男性の育休の取得状況

厚生労働省の「令和2年度雇用均等基本調査」によると、2020年度の男性の育児休業取得率は12.65%でした。前年度より増加しているとはいえ、依然として低い数値です。

その背景には、男女の役割分担の考え方が関係しています。男性は仕事で経済的な基盤を築き、女性は家庭を守るという価値観が残っている場面も多く見受けられます。

日本と諸外国を比べても、育児への関心度が低い傾向にあり、女性への家事や育児の負担が増加しています。また、女性が社会で活躍する機会も増えたことで、以前のままではワークライフバランスを保つのが難しいと感じる方も多いのかもしれません。

とはいえ、政府が2025年までに男性の育児休業取得率を30%にすると目標に掲げたこともあり、男性の育休に理解を示す企業も増えてきています。

育休取得による経済的な負担は、給付金の活用で解決できることもあります。育児法改正により、積極的に育休取得を推進する企業も増えているため、将来のキャリア形成に不安がある方も、今後は育休が取得しやすくなるでしょう。

出典:「令和2年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)

2022年4月から順次施行!育児法改正の主な変更点

育児法改正により、2022年4月から段階的に施行されることになりました。企業にも関係の深い、育児法改正の主な変更点について紹介します。

企業は育休の周知・確認義務を負う

育児法改正により、すべての事業主に育休の周知・意向の確認が義務化されます。大企業や中小企業などの規模にかかわらず、実施しなければなりません。

女性が育休を取得することは認知されていても、男性が育休を取得できることを知らない従業員もいるでしょう。

現状では企業によって温度差があるため、育休の周知・確認を義務化することで、企業間での差をなくす目的もあります。

また、配偶者の妊娠・出産を申し出た従業員に対して、育休制度の詳しい説明や育休取得の意向を個別に確認する必要があります。ポスターだけでは周知したことにならないため、気をつけてください。周知・意向確認を怠った場合は、指導や勧告の対象となるため注意しましょう。

育休の分割取得が可能になる

育休の分割取得が可能となり、出産時や退院後など必要に応じて休みを調整できるようになりました。現行の育休と異なり、2回まで分割して育休を取得できるため、柔軟に対応できます。

出生時育休制度と併用すれば、子どもが1歳になるまでであれば、合計4回の育休を取得可能です。

非正規労働者も休業取得しやすくなった

アルバイトやパートなどの非正規労働者が育休取得する条件であった、「継続して雇用された期間が1年半以上」が廃止されました。

例えば、期間の定めがない雇用契約の場合や、3ヶ月・6ヶ月のように期間が決められていて自動更新の場合は、継続して勤務することに変わりないため育休が取得できます。

このように、非正規労働者も無期雇用労働者と同じように育休制度が適用されることで、育休制度を活用しやすくなりました。

大企業は取得率を公表しなければならない

2023年4月から、大企業は男性育休取得率の公表が義務付けられます。対象は、労働者数が1千人を超える企業です。

現状、育休制度があっても取得しにくい方もいるかもしれません。しかし、育児法改正にともない、企業が育休制度を取得しやすい仕組みを作ることは可能です。さらに、男性の育児取得率の公表は、企業のイメージアップや従業員のエンゲージメントの向上につながります。

【2022年10月~】出生時育児休業(産後パパ育休)制度が施行

法改正により、2022年10月より出生時育児休業(産後パパ育休)制度が施行されます。この制度では、子どもが生まれてから8週間以内に、最大4週間の休業を2回に分けて取得できます。

さらに、育休とは別に取得可能であり、産後女性をサポートしやすくなりました。ただし、2回に分けて取得するには、初めにまとめて申請する必要があります。

この制度を活用すれば、育休を交代しながら夫婦で育児ができるため、保育園に入所できないなどの事態にも柔軟に対応可能です。

とはいえ、休業中でも引き継ぎが不十分だったなど、仕事の進捗が気になることもあるでしょう。育児休業制度では原則就労することができませんでした。しかし、出生時育児休業制度を活用することで、条件に合致した場合、育児休業中でも限られた範囲での就業が認められます。

バックオフィス業務の管理ツール「TeamSpirit」では、働き方の情報を可視化したり、ハイパフォーマー・ローパフォーマーの特性を分析したりする機能をご活用いただけます。2022年10月に開始された「産後パパ育休」に対応した機能をはじめとする休暇申請も扱っており、席を外している理由をすぐに把握できます。

さらに、労働時間の推移による従業員の状態把握も可能です。生産性の向上やタスク管理にお役立ていただけます。

詳しい機能情報やお客様の声はこちらからダウンロードできます。

あわせて、「産後パパ育休」関連に対応した機能の詳細はこちらの記事をご覧ください。

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男性の育休取得にはメリットが多い

男性の育休取得により、企業側、労働者ともにメリットがあります。それぞれのメリットについて紹介します。

企業側のメリット

男性の育休取得での企業側のメリットとして、企業イメージの向上があげられます。企業に対する評価が高まれば、優秀な人材の確保や定着につながります。社会的評価があがれば、業務拡大に向け進めることもできるでしょう。

さらに、男性の育休取得により、企業側は助成金を受けられます。具体的には、出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金) として、「男性労働者が育児休業を取得しやすい職場環境」「育児休業を取得」の2点が確認できた場合に支給されます。

労働者のモチベーションや生産性の向上もメリットのひとつです。育児休業の取得により仕事と家庭が両立しやすくなり、従業員エンゲージメントもアップするでしょう。

労働者側のメリット

労働者は一定の条件を満たした場合、給付金を受けられるのがメリットです。1歳未満の子どもの育児のために休業した場合、育児休業開始から6ヵ月までは、休業開始前給与の67%相当額が支給され、それ以降は50%相当額が支給されます。

また、協力して育児を行うことで、良好な夫婦関係を築くことにもつながるでしょう。育児の楽しさやつらさも共有できるため、お互いの愛情も深まります。夫婦関係が良いと、子どもの自己肯定感にも良い影響を与えられるでしょう。

仕事面では、キャリア形成にプラスに働く場合があります。男性が育児に参加すると、女性の負担が軽減します。女性にとってはキャリアロスが短縮でき、男性にとってはエンゲージメント向上につながるのです。

男性の育休取得促進のために企業ができること

男性の育休取得促進のために、企業ができることを紹介します。

育休を取得しやすい雰囲気を作る

育児休業の取得は、労働者の当然の権利です。女性も社会で活躍するようになり、仕事や家庭の価値観が変化しています。時代の流れとともに、育休を取得しやすい環境へ変えていくことが大切です。

育休取得に対して肯定的であれば、上司から部下へ育休取得を促すことができます。管理職が育児参加しやすい雰囲気だと、部下の育休取得率も高まるでしょう。

また、日頃から制度について周知したり、育休取得を評価制度に取り入れたりすることで、固定概念がある管理職の意識改革も可能です。その結果、企業全体として育休を取得しやすい雰囲気づくりができるでしょう。

欠員が出てもカバーできる組織作りを行う

育休を取得すると、通常業務に負荷がかかります。そのため、欠員が出ても業務が滞らないようなシステムを構築しておくことが重要です。仕事をフォローできる体制が整っていれば、安心して育休を取得できます。

とはいえ、男性の育休期間のみ新規雇用を進めるのは、得策ではありません。育休中のカバーは、周りの従業員で行うことが多いからです。日頃から業務を共有しておくことで、引き継ぎもスムーズにできるでしょう。

まとめ

育児法改正により、企業は育休の周知や確認義務化、育休取得率の公表が必要になります。とはいえ、男性の育休取得は、企業側と労働者側にとってメリットが大きいものです。

まずは、育休を取得しやすい雰囲気づくりに努め、欠員が出てもカバーできる組織作りをすることから始めましょう。