社員の意識改革は経営層が取り組むべき課題
意識改革とは、従業員個人が業務を遂行する際の考え方やスタンスを変えていくという意味があります。業務の優先順位を正しくつけられるようになったり、業務の性質に合った自発的なスキルアップが期待できたりと、さまざまな効果が得られます。
一般的に従業員の意識改革は会社が先導しない限り、なかなか実施されません。現場で働く従業員は、上司や同僚との円滑な人間関係や待遇に意識が向いてしまい、会社全体の利益となる行動を優先できないことも多いです。
そのため、行動を伴う意識改革は経営層をはじめ会社のトップが積極的に発信することが欠かせません。意識改革を行う必要性や、その意義をトップメッセージとして繰り返し伝えることが、経営者の責務であるといえます。
企業が意識改革を行う理由
まずは意識改革を行う理由を解説します。最適な意識改革を行うには企業が従業員の意識改革を必要とするケースや、最適なアプローチ方法を理解することが大切です。
コストと手間をかけて意識改革するメリットを知り、自社の課題が意識改革によって解決できそうか探ってみましょう。
企業理念やビジョンの浸透
意識改革することにより、企業理念やミッション・ビジョン・バリューが組織に浸透します。「なぜこの会社で働きたいのか」「なぜこの会社が社会に必要とされているのか」など存在意義を再確認することで、従業員のモチベーションも上がります。
また、個々の従業員が理念に沿って行動するなど、意識改革が行動改革につながることも少なくありません。従業員に企業理念を理解してもらい、組織としての一体感を得たい際にこそ意識改革が必要なのです。
社員の働き方やパフォーマンスの改善
企業が成長する足枷となっている意識を撤廃したり、反対に成長を助ける意識づけをしたりすることで従業員の働き方は大きく変わります。
例えば「残業して当たり前」「上司より先に部下が帰るのは失礼」など、組織にとって古い価値観を撤廃できれば、従業員のワークライフバランスが向上します。
また、「実績が伴っていれば若手であっても評価される」という意識が根付けば、入社して間もない段階から精力的に働く従業員が増える可能性も考えられます。働き方を改善し、限られた時間でも高いパフォーマンスを発揮するために意識改革が役立つのです。
社員が活躍できる機会の創出
意識改革は多様な人材がいることを前提としています。そのため意識改革を行うことで、個々の特性を問わず従業員全員が活躍できる環境の整備につながるのです。
妊娠・出産・子育てや介護を控える従業員を周りがサポートできるようになれば、ライフイベントによる退職を抑えられ会社に貢献し続けてもらえます。助け合いの精神が根付くことで仕事が分担され、結婚や子どもの有無を問わず、ワークライフバランスが整えられるのもメリットです。
また、高齢者・障がい者・外国人労働者など、多様な人材の参画に積極的になり、誰にとっても風通しの良い職場環境の構築も見込めます。
企業が意識改革を行う手順
ここからは従業員の意識改革をする手順について解説します。
一方的な訴求だけではトップダウン型の「命令」になりかねません。共感による自発的な行動を喚起できないおそれがあるので、意識改革に取り組む際は従業員への配慮が必要です。
自社の課題と目標を認識する
従業員への声かけをする前に、まずは自社の課題と目標を認識します。意識改革と一言で表しても具体的な課題は幅広いものです。「残業が正義だと感じる風潮」「縦割り組織から脱却できず縄張り意識が強い」など、企業ごとにさまざまな課題が考えられます。
まずは、自社の課題となっていることを書き出し、本当に従業員の意識が原因なのか、ほかに考えられる要因はないか検討することが大切です。書き出した課題と向き合ったうえで、要因が従業員の意識であると考えられる場合は、次のステップへ進みます。
具体的な行動へ移す
見えてきた課題に対し、効果的だと思われる施策をリストアップします。例えば、残業が常態化している場合は申請フローを見直したり、定時退社している部署を評価するようにしたりする方法が挙げられます。
ただし、環境を整えるだけでは効果的とはいえません。残業の常態化に対し、業務の量や効率が改革前と変わらなければ、単純に作業時間の短縮にしかならないためです。
仕事を自宅に持ち帰らなければならなくなるケースも考えられます。「業務量が減らないのに一方的に残業時間だけ抑制された」と受け取られれば、隠れ残業の発生や従業員の会社に対する不信感の高まりにつながります。
業務を効率化できるようなツールの導入を進めるなど、意識改革とともにあらゆる手法を組み合わせていくことが大切です。
モニタリングと軌道修正を繰り返す
定期的にモニタリングしながら、本当に従業員の意識改革ができているかリサーチします。PDCAサイクルを回し、不足している部分があれば追加の施策を実施したり、期待していた効果と異なるのであれば軌道修正したりします。
従業員の意識改革は一朝一夕で叶うものではなく、ある程度長期的な施策として実行することが大切です。モニタリングや効果検証の間隔が開かないように、管理側のルーティンに含めることも大切です。
意識改革を行う際のポイント
意識改革を成功させるには、手順だけでなくポイントも押さえる必要があります。意識改革を行う際に注意すべきポイントや、つまずきやすい項目について解説します。
意識改革の必要性を社員に伝える
まずは、意識改革の必要性を正しく従業員に伝えることが大切です。どの課題に意識改革が有効なのか、ほかの手法で解決することはないかなど、複数の視点から施策の必要性を解説します。
経営層だけが力を入れても従業員の理解を得られなければ、形だけの施策となり効果が発揮されません。短期的な施策で終わってしまい、「会社に振り回されて終わった」という感想を抱かれるなど、かえって確執を強める要因となってしまうケースもあります。
まずは意識改革の必要性を従業員に理解してもらい、施策の実行へ移りましょう。
社員が自発的に取り組みたくなる環境を作る
個人の意識は他人の強制によって変わるものではありません。あくまでも自発的な考えや行動に根付いて変化します。そのため、まずは従業員が自発的な意識改革に着手できる環境作りが不可欠です。
例えば、実績だけでなく行動や熱意も考慮する評価制度に切り替えたり、取り組み内容に応じて表彰したりする方法があります。
また、セミナーや教育プログラムの参加にインセンティブをつけるなどして、興味を持ってもらう機会を作るのもおすすめです。
取り組みやすい目標から設定する
まずは取り組みやすい目標から設定するスモールスタートを導入し、従業員の抵抗感をなくすのも効果的です。
意識改革は、考え方を根本から変えなければ成功しないと思われがちです。しかし、実は日々の行動を少し変えたり、同僚への声かけの方法を工夫したりと、小さな目標から意識改革することもできます。
成功体験を積みながら意識改革の楽しさを知ってもらうことを優先することが、施策をスムーズに進めるコツです。
長期的なプロジェクトとして取り組む
意識改革を長期的なプロジェクトとして位置づけ、社風として定着するまで根気強く続けることも大切です。新たな考えや社風をスムーズに定着させるには、定期的な意識改革施策の実施だけでなく、緻密な効果検証とフィードバックが欠かせません。
意識改革の結果、どのようなシーンで行動が変わっているかを現場の従業員へ客観的に示す必要があります。加えて長期的な活動として続けられるコストや工数が確保されていれば、少しずつ従業員の意識も変わっていきます。
まとめ
従業員の意識改革ができれば、自主性と計画性のある社員教育につながったり、効率的な働き方を阻害するリスク要因を撤廃できたりします。モチベーションやエンゲージメントを維持しながら働く従業員も増え、生産性が向上する効果も期待できます。
今回紹介した手順やポイントを参考に、自社が抱える課題の解消につながる施策を検討してみてください。