様な人材の獲得・従業員満足度アップなどさまざまなメリットが得られる働き方です。
しかし、十分に対策せず導入してしまうと、社内コミュニケーション不足が原因のミスやクレームが頻発したり、重大な情報の漏洩につながったりすることもあるので注意しましょう。クラウド型のITツール、コミュニケーションツール、マネジメントツールなどを最大限活用しながら、まずは自社に合った環境を構築することが重要です。