離職の3大要素とは
ここでは従業員が離職を検討する主な理由について解説します。
特に下記3つは「離職の3大要素」ともいわれているので、自社内に該当するリスクがないか今一度チェックしてみましょう。
労働条件や待遇への不満
労働条件や待遇への不満として、下記が挙げられます。
・給与や賞与が少ない
・成果を挙げても昇進、昇給するチャンスがない
・時間外労働や深夜労働が多く疲れが取れない
・急に休日返上で出勤することが多くプライベートの予定が立てられない
・雇用が不安定で長く腰を据えて働ける環境ではない
主に金銭面や労働条件面への不満が募ると、長期的な就労はできないとして離職されてしまいます。将来的な収入や健康面への不安に発展することも多く、改善されない状態が続くと、さらに不満が高まります。
なお、本人に聞き取りをしても収入面での不安が直接語られることは少なく、課題が表面化しづらいのも懸念点です。
職場の人間関係への不満
職場の人間関係に関する不満として下記が挙げられます。
・上司からパワハラやセクハラを受けている
・同僚との社内競争が激しすぎて精神的に消耗する
・職場いじめや無視などが起きている
・社内恋愛や金銭トラブル
・顧客からのクレーム
いずれもメンタルヘルスを患う原因になりやすく、急な退職・休職が懸念されます。部下と距離感の近い上司でないと問題が表面化しづらく、同じ部署内で起きているトラブルでも気づけないことが多いので注意しましょう。
また、会社に発覚するのを恐れてトラブルを隠しているうちに、事態が重くなることも多くあります。さらに、明確な不満がなくとも細かな違和感が積もり積もって離職に至るケースもあります。
企業に対する不安や心配
企業に対する不安や心配として下記が挙げられます。
・企業の経営方針に共感できない
・社風が自分と合わない
・自分がキャリアアップできるイメージがわかない
・上司や同僚に心から尊敬できる人がいない
・やりたい仕事ではない
・倒産やリストラのリスクがある
企業の経営方針や体質が合わない場合、自分ひとりでは解消しにくいことから離職を選ぶ人が一定数いるのは事実です。
また、待遇に不満がなくても「この会社では自分は成長できない」「キャリアが積めない」と考えて離職されるケースもあるので注意しましょう。
現代は実力主義で人事評価する企業が増え、若手であっても能力次第でどんどん高収入を稼げるようになっている時代です。スキルを正しく評価する制度がないと、従来のシステムに違和感を覚える層を中心に人材が離れていってしまいます。
離職防止に向けた4つの施策
ここからは、離職防止に向けた施策を紹介します。
具体的な改善策が思いつかないときは、下記を参考にしてみてください。
社内のコミュニケーションを見直す
まず対応すべきことは、社内コミュニケーションの頻度や手法を見直し、風通しの良い組織体制を整えることです。上司と部下間における信頼関係を醸成できれば、早い段階で悩みやトラブルに気づきやすく、フォローアップしやすくなります。
何でも気軽に相談できる相談室やコンプライアンス委員会を設置して、直属の上司以外の相談先を確保する方法も有効です。社内ブログや社内SNSを活用し、気軽に参加できる社内コミュニケーションの場を増やすのもおすすめです。
「相談すれば耳を傾けてくれる」「親身になって話を聞いてくれる」という心理的安全性が高ければ、離職のリスクを減らせます。
労働環境の整備を行う
無理な時間外労働・深夜労働・休日出勤が発生しないよう労働環境を見直します。新規採用をして人手不足を補ったり、業務効率化をして限られた時間でも最大のパフォーマンスを発揮できるようにしたりするのがポイントです。
また、時短勤務・テレワーク・フレックスタイム制度・サテライトオフィス勤務など、さまざまな勤務形態を見つけて個人のやりやすいような環境を整える方法もあります。「働きやすい会社だ」と思ってもらうことができれば、ライフステージが変わっても就業を続けやすくなります。
評価制度の見直しを行う
従業員の頑張りを正当に評価できるよう、人事評価制度の見直しを行いましょう。一辺倒な年功序列型になっていないか、上司の主観だけで大幅に評価結果が左右されないかなど、客観的な視点に立って現在の課題を可視化することが大切です。
社内立候補制度を活用してやりたい仕事を後押ししたり、社内副業制度を使って理解を促進したりする方法もあります。少しずつでもキャリアアップできるイメージを掴めれば、頑張ろうというモチベーションの醸成にもつながります。
キャリアとスキルをサポートする
従業員のキャリアアップやスキルアップをサポートし、自己成長のきっかけを与えるのも有効です。
今後自分のポジションが上がっていきそうか、上げるためにはどのような努力をすれば良いか可視化できれば、進むべき道がわかります。そのために人事評価基準を公開し、自社がどのような人材を高く評価しているのか示すのもひとつの方法です。
従業員教育に力を入れたり、自発的に参加できる勉強会やセミナーを増やしたりする方法もあります。スキルアップが図れる研修やワークショップ、資格取得の補助金や資格手当の支払いなども離職防止策として有効です。
成功事例から離職防止の術を学ぶ
ここでは離職予防を叶えた成功事例をいくつか紹介します。
何から取り組むべきか悩んだ場合は、他社の成功事例を真似ることから始める選択肢もあります。自社でも参考にできる事例があれば、取り入れてみましょう。
労働環境改善での成功事例
若手人材を中心に長時間労働が常態化していたある企業では、従業員向けに長時間労働削減宣言を出しています。
施策内容は、勤怠管理システムを活用して労働時間を可視化したり、予定されていた勤務時間を超過した場合にアラートを出したりしました。こまめに労働時間を確認できる環境を整備したことで、残業に対する意識も変わりました。
残業を事前申請制にするなど、ハードルを上げる施策も行った結果、無駄な残業を抑制する効果も発揮されています。ほかにも業務効率化を図って勤務時間を減らすなどの取り組みも有効です。
コミュニケーションでの成功事例
社内コミュニケーション不足によるトラブルや、居心地の悪さが懸念されていたある企業では「全社日報」を導入しています。マネージャーや経営層に対して、誰もが気軽に自分の思いを伝えられるシステムを構築しました。
現場の声が届きやすくなり経営の意思決定がスピード化されるなど、離職予防以外の効果も発揮されています。
また、同時にワークライフバランス施策も実施し、働きやすく居心地の良い会社として変化を遂げています。
人間関係問題解決での成功事例
社外ジョブローテーション制度を導入し、社内の人間関係を解消した事例もあります。定期的な環境変化があると特定のハラスメントを避けやすくなるので、ハラスメント予防施策としても効果的です。
他社への出向によって物理的に社内の人間と距離を置ける機会も提供し、合わない相手と長期間仕事をするストレスが軽減されました。
複数の仕事を経験することで自社の強みも認識でき、愛社精神を培う要因にもなっています。
スキルやキャリアサポートでの成功事例
老舗食品メーカーでは「仕事は見て覚える」という体質から転換し、新入社員に先輩社員がマンツーマンで教える教育体制に切り替えました。
現場では「わからないことを質問しやすくなった」「頼れる先輩が多くて信頼できるようになった」という声が上がっています。結果、50%以上だった新入社員の離職率を数%にまで減らしました。
まとめ
離職が相次ぐ企業は採用・育成コストが膨れ上がるだけでなく、悪評が立ってさらに採用が厳しくなることが多いです。
まずは自社の課題を可視化したうえで、予防施策を練っていきましょう。
離職対策として行った制度改革や環境整備が、結果的に業務効率化など新たな相乗効果を生むこともあります。自社の成長を促す意味でも、離職防止のための取り組みを積極的に行っていくことが大切です。