1.メンタルブレイクとは?メンタルブレイクとは、「mental(=精神)」と「break(=破損、崩壊)」を合わせた造語で、精神的につらい状況のことです。企業にとって従業員のメンタルブレイクは、事業を行う上で生産性の低下にもつながってしまうため注意が必要です。健全な企業活動と従業員の心の健康を守るため、メンタルブレイクの起こる背景や、対策・回避策を把握しましょう。メンタルブレイクは「心が落ち込んだ状態」を表す言葉メンタルブレイクは、その意味の通り、精神的に追い込まれた状態や過度なストレスを抱えている状況を表します。「メンブレ」と略されることもあり、SNSでもよく使われます。精神的な負担を抱えたままの従業員を放置してしまうと、うつ病や摂食障害、統合失調症などに発展してしまうこともあります。心の不調がある場合はそのままにせず、企業側は早めに対応することが大切です。日本企業のメンタルブレイクの状況・背景近年、日本ではメンタルブレイクの主な症状の一つである、うつ病の人の割合が増加しています。経済協力開発機構のメンタルヘルスに関する国際調査によれば、うつ症状のある日本人の割合は、2013年時点で7.9%でした。それが2020年になると、17.3%に増加しています。その背景には、新型コロナウィルスの感染拡大などによる先行き不透明な社会情勢があるのではと考えられています。また、2021年の調査では、「過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業した労働者、もしくは退職した労働者」がいた事業所の割合は、10.1%という結果が出ています(厚生労働省の「労働安全衛生調査(実態調査)」より)。前年度は9.2%だったため、こちらも微増傾向にあるといえるでしょう。一方で、メンタルヘルス対策に取り組む企業も増えています。下記データから、中規模以上の事業所のほとんどはメンタルヘルス対策を行っていることがわかります。【メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の規模と割合】事業所の規模メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合労働者数50人以上94.4%労働者数 30~49人70.7%労働者数 10~29人49.6%出典(PDF資料):令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」ただし、30人未満の小規模事業所においては発展途上の状態です。30人未満の事業所は日本全体の9割以上を占めているため、日本企業におけるメンタルヘルス対策はまだ十分とはいえないでしょう。こんな兆候があったらメンタルブレイクに注意メンタルブレイクのような心の不調が起きた場合、体調や心理状態、行動に普段とは違う様子が見られます。従業員に次のような兆候がある場合には、休息をとったり、身近な人や医師に相談したりすること勧めましょう。メンタルブレイクの兆候・仕事に集中できず、落ち着かない・やる気が出ず、ぼーっとしている・些細なことで落ち込んでしまう・遅刻や休みが多くなった・不満やトラブル、独り言が増えた・怒りっぽくなったり、情緒が激しくなったりする・睡眠が取れていない・食欲がない・以前よりも表情が暗くなった参考:厚生労働省「こころの病気の初期サインに気づく」2.従業員のメンタルブレイクの事例職場におけるメンタルブレイクの例を見てみましょう。厚生労働省のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」から、メンタルヘルスの不調の事例を3つ紹介します。【事例①】うつ病の事例中堅企業に勤める20代の新卒女性の事例です。穏やかで人から好かれ、残業をいとわず働いていましたが、次第に心身の不調を訴えるようになりました。◆人物像・23歳女性、専門学校を卒業・中堅企業に就職・堅実、穏やかで、誰からも好かれる人柄・残業をいとわず、自ら仕事を引き受けていた◆症状・以前のはつらつさがなくなり、ぼんやりしたように見える・仕事の効率が落ち、ミスが増える・クライアントから苦情を寄せられることもある◆対処・精神科を受診し、うつ病と診断される・睡眠薬と抗うつ薬を服用する・残業をやめ、睡眠を改善・1週間ほどで回復効果が見えるものの、数カ月をかけて治療出典:厚生労働省「こころの耳 [事例1-10]」【事例②】引きこもりから退職に至った事例人付き合いが苦手な若手の男性社員の事例です。入社から約半年後、仕事上のミスがきっかけで休みがちになり、退職に至りました。◆人物像・18歳男性、高校を卒業・飲料水製造工場に就職・人づきあいが苦手で、親しい友人や信頼できる上司がいなかった◆症状・次第に「だるさ」や「不眠」を家族に訴えるようになった・入社半年後、作業上のミスによる上司の厳しい注意をきっかけに休みがちになった・引きこもりがちになり、入社約10カ月後に退職◆対処・上司は産業医と相談・上司は両親とともに本人に出社を促した出典:厚生労働省「こころの耳 [事例1-11]」【事例③】企業合併に伴う業務負荷によるうつ病の事例50代半ばの、配送部門の男性所長の事例です。業務内容に精通するベテランでしたが、ライバル企業との合併によって、相手企業のシステムを導入することとなり、システム変更の業務負担から多忙を極め、うつ病を発症してしまいました。◆人物像・56歳既婚男性、妻と母親と暮らし、2人の子供は就職して独立・入社以来、製品の配送関係の業務に従事し、地方の配送拠点の所長として勤務・十分な経験があり業務に精通・家族と安定した生活を送っている◆症状・仕事に対して集中できない、仕事や生活を楽しめない、眠れないなどの症状が出現・自己判断で近所の精神科を受診し、抗うつ剤・入眠導入剤などの処方を受け、服用・症状が回復せず、上長に相談・産業医により、明らかな抑うつ症状が確認される◆対処・産業医と主治医により業務負担が確認され、2カ月の休業となり、治療に専念・2カ月の休業で抑うつ感がほぼ消失・最初の2週間は残業を行わないことを前提に復職・現在は問題なく勤務出典:厚生労働省「こころの耳 [事例1-19]」3. メンタルブレイクの社員に会社がすべきサポート労働契約法第5条*では、「企業は、社員が生命や身体等の安全を確保しながら働けるように努めるべき」と定められ、企業にメンタルブレイクへの配慮を促しています。それでは、会社は自社の従業員に対してどのようなサポートをすればいいのでしょうか。厚生労働省のガイドライン「労働者の心の健康の保持増進のための指針」によれば、従業員のメンタルヘルスのケアとして、企業は以下の4つを実施することが重要と定めています。4つのメンタルヘルスケア・セルフケア・ラインによるケア・事業場内産業保健スタッフ等によるケア・事業場外資源によるケア出典:e-Gov法令検索 労働契約法第五条(労働者の安全への配慮)(1)セルフケア会社は社員に対して、教育研修や情報提供を行い、各自がセルフケアをできるように支援を講じることが求められています。具体的には、ストレスやメンタルヘルスに関する研修を行ったり、ストレスチェックテストを実施したりして、自身の精神状態への気づきを得られるような環境を整えます。また、セルフケアの重要性は管理職に対しても同様です。管理職のメンタルヘルスケアはないがしろにされがちなため、人事や労務の担当者は、マネージメントをする側の人材に対しても、セルフケアに関する支援を行いましょう。(2)ラインによるケアラインによるケアとは、管理監督者が職場のストレス状況を把握し、改善することを指します。ラインによるケアでは、特に「小さい異変に気づけるか」が重要です。普段は時間を守る部下が遅刻を繰り返す、仕事を淡々とこなす社員がミスをするなど、いつもと違う様子が見られる場合にはメンタルブレイクが疑われます。細かな変化に気づくためには、日ごろから部下や同僚をよく観察し、関心を向けておくことが欠かせません。心のケアは、体と同様に早期発見・早期対応が大切なため、兆候が見られた場合には声をかけたり、産業医との面談を促したりしましょう。(3)事業場内産業保健スタッフ等によるケア産業医や衛生管理者、保健師など、「事業場内産業保健スタッフ」によって、セルフケアやラインによるケアが効果的に実施されるよう、支援策を講じることが企業に求められています。そうしたメンタルヘルスケアを得意とするスタッフが中心的な役割を担い、次のような取り組みを実施できるような制度作りをしましょう。事業場内産業保健スタッフ等によるケアの取り組み内容・具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案・個人の健康情報の取り扱い・事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口・職場復帰における支援出典(PDF資料):厚生労働省「職場における心の健康づくり」(p.7)(4)事業場外資源によるケア人手不足やコストの問題などで、事業場内産業保健スタッフを十分に確保できない場合、事業所外資源を活用することも大切です。なお、事業場外資源とは以下のような機関を指します。事業場外資源となる機関・都道府県産業保健総合支援センター・健康保険組合・労災病院・中央労働災害防止協会・労働者健康保持増進サービス機関・労働衛生コンサルタント、公認心理師、精神保健福祉士、産業カウンセラーなど・精神科、心療内科等の医療機関・地域保健機関出典(PDF資料):厚生労働省「職場における心の健康づくり」(p.7)社員によっては、「会社に相談内容を知られたくない」という方もいるでしょう。そのような場合に、心の問題を職場の外で相談できる窓口を用意しておくことは効果的です。4.会社側ができるメンタルブレイク回避策従業員がいきいきと働けるよう、企業側は前述の4つのケアの環境整備を行うことが大切です。そのうえで、社内外のリソースを活用しながら、次に紹介する3段階での具体的なメンタルヘルス対策を講じましょう。1次予防丨メンタルヘルス不調を未然に防ぐ1次予防対策では、メンタルヘルスの不調を防ぐために、ストレスチェックや労働時間の把握などを行いましょう。労働安全衛生法第66条10項*で、ストレスチェックは従業員50人以上の事業所では、年1回の実施が義務付けられています。それ以下の中小規模事業所では義務ではありませんが実施することは有効です。また、労働時間の把握も、従業員の心の状態を知る上で重要です。会社は、労働者の労働時間を客観的に把握することを義務付けられています。長時間労働が慢性化している場合には面談を行い、社員の心身の健康に配慮しましょう。なお、労働時間の適正管理のためには、労務管理システムを導入するのもおすすめです。*出典: e-Gov法令検索 労働安全衛生法第六十六条の十(心理的な負担の程度を把握するための検査等)また、以下のサイトではセルフチェックを簡単にできるので、ご活用ください。メンタルヘルスのセルフチェックができるサイト一覧・組織診断でわかる 職場の快適度(厚生労働省HP『こころの耳』)・5分でできる職場のストレスセルフチェック(厚生労働省HP『こころの耳』)・仕事のストレス判定図(東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野)2次予防丨メンタルヘルス不調の早期発見と適切な初期対応を行う2次予防の実施では、「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」が重要となります。ストレスチェックの結果や勤務中の言動などを参考にして、社員のメンタルブレイクの予兆に注意しましょう。ハラスメントに起因するメンタルヘルス不調の場合には、初期対応をどう行うかも大切です。被害者の相談窓口を用意するとともに、被害者や告発者のプライバシー保護にも配慮しましょう。また、ハラスメントによるメンタルブレイクを引き起こさないための研修を行うことも有効です。併せて、ハラスメントを行った者に対して厳正に対処する方針を示すことも必要です。3次予防丨休職から復職までをサポートする3次予防では、精神的な不調により休職している社員のサポートを行います。休職中の社員に対しては、月に1回程度、定期的に連絡をしてつながりを保ち、必要に応じて専門家のアドバイスを仰ぐといいでしょう。また、回復の兆しが見られるようになったら、職場復帰に向けたプランを考えましょう。最初は短時間勤務にするなど、臨機応変な勤務計画を立てることが大切です。復帰後は、こまめに面談を重ね、体調やストレス状態、仕事の進捗などを逐次確認します。なお、休職者がいなくとも、「休職から復職までのフロー」を平時から整理しておくと、3次予防になります。「会社が社員を大切にする」というメッセージを発信することにもつながり、社員の心理的安全性を高める効果も期待できます。5. まとめメンタルブレイクは、心の不調を意味する言葉です。メンタルブレイクに陥る場合、ミスや遅刻が増える、元気がないなど、普段とは違う様子が見られます。そうした兆候のある社員がいる場合には、積極的に支援しましょう。メンタルヘルスケアにおいては、早期発見・初期対応がとても大切です。社員間で日ごろからコミュニケーションがとられるよう心がけ、会社はストレスを抱える人をサポートできる環境づくりに注力しましょう。「メンタルヘルス対策をまだ行っていない」という会社は、ご紹介した厚労省のガイドラインを参考に、具体的な対策に取り組むことをおすすめします。6. 「TeamSpirit」なら長時間労働の改善を実現「TeamSpirit」は、勤務時間をリアルタイムに見える化できる、勤怠管理システムです。ダッシュボード機能を利用すると、各社員の勤務時間を可視化できることから、メンタルブレイクの原因となる長時間労働を回避できるようになります。また、工数管理・勤怠管理・経費精算・原価管理などをまとめて行えるため、バックオフィス業務の効率化も実現します。「TeamSpirit」をすでにご導入いただいている企業様の中には、チームメンバーの勤務時間が見える化されたことにより、職場環境が改善されたという事例も多数あります。そのほかにも、紙のタイムカードや手作業で経費精算を行っていた企業様は、「TeamSpirit」の導入により、それまで4営業日かかっていた月末の締め作業を1営業日で行えるようになりました。過剰な仕事量や長時間労働を削減し、従業員のメンタルブレイク対策を行いたい企業様は、ぜひお気軽に資料請求やお問合せよりご連絡ください。執筆:チームスピリット編集部