従業員満足度調査(ES調査)は、企業価値の向上や競争力維持の観点から、重要視されています。組織課題の洗い出しや課題の改善施策の効果検証など、さまざまなデータを収集できます。そこで今回は、従業員満足度調査の概要から効果的な質問例まで、解説します。
従業員満足度調査(ES調査)とは
従業員満足度調査とは、従業員の勤務先の企業に対する満足度に関する調査のことです。給料・福利厚生といった待遇面や、仕事内容・人間関係といった職場環境などに対する、評価や意見を調査します。
従業員満足度のことを、英語では「Employee Satisfaction」と表記します。そのため、従業員満足度調査を略してES調査と呼ぶこともあるので、覚えておきましょう。
課題を可視化し解決につなげることができる従業員満足度調査は、従業員の定着率や生産性を向上させるうえで重要です。厚生労働省も、人材確保・生産性向上などにつながる「魅力ある職場づくり」のためには、顧客満足度と従業員満足度の両方が重要である、と発表しています。
従業員満足度調査を実施する目的
従業員満足度調査を行う代表的な目的は、次の3つです。
1. 従業員の意識やモチベーションの可視化
2. 組織課題の洗い出し
3. 課題の改善施策の効果検証
具体的にどのようなことが、従業員満足度調査を実施することでわかるのか、順番に確認していきましょう。
従業員の意識やモチベーションの可視化
従業員の意識やモチベーションの可視化が、従業員満足度調査を実施する目的の一つです。モチベーションは、従業員の定着率アップや企業の生産性向上を図るうえで欠かせない要素であるため、正確に把握しておくことが重要になります。
その点、従業員満足度調査であれば、日々の業務の様子からだけではわからない従業員の心情や思考を定量化して把握し、人事施策や人材教育に役立てることができます。
面談などではどうしても混ざりがちな主観も、従業員満足度調査では混入しにくくなっています。組織の待遇や職場環境に対する満足度を客観的な数値として正確に把握できるのが、利点です。
また、従業員満足度調査において、会社に対する率直な意見を伝えられる場を提供することで、潜在的な不満や要望も明確にできるでしょう。
組織課題の洗い出し
従業員満足度調査を実施する目的には、組織課題の洗い出しをすることも挙げられます。
現場で業務に携わる従業員だからこそ認識している組織の課題を解決することで、業務効率化や生産性の向上を効果的に進めることができます。一方で、従業員の本音というのは、通常の業務環境では見えにくいのも事実です。
そこで、従業員満足度調査を実施することで、従業員の生の声を聞くことができるようになり、それに伴い、マネジメント層では気づきにくい課題点まで、洗い出すことができるでしょう。
従業員同士のコミュニケーションや部署間の連携など、把握しづらい課題を解決するには、従業員満足度調査を行うことが最適です。
課題の改善施策の効果検証
課題の改善施策を実施したあとで、その効果を検証する目的でも、従業員満足度調査は行われます。課題を本質的に改善するためには、施策によってどういう部分にどのような変化があったのかを把握し、必要に応じて施策の追加や変更をすることが大切です。
定期的に従業員満足度調査を行うことで、施策を行う前と後の満足度や回答の変化を見られるようになり、課題解決に向けた施策の効果を定量的に検証することができます。
このように、人事施策に従業員満足度調査結果を活用することで、快適で生産性の高い労働環境を構築できるようになるでしょう。
従業員満足度調査の主な質問項目
従業員満足度調査の主な質問項目として、次の5つが挙げられます。
1.仕事内容
2.職場環境・組織風土
3.上司への質問
4. 待遇・福利厚生
5. 組織の経営・方向性
この項目では、質問の具体例を挙げながら解説します。なお、正確な回答を得るためには、質問を作成する際、それぞれの質問が曖昧な表現や回答を誘導尋問にならないように注意しましょう。
仕事内容
現在担当している仕事の内容や量に対する評価、モチベーションの状況や目標とマッチしているかどうかを質問するのが、「仕事内容」の項目です。仕事内容が自身の成長につながっているかどうかを、確認することもできます。
仕事内容について従業員の本音を確認することで、適材適所な人事配置を行ったり、最適な研修メニューを作成し効果的に人材育成を進めたりできます。
具体的な質問例は、以下のとおりです。
◆仕事内容の具体的な質問例
・仕事を通して成長を感じられているか
・仕事で自分のスキルを活かせているか
・現在の仕事にやりがいはあるか
・このまま仕事を続けたあとの将来の自分の姿がイメージできるか など
職場環境・組織風土
仕事をしている職場の人間関係や雰囲気、協力・連携ができる体制かどうか、といった点について確認するのが、「職場環境・組織風土」の項目です。
職場環境に関する満足度を把握しておくことで、従業員が定着しやすい職場づくりをしたり、従業員間のトラブルを未然に防いだりすることができます。メンタルヘルスの観点からも、従業員の本音をチェックしておくことは有効です。
具体的な質問例には、次のようなものがあります。
◆職場環境・組織風土の具体的な質問例
・自主性は尊重されているか
・自由に意見を言い合える雰囲気があるか
・トラブル発生時はサポートしあえる環境か
・コンプライアンスは遵守されているか など
上司
上司との関係性や、対応・言動に関する率直な感想や評価を確認できるのが、「上司」の項目です。場合によっては、部下との関係性に関する質問をすることも有効でしょう。
上司のマネジメントスキルを把握したり、最適な人員配置をしたりするのに役立ちます。また、パワーハラスメントなどのトラブルをなくすのにも効果的です。
質問の具体例を、いくつかご紹介します。
◆上司の具体的な質問例
・仕事上のトラブル、もしくはプライベートな問題について、上司に相談できるか
・上司は責任の伴う仕事などを任せてくれるか
・上司は成長につながるような指導やフィードバックをしてくれるか など
待遇・福利厚生
給与や業務に対する評価状況、異動・昇進、福利厚生の内容などについて従業員の満足度を確認するのが、「待遇・福利厚生」の項目です。休みの取りやすさなども、確認しておくとよいでしょう。
働く条件について、従業員の満足度を確認しておくことで、従業員の離職率を抑えることにつながるほか、モチベーションアップの効果も見込めます。
具体的な質問例は、以下のとおりです。
◆待遇・福利厚生の具体的な質問例
・育児や介護などの支援制度が整っているか
・昇進が適切に行われているか
・異動する部署に関する希望を聞いてもらえているか など
組織の経営・方向性
「組織の経営・方向性」の項目では、企業の目標・ビジョン・将来性について、従業員がどのように考えているのかを把握することができます。
組織の経営・方向性について、従業員の満足度をチェックすることで、優秀な人材を流出させないための施策づくりなどに生かすことが可能です。
具体的な質問例には、以下のようなものがあります。
◆組織の経営・方向性の具体的な質問例
・ビジョンに共感し、貢献したいと感じるか
・会社の業績や将来性に満足しているか
・会社で取り扱うサービスや商品に誇りを持てるか など
まとめ
従業員満足度調査は、人材確保・生産性向上などにつながる重要な取り組みです。モチベーションの可視化や、潜在的な課題の洗い出しにも、有効な手法と言えます。
「TeamSpirit」は、従業員の勤務状況や業務状況をデータで可視化できるため、従業員満足度を向上させる上での課題特定や打ち手の策定、PDCAを回すため に有効なツールです。従業員満足度調査結果を踏まえて、働き方の改善や生産性の向上をはかる際には、このようなツールを活用することで効果的に進められます。