健康経営への取り組みが重要な理由

健康経営への取組みが重要な理由として、企業のリスクマネジメントにつながることが挙げられます。

例えば、慢性的な寝不足による頭痛・イライラが続いている従業員がいれば、当然ながら業務への集中力が下がります。本来であれば問題なく遂行できている業務でミスや抜け漏れが頻発することもあるでしょう。

健康上の問題を抱えたまま出勤を続けることで、重大な病気に罹ってしまうおそれもあります。

急な欠員や業務効率の低下は、企業にとって多大な損失です。最終的に取引先に迷惑をかけたり、企業のブランドイメージを損ない、顧客が離れたりすることも少なくありません。

このような生産性低下やイメージダウンに対するリスクマネジメントとして、健康経営がひとつの選択肢になっているのです。

健康経営を意識するメリット

健康経営を意識することで、下記のようなメリットが得られます。

・企業のブランドイメージが向上する
・幅広い人材が確保しやすくなる
・生産性が向上する
・好条件で融資を受けやすくなる

心身の健康を維持できるようになれば、従業員エンゲージメントが向上します。企業への貢献意欲も高まり、業務のパフォーマンスが高まるでしょう。取引先や顧客からのイメージアップにも有効です。対外的な評価が高まると、好条件で融資を受けられるなど資金調達面でもメリットが現れます。

また、「活気のある会社」「前向きな人が多い」という評判が広まれば、採用市場における企業価値の向上が期待できます。優秀な人材を確保できたり、既存の従業員が退職しにくくなったりと、採用コストの削減にもつながるしょう。

健康経営への取り組み方

ここでは、経済産業省のガイドブックに沿って健康経営への取り組み方を解説します。

参考:「企業の「健康経営」ガイドブック (改訂第1版) 」(経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課)

健康経営に取り組む意思はあるものの「何から手をつけるべきかわからない」と悩んでいる方は、下記を参考にしてみましょう。

1.経営理念・方針への位置づけ

健康経営の重要性や意義を明文化し、経営理念・方針の中に示します。まずは、「なぜ健康経営を導入するのか」「自社が抱えている健康上の問題点がどこにあるのか」を可視化するところから始めましょう。

具体的な課題意識があれば社内からの共感も得られやすく、実行力が高まります。

また、投資市場における健康経営ニーズの高まり・若手人材の価値観の変化など、トレンドを考慮しながら理由づけしていくことも大切です。

2.組織体制づくり

健康経営を実行するにあたって、組織体制の構築も重要です。

具体的には、以下の実行が重要です。
・産業保健スタッフとの連携
・専門のサポート部門の設置
・誰でも活用できる社内コールセンターの導入

特に会社全体の管理を担う人事・総務・経理・庶務などバックオフィス部門とは密に連携し、動きを共有しておきましょう。

健康経営を形骸化させないためには、社内報や社内SNSを活用した定期的なアナウンスも重要です。また、管理職向けの研修を実施して、組織の末端まで健康経営の視点が行き渡るよう工夫します。

3.制度・施策の実行

施策の実行にあたって、経営者・産業保健スタッフ・バックオフィス部門の担当者だけでなく、健康保険組合・労働組合など外部の組織との連携が重要です。

従業員の健康上の課題を把握するには、社内のデータに加えて、健保組合の保険者が保有する健康状態に関するデータを活用します。

その後、自社の健康課題に応じた保険事業を計画しましょう。同時に、評価指標と成果目標を明確にしておくことが好ましいです。
具体的な施策案は、以下のとおりです。

・職場の禁煙ルールの明確化
・社員食堂の整備
・長時間労働の抑制
・健康上の課題がある従業員に対する定期的な保健指導

4.取組を評価する

定期的にPDCAサイクルを回しながら取り組みを評価し、改善を繰り返しましょう。

評価において重要な視点は、ストラクチャー(構造)、プロセス(過程)、アウトカム(成果)の3点です。

■ストラクチャー(構造)
・経営者のコミットメントが十分か
・自社に浸透しているか
・組織体制が確立されているか

■プロセス(過程)
・施策が機能しているか

■アウトカム(成果)
・従業員の健康状態を維持・改善できているか
・施策が企業利益に結びついているか

健康経営に取り組んでいる企業の成功事例

最後に、健康経営に取り組んでいる企業の成功事例を紹介します。

1.住友林業株式会社

住友林業株式会社では、以下の取り組みを実行しています。

・新入社員研修における健康管理
・セルフケア研修
・健康に関するイベントコラムの発信
・事業場内に産業保健スタッフを常設

2021年には社内でのウォーキングイベントを開催し、運動不足の解消に貢献しました。メンタルヘルス対策にも積極的に取り組み、業界におけるリーディングカンパニーとしての行動指針を描いています。

2.サントリーホールディングス株式会社

サントリーホールディングス株式会社では、産業医・メンタル専門医・看護職・臨床心理士など産業保健スタッフによるサポートを強化しています。

国家資格を保有するヘルスキーパーを各オフィスに置き、マッサージをとおしたストレス解消への取り組みも始めました。各分野におけるプロフェッショナルの力を借りた健康経営施策であり、従業員満足度向上にも寄与しています。

3.ヤフー株式会社

ヤフー株式会社は、「グッドコンディション推進室」と呼ばれる健康経営専門のチームを設置しています。特に、食事のモニタリングに力を入れており、栄養バランスのチェックや1品から手軽に注文できる簡易社員食堂の整備など、新たな取り組みを始めています。

また、徹底した1on1ミーティングによる部下のストレス解消などに着手していることも特徴です。

4.丸善土木株式会社

丸善土木株式会社では、加入している健康保険組合である「全国土木建築国民健康保険組合」との共同で、「みんなで歩活」イベントに積極参加しています。

従業員の平均年齢が高くても安定したパフォーマンスを発揮できるよう工夫されており、特に運動不足解消に力を入れている事例です。

5.ネッツトヨタ山陽株式会社

ネッツトヨタ山陽株式会社は、2018年9月に「おかやま健康づくりアワード2018」を受賞しました。

従業員に電子万歩計を配布して部署別・個人別にランキングをつくるなど、自然にモチベーションが上がる社内イベントを開催しました。楽しみながらできる健康経営施策に焦点を当てており、組織体制の構築により実行力を高めた事例ともいえます。

6.株式会社笠間製本印刷

株式会社笠間製本印刷は、残業・休日出勤の抑制により、職場環境の改善に重点を置いています。従業員が十分にプライベートの時間を確保できるようになり、「集中力が上がった」「精力的になった」などの良い結果が現れました。

管理職から率先して退勤することで、後続する部下が行動しやすくなったこともポイントです。

まとめ

健康経営の実施は、従業員はもちろん自社にとっても大きなメリットとなります。社内外の評価が高まったり、業績がアップしたりと、副次的な効果もあるため、ヘルスケアに課題を抱える企業こそ率先して取り組んでいきましょう。
健康経営を形骸化させないためには、施策や経営層の思いを社内に共有することも大切です。

また、健康経営は「人的資本への投資」ともいえます。近年、人的資本の情報開示は投資家の投資判断において重要性を高めています。健康経営の実行とともに、人的資本を可視化するための基盤づくりも整えていきましょう。

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