人時生産性とは
人時生産性とは、従業員ひとりが生み出す粗利を測るための指標です。
例えば、ひとりの従業員が1時間でできる量の作業を行った場合、人時生産性は下記のように表されます。
・1人で1時間かけて取り組んだ場合:1人時
・2人で30分の間に終わらせた場合:1人時
・2人で1時間かけて取り組んだ場合:2人時
リソース(人材)のインプットに対して、どの程度アウトプットできたのかを把握することが可能です。人事生産性が高いほど、効率的に利益を生み出せているといえます。
人時生産性が注目される背景
人時生産性が重視されるようになった背景には、生産人口の減少と働き方の多様化があります。
内閣府の発表によると、令和3年10月時点で国民総人口に対する高齢者(65歳以上)の割合は28.9%。一方、生産年齢にあたる15歳~64歳未満の割合は、全体の59.4%です。将来的には、さらに高齢者の割合が増え、若年層の割合が減ると予測されます。内閣府の推測では、令和35年ごろには日本人の総人口が9,000万人前後にまで減少するといわれています。
出典:「令和4年版高齢社会白書」(内閣府)
労働人口の減少については、政府主導で対策が行われました。働き方改革による幅広い人材の雇用です。現在では、多くの企業がテレワークや時短勤務、フレックスタイム制などの柔軟な働き方を推進しています。
その中で、従業員ひとり当たりの生産性を把握しにくくなるといった課題が生じています。労働人口が減少していく日本では、限られた人員でより大きな成果を出すことが重要です。正確な生産性が算出できなければ、適切なアプローチが難しくなるでしょう。
このような背景から、より正確で実用的な指標が必要となり、人時生産性の考え方が生まれました。
労働生産性・人時売上高との違い
人時生産性とともに語られることが多いのが、労働生産性や人時売上高です。労働生産性と人時売上高は、それぞれ下記の計算方法で算出できます。
・労働生産性=産出量÷労働投入量
・人時売上高=売上高÷総労働時間
労働生産性とは、企業が生み出した製品や付加価値に対する、従業員数や総労働時間を指します。ひとりの従業員が製品や付加価値といった成果を生み出すまでの効率を算出できます。
人時生産性は、労働生産性のうち、ひとり当たりの従業員が1時間で生み出せる粗利に着目した指標といえるでしょう。
人時売上高は、従業員ひとり当たりが1時間で得られる売上高のことです。人時売上高と人時生産性の違いは、かかるコストを考慮するかどうかです。人時売上高は人件費などのコストを差し引いた純粋な売上高のみを表すのに対して、人時生産性は粗利を算出します。
人時生産性の計算方法
人時生産性を算出するには、まず粗利益を出す必要があります。人時生産性を算出したい対象の粗利益を算出したうえで、下記の計算式を用います。
人時生産性=粗利益÷総労働時間
例えば、部門ごとに人時生産性を把握したい場合は、まず部門単位の粗利益の算出が必要です。総労働時間は、従業員数×労働時間であらかじめ出しておきます。
企業全体として人時生産性が高い場合でも、部門単位でみると課題がみえてくることがあります。人事生産性は企業単位で算出するだけでなく、部門別に分析することも重要です。
適切な人時生産性は5,000円程度
人時生産性の数値は、5,000円程度が適切とされています。6,000円を超えると高収益な企業であり、反対に3,000円以下であれば生産ラインなど現状の見直しが必要です。
5,000円に到達していない企業は、最初の目標として人時生産性の向上を目指しましょう。
人時生産性を改善するためのポイント
人時生産性が望ましい数値でないときは、業務フローや環境など従来の働き方について見直しが必要です。
人時生産性の改善を目指すときのポイントとして、3つ紹介します。
適切な場所に人員を配置する
生産性を低下させる理由のひとつが不適切な人員配置です。従業員一人ひとりの能力が発揮されにくく、組織全体としてのパフォーマンスも低下します。
人員配置を適正化するには、個々のスキルや適性を把握し、業務や評価基準についての要望をヒアリングすることが有効です。
また、実際に人材配置を実行した後は、効果検証を実施しましょう。
・生産性や作業効率に変化はあったか
・従業員満足度が向上したか
・業務量と人員数のバランスは適切か
上記のような、あらゆるデータをチェックします。上記の指標は定期的にチェックし、最適化を目指すことが重要です。
社員別の労働時間や部門ごとの業務実績を可視化するなら、TeamSpiritをぜひご活用ください。レポート機能が充実しているため、従業員一人ひとりの働き方をひと目で把握することができます。工数管理のほか、勤怠管理、経費計算、社内SNSなどの機能が備わっているため、バックオフィス業務をまとめてTeamSpiritで管理することが可能です。
労働時間の削減を行う
人時生産性は粗利÷総労働時間で算出されるため、向上させるには労働時間を削減する必要があります。
労働時間を削減するための有効な施策は、以下のとおりです。
・作業フローの最適化
・業務進捗を把握しやすい環境づくり(進捗管理システムの導入、定期報告会の開催 など)
・労働時間を正確に把握できる仕組みづくり(勤怠管理システムの導入、退社時間の事前共有をルール化する など)
施策を実行する前に、無駄な工数がかかっている業務を特定することが重要です。「なぜ労働時間が長くなっているのか」など、原因を突き止めて適切なアプローチを考えましょう。
RPA(業務自動化)ツールを導入する
RPA(業務自動化)ツールの導入により、作業効率を高めることが可能です。ルーチン化している事務作業や簡易的な作業が多い場合は、ツールの導入により自動化できないか検討することをおすすめします。
基本的な機能は以下のとおりです。
・記録機能:指定した処理(タスク)を記録する
・編集機能:処理(タスク)の順序や実行条件を設定する
・実行機能:指定した処理(タスク)を実行する
そのほか、コストや機能は提供会社によってさまざまです。自社の課題や目的に応じたツールを選びましょう。
また、運用に関するサポートが充実しているかどうかもポイントのひとつです。利用する従業員が直感的に操作できるよう、UIデザインもチェックすることをおすすめします。
導入後、想定していた効果が得られないということがないよう、システム選びは慎重に行うことが大切です。
まとめ
人時生産性は、ひとり当たりの従業員が1時間で生み出す粗利のことです。働き方の多様化によって生産性の算出が困難になっている現在、人事や経営の面で活用される機会が増えつつあります。
人時生産性を向上させるポイントは、人員配置・労働時間の削減・ツールの導入です。自社の現状や課題にあった施策を実行しましょう。