【雇用保険法等の一部改正】改正の概要と企業が対応すべきこと

【雇用保険法等の一部改正】改正の概要と企業が対応すべきこと

新型コロナウイルス感染症の流行で世界的に社会情勢が不安定になったことに起因して、雇用不安が広がっています。収束までの間に経営難から労働者が失業したり、仕事を辞めざるを得なかったりする事態が拡大することが想定されるでしょう。そうした非常時に労働者への必要な給付を行い、労働者の生活・雇用の安定を図り、さらには再就職の援助を行うセーフティネットが存在します。それが「雇用保険制度」です。

雇用が不安定な時代だからこそ、使用者はその重要性を正しく認識し、適正な運用が求められます。さらに2020年3月に「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が可決されたため、使用者が雇用を守るうえで新たに対応すべきことがより明確になりました。では具体的に改正に対してどんな対応をすべきなのでしょうか。改正の概要と企業が雇用において負うべき責任範囲について説明します。

労働者のセーフティネット「雇用保険制度」とは

さまざまな理由で職を失った労働者を救済する社会保障である「雇用保険制度」。何らかの理由で労働者が働けなくなった場合に、収入に対して一定の給付を行うのが概要です。たとえば、「勤めていた会社が倒産した」「会社都合で解雇された」「自己都合で退職した」場合が主な給付の対象となります。雇用保険は労働者の生活を守ることはもちろんですが、再就職に向けた支援を図ることで雇用を安定化することも目的です。つまり、労働者が再び健全に働ける環境を整えるためのサポート全般が制度の本質だと言えるでしょう。

使用者が雇用する労働者を守ることは当然ですが、その役割の1つとして雇用保険への加入が義務づけられています。雇用保険法では、たとえ1人でも労働者を雇用している企業はすべて雇用保険の適用事業者となるのです。また、適用事業に雇用される労働者は、もれなく雇用保険の被保険者の位置づけになります。つまり、完全なる個人事業主以外には関連性がある、労使ともに重要な制度だと言えるでしょう。

雇用保険の給付金において多くの方がイメージするのは「失業手当」ですが、離職時の年齢や被保険者期間、さらには自己都合退職か会社都合退職かによっても支給日数は異なります。たとえば65歳未満の労働者が自己都合退職した場合、被保険者期間が10年未満だと90日の支給日数であるのに対し、会社都合の退職かつ被保険者期間が20年以上ある場合は330日間にわたって失業手当が給付されます。使用者としても、制度の詳細をきちんと認識したうえで労働者の生活や再就職をサポートすることが大切です。

雇用保険法改正の趣旨と概要

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2020年3月に可決された雇用保険法の改正案によって変更になった点があります。厚生労働省が公開している資料「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)の概要」をもとに、主な改正事項である3点についてくわしく解説します。

その1:高齢者の就業確保に向けた努力義務

2021年4月から65歳から70歳までの「高年齢者就業確保措置」が施行になります。詳細としては定年の引き上げまたは廃止、継続雇用制度の導入、業務委託契約など70歳までの就業を支援する措置を講ずることが企業の努力義務となります。

また、高年齢雇用継続給付を2025年度から縮小することが決定。65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置の導入などに対する支援を雇用安定事業に位置づけます。ちなみに、業務委託契約など従来の雇用形態以外の措置を講ずる場合には、あくまでも労使間で同意したうえでの実施が基本です。

その2:複数就業者等に対応したセーフティネット

多くの企業で副業の解禁が進んでいることもあり、本業とは別に複数の就業先で業務に従事している労働者が増えています。そうした複数就業者に対しても労災保険が適用されるようルールが改正されます。複数の事業主に雇用される65歳以上の労働者についても、2022年1月以降から雇用保険の適用対象となるので使用者としては注意が必要です。

また、勤務日数が少ない労働者であっても、労働時間を基準として雇用保険の給付が受けられるようになるため、社内での適用メンバーの洗い出しが急務となるでしょう。労働時間による被保険者期間の算定ルールは2020年8月からすでに施行が開始されています。また、これらに加えて、2021年4月からは大企業に対して中途採用比率を公開することも義務づけられます。企業としても働き方の多様化に合わせた法改正を遵守し、きちんと適応することが求められるでしょう。

その3:育児休業給付および失業等給付の基盤整備

2020年4月から育児休業給付を失業等給付から独立させると同時に、育児休業給付資金が創設されました。また、失業等給付に関する保険料率は景気および財政状況に応じて弾力的に変更できるよう、算定方法が見直しになっています。これにより、2020年度および2021年度の保険料率を従来の1000分の4から1000分の2に引き下げ、国庫負担も55%から10%に引き下げます。また、保険の給付額に変更が生じた場合、受給者の遺族に対する給付には消滅時効を援用しないルールに改正されました。

雇用保険法改正にともない企業が押さえておくべきポイント

時代に合った社会保障を提供するためにも雇用保険法の改正が行われました。しかし、改正事項が多岐にわたるうえ、それぞれの施行日が異なるため、対応に苦慮する企業の人事労務の方も多いでしょう。法令遵守を徹底し、社会保障をきちんと提供することは企業の重要な役割なだけに、今回の改正の要点を押さえておくことが不可欠です。では実務上、どんな点をより意識する必要があるのでしょうか。重要ポイントと具体的な対応策を紹介します。

ポイント1:経験と知識を要する高年齢就業者のサポート

少子高齢化が進む日本においては、いかに労働人口を確保するかが大きな課題となります。そこで白羽の矢を立てたいのが、就業経験と叡智があり、さらに働く意欲に溢れている高年齢就業希望者です。非常に優秀な人材でさらに本人が働きたいにもかかわらず、年齢の区切りでリタイアするのはもったいない事態だと言えます。

雇用保険法の一部改正によって、2021年4月からは70歳までの就業を支援することが企業の努力義務となります。すでに定年延長や廃止など、高年齢就業希望者の継続雇用に取り組んでいる企業も増えていますが、その流れをさらに加速させるでしょう。まだシニア層の就業に関して整理ができていない場合は、まずは自社の就業規則を見直し、65歳から70歳までの労働者を受け入れる体制の整備が重要になります。早期での実現が難しい場合は、他社への再就職支援や個人の起業支援、業務委託契約などを通して就業確保処置を行う方法も考えられます。

また、いかに優秀な人材であっても、年齢による体力的な衰えは考慮しなければなりません。ハードな肉体労働を避けるのはもちろん、時短勤務を推奨するなど、高年齢就業者の適正を考慮した業務内容の割り当てを行うことが基本です。労働者の健康状態を的確に把握するためにも、より入念な健康診断や体力チェックが必要になるでしょう。

さらに安全に業務が遂行できるよう、危険を伴う作業に関して職場環境の整備や、労働者に対する安全衛生教育の徹底も重要です。高年齢就業者の労働災害を未然に回避するために、厚生労働省では「高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン」を公開しています。その中では、加齢による心身の衰え(フレイル)に関する定義や対策がまとめられているので、高年齢の労働者雇用に向けて企業が行うべき対策のヒントにすべきでしょう。

ポイント2:複業・副業を実施する複数就業者への支援

企業のダイバーシティマネジメントにおいて、副業や兼業を容認する流れが社会のトレンドとなりつつあります。経験豊富なシニアが定年退職後に複数の事業者と業務委託契約を結んだり、働き盛りのワーカーが副業を開始して本業以外の会社と雇用契約を締結したりするケースも今後増えてくるでしょう。その際に課題となるのが「労災補償」です。

たとえば、労働者がA社とB社でダブルワークをしている場合は、どちらの業務でケガを負ったとしてもA・Bの2社の給与額を合算して評価することが求められます。そのため、企業としても従業員の兼業・副業状況をしっかりと把握したうえで、就業状況に合った対応をする必要があるでしょう。昨今の働き方の多様化において、副業や兼業解禁に踏み切る事業者は、今後も増え続けることが予想されます。労働者に対する安全配慮義務を負ったうえで、他社での業務状況に関しても的確に把握・マネジメントすることが重要です。

現状では副業や兼業に対応した雇用保険の体制を構築できていない企業が大半だと言えるでしょう。雇用や労働を取り巻く社会の変化に迅速に対応することは簡単なことではありません。しかし、社内規定をしっかり整備していない状況で損をする恐れがあるのは従業員です。副業や兼業を踏まえた時代に合った働き方を許容し、より良い労働環境を整備する意味でも、まずは現状の就業状況の把握・社内ルールの策定から始めてみましょう。

ポイント3:失業者・育児休業者等への給付に対する改正

雇用保険によってもっとも守るべきなのが、失業などによって直近で定職に就けない就業希望者です。雇用保険法の改正によって、離職票の支払基礎日数の算定方法が変わりました。大前提として失業等給付を受けるためには、『離職日以前の2年間において「被保険者期間」が通算12ヶ月以上あること』が条件となります(特定受給資格者または特定理由離職者の場合は1年間に被保険者期間が通算して6ヶ月以上)。

従来までは「賃金支払の基礎となる日数が11日以上ある月」を被保険者期間における1ヶ月と算定していました。しかし、今回の法改正により、2020年8月より前述の条件に加えて「労働時間数が80時間以上ある場合」も1ヶ月として算定されるルールに変更となっています。

【改正前】

離職日から1ヶ月ごとに区切っていた期間に、賃金支払の基礎となる日数が11日以上ある月を1ヶ月と計算。

【改正後】

離職日から1ヶ月ごとに区切っていた期間に、賃金支払の基礎となる日数が11日以上ある月、または、賃金支払の基礎となった労働時間数が80時間以上ある月を1ヶ月として計算。

上記の変更によって、雇用保険被保険者の要件(週の所定労働時間が20時間以上で、雇用見込み期間が31日以上)を満たしつつも、月の労働が11日未満の月があった場合の救済措置となっています。日数だけでなく労働時間による基準も補完的に設定されていることを、企業としても認識しておく必要があるでしょう。離職証明書を発行する際には、「基礎日数」と記載する日数が10日以下の場合、「備考」の欄に労働時間数の記載が求められます。

また、育児休業給付については、2021年4月より失業等給付からの独立が決定。近年は男性の育児休業の取得も増加傾向にあるだけに、失業等給付と切り離して育児休業給付を明確に区分されます。さらに、育児休業給付の給付率に関しても将来的なアップが検討されています。従来までは育児開始から6ヶ月以内は賃金の67%、6ヶ月経過後は50%に相当する給付が行われていました。しかし、今後は6ヶ月以内の67%が80%までアップする可能性があります。育児休業により収入減を防止する動きがあることも、使用者としてきちんと把握しておくべきでしょう。

改正雇用保険法への理解を深めて早期対策を

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新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、社会情勢は刻一刻と変化しています。そうした現状に対応すべく政府や行政ではさまざまな制度変更や新たなルール作りに取り組んでいます。長引く自粛生活によって経済の低迷が深刻化する中、多くの労働者は今後の生活に不安を抱き、特に雇用に関してはよりセンシティブになっている状況です。だからこそ、企業としても雇用を守る意味でも、改正雇用保険法の遵守に努めるべきでしょう。

また、企業にとってもう1つの大きな課題としては、働き方改革の実現が挙げられます。定年延長や廃止、継続雇用制度の拡大のほか、副業や兼業の解禁によって働き方の多様化が顕著となってきています。さまざまな立場の労働者が活躍でき、さらに雇用で守られている社会の整備が急務なのです。雇用保険法の改正は、まさに激動する社会情勢を反映したものだと言えます。企業は法改正への理解と早期対策のための準備を始める必要があるのです。

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