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基礎知識

デジタル手続法で変わる企業のバックオフィス業務

著者:チームスピリット編集部

デジタルトランスフォーメーション(DX)の浸透によってデジタル化の道を進む日本社会ですが、実はすでに世界の潮流からは乗り遅れているという側面もあります。経済産業省が発表した「DXレポート」に記された「2025 年の崖」に象徴されるように、世の中のさまざまなサービスや商品がさらにデジタル化を果たせなければ、国際競争への遅れや経済の停滞を招くことが危惧されています。それは行政での手続きやそれに伴う企業のバックオフィス業務においても例外ではありません。

日本でも2019年5月に「デジタル手続法」が成立し、行政サービスのデジタル化が進んでいます。しかし、まだまだ国民に認知・定着が進んでいるとは言えない状況です。では今後、「デジタル手続法」の浸透・促進により、行政での手続きや関連する企業のバックオフィス業務がどのように変化していくのでしょうか。

行政サービスの効率化を目指す「デジタル手続法」

近年、世界におけるデジタル領域の発展は著しく、IotやAIを取り入れたサービスや商品が数多く展開されています。民間企業がデジタルへの移行を急速に進める中、遅れが目立つのは行政サービスです。特に日本の行政手続きの煩雑さや電子化の遅れは顕著だと言えるでしょう。そうした日本の行政におけるDX浸透の遅れの現状を危惧し、制定されたのが「デジタル手続法」です。

デジタル手続法の正式名称は「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律(※)」。要するに行政の手続きを効率化し、ユーザーの利便性を高めるために「オンラインで行えるようにする」「同じ情報の手続きは繰り返さなくても良いようにする」「情報提供は一度で済むようにする」ことを法律で定めたものです。

行政サービスの中には、相続や介護、引っ越しの際の住所変更など、今でも市町村に足を運ばないと行えない手続きが数多く存在します。それらの手続きをデジタル化することによって、日本の行政サービスの非効率さが解消されることが期待されています。デジタル手続法では順次電子申請の義務化を進めていき、2021年度を目標に、企業が「政府認定のクラウドサービス」に従業員情報をアップするだけで、入社・退職など人事労務の手続きが一本化できる形を目指しています。

デジタル手続法が与えるバックオフィス業務への影響

2016年12月の官民データ活用推進基本法が成立したことにより、官民協働でデジタル技術を徹底活用する流れが促進され、国と地方、官と民という枠を超えた行政サービスの見直しが検討され始めました。それが「デジタル・ガバメント実行計画」です。デジタル化した行政、つまり「デジタル・ガバメント」は、民間事業者との直接対話を通して民間ニーズの把握とそれに対応したサービスづくりを目指しています。

例えば、行政のデジタル化によって便利になるのは、市民の個人的な手続きだけではありません。企業と行政が手を取り合ってデジタル化を進めることで、実は企業のバックオフィス業務の効率化も期待できるのです。すでに電子帳簿保存法など、官民のやり取りに関する法案が変わっています。では具体的に官民協働で行われたDXには、どんな事例があるのでしょうか。また、それに伴いバックオフィスにどんな影響を与えたのかにも触れていきます。

e-Gov を使った行政手続き

e-Govとはオンライン上で行政手続きを行えるポータルサイトです。総務省行政管理局が運営を担当しており、各府省(本省庁、地方支分部局、施設等機関)の行政情報や、個人・企業向けの行政手続案内などを横断的に検索・閲覧できる点が特徴になります。e-Gov上で電子申請を行うことで、これまで紙面で行われてきたさまざまな行政手続きがオンラインで対応できるようになります。

国は行政手続きにかかるコスト削減のために、すでに特定の法人(※)における一部の行政手続きにおいて電子申請を行うことを義務化しました。例えば、厚生年金保険はすでに義務化の対象です。企業の労務管理者は、「被保険者賞与支払届」「被保険者報酬月額算定基礎届」「被保険者報酬月額変更届」などの手続きをオンラインで行わなければなりません。

※特定の法人とは、「資本金、出資金または銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人」「相互会社」「投資法人」「特定目的会社」が対象。

API を使ったより一層のツール活用

e-Govは、直接そのシステムから手続きも可能ですが、APIを利用して手続きする方法もあります。APIとは「Application Programming Interface」の略称で、あるアプリケーションの機能を第三者と共有するための窓口をイメージすると理解しやすいでしょう。e-GovにおいてもシステムAPIという窓口を設けることで、外部のアプリケーションを連携できます。

API を使ったより一層のツール活用

APIを活用することで市販の労務会計ソフトウェアなどに入力したデータから、そのまま電子申請で行えたり、審査状況の確認や公文書の取得も労務会計ソフトウェアの中での操作で行えたりします。そのため、わざわざ労務会計ソフトウェアとWebブラウザ上の操作を往復する必要がなくなるため、手続きをスムーズに進められるはずです。

デジタル手続法の中でも、今後APIを整備していくと明記されており、より多くのソフトウェアと連携できるようになることが想定されています。さまざまなソフトウェアと連携することで、e-Govの利便性も増し、より簡単にオンラインによる手続きが行えるようになるでしょう。

DX に対応できるツールの選び方

時代や法律の変化によってバックオフィス業務に求められることも変化してきています。世界で急速にデジタル化が進んでいる中で、日本だけがアナログな方法からシフトできずにいる状況では大きな損失を被ることにもつながりかねません。もし2025年までに官民のデジタル化を実現できず、非効率な旧体制のままの状態だったとすると2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失を生むと言われています。それが「2025年の崖」です。

現在、多くの企業が導入しているレガシーな基幹システムは2025年までにサポートが終了します。すると、古いプログラミング技術を持った人材が足りなくなり、それを確保するために保守運用に莫大なコストがかかります。だからこそ複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムを重宝し続けるのではなく、これからの働き方に合ったツールを選んでいくことが重要になるでしょう。

DX に対応できるツールの選び方

5GやWi-Fi6など大容量高速通信時代が到来すれば、今よりも加速度的に扱うデータ量が増加。セキュリティ面でのリスクが高まります。それらの課題を克服するには、本格的にDXを実現できるツールを選ぶことが重要です。特に更新の手間がいらないクラウドサービスは、DXはもちろん、時代や法律の変化にも柔軟に対応できるでしょう。

更新の手間いらずのクラウドサービス

これまでのソフトウェアの場合、アップデートを所有者であるユーザーが行うケースが大半でした。しかし、そのケースでは長期間アップデートをせずにいると、古いシステムのまま使い続けることになります。例えば、バックオフィス業務における労務管理などの場合、法改正によって古いシステムのままでは新しいルールに対応できなかったり、セキュリティの危険性が残ったりするなど不都合が生じることが想定されるでしょう。

本格的にDXに対応するためには、更新の手間がいらない「クラウドサービス」がおすすめです。クラウドサービスならベンダーが自動的にアップデートを行ってくれるので、常に最新のバージョンでサービスを利用できます。法改正した際も自動的にアップデートしてくれるサービスも多く、現行法に適用していることは安心につながります。

クラウドサービスの他のメリットとして挙げられるのは、初期投資を抑えられる点です。クラウドサービスは一般的にサブスクリプション型(月額制)なので、初期投資で大幅な予算がかかるケースは稀だと言えます。投資に対する回収のために減価償却が終わるまで使い続けるという制限もありません。また、インターネットに接続さえしていれば、どこでも利用可能なため、働く場所を選ばないことも大きな利点です。近年増加傾向にあるテレワーク(リモートワーク)にも適したサービスと言えるでしょう。

「チムスピ勤怠」 は法改正にも柔軟に対応できるクラウドサービス

官民協働を意識し、バックオフィス業務の効率化を目指すのであれば「チムスピ勤怠」をご検討ください。
チムスピシリーズはSaaS(Software as a Service/クラウドで提供されるソフトウェア)として提供されるサービスのため、時代に合わせて改正される法律にも対応できるよう定期的にアップデート。例えば「働き方改革関連法」に基づく労務管理にも有効です。特に「時間外労働の上限規制」や「年次有給休暇の取得義務」など罰則のある法改正においても、労務リスクを回避して法令遵守に基づく労務管理を実現できます。

バックオフィス業務のデジタルシフトに適したシステムの選定を

デジタル手続法によって、今後も官民協働を意識したバックオフィス業務を推進する企業がさらに増えることでしょう。デジタル化の波は世界でも顕著なだけに、日本企業もその波に乗り遅れないようデジタル化に対応できるシステムの導入が重要になります。ただ、真新しいシステムであれば何でも良いというわけではありません。バックオフィス業務のさらなるデジタル化を想定し、時代や法律の変化に柔軟なツールを選ぶことが求められます。

チムスピシリーズは急成長企業から大手優良企業まで、業種を問わず多くの企業様にご活用いただいています。資料請求や製品・導入に関するご相談はいつでも受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。