企業が人的資本を高めるべき理由

企業が人的資本を高めるべき主な理由は、次の4つです。それぞれ具体的に説明していきます。

サステナビリティの浸透

サステナビリティとは、日本語で「持続可能性」という意味です。昨今ではビジネスシーンでも重要とされている考え方のひとつ。企業活動は利益のみ優先するのではなく、地球環境や社会、経済にも配慮した、社会全体がともに発展していける経営のあり方が求められます。

このサステナビリティの浸透には、ESG投資が関わっています。ESG投資とは、従来の財務状況だけではなく、企業の環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の要素も判断材料に投資する手法のことです。

このESG投資には、環境、社会、ガバナンスの要素をサステナビリティに組織を運用することを求められています。そして、人的資本は「社会」に該当します。そのため、投資家からの企業価値評価を向上させるためには、人的資本を高める必要があるのです。

ISO30414の制定

ISO30414とは、国際標準化機構(ISO)が2018年12月に発表した人的資本の情報開示のガイドラインのことです。社内外の関係者に対して人的資本を報告するための指標としても扱われています。

ISO30414という形で人的資本情報の開示に対する国際基準が整備されたことで、企業の人的資本の状態に注目が集まっています。これにより、各企業が人的資本に力を入れる必要が一層高まっているのです。

ISO30414ついては、下記の関連記事で詳細を解説しています。ぜひご覧になってください。

ISO30414の導入効果とは?概要と国内外の導入状況を紹介

人材や働き方の多様化

非正規雇用や外国人労働者の増加、女性の社会進出の推進により、人材や働き方の多様化も人的資本を高めるべき一因です。

多様化した人材は、働くことに対する考え方や価値観が、それぞれ異なります。そのため、画一的な人材戦略では、貢献度の高い人材を中長期的に維持するのが厳しくなるのです。

これからは、人的資本の考え方を重視した下記のようなフレキシブルな対応が求められていくでしょう。

・各人材に合わせた育成を行う
・経営戦略自体を各人材の特性を踏まえて策定する

人的資本の情報開示の義務化

人的資本の情報開示を義務化する流れがあることも、企業が人的資本を高めるべき理由です。

アメリカでは、2020年から人的情報開示の義務化が始まっており、日本でも情報開示の動きが見られています。例えば、2021年には、上場企業向けのガイドライン「コーポレートガバナンス・コード」が改訂されて、人的資本の情報開示についての項目が追加されました。

このような流れの中で、投資家たちの企業評価の判断材料として、人的資本の重要性が高くなっているのが実情です。

人的資本の情報開示に対する国内の動向

国内の人的資本に関する動向について、最近の状況を見てみましょう。

「人材版伊藤レポート」が公開

2020年に経済産業省が設置した「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」の報告書として、「人材版伊藤レポート」が公開されました。このレポートを契機に、日本でも人的資本が重要視されるようになり、情報開示を求める声も増えています。

さらに2022年5月には、より実践的な内容を含む「人材版伊藤レポート2.0」が公開され、これまで以上に、人的資本の向上に向けた取り組みを後押しする流れになっている状況です。

「コーポレートガバナンス・コード」の改定

コーポレートガバナンス・コードとは、金融庁および東京証券取引所が上場企業向けに定めている、実践すべき原則を取りまとめたものです。コーポレート・ガバナンスは、会社に関わるステークホルダー(株主、顧客、従業員など)の立場を踏まえて、迅速で果断な意思決定を行うための仕組みを指します。 コーポレートガバナンス・コードは、コーポレートガバナンスを実現するための必要な原則を取りまとめたものです。

「コーポレートガバナンス・コード」では、2021年6月の改定によって、取締役会の機能発揮と企業の中核人材の多様性の確保の情報開示について、義務化が明記されました。さらに2022年にもコーポレートガバナンスの情報が加わるなど、注目度が高まっています。

2022年中には開示ルールが策定予定

2022年6月7日には、「経済財政運営と改革の基本方針2022」が閣議決定され、2022年8月30日には、非財務情報の開示指針研究会による人的資本可視化指針」が策定されました。

「人的資本可視化指針」とは、人的資本に関する情報開示を行うときの参考となる総合的な手引書です。すでに示されている基準やガイドラインなどをどのように運用していくと良いのか、といった実践的な内容が明記されています。

「人材版伊藤レポート」とあわせて運用することで、各社にとって最適な流れで人的資本の可視化を進めていくことができるでしょう。

人的資本を高める4つの方法

人的資本を高めるためには、具体的にどのようなアクションが必要なのでしょうか。この項目では人的資本を高める4つの方法を紹介します。

経営戦略と人材戦略の紐づけ

人的資本を活用した経営戦略を立てることで、経営環境が激変しやすい現代においても、変化に適応して企業競争力を維持しやすくなります。

人的資本を高め効果的に企業価値の向上につなげるには、下記の2点の運用を行う必要があるでしょう。

・人的資本をどのように活用すれば企業価値につながるのか考えて戦略を立てる
・同時に、経営戦略を実現するにはどういう人材が必要かを踏まえて育成プランを練る

的確な研修や教育

人的資本を高めるためには、人材の能力や知識を上げるために投資することが必要です。

貢献度の高い人材への育成を行うためには、企業価値を高めるためにどんな能力や知識が必要なのかを把握したうえで、研修制度や育成計画を立てることが重要になります。

場当たり的に研修を行うと、人的資本を高めるまでに時間がかかってしまうので、ピンポイントで必要な能力を育てられる教育システムの構築に努めましょう。

適正配置と評価

人的資本を高めるためには、人材に合わせた配置と適切な評価も重要です。人材の多様化が進んでいる現代では、各自の得意分野や価値観が異なります。

人材が最大限能力を発揮できる環境を整えることで、人的資本の価値を最大化することができます。個々に合った配置や評価で、能力を引き出していきましょう。

HRテクノロジーの導入

人事関連業務や管理を効率的に行えるHRテクノロジーの導入は、人的資本を最大限に活かし、高めることにつながります。勤怠管理や工数管理などを組み合わせることで、従業員の能力を可視化できるようになるからです。

また、個人に合わせた研修などにも役立つ「タレントマネジメントシステム」の機能を活用すれば、エンゲージメントの向上にもつながるでしょう。

システムを開発している企業は多いため、自社の課題に応じたタレントマネジメントシステムを導入することをおすすめします。

例えば、TeamSpiritでは、勤怠管理や工数管理など従業員の活動状況を把握できる機能が一元化されています。働き方の情報が可視化されていて、ハイパフォーマー、ローパフォーマーの特性を分析することが可能です。自動でデータの蓄積ができるので、手間なく管理や分析ができます。

より詳しい機能や使い方、標準価格は下記の資料に詳細を記していますので、ぜひ参考になさってください。

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まとめ

人的資本を高めるには、経営戦略とリンクさせた人材の育成、運用や、適正配置、評価などが欠かせません。人材を適切に運用するには、人材の能力を正しく把握することが重要なので、スムーズに人材情報を可視化できるHRテクノロジーの活用も検討するべきでしょう。

変化の多いグローバル社会の中で、競争力を維持し、安定して利益を生み出し続けるためにも、人的資本を高めることは急務です。取り組みを進め、企業の安定運営を実現しましょう。