従業員に最大限のパフォーマンスを発揮してもらうために、企業でモチベーションマネジメントの重要性が高まっています。

従業員のモチベーションを上げることができれば、会社全体の生産性向上が図れます。とはいえ、モチベーションマネジメントの実践法が分からず、お困りの企業も多いのではないでしょうか。

本記事では、モチベーションマネジメントの基礎知識から、モチベーションが低下する原因、マネジメント手法までまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

モチベーションマネジメントとは

モチベーションマネジメントとは、従業員が高いモチベーションを保ちながら意欲的に仕事に取り組めるよう、マネジメント層がサポートすることです。

モチベーションは大きく分けて2種類に分類できます。個人の内部から発生する内発的動機付けと、外部との関係から発生する外発的動機付けです。

モチベーションマネジメントにおいて重視すべきは、意欲の向上に直結する内発的動機付けです。いかに個々の従業員の興味や関心を高め、内発的動機付けとなるきっかけを作れるかが、モチベーションマネジメントのポイントとなります

企業におけるモチベーションマネジメントの重要性

株式会社パーソル総合研究所の「労働市場の未来推計2030」によると、2030年には644万人の人手が不足すると予想されています。

人材不足は今後ますます深刻化し、採用難が続くことが予想されています。そのため、企業は自社の従業員の離職防止を図るとともに、従業員が活き活きと仕事に励めるような職場環境を整えることが重要です。

そこで、従業員の業務に対する意欲を高められるモチベーションマネジメント手法を用いることにより、自主的かつ意欲的に業務に取り組める環境を構築できれば、生産性の向上や企業の業績アップに貢献してくれます。

出典:「労働市場の未来推計2030」株式会社パーソル総合研究所3

従業員のモチベーションが低下する理由

従業員のモチベーションを高めるためには、モチベーションが下がってしまう要因を特定し、対処する必要があります。以下では従業員のモチベーションが低下する主な理由について解説します。

やりがいのない仕事を任されている

従業員のモチベーションが低下する要因に、仕事へのやりがいが失われていることが挙げられます。例えば、単調なルーティンワークの繰り返しによるマンネリ化やスキルアップにつながらないことなどがあります。

仕事を頑張っても達成感が得られない状況で、モチベーションを保つことは至難の業です。そのため、やりがいを見失っている従業員に対しては、いかにその仕事が意義のあるものなのか実感できる場を設けたり、本人の立場に寄り添って理解してもらったりする必要があります。

職場環境や人間関係に不満がある

職場環境や人間関係に対しての不満や不安が大きくなれば、従業員のモチベーションは低下していきます。例えば、働く環境が合わずにストレスを受けていたり、福利厚生へ不満を抱いていたりなどが考えられます。

職場環境や人間関係への不満は、従業員とのコミュニケーションを通じて改善できることもあります。どんな環境に不満を持っているかは、本人からしか聞き取ることはできません。定期的に社員と直接面談を実施するなど、社員がマネジメント層に伝えやすい機会を設けることが重要です。

従業員本人に合っていない目標設定

本人の能力やスキルを考慮せずに、高すぎる目標や低すぎる目標を設定すると、従業員のモチベーション低下の要因につながります。

高すぎる目標を立てると達成の難易度が上がり、従業員が途中で諦めてしまう状況に陥ってしまいます。一方、簡単に達成できる目標はかえってモチベーションを維持することが難しいです。

社員一人ひとりが持つスキルや能力は異なります。企業側が求める期待値をそのまま目標とするのではなく、従業員個人の能力に合わせた目標設定になるよう、すり合わせる機会を設けましょう。

業務への貢献が正当に評価されていないと感じる

必死に仕事をこなして成果を上げていても、状況によっては正当に評価されないケースもあります。特に、業務貢献が見えにくい現場は顕著で、それが従業員のモチベーション低下につながるおそれがあります。

一人ひとりの従業員が、業務を通してどれだけ貢献しているのかを可視化したり、会社貢献を評価しやすくしたりする体制が重要です。

モチベーションマネジメントの具体的な手法5選

ここでは、モチベーションマネジメントの具体的な手法を解説していきます。

1.モチベーションを可視化する

モチベーションマネジメントを行う上で、個々の従業員のモチベーションを把握する必要があります。面談を実施して従業員の本音を聞き出せればいいですが、そう容易いことではありません。

そこで従業員のモチベーションを把握・管理するために、システムを用いて行う方法が注目されています。

モチベーション管理システムは、従業員が職場環境や人間関係などについて、どのように感じているのかをアンケートで収集し、従業員の本音を可視化することができます。従業員の本音を可視化することで、マネジメント側が取り組む課題が明確になり、その課題を解決することで従業員のモチベーションアップが実現できます。

モチベーションマネジメントでのシステム導入を検討されている方は、エンゲージメントに影響するデータをモニタリングできるTeamSpirit」の活用をぜひご検討ください。

TeamSpiritは、勤怠管理や工数管理などのバックオフィス機能が一体化しています。そのため、稼働時間の中で本来の業務にどのくらい時間を使えているか、休暇や勤務間インターバルを確保できているかなど、エンゲージメントに影響する要素を多角的にモニタリングできます。

モチベーションを低下させる要因や課題にいち早く対応し、データに基づいたマネジメントやエンゲージメント施策の立案、効果検証を行うことができるため、従業員のモチベーションアップにも役立ちます。

2.社内のコミュニケーションを活性化させる

社員同士のコミュニケーションを促進させる環境作りや、リフレッシュスペースなどといった業務に関係しない環境を提供することにより、社内の人間関係やコミュニケーションの円滑化を図ることができます。

例えば、フリーアドレス制の導入やレクリエーションや社内サークル活動が有効な手段になります。

ただし、コミュニケーションの円滑化を図る場合は、なるべく労働時間内で行うことが望ましいです。もしレクリエーションなどを労働時間外で行う場合は、強制参加にしないようにしましょう。

3.働きやすい職場環境を整備する

従業員のスキルを踏まえて最適な人材配置を行うことで、人的資本を最大限活かせることはもちろん、高いモチベーションで業務へ取り組んでくれることが期待できます。

社内設備を改善する方法も職場環境整備のために有効な手段です。フリーアドレスの導入やミーティングスペースの設置、リフレッシュスペースの拡充などを検討しましょう。

4.待遇や評価制度を見直す

人事評価が適正に行われていないと感じたり、評価基準が曖昧だったりすると、従業員の不満が蓄積してしまい、モチベーションの低下につながります。

透明性のある評価基準による適正な人事評価を行い、会社が求める成果を上げた社員に対しては、表彰制度やサンクスカードなどの評価される仕組みを整えることも重要になります。

5.面談や1on1ミーティングを実施する

従業員個々のモチベーションの状況を掴むには、直接コミュニケーションをとることも効果的です。

モチベーションマネジメントを行う際、1対1で話を聞くことで、心理的な距離を縮めることが期待できるため、上司と部下で1on1ミーティングを実施してみるのもおすすめです。

面談や1on1ミーティングは一度行えばいいというものではないため、定期的に実施し、こまめに現状を把握することを心がけましょう。

【3ステップ】モチベーションマネジメントの実施手順

ここでは、モチベーションマネジメントの実施手順を解説していきます。

STEP1. 自社や従業員の現状把握

会社単位や部門単位など組織全体での課題を把握するとともに、個々のモチベーションを可視化することが重要です。

そのため現状把握の調査を行う際は、従業員へのアンケートや上司と部下が1対1で行う面談の1on1ミーティングを実施して、個々の従業員の悩みや課題を抽出する方法が有効です。

STEP2. 施策の企画・実施

STEP1の現状把握の結果を踏まえて、適切な施策を検討していきます。このとき、ハードアプローチとソフトアプローチをバランスよく取り入れることを意識しましょう。

ハードアプローチとは、評価制度や各種制度など仕組みの構築によってワーク・モチベーションを改善する施策です。一方、ソフトアプローチとは、人間関係や職場の雰囲気などの目に見えないものを改善していく施策を差します。

施策の企画ではハードアプローチの施策に目が向きがちです。しかし、どんなに良いハード施策があっても機能しない制度や、使われない制度では施策とは呼べません。

制度や仕組みを整えて終わりではなく、それが実際に運用されるようにソフトアプローチと組み合わせて考えることが大切です。

STEP3. 効果検証

モチベーションマネジメントは実行して終わりではなく、効果検証を行うことが重要です。従業員のモチベーション向上につながる施策が上手く進んでいるか、改めて現状を把握するようにしましょう。

もし思うような結果に至らなかった場合は、施策に問題がなかったか、多角的な視点で見直す必要があります。PDCAを繰り返すことで、従業員にとって居心地の良い環境を作り上げることが可能になるでしょう。

モチベーションマネジメントの成功事例

ここでは、モチベーションマネジメントの成功事例を解説していきます。

株式会社ベネッセホールディングス

株式会社ベネッセホールディングスでは健康経営の一環として、2019年度から2021年度の3年間、RIZAPのプログラムを取り入れました。

テレワークの普及に合わせてオンラインで開催することで、各拠点から延べ900名の参加を実現させています。アンケート結果では、多くの従業員が健康改善や運動習慣に関する知識や姿勢が向上したと回答しており、モチベーション向上という気持ちの面でのメリットがあったことが分かります。

Unipos株式会社

Unipos株式会社では、評価制度や社内の雰囲気を改善すべく、ピアボーナス制が導入されました。

ピアボーナス制とは、「仲間(peer)」と「報酬(bonus)」を合わせた言葉で、会社からではなく社員同士で報酬を贈りあうことができる仕組み・制度です。

従業員同士がお互いの良いところに気づくようになり、感謝の気持ちを直接伝えられるため、従業員のモチベーションアップにつながりました。また、普段からのちょっとした気配りも手軽に称賛しあえる社内風土が作り上げられたとのことです。

株式会社資生堂

株式会社資生堂では子育て中の社員を対象に、「カンガルースタッフ制度」を設けています。

カンガルースタッフ制度とは、子供のお迎えや夕食の準備などのために早めに退店した社員の代わりになるスタッフを用意しておく制度です。

カンガルースタッフ制度を導入したことで、仕事と子育ての両立がしやすい環境が作れます。そのため、子育てを理由にした離職を防ぐ効果が期待でき、結婚や出産などのイベントを経ても安心して働けるとのことで、従業員のモチベーション向上につながりました。

まとめ

モチベーションマネジメントの基礎知識やマネジメント手法について解説しました。人材不足が深刻化していく中で、従業員にとって働きやすい企業になることは、人材の確保と人材の流出防止に大きく貢献してくれます。

また、従業員のパフォーマンスを最大限発揮させる環境づくりにもなるため、企業の業績アップにも非常に重要な役割を果たしてくれます。